結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年05月13日(水曜日)

アホールド&デレーズ統合と「規模の経済」のメリット・デメリット

商人舎magazineのDaily商人舎。
ワールドニュースは、
またまた巨大小売業の経営統合の話。
オランダのアホールドと、
ベルギーのデレーズ。

どちらもスーパーマーケット企業で、
アメリカに基盤を置く。

セーフウェイとアルバートソンに続いて、
アホールドとデレーズ。

何処まで行くのだろう。

私は今、ラスベガス。

昨日の夕方の16時、
成田空港を発った。
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私だけユナイテッド航空。
団員はデルタ航空。

だからラスベガスまで、
今回は、一人旅。

その出発の直前に、
私のアドレスにメールが入った。
発信人は、池田信太朗さん、
日経ビジネスオンライン編集長。

タイトルは、
「月刊 日経ビジネスオンラインメール」
いわゆる宣伝。

「一般に、小売業では、
『大きくなればなるほど、
購買力(バイイング・パワー)が
増して強くなれる』と言われます」

これは小売業に限らない。
製造業も卸売業も、
『規模の経済』のメリットは確かにある。

このあとのたとえ話が、
悪いけれど稚拙。
「リンゴを10個しか仕入れられない商店と、
5000個仕入れるスーパーとでは、
後者の方が発言力が増すのは道理です」

「発言力」という言葉を使って慎重だが、
規模の優位性を盾にして、
原価を引き下げれば、
優越的地位の乱用となる。

アメリカのロビンソンパットマン法では、
それを厳しく禁じているし、
日本の独占禁止法も、
それを取り締まっている。

「前者が80円で仕入れて
100円で売るとすれば、
後者は75円で仕入れて
95円で売れるかもしれません」

量を扱うことの過程で、
様々なコストダウンが可能になる。
それが規模のメリットだ。

これは産業の歴史が教えてくれている。

しかし故田島義博先生は言い切った。
「成長と膨張は異なる」
規模のデメリットもあるということだ。

池田さんも自分で書いている。
「現実はそれほど単純ではありません。
地方スーパーを取材していると、
売上高営業利益率が5%近くある
優良な会社に出会います。
その大半が、売上高が
500億円未満の会社です」

沖縄のサンエーは、
営業収益1646億円で営業利益率8.3%。
500億円未満ではない。

沖縄で圧倒的なシェアを誇る。
沖縄の範囲の経済の中で、
「規模の論理」のメリットを享受している。

「規模はいつか果実をもたらす――」
池田さんが指摘するイオンのことです。

「今はまだ『規模の経済』が利かなくても、
もっと巨大になれば、
いつか直接取引などを拡大して
NBの売価をさらに
引き下げることができるようになる。
いつかPBのシェアが拡大して、
さらに利益を出すことができるようになる」
これがイオンの考えだと断じる。

そして言う。
「巨大化が進んだにも関わらず、
その『いつか』が訪れないことが、
イオンの苦境の本質だと思います」

もし、イオンがその「いつか」を、
心待ちにするだけの企業ならば、
「いつか」は訪れない。

「売上高500億円の会社が
10社それぞれ動くよりも、
売上高5000億円の1社になった方が強い。
それがイオンの信条だったはずです」

アメリカではクローガーもセーフウェイも、
合併と統合で成長してきた。

このトップ2社の趨勢を見ると、
「いい統合」と「悪い統合」があることがわかる。
そしていま、アホールドとデレーズも、
統合に向かった。

ホールフーズマーケットも、
スプラウツファーマーズマーケットも、
吸収合併で規模を獲得し、
絶好調の好循環企業となっている。

イオンが「信条」を翻すとは思えない。

池田さんの見方。
「そこから脱して、むしろ
『500億円の10社に戻った方が強い』」

そんな「意思を感じる動き」を
イオンが見せつつあるという。

そうだろうか。
私はこの見方に反対だ。

アメリカに出発する直前のメールだっただけに、
様々なことを考えながら、
8時間のフライト。
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半分ほどは熟睡して、
あっという間に、西海岸。DSCN2701-5

翼よあれがアメリカだ。
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そしてサンフランシスコ国際空港。
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すぐに乗り換えて、ベイエリア上空。
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シエラネバダ山脈は、
ロッキー山脈よりも高い。
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この雪を抱いた山脈を超えれば、
ラスベガス渓谷。
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ストリップのホテル群。
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そして到着。
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「唇の芸術」?
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シアトル経由でやってきた団員と合流して、
すぐにウォルマートスーパーセンターへ。
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一丁目一番地は、
「メモリアルデー」。
5月最終月曜日の戦没将兵追悼記念日。
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店中に星条旗。

生鮮と惣菜売場はますます良くなっている。
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サービスデリとベーカリーのあたりの、
売場の匂いが随分変わってきた。
「感じの良い匂い」。
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カットフルーツも格段に増えた。
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そして新しい売場。
グロサリーゴンドラエンドのバルク菓子。
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非食品も充実。
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ウォルマートの第2のフォーマット、
「サムズ・クラブ」。
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こちらもコストコをベンチマークして、
急激に改革が進む。
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ホットドック&ドリンクは、
やっと1ドル50セントになった。
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これまでは1ドル70セント。
コストコの同商品の1ドル50セントに、
価格合わせすらできなかった。
それができるようになった。

ウォルマートのトップたちは言っている。
「我々は最大の企業になろうとは考えていない。
地域の1店1店を最良の店にしようとしている」

「大きな企業のように振舞わなかったから、
大きな企業になってきたのだと思う」

このアローヨ地区には、
ホームデポ、ベストバイ、
TJXのマーシャルズ、ロス、
ベッド&バス・ビヨンドなど、
名だたるチェーンストアが軒を連ねる。

典型的なパワーセンター。
そのウォルマートの前で写真。
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気合を入れていこう。
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その後、ホテルに到着すると、
休む間もなく第1回セミナー。
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フライト中に眠っていない団員も多いけれど、
講義中、誰も眠ったりしないし、
私も絶対に眠らせない。
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それでも肝心なCEとESをしっかり語って、
初日の講義は終わり。
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その後、班分け。
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他の企業の社員と協力して、
調査し、協議し、分析し、まとめる。
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初対面ばかり。
それがいい。
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そして最後はディナー。
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ブラジル料理のPAMPAS。DSCN2852ー5

乾杯の音頭は、
㈱ヨシヅヤの村井清人さん。
一般事業本部本部長。
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そして乾杯。
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いよいよ始まった。

選択と集中を繰り返しながら、
企業規模を大きくしていく。
もちろん顧客満足と従業員満足を、
どちらも充足させながら。

規模が大きくなっても、
それができない場合に、
「膨張」となる。

アメリカを学ぶときにも、
それを忘れてはならない。
(つづきます)

〈結城義晴〉


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