結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年08月02日(火曜日)

村上宗隆の5連続本塁打の快挙と政治と経営の「良きもの」

村上宗隆、22歳。
東京ヤクルトスワローズの4番。
全日本チームの4番。村上1
5打席連続本塁打。
日本新記録。

米国メジャーリーグにも出ていない記録。

日曜日の阪神タイガース戦で、
3連続本塁打を放って、
1人でゲームを勝ち切った。

そして火曜日の今日、
中日ドラゴンズ戦では、
第1打席に右翼へ会心の当たり。

新記録のかかった第2打席は、
左中間に流し打ち。murakami2
腰が据わったスイング。
身体の鋭い回転と、
ヘッドスピードの速さは、
今、球界随一。

このままメジャーに行っても、
打撃では大谷翔平に並ぶ力があると思う。

4打席連続本塁打は、
これまで13人が達成している。

読売ジャイアンツの王貞治は、
23歳の時に1ゲームで4連続本塁打を放った。

私がよく覚えているのは、
阪神タイガースのランディ・バース。
1986年の横浜大洋ホエールズ戦。
2試合にわたる快挙だった。

その前年の1985年。
吉田義男監督のもと、
セリーグで優勝し、
パリーグの西武ライオンズを破って、
日本一になった。

1番に真弓明信がいて、
バース、掛布雅之、 岡田彰布が、
バックスクリーン三連発を放った年だ。

王とバース以外にも、
日本人打者では、
セリーグの青田昇、松原誠、
高木守道、谷沢健一、
パリーグの長池徳二、醍醐猛夫、羽田耕一と、
4連続本塁打を打ったスラッガーがいる。

それらを抜き去って、
5打席連続本塁打。

村上は今、どんな球でも、
スタンドに打ち込む境地にいるのだろう。

今やかの三つのベースに人満ちて
そゞろに胸のうちさわぐかな
〈正岡子規〉

今日は午前中、自宅で原稿書きをし、
午後から横浜商人舎オフィス。

月刊商人舎8月号の執筆と入稿。

夕方の7時半ごろから、
雷が鳴り始めた、と思ったら、
横浜港で花火が上がっていた。

それほどオフィスから港は近いのです。minatomiraihanabi1

今日はみなとみらいスマートフェスティバル。
そのフィナーレを飾る花火。みなとみらい花火3

6月2日の開港記念日の花火と、
今日のみなとみらいの花火。

横浜の名物。
みなとみらい花火2

商人舎オフィスのビルの10階に上がると、
ビルの間に花火が見えた。IMG_44062

港まで行って見るのがいいけれど、
仕事の合間だからこれも良し。IMG_44082

10分ほど眺めていた。IMG_44192

横浜の花火はなぜか、
商人舎の締め切りに重なる。

不運だが不満ではない。IMG_44212
それでもちょっとだけ、
花火を楽しんだ。

ありがとう。

今日の商人舎流通SuperNewsから。
アクシアルnews|
第1Q売上高609億円1.3%増・経常利益13.3%減の増収減益

アクシアルリテイリング㈱。
第1四半期は売上高608億7200万円、
前年同期比1.3%増。
営業利益24億1300万円で17.5%減、
経常利益25億8500万円で13.3%減。

増収減益でも、
営業利益率4.0%、経常利益率4.2%。

水準を超えている。
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売上総利益率(粗利益率)は28.8%。
前年同期比で0.2ポイント減。

買い上げ点数は、
既存店で1.1%減、全店では1.3%減。
商品や原材料の仕入価格上昇で、
販売価格改定をした。
それが影響した。

ここは踏ん張りどころだ。

安易な安売りで集客増を狙わず、
辛抱しながら顧客の信頼を積み上げ、
利益を確保する。

利益にストイックになる時だ。
これは日本中のスーパーマーケットに、
今、共通する哲学のようなものだ。

4月にフレッセイ朝日町店が、
群馬県前橋市にオープン。
売場面積1996㎡。

5月に原信安曇野店が、
長野県安曇野市に売場面積2267㎡で開業。

どちらも訪れてみたい店だ。

朝日新聞「折々のことば」
第2456回。

「何のために」、
「何を」ということが、
いろいろに考えあわされる、
大きなつながりのうちで、
人を動かし、物を動かすこと
(田中美知太郎『哲学入門』から)
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「それが”治国の術”としての政治だ」

「政治とは”よきもの”の実現、
つまりは”最善のことを工夫する”技術であり、
“人間が人間を、どう取り扱うか”の技術である」

この政治は「経営」に置き換わる。

「だから現代の科学技術と同じく、
そのための手段や機構が、
人とのつながりを離れて動きださぬよう
注視しなければならない」

故田中美知太郎は、
ソクラテス・プラトン研究の第一人者。
京都大学名誉教授。

「良きもの」の実現。
最善のことを工夫する技術。
人間が人間を、どう取り扱うかの技術。

これはすなわちマネジメントそのものである。

野球にもアクシアルにも、
マネジメントは必須である。

〈結城義晴〉

2022年08月01日(月曜日)

阿部秀行Interview at True Dataと中内功「働くの反対は遊ぶ」

Everyone! Good Monday!
[2022vol㉛]

