結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年04月04日(日曜日)

肺炎死1万3900人減の「コロナ・パラドックス考」

今日の横浜は夕方から、雨。

その夕方から商人舎オフィスに出て、
月刊商人舎4月号の原稿執筆と入稿。

新田間川はもやっている。
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仕事の合間の軽食は、
らーめん楓(かえで)。
名物の味噌ラーメン。
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明日から大阪出張。
だから今夜、頑張ります。

さて、思わずうなってしまった言葉。
「コロナ・パラドックス」
パラドックスは「逆説」という意味。

見逃していたけれど、
日経新聞の3月22日版の「核心」。

「コロナ人口減くい止めよ」
上級論説委員の大林尚さんの筆。
〈日経新聞電子版より〉
https _imgix-proxy.n8s.jp_topic_19040809-1-1
昨年1年間の死亡数は、
一昨年より9300人ほど少なかった。

厚生労働省の人口動態統計。
同省は説明を留保している。
「今の段階では確たる根拠が見いだせない」

死因がわかっている昨年1~10月、
累計値を前年同期と比べると、
呼吸器系と循環器系の疾患で、
死亡数が減少している。

なかでも肺炎死は、
1万3900人減った。

COVID-19感染者は、
新型肺炎と言われるごとく、
重篤化して陥る典型症例が肺炎だ。

ある呼吸器専門医は、
「消毒習慣とマスクの効用」と見る。

また人口学の研究者は、
「多くの人が外出を控えた影響」と考える。

それにしても、
新型コロナウイルス感染拡大で、
2020年の日本の死者数は減った。

この逆説。
コロナ・パラドックス。
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小林論説委員。
「日本人の平均寿命は、
この1年間に大きく延びたかもしれない」

「コロナ死の激増で20年上期の平均寿命が
1歳ほど縮んだ米国人とは、明暗をわけた」

だが楽観してはいない。
「この先、消毒やマスクが定着したとしても
死亡数の減少がつづくわけではない」

「コロナはより本質的な
人口減少をもたらしている。
出生数の急減である」

小林論説委員は、
平成年間、経済部記者だった。
人口減少に問題意識をもち、
年金・医療改革など社会保障と
消費税の問題を、
ライフワークに選んだ。

だからこの後は、
人口減問題の対策が挙げられる。

20年の出生数は過去最少の87万2600人だった。
今年は80万人を下回るリスクが濃厚。

政府の将来推計人口は、
2033年に80万割れを見込んでいる。

だから少子化は、
「実に12年も前倒しで進んでいる」。

そこで指摘する。
「コロナは日本の人口動態を
強く下方屈折させる転換点になるのだろうか」

本当に憂うべき問題だ。

「歴史を振り返れば、
戦争、疫病、大災害など
人口を激減させる転換点は幾度となくあった」

中世の欧州を襲った黒死病、
20世紀初頭のスペイン風邪のパンデミック、
そして第2次大戦による人口急減。

それでもこれらの終息後は、
出生数が急増した。

「補償的増加」という。

スペイン風邪のあとは、
20年間の出生数が14%近く増えた。
第2次大戦後は、
「団塊の世代」が出現した。
1949年は約270万人が生を受けた。

「コロナ禍の今年は
その3割に満たない超少子である。
補償的増加は期待できるか」

いや、できまい。
小林さん、あまり結論を書かない。

そして論説委員は最後に語る。
「真の意味で私たちは
コロナに打ち勝てるのか」

コロナに打ち勝つには、
人口が増える手立てを打ち続けることだ。

福岡伸一さんがいう動的平衡のなかで。

そのときに一番大切なのは、
三つのことだ。

ちいさな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。
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小売業、サービス業、
消費産業がその一翼を担いたい。

〈結城義晴〉

2021年04月03日(土曜日)

