結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年03月14日(水曜日)

ドール経営者セミナーでCWニコルさんと共演/「森」の閃きを得た

今日はホワイトデーだった。
百貨店などの売場は盛り上げようと必死だったが、
みなさんの店ではどうだっただろうか。

さて朝日新聞の『CM天気図』。
雑誌「広告批評」主宰者の天野祐吉さんのコラム。
天野さんはマドラ出版の社主でもある。

アメリカの歴史学者ジョン・ダワーさんの言葉を引く。
「大きな災害や事故が起きると、
すべて新しく創造的な方法で
考え直すことのできるスペースがうまれる。

いま日本はまさにその時だが、
もたもたしていると、
そのスペースはまた閉じてしまう」

ダワーさんはマサチューセッツ工科大学教授で、
奥さんが日本人という親日家。

東日本大震災後のこのジョン・ダワーさんの言葉、
天野さんの心に突き刺さる。

そして天野さんは、
広告やCMが想像力を発揮していないと残念がる。

「世の中を動かしていく気のない
ノーテンキなCMをなんとなく見過ごしているうちに、
ダワーさんの言う『スペース』は、
日に日に小さくなっていく」

私は思う。

小売業・サービス業は、
否応なくこのスペースを埋めている。

そこに新しい創造も生まれている。
広告よりも地に足がついているからだと思う。

しかしもっともっと想像力を働かせて、
イノベーションを起こすことができる。

小売流通・サービス業における「スペース」は、
まだまだ閉じてはいない。

さて昨日は、「ドール経営者セミナー」。
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㈱ドール主催の講演会。
そして一般社団法人ファイブ・ア・デイ協会が協賛。

会場は、東京・水天宮ロイヤルパークホテル。
スーパーマーケットや青果卸売企業のトップマネジメントが参集。

第1部講演会では、
カスミ会長の小濵裕正さんが開会の辞。
小濵さんはファイブ・ア・デイ協会会長でもある。
もちろん商人舎発足の会発起人のおひとり。

講演者紹介は、
ファイブ・ア・デイ協会理事長の池田健太郎さん。
池田さんにはCDオーディオセミナーにご出演していただいて、
その見識の高さに触れた。

講演は4部構成で、
講演1は、㈱インテージ会長の田下憲雄さん。
テーマは「小売業マーケティングの課題」

講演2は同じくインテージ社長の宮首賢治さん。
田下さんの講義に続いて、
「データ活用事例」を紹介。

講義3が結城義晴。
「知識商人(Knowledge Merchant)の経営作法」
私は自分の講演の40分ほど前に到着し、
準備をした。
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そして、80分の講演。
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マーチャンダイジングに関連する潮流や消費の実態、
そしてナレッジ・マネジメントの在り方など、
持論を展開。
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ピタリ、80分で収めた。

小濵さんを始め、
周知のトップの皆さんが聞いてくださっていたので、
気合も入ったし、安心して語ることができた。

自分でも、上出来の講演だったと思う。

私はいつも、
「この講演・講義が人生最後のものだ」と考えて、臨む。
今回も、変わらぬ気構えだった。

講義4は、C・W・ニコルさん。
ご存知、作家、評論家、コメンテーター、社会運動家。
いただいた名刺には、こうある。
「一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団理事長」

ニコルさんは1940年、英国ウェールズ生まれ。
1962年に空手の修行のため初来日。
1980年、長野県に居を定め、
執筆、環境保護、探検活動を続ける。

長野県上水内郡信濃町に荒廃した森があった。
ニコルさんは荒れ果てた里山を購入し、
26年かけて、人の手によって再生。
『アファンの森』と名付けた。

ニコルさんのテーマは、
「心に木を植える~人と自然の共生~」
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アファンの森の映像や音響を盛り込んで、
素晴らしい40分の講演だった。

ニコルさんの話をダイジェストしよう。

最近の子供たちは、自然の中で育っていないから、
落ち着きがない、我慢できない、集中できない。
こんな症状を、
「ネイチャー・ディフィシェンシー・シンドローム」と呼ぶ。

