結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年03月07日(水曜日)

ハイパーマーケット1位家楽福カルフールを圧倒! 2位大潤發RTマート

「私は、津波のあと、しばらくして、
遺体安置所にいきました。
そこには、お父さんと、
そのほか3人がいました。
そこには、お母さんが先にいって、
お父さんの顔を、泣きながら見てました。
私は、お父さんの顔を見たら、
血だらけで、泣きました」

< あしなが育英会の震災遺児作文集より>

今朝の朝刊で、
朝日新聞の『天声人語』と日経新聞の『春秋』が、
この福島県の小学5年生の作文を取り上げた。

読売新聞『編集手帳』と毎日新聞の『余禄」は、
三重県のストーカー事件の「たらい回し」に文句をつけた。

昨日は中国地方で「春一番」が吹いた。
春はもうやってきている。
そして3月11日が近づく。

一昨日のことになるが、
横浜の商人舎オフィスに、
拓殖大学商学部教授の根本重之さんを迎えた。
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根本さんは横浜のご出身。
私は博多生まれの、横浜育ち。
以前から農林水産省の委員会でご一緒したり、
協会、団体で同席したり。

今回は、根本さんがつくったDVDを届けに来てくださった。
「消費と流通の先を読む2012」
商人舎ホームページの右段にバナーを載せた。
メーカーも卸売業も、関連産業も、
最低1社1本は購入して、勉強してほしいものだ。

根本教授は流通問題の専門家。
学者のなかでは本当に珍しく現場のわかる人。
理念や理論の背景があって、
そのうえで現場が理解できることで、
問題解決を成し遂げることができる。

それがサム・ウォルトンの“Retail is Detail”
「小売りの神は細部に宿る」。

ピーター・ドラッカー先生の「実践第一」。
“Practice comes first”

ヘンリー・ミンツバーグ。
「有能な研究者とは、たいてい、
現場で少しずつデータを掘り起こしていくものだ。
ただし、現場に密着した後は、
一歩後ろに下がって考える必要がある」

「一歩後ろに下がって」
ここが大事なんですね、人間として。

根本先生のDVD。
大いに学んでほしい。

さて台湾小売サービス業の報告。
今日で最終回。

台湾商業の特徴の一つは「上位寡占」である。
業態別に2社による「複占」、
3社による「三占」、
数社による「寡占」が進む。

複占は、ハイパーマーケット、スーパーマーケット、
ドラッグストアなど。
三占は百貨店、
寡占はコンビニ。

しかし業態別の上位寡占とともに、
大規模企業のほとんどが、
様々な業態において外国企業と提携している。
その代表が「統一企業グループ」。

統一企業股份有限公司は、
台湾最大の食品製造・加工会社だが、
この統一が小売りサービス業最大のコングロマリットを形成している。
コンビニの統一超商は、セブン-イレブン。
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統一のハイパーマーケットは、家楽福(カルフール)。
百貨店は、統一百華(阪急百貨店)、
ドラッグストアはCOSMED。

無印良品とも提携して店舗展開しているし、
コーヒーショップは、統一星巴克(スターバックス)、
ドーナツチェーンは統一多拿滋(ミスタードーナツ)、
さらにインターネットモールは台湾楽天市場(楽天)。

業態開発のコストはかけず、
アメリカやフランス、日本の先進企業と提携し、
あるいは合弁事業を起こして、
スピード優先でマーケットを占拠していく。

セブン-イレブンは業界1位で4753店、
カルフールも第1位で60店、
COSMEDは第2位で346店、
統一阪急は業界第4位、こちらは2店舗。

カルフールを訪れた。
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この店はハイパーマーケットRTマート2店舗に挟み撃ちされ、苦しい。

青果部門もフランスや中国本土のハイパーマーケットそのまま。
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精肉は平ケースで大展開。
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広い主通路の両サイドに単品量販の売場が続く。
通路のなかには島陳列。
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しかし客数が少ない。

特売コーナーを設けて、
ディスカウントのアピールをする。
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POPやサインを大々的に掲げるが、
それもむなしい感じ。
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大型カートが移動できる動くスロープを昇る。
スロープの手すりわきには、これも独特の売り場がつくられる。
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上階に上がるとまずは特売コーナー。
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そしてこのフロアは非食品で構成されている。
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ハイパーマーケットは、
ウォルマートのスーパーセンター、
イトーヨーカ堂やイオンリテールと同じ部門構成。
現在も中国や台湾ではハイパーマーケットの時代が続いている。

