結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2014年05月10日(土曜日)

渋沢栄一「能く集め能く散ぜよ」と倉本長治「二つの社会的活動」

立夏から小満へ。
「立夏」は「夏が立つ」ころ。
そして「小満」は、
「万物が次第に成長して、
一定の大きさに達して来るころ」。
20140511020213.jpg
いい季節です。

しかし私、微熱がある。

その昔は「微熱少年」と、
鈴木茂を気取っていたが、
今は「微熱熟年」
あまり、冴えた表現とは言えない。

しかし、疲れが、
溜まりに溜まって、
一日中、眠っていた。

いい季節に、
床の中。

それもいい。

明日は、母の日。

どうやって、
母を喜ばそうか。

さて日経新聞最終面『私の履歴書』。
今月はトム・ワトソン。
アメリカのプロゴルファー。
ジャック・ニクラウスの次の存在。
「新帝王」と呼ばれた。

そのトム・ワトソンの、
スイング開眼の瞬間。

1975年、25歳で、
全英オープンを制覇、
賞金ランキングでも7位。

帝王ジャック・ニクラウスを脅かす、
「ヤング・ライオン」の一人になった。

しかし、スイングは、
完成されていなかった。
だからスランプ。

76年12月初旬、
「日米対抗」に出場。

兵庫県播磨カントリークラブ。

「練習ラウンドでもプロアマ大会でも、
一向に改善の兆しは見られず、
ボールは左に曲がり続けた」
これはプロとして悲惨。

「極端なフックボールでOBを連発した後、
プロアマの最終ホールで
放ったドライバーショットは
またも左に大きくそれていった」

第2打地点。

「ここで私は開き直った。
思い切って、それまでの打ち方を
変えることを決めたのである」

「具体的には9番アイアンを手にして、
バックスイングを真っすぐに引くよう試みた。
言い換えれば、クラブフェースがずっと
ボールと向き合うようにしたのだ」

ゴルフ用語の「シャットフェース」。
「閉じた顔」。

ここで、意外にも、
完璧な打球を放つ。

「試合後、練習場に向かい、
同じ打ち方でドライバーショットを確かめてみた」

「打球はすべて思い通りに
真っすぐの軌道を描き、
私はこの大会の個人戦で
優勝することができ た」

日本でのスイング開眼。

シャットフェースなのに、
まっすぐな打球。

開いたフェースからは、
フックボール。

トム・ワトソンの誤解と錯覚は、
ここにあった。

ジュニア時代から天才と認められ、
名門スタンフォード大学のゴルフ部で活躍し、
期待されてプロとなったトム・ワトソン。
「完璧なスイング」を求め続けてきた。

その求道者のようなトムが、
日本での開眼。

実に面白い瞬間だった。

失敗のどん底で、
自分で開き直り、
自分で体験し、
自分で納得しなければ、
開眼はない。

私も最近、自分のゴルフ人生で、
ずっと誤解し、錯覚していたことの間違いに、
気づかされた。

それも「開くことと閉じること」の錯覚。
私の場合は、違う部分での開くことと閉じることだが。

実に面白い。

さてこれも日経新聞巻頭コラム『春秋』。
「日本資本主義の父」といわれる渋沢栄一。
1890年、帝国ホテルを創設した。
しかし、当初、業績低迷。

そこで二つの施策を講じる。

第一が「有能な支配人のスカウト」。
第二が「新館建設の長丁場の用地交渉」。
ヒュマンウェアとハードウェア。

渋沢の著書『論語と算盤』。
今も角川ソフィア文庫で読むことができる。

「能く集め能く散ぜよ」。
「能く」は「よく」と読む。

その意味は、
「世の中から集めたお金を、
企業の活動が活発になって
社会に元気が出てくるように使え」。

『論語と算盤』の冒頭にある。
「大なる欲望をもって
利殖(利益)を図ることに
充分でないものは、
決して(前に)進むものではない」

これを中内功さんだったと思うが、
「稼ぐは技術、使うは芸術」と言った。
中内さんはもちろんダイエー創業者。

緒方知行さんが好きな言葉で、
私もいつも頭の中に入れている。

商業界主幹の倉本長治先生は、
「公正で公平な社会的活動を行え」と説く。

私は『お客様のためにいちばん大切なこと』で、
倉本の「社会的活動」には、
二つの意味があると書いた。
第1は、自分の本業の仕事。
第2は、ボランティア活動。

本業では「能く集める」。
つまり「稼ぐ」。

ボランティアは「能く散ぜよ」。
すなわち「使う」。

私はここに「二つの法則」を認める。
第1の社会貢献では、
「小さな経費で大きな収益」を目指す。

一方、第2の社会貢献は、
「大きな努力で小さな成果」に満足する。
場合によっては成果すら求めない。

社会貢献も大きな方がいいだろうが、
こちらは地味な地味な成果を求め、
その成果を誇示してはならない。

最近の小売業では、
イオンの「木を植えよう」がよく知られるが、
イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんも、
ヤオコー会長の川野幸夫さんも、
そしてトップを支える数多の商人たちが、
「能く集め能く散ぜよ」を実践する。

渋沢栄一、倉本長治。
中内功、伊藤雅俊、
そして川野幸夫。

能く集め能く散ぜよ。
公正で公平な社会的活動を行え。
稼ぐは技術、使うは芸術。

「小さな経費で大きな収益」と、
「大きな努力で小さな成果」。

微熱の頭で考えた。

〈結城義晴〉


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