結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年02月22日(金曜日)

ソーシャルメディア販促「売上げに結びつかず」と業態別1月販売統計

ウォルマートの2012年度第4四半期の決算が発表された。
2012年11月から13年1月末まで。

売上高は1279億ドル。
1ドル100円換算で計算すると、12兆7900億円。
前年同期比3.9%増。

純利益は56億600万ドル、5660億円、
こちらは8.6%のプラス。

米国のスーパーセンター等は、
既存店売上高が1.0%増。
サムズクラブは2.3%増。
海外部門が6.9%増の379億5000万ドル。
海外が稼いだ。

ウォルマートの年間決算は、
1月末日だから、
この後2012年度の全体像が明らかになる。
そして決算が終った直後の「2月は悲惨」の実態も見えてくる。

さて日経BP社の調査。
「第2回ソーシャル活用売上ランキング」。

企業やブランドが、
どれだけソーシャルメディアを活用したか、
そしてそれがどれだけ実際に消費行動につながったか、
その成果の度合いを調査し分析した。

2013年1月8~22日に実施。
ファン数や投稿数、
2万9003人から得たアンケート結果を基に分析。

総合第1位は、ローソン。
第2位はスターバックス、
第3位がユニクロ。
第4位が無印良品、
第5位がケンタッキーフライドチキン。

なるほどと思わせるブランドが並ぶ。

トップのローソンは、
ツイッターを活用して新商品をヒットさせた。
店内調理品「からあげクン」の新商品発売時に、
ファンからの投稿を求めるキャンペーンを実施し、
ファンの友人らに効果的に情報を広めた。

しかしこの調査、意外な実態を示している。
「ソーシャルメディアでの販促活動は
売上げに結びつけにくい」

ソーシャルメディア上で企業の情報に接触した人のうち、
「購入・利用 した」と答えた人の割合は12.6%にとどまった。
これは前回に比べ4ポイント低下。

ソーシャルメディアのファンが飛躍的に拡大される。
しかしそれは相対的に商品購入者の割合を下げている。

実に興味深い分析だ。
もちろんソーシャルメディアのファンの増加は、
商品購入増加に結びつく。

しかしソーシャルメディア・ファンの増加に、
商品購買は当然ながら比例しないし、割合は減る。

これはもっともっと実証すべき課題だし、
忘れてはならないテーゼだ。

さて今日の本題は、
各業態の1月販売月報のまとめ。

まずはいつも通り、百貨店から。
『全国百貨店売上高概況』
総売上高は5472億3203万円で
既存店前年同月比はプラス0.2%。
2カ月ぶりのプラス。

今年1月は全国的に気温の低下が著しく、
連休などに大雪が重なった。
そのため、客数は減少したと回答した企業が多数。

それでも、初売りや福袋、
冬物セールなどが堅調に推移した結果、
昨対プラスとなった。

地区別では、
大阪プラス3.3%、
神戸プラス5.3%、
広島プラス3.4%、
福岡プラス1.4%と、
西日本が非常に好調

商品別では、
美術・宝飾・貴金属がプラス6.8%、
身のまわり品プラス3.6%、
化粧品プラス1.2%などが、
今月も引き続き好調。

景気回復への期待感が高まり、
消費マインドが好転していることが
要因として考えられる。

ただし、外国人客は減少。
売上高はマイナス2.8%、
客数マイナス10.1%。
昨年は1月だった中国の春節が
今年は2月にずれたため、
数字の上では影響が大きかった。

次は、『コンビニエンスストア統計調査月報』
日本フランチャイズチェーン協会発表。

既存店ベースの売上高は、
6534億2500万円。
前年同月比マイナス0.9%。
8カ月連続のマイナス。

逆に全店ベースでみると、
売上高7180億2900万円のプラス4.1%。
こちらは16カ月、プラスが続いている。

コンビニでも客数減が顕著。
既存店前年同月比はマイナス1.9%。
気温の影響、たばこ購入者の減少が要因。

客単価は617.3円でプラス1.0%。

商品別構成比は
日配食品が33.2%、
加工食品が27.3%、
非食品が34.1%、
サービスが5.4%。

客数が減っても売れるものは売れる。
寒い季節はカウンター商材の動きがよくなる。

日本チェーンストア協会からは
『チェーンストア販売統計(月報)』
総販売額は1兆0688億2318万円。
既存店前年同月比マイナス4.7%。
11カ月連続でマイナス。