「一人の頭」の「自惚れ」と「マーケティング・マネジメント」

大阪府の新型コロナウイルス感染。
拡大が止まらない。
新規感染者数666人。

これまで一番多かったのが、
今年1月8日の654人だった。

5日連続で東京都より多かった。

結果的に見れば、
緊急事態宣言解除が早かった。
2月末日のことだ。

その前に2月17日、
ワクチン接種開始。

この2つのニュースが加わって、
人々の緊張感が解けたのではないか。

それは東京都をはじめとして、
神奈川県・埼玉県・千葉県にも、
及ぶかもしれない。

何度もなんども書いているが、
尾身茂先生の言葉。
新型コロナ対策分科会会長。
「新型コロナは、
人々の行動が感染動向を左右する」

「社会全体の感染防止への意識が
低下していないか判断しながら
アクセルとブレーキを踏む必要がある」

社会全体の意識と人々の行動。
それをアクセルとブレーキで操作する。

そのアクセルとブレーキがちぐはぐ。

フィリップ・コトラー先生の言葉。
「マーケティングの基本となる、
最も重要な概念は、
人間のニーズである」

ニーズがとらえられなければ、
マーケティングの欠落である。

デジタル庁や子ども庁のまえに、
マーケティング庁が必要だろう。

デジタルは方法論、
子どもはターゲティング論。

そのターゲティングは次に、
ポジショニングを求める。

つまりマーケティングによって、
政府・行政を先導する存在が求められる。

今日は商人舎オフィス。
このところ土日もなく、
出社している。

春のうら~ら~の新田間川。IMG_23951

そして裏の遊歩道。
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新緑の季節。
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桜も散った。
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単行本の脱稿・責了から、
休まず雑誌の原稿書き。IMG_23981

さて昨日の北海道新聞、
その巻頭コラム「卓上四季」

劇作家岸田國士(くにお)の演出論。
「芸術の名に於て、
他人の苦痛や迷惑を
顧慮しないでよいといふ論法は、
断じて許し難いのだ」
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どんな芸術でも、
人の苦痛や迷惑を顧みないことは、
許されない。

「脚本の本質的生命を無視し、
俳優本然の欲求を斥(しりぞ)けることは
演劇芸術への冒涜(ぼうとく)であり、
これは、強盗や悪資本家の所業と
選ぶところはないのだ」

演出家が、
脚本を無視し俳優の欲求を斥ける。
それを強盗や悪徳資本家と同じだという。

劇作家として、凄い怒り方だ。

テレビ番組出演の女子プロレス選手が、
視聴者からの誹謗中傷を受けた後、
亡くなった問題。

放送倫理・番組向上機構の放送人権委員会。
9人の委員が月1回話し合いをする。
その見解がまとめられた。

乱暴な女性のように描く「過剰な演出」に関して、
遺族から「人権侵害」があったと訴えられていた。

人権委員会はその主張を認めなかった。

「わかりやすく伝える演出は、
どこまで認められるのか。
表現活動が抱えるジレンマだ」

「肝心なところは強調したくもなる。
毒が含まれることもあろう。
超えてはならない一線は
常に揺らぎ、見えにくいものだ」

新聞も含めて私たちが、
経営者や店長、企業や店を評価する。
そのときにもこの表現のジレンマはある。

肝心なところは強調する。
毒が含まれることもある。
しかし超えてはいけない一線がある。
常に揺らぎ、見えにくい。

コラムニスト。
「社会が彼女を自傷行為に追い込み、
“弱い私でごめんなさい”という言葉を
遺(のこ)させたことを忘れてはならない」

テレビの演出が問題視される。

そして岸田國士の一言。
「一人の頭で
好い芝居を作るという
自惚れを棄てよ」

演劇の演出に限らない。

「一人の頭で好い番組を作るという
自惚れを棄てよ」

「一人の頭で好い会社を作るという
自惚れを捨てよ」

「一人の頭で好い店を作るという
自惚れを捨てよ」

「一人の頭で好い雑誌を作るという
自惚れを捨てよ」

以て自戒とすべし。

一人の頭で好い国は、
とても作れない。

マーケティングは一人ではできない。

だからコトラーは、
「マーケティング・マネジメント」と呼んで、
その重要性を強調する。
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「マーケティングは、
個人によっても行われるが、
組織体がこれを行うのが普通である。
その意味でマーケティングとは、
組織体のマーケティングを指しており、
そこでマーケティング・マネジメントを
論じることになる」

〈結城義晴〉

2021年04月02日(金曜日)

平松正嗣平和堂社長のon-line決算説明と「今までなかったこと」

桜の季節が終わろうとしている。
しかし次々に花は移っていく。
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昨年のちょうど今日、
私の古巣の㈱商業界が自己破産した。
それから1年。

