ニューヨークの競争の「とんがり★こだわり」と「ひとりよがり」

私の持論が「ポジショニング戦略」。
あまり好きではないがわかりやすくするために、
それを「とんがり★こだわり」と表現する。
ニューヨークに着いて2日目。
滞在するのはタイムズスクエアに近い、
マリオット・マーキス。
周辺は劇場だらけ。
利便性はすこぶるいい。
今日は「コロンブス・デー(Columbus Day)」の祝日。
10月の第2月曜日。
偶然にも日本の「スポーツの日」と重なる。
2日目はマンハッタン島を出て西へ向かう。
ニュージャージー州へ。
あいにくの雨模様。
店頭に置かれるポリシーロック。
顧客満足のミッションを謳う。
㈱万代の利重まりさんとツーショット。
丹波橋店店長。
入り口にはプロモーションコーナーがある。
これはいわば米国チェーンストアの鉄則。
とくに訴えたいアイテムを展開し、
セール品目を集積する。
直営の珈琲ショップ。
珈琲を飲みながら買物する顧客をよく見かける。
売場は迷路のように曲がりくねり、
完全なワンウェイコントロール。
バックヤードを見せて、商品力で引っ張る。
そして視覚、聴覚、五感に訴える
エキサイティングな売場づくりが特徴だ。
その一つがからくり人形たちのパフォーマンス。
ボタンを押すと音楽を奏でて歌ってくれる。
最初に登場するのが、
スチューズ・カントリー・ジャンボリー。
大人気のアトラクションは、
3分ごとに演奏してくれる。
デイリー売場では、
ファームフレッシュファイブ。
頭にかぶった箱には、
スキム、リッチ、ローファットの文字。
メーカーが協賛している。
ミート売場のチキンコーナーでは、
鶏たちがコーラス。
子ども連れのお客が見上げて、
一緒に歌う。
チーズ売場のアイドル。
赤い地に白のボタンを押す。
かつてニューヨークタイムズに
「ディズニーランドのような店」と評された。
核売場のリカーを中心に大仕掛けを施し、
完全なワンウェイで顧客を誘導する。
子どものいるファミリーをターゲティングして、
ポジショニングする。
だから子どもたちも、
私たちも、楽しめる、
滞留型のスーパーマーケット。
見事な青果売場が出迎える。
ダラスのHEBが腰高什器を使った売場なら、
ウェグマンズは陳列線が低い売り方だ。
だから奥まで見通せる。
リンゴのばら売り。
市場感があふれる。
「パーフェクトペアリング」と称した、
カプレーゼの提案。
調理済みのローステッドトマトのカップ商品と、
ポッドに入ったフレッシュバジル、
加工したバジルペイストのカップ商品、
そしてモッツァレラチーズを品揃え。
主婦の悩みを解決する、
これこそミールソリューションだ。
カットフルーツのコーナー。
作業場が必ずセットになっている。
チーズの品揃えは専門店を超える。
世界中から調達して、
店内でカットして提供する。
カテゴリーマネジメントの典型売場だ。
青果の反対側には作業場をはさんで、
フードサービスゾーン。
インストアベーカリー、フードサービスデリ、
そしてミート・シーフードの売場。
シーフードは氷を敷いて丸物を提供。
カッティングサービスも行う。
金色のトレイに入った「ゴールドパン・ミール」。
レンジ加熱だけでメインディッシュが完成する。
金色のトレイはHEBがウェグマンズに学んで採用。
両社の業務提携効果が出たアイテムだ。
グロサリーや日用消耗品はEDLP。
「HOT SONE Price」とネーミングを変えた。
霧雨の中、ウェグマンズを背景に記念撮影。
全員の位置取りを指示する。
ウェグマンズに感謝しながら、
お奨めの高級ワインを頭に掲げながら、
皆、満足の笑顔。
近隣にはストップ&ショップ。
ニューヨーク・ニューアーク地区では2位のシェア。
161店舗で13.7%。
現在はオランダのアホールドデレーズ傘下。
セールや「Buy2 Get1 Free」のPOPが目立つ。
2個買ったら1個おまけ、の売り方。
売れない店の常とう手段。
顧客は必ずしも3個必要とはしない。
奥主通路に設けられた、
