結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年07月21日(日曜日)

ビートたけしの「猿回しの”猿”芸人論」と「嘘が自由を奪う」

令和最初の国政選挙。
第25回参議院議員選挙。

与党圧勝。
野党惨敗。

「勝利とは、
自ら勝ち取るものではない。
相手に恵んでもらうものである」
(塩野七生著「ローマ人の物語」より)
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時事通信調査では、
投票率は48.11%程度という推定。

期日前投票は、
参議院選では過去最多だった。
1706万2771人に上った。
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しかし戦後2度目の50%割れ。
1995年参院選の44.52%に次ぐ低さ。
村山富市内閣のときだ。

あの時と同じように、
だから組織票の公明党が勝利した。

投票率の低調ぶりは、
国民の敗北ということになる。

ああ。

一方、吉本劇場。
宮迫博之と田村亮の謝罪会見。
吉本興業の芸人の「闇営業」問題。

ビートたけしの発言。
TBSの番組。
「新・情報7daysニュースキャスター」

秀逸の「芸人論」。
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「猿回しと同じで、
おれらは猿なんだ。
芸人だから」

「“女衒”というかね。
“人買い”なんだよ、
事務所は、要するに。
でね、猿は猿回しが使っている。
その猿が人を噛んだからといったって、
猿に謝れって言ったってダメなの。
飼っているやつが謝るの」

猿回しは吉本の岡本昭彦社長。
猿が宮迫や亮だ。

「それで、芸人がリスクを負って、
こういう姿を見せれば、
あん時の、
涙を流して記者会見したやつの芸を
誰が見て笑うんだよってなる」

「これはやらせたくないんだよ。
これをやってくれるなって思うわけ」

たけしは本当に悲しそうだ。
私も同感だ。

あれは見たくなかった。

「芸事っていうのは、
人を笑わせるっていうことは、
そういうことを全部忘れて、
明るく、くだらねえなぁって
いうことが芸なんだから」

これはたけしの矜持。

「それを、
やってしまわないといけないようにした、
事務所がおかしいって」

吉本興業はもう、
毒のない芸能の提供者となる。
毒のない芸ほど面白くないものはない。

「何回も言うけど、
お笑いにとってこんな恥ずかしい姿、
見せて欲しくないのよ」

「おれはもう逆にケガしても何しても
出ていったけど」

「”ほら、こんな醜い姿が見たいんだろ、
見してやらあ”って
腹を決めて出ていったけど」

「これは腹決めてないじゃない、
かわいそうだよ、
こんなことさせたら」

ビートたけし独特の芸人の在り方。

「本当のことを言うと、
お笑い芸人に社会性とか
すごい安定したことを望む社会が
ちょっと変だよ」

「おれらはそれが嫌で
やっているんだから」

「だから、品行方正さを
漫才芸人に求めちゃだめ」

横山やすしがそれだった。

「じゃあ品行方正なタレントが
いいのかって言ったら、
“最近つまんねえ”って
平気で言うんだから、
見ているやつは」

「片一方で
立派な社会人を求めているくせに、
芸に対しては危険度がなくなった、
つまんねえ、なんて平気で言うんだから。
どっちなんだよ一体って」

「おれらは
綱渡りをしていかなきゃいけないから、
大変なんだって――」

たけしは厳しい。
芸人であることに。

「社畜」は安土敏さんの造語だが、
今回、宮迫らはそれを求められた。

猿回しの猿の芸人が、
社畜となるのは、
もっとみじめだし、
悲しいことだ。

今日も「ほぼ日」の糸井重里。
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「嘘をつきとおすことは、
ほんとうにむつかしい」

「いや、ひょっとしたら
嘘をつきとおすことなど、
簡単だと思っている人も
いるかもしれないけれど、
ぼくは、人間には
むつかしいものだと考えている」

糸井流に言えば「名作古典の領域」の理由。

「ひとつ嘘をつくと、
その嘘をほんとうに見せるために、
また別の嘘をつかなくてはならなくなる。
そして、後からついた嘘を、
またごまかすために
別の新しい嘘をつかないといけなくなる。
やがて、いくつもの嘘が絡まりあって、
どうやって嘘がばれないようにするか
ということばかり考えているような生き方を
強いられてしまうようになる。」

この古典的ロジックに対して、
糸井のレトリック。

「倫理としてではなく、
ぼくなりのまとめ方をするならば、
嘘をつくことは、
じぶんの”自由”を失わせるということだ」

宮迫も亮も、
自由を奪われていた。

「じぶんの損得や、
気の弱さやらでつく嘘もある。
人を陥れようとつく嘘もあるし、
武器としての嘘もある。
そして、緊急避難的に、
つかざるを得ない嘘だってある」

「できそうもないことだけれど、
一切の嘘を禁じられたら、
人間社会は崩壊してしまうかもしれない」

「人の生きている場は、どんな時代でも、
“ホントと嘘とどちらでもないもの”で
できているから」

「嘘をついてしまったり、
結果的に嘘になるようなことをしてしまうと
そのせいで、どうしたって、
自由が小さくなる」

「どこで、どんなふうに嘘をついたのかを、
あきらかにして謝ると、
罰を受けるかもしれないけれど、
嘘をついて失っていた自由は取り戻せる」

宮迫も亮も自由を取り戻した。

「嘘をつかないことでの
めんどくささは
自由へのコストだ」

「それは、ずいぶん高いんだけど、
払ったほうがいい」

宮迫も亮も、
契約解除よりも、
自由を選んだ。

しかし、たけしに言わせれば、
芸人としての矜持を失った。

糸井。
「倫理として語られることを、
そうでなく説明できたらなぁ」

素晴らしい。

芸人を倫理で語ってはいけない。
しかし政治家は倫理で測らねばならない。

その倫理がますます薄れたのが、
不気味な令和初の国政選挙だった。

〈結城義晴〉


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