多くの皆さんにご迷惑をおかけし、
それでも残った社員たちはほぼ、
それぞれに行き場が決まったようだ。

誤解のないように書いておくと、
私が社長をやっていた2007年までは、
きちんと経常利益を出していた。

今日は横浜商人舎オフィス。
月刊商人舎4月号の原稿執筆と入稿。

午後2時から、
オンラインの決算説明会。

㈱平和堂社長の平松正嗣さん。IMG_23911

商人舎流通スーパーニュース。
平和堂news|
コロナ特需で年商4393億円1.3%増・経常利益32.3%増

2021年2月期決算は増収増益で、
しかも過去最高。

平松さんはちょっと緊張していたが、
52枚のパワーポイントを使って、
丁寧にメッセージを発した。
上手だったし、とても聞きやすかった。
商人舎でも今度、講演を頼もうか。IMG_23831

平松さんが提示した中長期ビジョン。
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「地域になくてはならない存在」となる。
その実現に向けて目指すのが、
「地域密着ライフスタイル総合(創造)企業」だ。

その中長期ビジョンの世界を、
短い文章でまとめた。
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そのための企業行動の基準。
それがサステナビリティの推進。s28
そして事業基盤を構築するのが、
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進だ。s29
いずれも社長直轄で取り組む。
平松さんの意気込みが伝わってきた。

さて糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」
その巻頭エッセイは、
今日のダーリン。
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「いままでになかったことをするのは、
簡単じゃない」

「どうしても、
いままであったことに似せて、
一歩ずつ進んでいる”確かさ”が
ほしくなってしまう」

「しかし、それは
いままでの枠組みを利用することなので、
その枠にはめ込まれ、
いままでにあったものに似てくる」

「似てくるだけでなく、
劣化コピーにも
なりかねない」

これが実に多い。

だから商業界の倉本長治先生は言い残した。
「創意を尊びつつ良いことは真似ろ」
イノベーションの極意だ。
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「良いことを真似る」だけではだめだ。
「創意を尊びつつ」でなければいけない。

糸井は例を示す。

iPhoneは、電話でもなければ、
小型コンピューターでもない。

「いままでになかった”もの”でもあるし、
いままでになかった”こと”なのである」

ここで重要なこと。
「ふつうに”電話”の改良を
していこうとすると、
どんどん”電話のいいやつ”の方向に
向かうことになる」

そして「電話のいいやつ」は、
「たぶんそれほど人を惹きつけない」

そして、いつまでも、
「”これまでの電話”と競争して、
新しい世界を生み出したりすることも
なかったろう」

同感。

総合スーパーの「いいやつ」は、
たぶんそれほど顧客を惹きつけない。

「いままでになかった
ことをするというのは、
いままでになかった
人の集まりを創り出すことだ」

これが大事だ。

「だれも見たこともないし、
やったこともないから、
どういうおもしろさがあるかだとか、
どんなふうに壁にぶつかるかだとか、
どんな速度で進んでいくかとか、
知ってる人もいない」

先月の商人舎で取り上げたDXの本質は、
そういったことだ。

糸井の分析。
「確かそうに見せているものとは、
過去の似たものを寄せ集めた
類推のかたまりなのだから」

「わからないからおもしろいし、
いままでになかったから難しいし、
どきどきもする」

イノベーションには、
勇気がいるのだ。

〈結城義晴〉

2021年04月01日(木曜日)

1府2県の「まん防重点措置」と総額表示の3パターンの成否

三月が去って、
今日から四月。

新年度の会社もあるだろうし、
新学期の学校もあるだろう。

しかし、
COVID-19の感染は止まらない。
第四波である。
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大阪府・兵庫県、そして宮城県に、
「まん延防止等重点措置」が適用される。

