結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年12月15日(火曜日)

楽天・Yahooの過去最高記録と倉本長治の「同質性という欠陥」

日本銀行が12月の企業短期経済観測調査を発表した。
通称「日銀短観」。  

製造業では現状、改善がみられるが、
3カ月後は鈍化するという予測。
対個人サービスや飲食店・宿泊サービスの景況感は悪化。

「販売価格が下落しているが、
仕入れ価格はそれほど下がっていない」  

一方、先週末の日曜日、12月13日の日曜日。
インターネット通信販売は大盛況。  

楽天市場の総売上高は、1日で30億円台後半。  
これは前年同日比2割増で、12月日曜日の過去最高。

日経新聞の囲み記事。

同じ13日日曜日の「Yahoo!ショッピング」は、
売上高10億円以上で過去最高。  

前年比40%の増加。

経済不況、消費不振。

しかし日本人には金がないわけではない。
カネを使わないわけでもない。

これまでと同じ使い方、
旧態依然とした消費の仕方に対して、
日本人が「NO」と言っているのだ。

その日経新聞のコラム「大機小機」。
先週の金曜日に、ペンネーム文鳥さんが書いている。

日経は、鳩山政権には辛口で通しているが、
文鳥さんはそうでもない。

「時々刻々と変化する株価や為替の動向は、
政権に対する通信簿ではない」

「市場は誕生したばかりの政権に揺さぶりをかけ、
市場への『忠誠』を求めているのかもしれないが、
新政権は翻弄されてはならない」  

「そもそも市場の声は国民の声を反映しているとは限らない」

ここでいう「市場」とは株式市場のこと。
株式市場の乱高下が、国民の暮らしに大打撃を与えるわけではない。
日本という経済圏において、
貨幣経済と実体経済の関係が、いかにあるかを説明している。

「円高による輸入品の値下がりを多くの国民は歓迎しているし、
家計の金融資産に占める株式の比率も、
日本の場合は7%と米国の同31%の4分の1にも満たない」

「市場が騒ぐほどには円高も株安も、
国民生活には直接影響を与えてはいないのだ」  

この文鳥さんの指摘、私も賛成。

要は、株式市場経済の不振が、
マインドとして一般国民に伝染し、
それが消費不振の原因にもなっている。
マスコミの影響力の大きさと、
その無責任な扇動は、
日本という国を全くもって、
変な方向に導いてしまう。

しかしだからこそ国民もビジネスマンも、
そのマスコミの言葉に踊らされてはいけない。

自分の信念をもとに、
自分で判断できること。  

それが何よりも大切だ。

他人の動向に惑わされ、
他人の判断にゆだねてしまっては、
生きている意味がない。

商売をやっている人、
商売の仕事を担っている人には、
それが強く求められている。

「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」が伸びているのは、
インターネット販売が便利であるという理由からだけではない。
流行だからというだけでもない。

既存の有店舗小売業が同質化して、
新鮮味を喪失しているからだ。

インターネット販売も、
それがもっともっと普及していけば、
顧客は移ろってゆく。

その上、インターネット販売は、
広範なマーケティング展開であるから、
「クリティカルマス」の効用が大きく、早い。
有店舗小売業は、あくまで地域性にのっとっている。
だからこそ有店舗販売には、
局地性や独自性・個性が求められる。

商業界主幹の故倉本長治が、
断言している。  

<『商店経営読本』より>  
「現代小売店の最大の欠陥のひとつは、
どの店も同じような品を並べ、
同じような値段で、
同じような売り方をしていることだ」

倉本長治は、6つの現象をあげている。
「1.どこにでもある品とほとんど同じ。
2.どこでもやっている同じ売り方
3.どこの店に行っても同じような値段
4.どこの店も同じような店づくり
5.その上何をしたらよいかも考えない
6.どうすることが正しいかさえ自覚していない」  

倉本長治は、
ひどく怒っていた。
ひどく悲しんでいた。

「商品にも、経営にも、
まったく個性がないことに気がついていないのである。
この店だけの独自の方針や政策とか商品とかが、
お客からは見えてこないのだ」

自分では「違い」を出していると思っても、
お客にはそれが、くっきりとは見えていない。

40年も前の言葉だが、
現在の状況と酷似している。

「自分では何もしないで助かる路を求めている」

「お客からは見放され、
自分で売りたい商品も手に入らなくなり、
消滅するしかないではないか」

「自分の考えで、
お客が本当に求めている商品とサービスを、
店一杯にしようという努力を放棄してしまえば、
それを『店』と呼ぶことさえも恥ずかしい」  

倉本長治は、なぜか、
怒っていた。
悲しんでいた。

「同質性という欠陥」  
今、私たちが自覚し、
抜け出さねばならないのは、
このことだ。

商人舎4月の標語。
「差異が価値を生む」  

12月商戦後半に向けて、
他との「違い」を出しつつ、
己を貫くことに全力を挙げたい。

<結城義晴>  


2 件のコメント

  • 最近あるネット通販大手の業績発表会に参加する機会がありました。席上 経営最高責任者の方から「eコマース市場は今後10兆円産業になる。(小売業全体の売り上げの現在1%→10%へ成長)」との発言を聞き 私の感想は「少々オーバーかな?」と思ったのですが、楽天の売上を知ると、その言葉も真実味を帯びてきます。
    またその方は「顧客がなぜeコマースで商品を購入するのか?とのアンケート結果の最多の回答が「安いから」と紹介されたのが印象に残りました。

  • いまちゃん、いつもありがとうございます。
    「eコマースが安い」の回答が一番だったという話。
    顧客がそういった印象を持っているということが、
    印象深いですね。

    ネットショッピングは、在庫を持たずに、
    広い品揃えを可能とします。

    だから定価の商品も品揃えできますし、
    バッタ品も探してきて、
    素早くネット上の品揃えに加えることができます。

    だから安いと感じるのか。
    さらに有店舗の不動産費、建築費、人件費などが、
    無店舗販売には必要ないから安いと感じるのか。

    有店舗側の対応も必要でしょう。

    今後は、両者の間に、
    その存在価値の表明合戦が繰り広げられるかもしれません。

    私は、「クリック&モルタル」が一番便利だと思っていますが。

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