シーフードとミートの対面売場。
お客はいないし、従業員の姿もない。
遅れたスーパーマーケットが、
形だけトレンドの対面売場を設けても、
商品力がなければ維持できない。
顧客の少ない売場を、
掃除ロボットだけが元気に動き回っていた。
ニューヨーク・ニューアーク地区ではシェア1位。
ただしボランタリーチェーン。
115店舗で15.8%。
その中でも飛び切りの店舗がこれ。
店舗導入部右側にファーマシーを設けた。
多くの店は店舗奥に配するが、
この配置は高齢顧客にとって便利だ。
ボアーズヘッドを大々的に導入。
切り立てのハムとチーズのショップ。
チーズ売場もボアーズヘッドとは別に、
店内でカッティングして島陳列する。
MURAと書かれた寿司売場。
店舗の奥にマグネットの牛乳売場。
大きな手のサインが効いている。
これ、どこかの企業がやらないかな。
酒もグロサリーもラック什器に陳列する。
手を掛ける部分と手を掛けないところ。
メリハリのある売場が良い。
ウェグマンズのデリを持ち込み、
ショップライトのデリと食べ比べる。
アルディと同じ業態。
リミテッドアソートメントのボックスストア。
ほとんどの商品が99セント。
ランチの後だが、試食のために購入。
アルディの1万平方フィートに対して、
リドルはその2倍の2万平方フィート。
そしてナショナルブランドを扱う比率も高い。
OICグループの福島道夫さんが、
ナショナルブランドとプライベートブランドを、
味と価格で比較研究している。
クラッカーのリッツとアルディのPBを購入。
ホテルに帰って皆で試食する。
ニュージャージーの視察を終え、
マンハッタンへ戻る。
アッパーウェストのブロードウェイ沿い。
尖がり・こだわりの4店舗を徒歩で視察する。
ウクライナ出身のユダヤ人兄弟が創業。
2代目の協同経営者の一人、サウル・ゼイバース氏が、
10月7日に亡くなった。
97歳だった。
ニューヨークタイムズなどが一斉に報じた。
記事には「グルメショップ」と書かれている。
その名に恥じない深い品揃えが特徴。
このコーヒーは本当にうまい。
必ず購入する。
モカブレンドを2ポンド買った。
2層の狭い店舗。
価格は決して安くはない。
だが高齢者の上品なお馴染みさんが多い。
隣接するのが、
フェアウェイマーケット。
マンハッタン型ス―パーマーケットの王者だった。
一時はナスダックに上場して、
郊外に15店舗を展開した。
現在はビレッジ・スーパーマーケット傘下。
この会社はショップライトを展開する。
フェアウェイは11店舗を売却して、
4店舗のみを運営する。
もちろんスーパーマーケットの基本は、
おろそかにしない。
肉と魚は対面販売方式。
。
ただし鮮魚はずいぶん売場が狭くなった。
客数が減って鮮度を維持できないからだ。
さらにさらにブロードウェイを南下。
トレーダー・ジョー。
ドラッグストアのデュアンリードが地上1・2階、
トレーダー・ジョーが地下1・2階を占める。
地下2階はパンとグロサリー、
冷凍食品、飲料。
地下1階と2階をエスカレーターでつなぐ。
この2層トレーダー・ジョーも、
完全なワンウェイコントロール店舗だ。
訪問したのは午後4時前後。
明日からは日常が戻る。
みな、買い出しにやってきている。
だから欠品があちこちで起こっている。
冷凍食品売上げ1位のマンダリンチキン。
在庫量を増やして、何度も補充しているが、
この時間帯は品薄。
それでもまだレジ待ち行列は短い。
これから続々と顧客が押し掛ける。b
ニューヨーク視察2日目は、
ニュージャージーからマンハッタンまで、
とびきりの「とんがり★こだわり」の店舗を視察。
とんがり★こだわりこそ、
ポジショニング戦略の肝となる考え方だ。
ただしそのとんがりとこだわりが、
自分の顧客たちから絶賛されて、
受け入れられ、支持されねばならない。
それがなければ、
「ひとりよがり」となって、
店は衰弱していく。
ストップ&ショップがそれを示している。
フェアウェイの郊外店も同じだった。
(つづきます)
〈結城義晴〉