結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年04月20日(土曜日)

合併における「求心力の自力本願型と遠心力の他力本願型」

結城義晴の毎日更新宣言ブログに、
毎日投稿してくださる。

吉本一夫さん。

USMHにいなげやが加わるブログに対して、
コメントしてくれた。

「求心力で成長する自力本願型と、
遠心力で成長する他力活用型。
その違いがどこで生まれるのか不思議です」

「ビジョン実現のためにどちらが
より確度が高いかという単に選択肢の問題なのか、
或いは創業時からのDNAの問題なのか。
そこがよくわかっていないと、
M&Aの失敗につながる気がしています」

素晴らしいご指摘。

「求心力の自力本願型と
遠心力の他力本願型」

M&Aは経営者の意思決定によって実行される。
したがってトップマネジメントが、
もともと独立独歩型なのか、
仲間とともに歩む共同型なのか。
それが基調になる。

しかし業界や業態の競争環境が、
影響を与えている場合も多い。

小売業は有店舗事業です。
有店舗事業は一に立地、二に立地、
三四がなくて五に立地などと言われる。

つまり立地争いとなる。
先にいい立地を抑えられたら、
あとから出て行っても商売はしにくい。

それから商勢圏も早い者勝ちです。
あるエリアにドミナントを築いてしまえば、
あとからそれを食い破るには、
大変なエネルギーが必要となる。

そこですでにある店、
すでにあるドミナントを、
買収、あるいは経営統合することになる。

小売業のM&Aの特徴。

チェーンストアとなった小売業は、
経営統合こそ成長の早道なのだ。

日経新聞の今月の「私の履歴書」は、
日本製鉄名誉会長の三村明夫さん。

製鉄業でも八幡製鉄と富士製鉄が、
1970年に合併して新日本製鉄となり、
さらに2012年に住友金属工業と統合して、
日本製鉄が生まれる。

店舗事業でなくとも、
企業の巨大化と競争状況によって、
M&Aは起きてくる。

こちらは産業の中で、
トップか、2位、3位かが、
営業上も経営上も意味を持つことが根拠となる。

私の言う寡占や鼎占、複占。

都市銀行はメガバンク三行となり、
製鉄は日本製鉄、JFEHD、神戸製鋼所、
そのあとを日立のプロテリアルが追う。

食品では食肉製造業が、
日本ハム、伊藤ハム米久HDが2強で、
そのあとにプリマハム 、スターゼンが続く。

ビール業界はずっと、
アサヒ、キリン、サッポロとサントリーの寡占だ。

産業が成熟してくると、
規模のメリットが追求されて、
どうしても上位集中となる。

日経新聞の「イブニングスクープ」
「セブン、本部主導で値引き推奨」
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セブン-イレブン・ジャパンが、
5月から「値引き」を始める。

かつての鉄則が変わっていく。

システムによって商品の販売期限を店に知らせる。
仕様を統一した値引きシールを用意して、
本部主導で値引きを推奨する。

対象商品はおにぎりやサンドイッチ、弁当など。
約300品となる。

廃棄する数時間前に値下げシールを貼る。
ネーミングは「エコだ値」。
20円、30円、50円、100円の4種類の値引き。
パーセントではない。

各店の手書きするタイプも用意する。

値引きは最終的には加盟店の判断になる。

昨2023年に実験をした。
直営とフランチャイズチェーンの約220店。

店舗の廃棄額は1割程度減り、
店舗の1日当たり売上高は増えた。

現在は廃棄商品の原価の15%は本部負担だ。
廃棄が減れば本部の収益も底上げされる。
もちろん加盟店の利益も上がる。

セブンはながらく「値引き」や「見切り」を、
禁止してきた。

しかし現状は、
全体の約3割が恒常的に値引きする。

公正取引委員会が2020年に見解を示した。
本部による加盟店の値引き制限が、
独占禁止法違反に当たる可能性がある。

それが大きく変わって、
セブンは本部推奨となる。

他はまだ加盟店の判断で行う。

コンビニ産業も典型的な鼎占である。
セブン、ファミリーマート、ローソン。

そしてファミリーマートとローソンは、
積極合併の他力本願型で、
国内セブンは自力本願型だ。

『岡田卓也の十章』という本。
私が商業界社長を辞するときに、
残してきた本だ。
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その第六章のタイトルは、
「企業の成長は合併の歴史である」

この章の最後の言葉。
「絶えず、社内に危機感を持たせ、
絶えず革新していかなければ、
企業は三十年たつと必ずおかしくなる」

「だから、わたしは、そうなる前に、
会社に大きな改革を促すために、
『変化』を選択してきた」

岡田卓也の経営の神髄。
合併は社内に変化を強要するものだ。

これは単純な他力本願の合併とは異なる。

他と力を合わせるときに、
その化学反応を変化の原動力にする。

商人の本籍地と現住所。
ビジネスマンの本籍地と現住所。
社会人の本籍地と現住所。

一定の規模を超えた店舗小売業の場合、
この本籍地と現住所の概念は、
不可欠のものとなってきた。

新入社員がすぐに辞めてしまう場合は、
本当の意味の本籍地にはならない。

それは残念なことだ。

〈結城義晴〉


2 件のコメント

  • 取り上げて頂き恐縮です。
    環境/事業要因も極めて大きいと思いつつ、後からくい破れる自信があれば自力本願、新住所の方々に共に志高く仕事して頂ける自信があれば他力活用とも読めました。
    更には、他者を契機に貪欲に自己変容を図り続ける動物的イノベーション型もあると、読みとれました。
    ありがとうございます。

    • 吉本さん、ありがとうございました。
      動物的イノベーションですか、
      面白いですね。

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