本来、子供は自然に触れると、
五感を使って探検をする。
しかし今の子供はバーチャルの世界の中で満足している。
男は18歳になっても 腕立て伏せや懸垂ができない。
斧やマッチが使えない。本当の話だ。

30年前、黒姫に住み着き、山を知りたくなった。
猟友会に参加して山歩きをすると、
原生林が切られていることがわかる。
山の斜面を丸坊主にすると、鉄砲水が起こる。
雪解け水で地滑りを起こす。
食べ物が減り、熊が出没して、畑を荒らす。
森の大切さ、森の知恵を猟師たちから学んだ。

一方で、日本の自然が破壊されている。
山の奥のゴミ捨て場は不法投棄、産業・医療廃棄物がひどい。
こうした日本の現状は、悲しい。

1966年、自分の生まれたウェールズで、
石炭採掘からでたボタ(捨石)を捨てた山が地滑りして、
中学校を襲い、121人の子供が死んだ。
政府は、ボタばかりの森を再生し、
5%の森林面積を60%にまで広げた。
カワウソやサケが戻り、豊かな自然がよみがえった。
いまは、故郷を誇りに思っている。

日本でも同じだ。
「アファンの森」づくりをして26年。
現在9万5000坪の森には、
29種の絶滅危惧をはじめとする多くの動物、
196種類の植物、137種の山菜がある。
生物多様性のある自然は、癒しの場所でもある。

ドイツの森林面積は日本とほぼ一緒だが、
ドイツは100万人の森林従事者がいる。
それに対し、日本は5万人しかおらず、しかも高齢者ばかり。

人間が荒らした自然は、人間が手入れしなければならない。
全国的な活動をすすめるために『アファンの森財団』を創設した。

この財団では、虐待を受けた子供たちを、
年に5回、森に招き、自然に触れさせている。
トラウマのある子供たちが森に入ると笑顔になる。
東日本大震災の被災した東松島の人たちも招いた。
それが縁で、今、東松島の藪を切り開き、
高台に木造校舎を作ろうという復興計画がある。
木造であっても設備はハイテクで、自然と共生する学校。
出来あがったら、国内、カナダ、インドなど、
海外の学校とネットワークを作っていく。
そんな構想がある。
私は残る人生をこの仕事にかける決意だ。

傷口を癒し、心をたくましくし、健康的にする。
自然の力は強い。

私は、ニコルさんの話に感動した。

そして大きなヒントをいただいた。
「小売業は森である」
そう、言い続けている。
本にも書いた。

その森は、人の手によって、
再生された生きた森でなくてはならない。

荒廃した森にしてはいけない。

講演が終わると、主催者あいさつ。
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㈱ドール取締役副社長の渡辺陽介さん。

その後第2部は懇親会。
ニコルさんと話した。
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ニコルさんはウェールズに、
いいスーパーマーケットがあるという。
木造の店、木製のカートまである。
私は早速、訪れることを約束した。

もちろん、日本にも木造の店舗があることを、
ニコルさんに言った。
例えばダイナムの店は木造だ。
その店は東日本大震災にも負けずに残った。

ニコルさんも答えた。
「木造は強いのです」

そのニコルさんと小濵さん。
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小濵さんと私。
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和やかな交流会だった。

商業経営問題研究会のセイミヤ社長・加藤勝正さん。
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キョーエイ社長の埴渕一夫さん。
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写真をとることはできなかったが、
スーパーマーケットの社長職にある人だけでも、
名前を列挙させていただく。
マルト社長の安島浩さん、
丸久社長の田中康男さん、
与野フードセンター社長の井原實さん、
セルバ社長の桑原孝正さん、
コーネル・ジャパン3期生のタカヤナギ社長の高柳智史さん、
大阪屋ショップ社長の平村秀樹さん、
紅屋商事社長の秦勝重さん、
モリー社長の冬頭守雄さん、
それにエレナ社長の中村國昭さん。

みなさん、ご清聴、心から感謝します。

ニコルさんの活動は、
震災で生まれたスペースを、
創造的に作り直している。

私たちも、小売流通の世界で、
それに負けてはいられない。

<結城義晴>

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