2月に施行した改正特別措置法で、
新設された措置だが、
今回初めて適用される。

期間は4月5日から1カ月間。
大型連休後の5月5日まで。

緊急事態宣言に準じる措置だが、
飲食店の営業時間短縮が主な狙い。
午後8時までの営業を要請する。

要請に応じた店の事業規模別に、
協力金は変わる。

緊急事態宣言は、
都道府県の全域を対象とした。
重点措置は知事の判断で、
対象区域が絞られる。

1府2県が指定するのは、
大阪府が大阪市、
兵庫県が神戸市、芦屋市、西宮市、尼崎市。
宮城県が仙台市。

従わない場合は、
20万円以下の過料が科される。

今年を振り返ると、
1月7日から11都府県に緊急事態宣言発令、
関西圏は2月28日に解除、
首都圏の1都3県は3月21日に解除。

大阪府・兵庫県は解除からほぼ1カ月で、
重点措置の適用。

首都圏の1都3県も、
この傾向で見ると、
重点措置を適用されるに違いない。

アクセルとブレーキがちぐはぐ。
都民・府民・県民の意識をつかむのは、
マーケティングだと指摘した。

そしてマーケティングは勘ではない。
マーケティングリサーチが必須だ。
そのためには定量調査と定性調査が必要だ。

定量調査に関しては、
新型コロナウイルスはPCR検査である。

それを怠った政策ならば、
マーケティングの欠落である。

今日は横浜商人舎オフィスで、
鈴木國朗さんと対談。
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先週土曜日に埼玉県のクリニックをした。
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その時の情報整理をして、
ディスカッション。

いい話し合いだった。
感謝したい。

さて今日から、
「総額表示」が義務化される。

7年前の消費税引き上げの際に、
特別措置によって、
税抜き表示が認められた。
その特別措置が終了する。

しかし結局は、
総額と税抜き併記の企業が多い。

特にスーパーマーケットは、
ほとんどが併記で、
総額の方を小さく表記する。

その場合にも食品は軽減税率だから、
8%の消費税を乗せると、
総額では1円以下が出るケースが多い。
このとき企業ごとに3つのパターンがある。

私のところにわざわざ、
各社の調査結果を寄せてくれた人がある。
私はそれに全国の有力企業を加えて整理した。

第1のパターンは、
端数を切り捨てして整数にする。
これが「デジタル」の本来の意味だが、
イトーヨーカ堂やヨークベニマル、
ライフコーポレーション、
平和堂、ユニー、ベイシア、ベルク。

第2のパターンは端数切り上げで整数。
アークス、コープさっぽろ、
イズミヤ、オークワなど。

第3が整数表記をせず、
小数第2位まで表記する。
イオン、西友、
ヤオコー、サミット、万代、
オーケーもロピアも、
沖縄のサンエーも、
この第3のパターンだ。

すでに報告したが、
ファーストリテイリングnews|
ユニクロ&GU本体価格をそのまま税込価格に

ユニクロもGUも整数の総額表示のみ。
しかしこれまでの商品本体価格を、
そのまま消費税込みの価格にする。
従来の価格と比較すると、
約9%のプライスダウン。

例えばUTコレクションのTシャツ。
「1500円+消費税」の表示だったが、
それを3月12日から、
総額1500円としている。
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すべてプライベートブランドで、
粗利益率48.6%だからできることだ。

さて顧客は、
この総額表示の各社・各店の政策を、
どう評価するか。

その顧客の反応を、
定量・定性調査で知ることも、
マーケティングの態度だ。

〈結城義晴〉

2021年03月31日(水曜日)

ニトリ34期連続増収増益決算説明会の「主要経営指標19勝3敗」

三月、去る。
もう三月、最後の日。
早かった。

二月、逃げる、
一月、往ぬる。

今年は、とりわけ早く感じる。
今月は1都3県の緊急事態宣言が、
7日の日曜日で終わるはずだったが、
それがぎりぎりになって21日まで延期。

そして21日に解除されると、
皮肉なことに、
徐々に新規感染者数が増えた。

今日は大阪府が599人。
東京都の414人を抜いている。

兵庫県が211人で、
宮城県が200人。

全国合計が2843人。

尾身茂新型コロナ対策分科会会長。
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「新型コロナは、
人々の行動が感染動向を左右する」

「社会全体の感染防止への意識が
低下していないか判断しながら
アクセルとブレーキを踏む必要がある」

何よりも大事なのは、
「社会全体の感染防止意識」

この、ぼわんとした、
社会全体の意識を、
繊細に、丹念に、
読み取らねばならない。

これはマーケティングそのものだ。
マーケティングはたとえば、
社内の顔色を窺っていては間違う。
顧客とマーケットの意識をつかまねばいけない。

新型コロナウィルス感染第四波は、
新株の感染拡大とともに始まっている。

今日は横浜商人舎オフィス。
そして夕方、東京・溜池へ。

右が高速道路の高架。
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左は桜並木。
もう葉桜だ。
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そして最新のホテル。
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決算説明会の立て看板。
㈱ニトリホールディングス。
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ANAインターコンチネンタル東京。
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地下1階の大宴会場を全部使って説明会。
アナリストとジャーナリストが参集。