前月比はなんとマイナス15.6%と、ふるわず。

部門別では
食料品が6455億5112万円でマイナス3.8%、
衣料品は1223億2403万円でマイナス11.0%、
住関品は2242億5341万円のマイナス4.7%。
どの部門も1月は厳しい結果となったが、
衣料品は二桁のダウン。

そして、『スーパーマーケット販売統計調査』
三協会合同発表。
日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会。

今月の発表は、増井徳太郎さん。
新日本スーパーマーケット協会副会長。
20130222220139.jpg
「今月はあまり、
声を大にして発表できる結果ではなかった。
総売上高は7972億1350万円で、
既存店前年同月比はマイナス1.7%。
11カ月連続でマイナスだった」

「食品合計は6888億3092万円でマイナス1.5%、
生鮮3部門合計は2636億1006万円でマイナス1.4%。
青果プラス0.4%で、1046億5061万円、
今月唯一のプラス。
水産は752億4375万円のマイナス3.7%、
畜産が837億1569万円でマイナス1.7%。
惣菜が721億1094万円、マイナス1.3%、
日配は1442億5684万円、マイナス1.6%、
一般食品が2088億5308万円、マイナス1.6%、
非食品が746億0440万円でマイナス3.9%、
最後にその他337億7814万円でマイナス1.7%」

「1月のポイントは初売り、成人の日、受験。
初売りは二極化傾向が見られた。
低価格化が進む一方で、プレミアム商品も売れた」

「成人の日は、
自治体によって式が執り行われる日が異なるため、
ピークが分散した。
また、最近の傾向として、成人の日は
内食よりも外食が多くみられるようになっている」

「受験に関しては、
『合格祈願』パッケージの企画が定番化していて、
これが売れている」

「野菜の相場高は他部門へ影響している。
惣菜部門ではサラダが好調となり、
日配では漬物や野菜飲料が売れた。
一般食品でも乾燥野菜などが好調」

「アベノミクスがガソリン価格上昇に反映している。
ガソリンの値段が上がると、
まとめ買いとワン・ストップ・ショッピングが増える。

つまり、大型店への集客力が上がっている」

今月のゲストスピーカーは
㈱信濃屋食品の代表取締役社長の長井邦雄さん。
20130222220155.jpg
信濃屋食品の売上構成は、
酒が50%、食品が50%。
本社が世田谷にあるという土地柄、
顧客は富裕層が多い。
「ハイ・クオリティ・スペシャルティストア」を目指す。

「輸入ワインの売上げは前年比10%アップ。
コンサルティング・セールスを特徴としている。
ワインソムリエ、ワインアドバイザー、利き酒師などが、
各店にいて、毎月勉強会を行っている。
ワインセラーは全店に設置している」

「コンセプトは“ワインと食とのマリアージュ”。
ワインと食の関連販売を強化している。
これが大変好評。
関連販売がけん引となり、
客単価を2割近くアップさせている」

総合スーパーも百貨店も、
食品スーパーマーケットもコンビニも、
全体として、食品の売上げがいいとは言えない。

しかし信濃屋の「ワインと食のマリアージュ」は好調。

さらに信濃屋の新しい提案。
「3月末に旗艦店の『ワイン館』と、
ワイントランクルームの『寺田倉庫』がコラボレーションし、
個人向けのワインセラーを開設する。
新しい生活の提案で、
シナジー効果を期待している」

考えてみるとこれは、
顧客のニーズに対応して出てきた発想ではない。
POSデータをいかに徹底的に分析しても、
「個人ワインセラー」の発想が生まれるわけでもない。

顧客は信濃屋の提案に、
「あー、そうだ」と気づいて、
それに呼応する。

ピーター・ドラッカーの言葉。
「顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人である。
したがって顧客に聞き、顧客を見、顧客の行動を理解して初めて、
顧客とは誰であり、彼らが何を行い、いかに買い、いかに使い、
何を期待し、何に価値を見出しているかを知ることができる」

しかしドラッカーはこんなこともいう。
「もっとも重要な情報は、顧客ではなく、
非顧客(ノンカスタマー)についてのものである」

「ワインと食のマリアージュ」はだれにでも想像できるものだ。
だからそこではワインソムリエ、ワインアドバイザー、利き酒師が、
さらに勉強を重ねて、他にマネのできないプロとなる。
しかし「個人ワインセラー」はごく一部の現象であるし、
まさにノンカスタマーの情報だ。

顧客の期待と求める価値に向かって、
大胆にチャレンジする姿勢が必要だ。

信濃屋の挑戦を見ていて、
そんなことを感じるものだ。

ではみなさん、良い週末を。

〈結城義晴〉


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2013年2月
« 1月 3月 »
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
2425262728 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.