結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年09月14日(土曜日)

小森勝さんを悼む――「生涯を貫く仕事をもつこと」

人間としての商人が、
世の人々のしあわせに
合致する営みに徹し、
そのしあわせが今日のみでなく
明日のしあわせの建設にも
通じるような精進努力に
必死の心掛けを持つのを
商魂
という。

〈倉本長治『考える商人』〉

商人は人間だ。
人々のしあわせのために働く。
今日のみでなく明日のしあわせ。
その建設に精進努力する。
この必死の心掛け。
それが商いの魂。

まだ私が20代の後半のころ、
だからもう35年も前のこと。
「横浜会」という勉強会があった。

小売流通業の若手ジャーナリスト、
若手コンサルタント、
若手実務家が集って、
1カ月に1回、
横浜で研究会を開く。
そして、一献傾ける。

私はここで、
小森勝さんに出会った。

参加者は当時、
イトーヨーカ堂RE部の鈴木哲男さん、
西友営業企画部の藍野弘一さん、
『チェーンストアエイジ』の鈴木悟さん、
『ストアーズレポート』の風間晃さんなどなど。

鈴木さんは現在、コンサルタントになって、
「52週マーチャンダイジング」の大家。

藍野さんは、ファミリーマート、ミニストップ、
それから日産自動車などで活躍。

鈴木さんはダイヤモンドフリードマン社常務から、
湖池屋の取締役へ。

風間さんはストアーズ編集局長になって、
2012年の5月に60歳で早世。

その中で小森さんは一貫して、
コンビニエンスストアの専門コンサルタント。
フィールドマーケティングセンター代表取締役。

横浜駅南口にある「味楽」というおでん屋が、
私たちの根城だった。

当時の私は『販売革新』編集記者。

ずいぶん生意気なことを口走っていたと思う。
恥ずかしいかぎりだが、若気の至り。
互いに許し合っていた。

小森さんは最近、会うたびに言っていた。
「結城さんはあのころから、
社長になる! と大言していた」

その後、私は『食品商業』編集部に異動し、
さらに1989年、編集長になった。

私はこのメディアを、
「スーパーマーケットとコンビニの雑誌」と、
明確にポジショニングし、
強力にリードした。

小森さんには、
欠かすことなく毎月のように、
執筆してもらった。

別冊号『コンビニエンスストアのすべて』では、
主力筆者として何本も、
レポートや評論記事を書いてもらった。

1998年8月、季刊『コンビニ』創刊、
さらに2002年8月、『コンビニ』月刊化。

この時も、小森さんの存在抜きには、
月刊化は考えられなかった。

株式会社商業界は、
1948年9月に月刊『商業界』を発刊。

1963年4月、『販売革新』、
1972年8月、『食品商業』、
1975年1月、『飲食店経営』、
そして1976年1月、『ファッション販売』。
つぎつぎに経営専門誌を創刊していった。

小森さんに尽力いただいた『コンビニ』は、
20年ぶりの新メディア創設だった。

その後、2003年、
私は株式会社商業界の社長になった。

さらに株式会社商人舎を興し、
2013年4月の月刊『商人舎』創刊。
私にとって、『コンビニ』以来の大仕事だったが、
この時、小森さんは前立腺癌に侵されていた。

7年間の闘病生活。

今回は雑誌を、
お手伝いしていただくわけにはいかなかった。
しかしこの間、2009年には、
立教大学大学院F&Bマーケティング講座の、
ゲスト講師にお招きした。

私はビジネスデザイン研究科の教授に、
就任していた。

2010年、2012年、3年続けて、
小森さんご自身の母校・立教大学で、
講義をお願いした。
20130915050909.jpg
これが小森さんとご一緒した、
最後の仕事になった。

その小森勝さんの告別式。
20130914150853.jpg

横浜の京急メモリアル金沢文庫斎場。
20130914150807.jpg

しめやかに執り行われた。
20130914150905.jpg
お名前は聞き洩らしたが、
サッポロビールの方から声をかけられた。
私のブログを見て、小森さんの訃報を知り、
告別式に駆けつけてくれたという。

心から感謝したい。

出棺の時。
20130914150918.jpg

私は棺を持たせてもらった。
20130914150930.jpg

小森さんの棺、
重かった。
20130914150951.jpg

そして出棺。
20130914151005.jpg

しずかに合掌して見送った。
20130914151030.jpg

小森さんは、大学を出ると、
セブン-イレブン・ジャパンに就職した。
根っからの商人だった。

今日のみでなく明日のしあわせに、
その建設に精進努力する商人だった。

その後、コンサルタントに転身、
しかし商いの魂を持ち続けていた。

小森さんは最後の闘病の時にも、
家族に「仕事に復帰する」と言い続けた。

いつでも、その仕事は、
小森さんを待っていた。

棺を見送ると私は、
浅香健一さん、鈴木國朗さんと、
蕎麦屋に入った。

壁に、額が掛けられていた。
20130914151046.jpg
世の中で一番
楽しく立派なことは
生涯を貫く仕事を
持つことである。

〈福沢諭吉・こころのいましめ〉

決して上手くはない店主の書の言葉が、
妙に胸にしみた。

黙祷して、合掌。

〈結城義晴〉


2 件のコメント

  • はじめまして
    小森勝の姪にあたるものです。
    私の母が勝叔父さんの姉になります。

    現在母も私も札幌に在住しておりますが
    母も、幌別という町に住む叔母も高齢のため横浜での葬儀に参列できませんでした。

    何か叔父の軌跡がわかるものがあれば母に見せてあげたいと
    思い検索してこちらのブログに辿り着きました。
    ご多忙の中、叔父の葬儀にご参列いただきありがとうございました。

    こちらのブログで何年も会っていない叔父の画像を見ることができ
    母も喜んでおりました。

    棺を持っていただいた結城さんの正面におりますのが福井に住む私の兄です。

    6人兄弟の末っ子で母と一回りも違う叔父が先に逝ってしまった事
    もう4人が逝ってしまった事
    叔父のように病や不慮の事故であまりにも早く逝ってしまった兄弟達
    気落ちしている母にとってこちらのブログで叔父の生前の元気な姿を
    見ることができ、また活躍を知ることが出来ました。

    一言お礼申し上げたくメールさせていただきました。
    ありがとうございます。

    今後も結城様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。

    夜分に失礼いたしました。

  • あべあゆみ様
    ご投稿感謝します。

    このたびはご愁傷様でした。

    私たちは小森さんから、
    ずいぶんと多くのご指導をいただきました。
    ただただそれに感謝しつつ、
    ご冥福を祈りたいと思っています。

    合掌。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.