私も久しぶりに顔を出した。

冒頭で白井俊之社長兼COOが、
簡潔に全体報告をした。
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2021年2月期決算。
34期連続増収増益。

世界レベルで見ると、
かつてのウォルグリーンの記録と並んで、
世界第2位。

ちなみに世界第1位は、
2013年度までのウォルマートだ。

似鳥昭雄会長兼CEOが誇らしげに語った。

売上高は7169億円で、
前年比111.6%。
営業利益は1376億円で128.1%。
経常利益は1387億円で126.4%。
当期純利益は921億円で129.0%。

店舗数は国内651店、海外71店。
合計すれば722店で、前期比111店増。

素晴らしい。

粗利益率は57.4%、
営業利益率は19.2%、
経常利益率は19.3%。
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ニトリは「製造物流IT小売業」を標榜する。
そして目標は、
2022年・1000店舗・1兆円。
2032年・3000店舗・売上高3兆円。

アナリストからもジャーナリストからも、
㈱島忠のM&Aに質問が集中した。

島忠の立て直しに関しては、
似鳥さん自身が言い切った。
「始めたばかりだから、
細かいことは言えないが、
自信はある」
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「石の上にも三年、
風雪五年、苦節十年」

似鳥節炸裂。

似鳥昭雄さんは、
社会全体の意識を読み取る能力が、
ずば抜けている。

ニトリホールディングスは、
21項目の主要経営効率を、
目標に対して達成すれば勝、
未達成ならば負と評価して報告する。

そしてこの年度は、
19勝3敗だった。

申し分ない。

私が関心があったのは、
3つの負の指標についてだ。

ニトリの実績。
「総資本回転率は0.94、
商品回転率は5.5、
従業員1人当り売場面積は35.6坪」

目標とする指標は、
総資本回転率が2回以上、
商品回転率が9回以上、
1人当たり面積は60坪。

これは故渥美俊一先生が掲げた、
理想的に高い目標だ。

私の質問。
「日本固有の事情もあるでしょうが、
2032年段階の3兆円のとき、
この3つの指標はどうなるとお考えでしょうか」

似鳥さんも、
私の考えと同じだと理解した。

必ずしもすべての指標を、
達成する必要はない。

総資本回転率2回以上は、ほしい。
すべての企業が、
その方向で経営努力してほしい。

商品回転率もノンフードビジネスならば、
5回を超えていればいい。
9回というのは食品などを均した指標だ。

1人当たり面積の60坪は、
いかんともしがたい高い指標だ。

アメリカをモデルにした目標指標は、
そのままでは日本の環境とは合わない。

それでも日本にとってアメリカが、
立派なモデルであることは変わりない。

久しぶりに似鳥節を直接、聞いた。
大いに感謝しつつ、満足した。

〈結城義晴〉

2021年03月30日(火曜日)