高度成長が進み、生活のレベルが急速に向上している時代には、
総合品揃え型の大型店が繁盛する。
総合品揃えだからテレビをはじめとして、
家電売り場もある。
イトーヨーカ堂やイオンリテールが放棄してきた部門である。
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しかしこの台湾のカルフールを見ていると、
ハイパーマーケットの時代が徐々に、
成長のピークを終え、成熟から衰退に向かっているように見える。

業態の成熟期が来ると、
立地によって繁盛ぶりに大きな格差が生まれる。

カルフールに入っている日本のニトリもベスト電器も、
見たことがないような閑散ぶり。

唯一繁盛しているのはフードサービス。
この回転ずし屋はその代表。
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一方、ハイパーマーケット第2位の大潤發RTマート。
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台湾資本で国産企業。

200メートルくらいしか離れていない立地に2店舗出店。
カルフールを挟み撃ちにしている。
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大潤發RTマートは23店舗。
上海でもウォルマート、カルフール、テスコなどを押しのけて、
最も強い店をつくっている。

スロープ式エスカレーターを昇って2階へ。
多層階ハイパーマーケットの常とう手段。
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スロープを上がると競合店との価格比較。
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同じ品目を購入して、そのトータル買い上げ金額を示している。
左がRTマート、右が「其他量販店」、もちろんカルフール。

上がると非食品売り場が広々としている。
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ジーンズ売り場。
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衣料品もカジュアル・ファッションを中心に買いやすい商品構成。
明らかにカルフールをしのいでいる。

通路は広く、美しい大量陳列。
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カルフールが始めた販売方式を完全にマスターし、
ここ台湾ではカルフールを寄せ付けない。
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青果部門の平台による品ぞろえ、鮮度ともに、
カルフールを凌駕している。
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食品の導入は惣菜売り場。
対面とセルフを組み合わせて、ニーズ対応している。
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惣菜コーナーの奥、壁面沿いが精肉売り場。
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鮮魚売場は氷を敷き詰めて、
その上に一尾ずつ、商品を丁寧に陳列。
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これもカルフールに学んで、カルフールの上を行く。

鮮魚はパック商品も品揃えする。
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近代的な小売業として、
これならば「伝統市場」にも勝てる。

台湾ではスーパーマーケットの本格化は、
これからだ。

しかしハイパーマーケットは今、
絶頂期を迎えるほどに充実している。

コメ売り場もこのボリューム感。
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日配品売り場は多段ケースが延々と続く。
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菓子や加工食品売り場の品ぞろえも豊富。
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ただしハイパマーケットの弱点は、
平日の客数が極端に減少すること。

これは日本の総合スーパーでも同じ。

レジは土曜、日曜を基準に設けられている。
平日は過剰なレジ台数となる。
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RTマートのドライブ・ドットコム・システム。
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このRTマートは、上海で、
ナンバー1の売場づくりを実現している。
ここ台湾でもナンバー1。

台湾経営恐るべし。

考えてみると、
蒋介石総統とともに台湾に逃れてきた人々は、
毛沢東の共産党とは袂を分かった実業家たちだった。

商売のDNAを持つ人々。
だから今ピークを迎えるハイパーマーケット業態でも、
これから伸びるスーパーマーケット業態でも、
台湾資本の企業が店舗力ナンバー1の地位を得る。

もちろんそうではない企業もある。
アメリカのコストコだ。

現在、6店舗ながら、
この店は韓国ソウルの店舗に次いで、
世界のコストコのなかで第2位の売上高を稼ぐ。
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コストコはどの国に行っても、
ブルーオーシャン戦略を悠々と展開。

メンバーシップ・ホールセールクラブ業態の優秀性。

この難しい業態を成功させ、
他の模倣を許さないところが、
コストコの強みである。

ハイパーマーケットやスーパーマーケット、
さらにコンビニ、ドラッグストア・・・。
普遍的業態ではないところに、
コストコ繁盛の普遍性がある。

実に面白い現象だ。

台湾小売業と台湾の商人たち。
先進業態を提携して導入する。
この面では迷いなし。
リアリティにあふれている。

提携せずとも、ハイパーマーケットは、
RTマートがカルフールを学びつつ、
完全に追い抜いてしまった。

台湾小売業の模倣力は、
群を抜いている。

これでいいのかもしれない。

「私たちは、別に、
新幹線を開発する必要はない。
私鉄でいいのです」

これはかつて荒井伸也さんが口にした言葉。

その荒井サミットは、
関西スーパーマーケットから学んで、
ユニークな店づくりやオペレーションを創造した。

台湾全体に、このリアリティと学びの姿勢を読み取ることができる。

台湾商人、恐るべし。

<結城義晴>

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