結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年04月27日(火曜日)

ヤマダ電機2兆円超えと「商業主義」の本質

商人舎公式ホームページ。
5月7日を期して、マイナー・リニューアルの予定。
連休明けの7日金曜日は[結城義晴のblog毎日更新宣言]1000日記念日。

ちょっとだけご期待ください。

そしてこの日から、もうひとつのブログ画面も、
商人舎ホームページに飛ぶことになります。

こちらも、承知しておいてください。

さて今日は、右段のtodayに3本の新着ブログ。

①立教大学院[結城ゼミ bulletin board」
②中山政男が叱る!! 間違いだらけのPOP!!
③二宮護の「物流業界」の基礎知識  

ご愛読ください。

さて、外食産業の3月の動向。
日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査。
全体の売上高は前年同月比マイナス1.6%。
客数はプラス1.3%、客単価はマイナス2.8%。

フードサービスも、
一時からみると、少しずつ回復してきた。

決算発表の中では、
ヤマダ電機がとうとう2兆円を超えた。  
セブン&アイ・ホールディングス、イオンに次ぐ第3位。

家電小売業の「クリティカル・マス」を突破したら、
その後はとどまるところを知らず。

クリティカル・マスとは、経済の臨界量を示す。
マーケティングの世界では、一般に、
そのカテゴリーの中でシェア17%を超えると、
特別のご利益が与えられ、一挙に社会化する。

電話がそうだったし、ラジオ、テレビ、
携帯電話など、事例は枚挙に暇がない。

かつてコジマが、初めて5000億円を超えたが、
この5000億円ではクリティカル・マスに遠く及ばず、
残念ながらその後、失速した。
ヤマダ電機は、臨界量を突破し、失速を見せない。

そのヤマダ電機の2009年度連結決算は、
年商が前年対比プラス8%の2兆0161億円。
経常利益は57%プラスの1015億円。
純利益は68%プラスの558億円。

好調企業は好調で、
不調企業は不調で。  

その格差が、開き続けている。

もちろんこれはコモディティを中心とした世界のこと。
「ノンコモディティには、クリティカル・マスはない」。
これが私の仮説である。

日経新聞のコラム『一目均衡』。
早稲田大学教授の久保克行さんの近著に触れている。
『コーポレート・ガバナンス』
この本の中で日経225採用銘柄企業を分析。
1992年から2006年までの15年間に、
業績とトップの交代との相関関係はどうだったか。

「2年連続赤字企業」⇒社長交代比率22%。
「3年連続赤字企業」⇒社長交代比率7%。
「赤字でない企業」⇒社長交代比率16%。

久保教授の分析。
「日本では業績と社長交代の関係性は薄く、
業績悪化で交代が起こる仕組みがない」

社長の責任は重い。
そして社長の立場はつらい。

私も小さな会社だが、
かつてその任を担ったし、
今もさらに小さな会社の代表取締役社長だ。

だから社長の心持ちは、よくわかる。

しかし、少なくとも上場企業のトップに関して、
実績と任期に相関関係が薄いことに不思議を感じるのは、
久保教授のみならず。

逆に最近、「赤字でない企業」や好調企業のトップが、
グループ内規約などで退任してしまうという事例が起こっている。

これは極めて、もったいないことだ。

政治の世界も同様だが、
大衆は、若いリーダーの登場を望む場合が多い。
それでも実績も実力もある人物が、
一定の年齢で引退させられるのは、
企業にとってマイナスである。

高齢者といえば、
国際オリンピック委員会のサマランチ会長が亡くなった。
赤字だらけだったオリンピックを、
利益の出る大イベントに変えた立役者。

高齢にもかかわらず、
その地位を守り続けて大往生。

サマランチ会長に対して、「商業主義」という言葉が、
とくに「知識人」と称する人たちの間で盛んに使われる。
ここでは「商業主義」が悪者のように扱われる。

サマランチ会長の業績評価は他の人々に任せるとして、
「商業主義」という言葉自体に、
商業にかかわってきた私は率直に違和感を覚える。

広辞苑で「商業主義」を引くと、
「コマーシャリズムのこと」と出てくる。

さらに「コマーシャリズム」を引くと、
「営利主義、商業主義。営利本位、商売本位」となる。

すなわち
「儲けを出すことを本位にした考え方」が、
「商業主義」となる。  

コマーシャリズムの、「Commerce」も、
「商業」や「通商」のことだから、
日本語だけでなく、英語でも、
なんだか「商業」はみな、
『ベニスの商人』のように捉えられている。

本来、利益を出すことが目的ではないオリンピック。
アマチュアリズムのはずだったオリンピック。
だからそれが営利主義に陥ってはならない。

これはわかる。
しかしそこで「商業」という言葉を当てるのは、
商業を本業とする立場からすると、
勘弁願いたいものだ。

「商業」の本質は、
「利益を出すこと」と、
イコールではないからだ。  

だからだろう。
故倉本長治は、あえて商業者に訴えた。
「損得より先に善悪を考えよう」

イスラム教のコーランにも、
「商人は正しくあれ」とあるらしい。  

「商業は商業主義、すなわち営利主義に陥りやすい」
だからそれを戒めている。

私の掲げる「商業の現代化」は、
まず、この点の払拭から始まらねばならないのだろう。

しかし、考えてみると、
大きな企業になって、
大きな利益を出したら、
まさしく正真正銘の「商業主義」となる。

ウォルマートがそれを体現している。
ウォルマートは21世紀にはいってからの10年間に、
なんと六度も、世界最大の売上高を出している。

逆説的にいえば、ウォルマートは、
「商業主義の権化」のような商業である。

しかしウォルマートもヤマダ電機も、
言葉通りの商業主義を貫徹したからこそ、
「損得より善悪を優先する」でなければならない。
いや「損得より善悪」であることを貫徹したからこそ、
「商業主義」を体現したことを証明しなければならない。

これは、産業全体の問題意識でなければならないと思う。

<結城義晴>


1 件のコメント

  • オリンピックの出場資格は昔は「アマチュア」と限定されていた。
    百貨辞典でアマチュアの規定は「イギリスで始まったとされる。中略・1839年の「ヘンリー・レガッタ組織委員会」の規定で、その中では出場者を大学・パブリックスクール・陸海軍士官・アマチュアクラブに限定していた。ブルジョアジーによる労働者階級の排除を目的とするものである。」
    それが長くオリンピックに出場規定にも摘要されてきた。
    しかし 「スポーツを長い歴史の中で貴族から庶民が手にすることが出来たのは、最近のことであることがわかる。」

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