厚労省官僚23人宴会のJSTとドラッカーのマネジメント

12月期決算企業の定時株主総会。
今日の3月30日にピークを迎えた。

株主総会の日が集中する理由。

決算期末から3カ月以内に、
総会を開催する会社が多い。

上場企業の株主総会では、
議決権を行使することができる株主を、
特定しなければならない。

そのために、
一定の日を「基準日」として定める。
その基準日の時点の株主を、
議決権行使ができる株主とする。

会社法第124条では、
この基準日の効力が及ぶ範囲を、
3カ月以内に開催した株主総会に限っている。

多くの会社はこの基準日を、
事業年度末日としている。
そして定款で、総会の開催日を、
3カ月以内と定めている。

法人税の確定申告書の提出期限もある。

さらに招集通知の発送などの事務手続きもある。
なかなか大変だ。

そこで多くの会社で、
可能な期限を最大限利用したいと考えて、
3カ月ギリギリの日に集中する。

もちろん、一斉に株主総会が開催されると、
総会屋が出席しにくいという理由もある。

三菱UFJ信託銀行の調査では、
今年3月開催の総会510社のうち、
会場とオンラインとを併用する企業は74社。
全体の15%を占める。

コロナ禍の影響だ。

今日は朝から東京・小平。
第一屋製パン㈱本社。
小平工場が併設されているが、
敷地内は桜が満開だ。IMG_23621

毎年、この桜の下で、
社員・従業員は花見をする。IMG_23661

素晴らしい桜。
しかし昨年も今年も、
新型コロナウィルス感染拡大で、
その花見会は中止。

しかし下から見ているだけで、
桜は満喫できる。
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今日は定時株主総会。

旧商法では233条で、
株主総会の開催場所を、
定款に定めがある場所を除いて、
本店所在地、またはこれに隣接する場所で、
招集するよう決められていた。

しかし現行の会社法では、
株主総会招集地の制限規定は撤廃された。

オンラインを採用しても、
会場は設けなければならない。

第一屋製パンは旧商法のままで、
本社に会場を設けて総会を開く。

ウイルス感染防止を徹底しつつ、
オンラインも併用する。

私はこの本社での開催は、
第一パンらしくて、
とてもいいと思っている。

それが会社のポジショニングでもある。
株主もよく理解していて、
発言したい人はわざわざやって来てくれる。
そして温かい励ましや提案をしてくれる。

いい株主。
その期待に応えねばならない。
甘えてはいけない。

それが上場企業の責任である。

さて、厚生労働省にまた事件。

東洋経済オンラインには、
詳しく書かれている。
厚労省官僚
「銀座で0時頃まで23人宴会」のあぜん

老人保健課の職員23人が3月24日夜、
東京・銀座の飲食店で送別会を開いた。
夜11時まで営業している店を探して予約。

マスクもせず、大声で宴会を続けた。
十数人が深夜0時前まで残った。

老健局の老人保健課長は、
大臣官房付に異動させられ、
事実上の更迭。

参加した課長補佐ら14人に訓告、
主査ら5人は注意・指導の処分。

事務次官は厳重注意、
老健局長は訓告。
田村憲久厚労相は、
大臣給与2カ月分を自主返納。

国家公務員法82条。
公務員の懲戒処分は4種類。
免職、停職、減給、戒告。
さらに法律の定めがない2種類。
訓告と厳重注意。

免職は、
公務員の職を失わせる処分で、
いわゆるクビ。
停職は、
一定期間その職務に従事させない処分、
期間中は無給。
減給は、
文字通り俸給の支給額を減ずる処分。
戒告は、
本人の将来を戒める旨の申し渡しをする処分。

訓告は戒告より軽い申し渡し、
厳重注意はさらに軽い申し渡しの処分。
注意・指導はさらにさらに軽い処分。

政府はお詫びをしているけれど、
それで終わるものではない。

しかし私はマネジメントの基本に、
問題があるのではないかと見ている。

行政には「人事院式監督者研修」がある。
「Jinjiin Supervisory Training」。
JSTと略される。

三つのコースがある。
基本コース、専科コース、
そして応用実践コース。

基本コースは「初任監督者に、
仕事の進め方や部下の管理・監督の
基本を修得させる研修」。

基本コースには三つの柱がある。
マネジメントの基本、
リーダーシップ、
コミュニケーション。

この三つの内容のタイトルだけ見ると、
問題はないように見える。

しかしこの「マネジメントの基本」に、
大問題がある。

会社の教育も同じだ。
項目やタイトルだけで判断してはいけない。

JSTは戦後のGHQが準備した、
カリキュラムをベースにしている。
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そしてそのGHQのマネジメントは、
アンリ・ファヨールの理論をもとにしていた。
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1950年当時の欧米の主流理論だったからだ。

しかしピーター・ドラッカーや、
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ヘンリー・ミンツバーグは、
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そしてハーバート・サイモンは、
ファヨールをはっきりと否定している。

この内容は、
商人舎ミドルマネジメント研修会で、
じっくりと講義する。

厚生労働省の公務員たちも、
例外なくこのJST研修を受けてきた。

すごい数の公務員たちが全員、
この基礎コースの教育を受けてきた。

中には自分で考える公僕もいただろう。
ドラッカーやミンツバーグを、
自ら学んだ役人も多いに違いない。

それが日本の希望だ。

しかし厚労省の23人は、
この宴会のときには、
ドラッカーやミンツバーグを忘れていた。

X理論の懲戒処分に、
あまり効力がないことは、
この事件が証明した。

ドラッカーはY理論も賛成はしていない。
そのあたりも、
ミドルマネジメント研修会で明らかにする。

23人宴会の事件は、
マネジメント教育の基本の重要性を、
あらためて考えさせてくれた。

〈結城義晴〉

2021年03月29日(月曜日)

永守重信日本電産会長の「目標をもつこと・掲げること」

Everybody! Good Monday!
[2021vol⑬]

2021年第13週。
そして3月第5週の最終週。
今週木曜日から4月。

一月、往ぬる。
二月、逃げる。
三月、去る。

今年の3カ月は早かった。
コロナは時間を早める!

今年は4月・5月・6月も、
あっという間に過ぎていく気がする。

今週は各社ともに新入社員が入ってくる。
例年ならば一同に集めて入社式を行うけれど、
昨年はコロナ禍で、
オンラインに変えて開催した会社が多い。

今年はどうするのだろう。

セブン&アイ・ホールディングスは、
ニュースリリースで発表しているが、
グループ19社に748 名が入社する。
昨年度は999 名だった。

今年は全体での合同入社式は開催せず、
事業会社ごとにオンラインなどで行う。

イオン㈱では、
イオン琉球㈱が4月1日午前10時から、
沖縄県産業支援センターで行う。
本年度は新卒社員34名、正社員登用者7名、
合計41名が入社式に参集する。

4月の終わりには、
ゴールデンウィークがやってくる。

入社して1カ月足らずで、
年間三大商戦に突入する。

若い人たちの力が、
このコロナ禍の「キャズム」を、
乗り越えさせてくれる。

今年の商人舎標語は、
「若返れ!」
時代と時代の節目のとき。
「断絶」を乗り切る武器は若い力である。
若さによってしか「時代の溝」は凌げない。
だから組織は若返るべきだ。

まず商人一人ひとりが自分を若返らせる。
さらにその商人の集団を若返らせる。
すると組織が若返る、会社が若返る。
産業全体が若返る。
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その意味でも新入社員の存在は大事だ。

さて、日経新聞「月曜経済観測」
永守重信日本電産㈱会長が、
インタビューに答える。
「コロナに負けぬ成長産業」
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聞き手は、西條都夫編集委員。

「私は過去50年間、
企業経営の一線にたってきたが、
今ほど変化の激しい時代を知らない」

それを結城は「キャズム」と名づけた。
20210107
「いい変化も悪い変化もあるが、
とにかく変化のカーブが急で、
先が見通せない」

だから若い力が必要だ。

「こんな時代には経営トップの判断力や
変化への対応力が問われる。
会議ばかり開いて意思決定の遅い企業は
時代についていけないだろう」

走りながら、考えよ。
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これからの大きなトレンド。
「世界規模で進む”脱炭素”だ」

小売業、流通業も、
CO2対策は必須である。

「ドローンやロボットも伸びる」

「今はエンジンに頼る航空機も
バッテリーとモーターで飛ぶ日が
いずれ来るはずだ」
このあたりは少し我田引水。

「私は出張が激減し、
海外拠点との意思疎通は
すべてビデオ会議になった」

つまり、
コミュニケーションが変わる。
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「今後問われるのは、

個人の実力と実績だ」
若くても、力と志があれば、
登用される。

「人事システムを抜本的に変えて、
実力があれば20代でも
部長に登用できる仕組みを整えた」

永守さんは、
「2030年売上高10兆円」を掲げる。

2021年3月期の予測では、
売上高1兆5500億円、前年比1.0%増、
営業利益1550億円、40.5%増、
純利益1200億円、99.7%増。

9年で6.45倍。

実績も凄いけれど、目標はもっと凄い。

76歳のトップは、
自らを若返らせる。

目標をもつこと、
目標を掲げること。
それが若返りの秘訣だ。

多分、9年後の2030年、
85歳まで頑張るのだろう。

見習いたい。

では、みなさん、
今週も、「キャズム」のなかで、
走りながら考えよ。

Good Monday!

〈結城義晴〉

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