2022年第31週。
そして今日から8月。

気分を新たに、
夏を乗り越えたい。

午後、久しぶりの東京タワー。IMG_43713

東京・芝の㈱True Data本社へ。

今日は月刊商人舎8月号のインタビュー。

㈱万代の阿部秀行社長に、
東京まで出てきていただいて、
1時間半ほど話を聞いた。
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万代知識商人大学で、
阿部さんには毎月のように会っているが、
あらためて雑誌の企画に応えてもらった。

場所はTrue Dataの会議室。
横浜の商人舎オフィスも考えたが、
その後の予定もあって、
True Dataにした。

阿部さんの「商売」に対する考え方。
商売はシンプルだ。

変化があるほど、
商売は面白い。

そしてこの「複合危機」のときほど、
変化が激しいことはない。

だから商売は面白い。

商売をする者はいま、
心配することはない。

いい話を聞くことができた。

ご期待いただきたい。

インタビューのあとは、
True Dataの面々とも懇談して、
最後に写真。
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真ん中から米倉裕之さん、
越尾由紀さん、石崎武志さん。

米倉さんはTrue Data社長、
越尾さんは執行役員で、
リテールマーケティング部部長。
石崎さんはその次長。

ありがとうございました。

True Dataは8月3日に、
オンライン無料セミナーを開催する。
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定員100名なので、
すでに埋まっている可能性もある。

そのあと西新橋のUSP研究所へ。
當仲寛哲さんと久しぶりに会う。

Universal Shell Programming研究所。
當仲さんはその代表取締役。

當仲さんは、
UNIX/Linuxの日本における第一人者。
その基本思想は、
「小さな道具」(コマンド)を組み合わせて、
「問題を解決する」(シェルスクリプト)。
この手法の研究と普及を行っている。

モットーは、
安くて、早くて、柔らかい。

日本の小売業界でも、
良品計画や成城石井、サンエーをはじめ、
多くの企業がこの開発に取り組んで、
成果を上げてきた。

会社は若い人の熱気に溢れている。

當仲さんには、
商人舎マガジンWebContentsに95回、
8年近くも連載を続けてもらっている。

タイトルは、
「リテイル情報システム論」

最新の記事は、
[働く]の反対は[休む]ではなく[遊ぶ]
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當仲さんはダイエー出身。
創業者の故中内功さんに、
大いに期待をかけられ、
激しく鍛えられた。

その中内さんの言葉。
「働くの反対は遊ぶであって、
休むではない」

私も同感するものだ。

1時間ほど懇談して、
三人で写真。
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ありがとうございました。

さて今月は、結構忙しい。
今週は月刊商人舎8月号の執筆と入稿。

日経新聞巻頭コラム「春秋」

「八月や六日九日十五日」――。
「広島と長崎への原爆投下、
それに終戦の日を並べている」

「広島県内の医師が平成の初め、
暦を眺め詠んだとされる。
一方、昭和50年代から多くの俳人が
同様の句を発表しているとの考証もある」

8月は六日九日十五日を忘れてはいけない。

私は来週月曜日、
三度目の1日ワンマンセミナー。

それからお盆。

19日にはテーマと対象企業が変わって、
また1日ワンマンセミナー。

70歳を直前に控えて、
体力との勝負だ。

なぜかこのスタイルが増えている。

中日新聞「中日春秋」

「”缶入り煎茶”の名前を”お〜いお茶”と
改名すると売り上げが大幅に伸びた」

「保湿ティッシュ”モイスチャーティシュ”は
“鼻セレブ”の名に変えて、大成功…。」

「この手の商品名に関する成功例はよく耳にする」

ネーミングは大事だ。

「商品名ではないが、
このネーミングは成功するか。
記録的な暑さが続くスペイン南部のセビリア」

「連日、四〇度を大きく超えているそうだが、
そのセビリアが熱波に世界で初めて、
名を付けたそうだ」

「第一号は”ZOE(ソエ)”。
女性の名である」

ハリケーンにしろ、熱波にしろ、
女性の名前がつけられる。

「それにしても日本も暑い。
人は名前で呼んでくれる相手に
親しみを感じるそうだが、
暑さの方はどう呼ばれようと
人に優しくする気はもちろんない」

日本の暑さには、
「涼子」なんて名前がいいかも。

では、みなさん、今週も、
暑さに負けず、
よく働き、よく遊べ。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年07月31日(日曜日)

面倒で厄介で脆弱な「民主主義」とチェーンストアの「民主制」

7月最後の日。

夏の甲子園の出場校が決定。
第104回全国高等学校野球選手権大会。
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2020年の第102回は、
コロナ禍によって中止となった。

昨2021年の第103回は、
和歌山と奈良の決勝戦だった。
智弁学園和歌山高校と智弁学園。

智弁和歌山が9対2で勝利した。

そして今年も、
全国の代表49校が決まった。

東京代表は西と東から2校出るが、
最後に決まったのが西東京の日大三校、
東は二松学舎高校。

大阪は春夏連覇を狙う大阪桐蔭高校。

わが神奈川は名門横浜高校。

センバツ準優勝の滋賀の近江高校。
昨夏の覇者智弁和歌山など。

日程は8月6日(土)から22日(月)まで。
暑さを吹き飛ばす熱戦が楽しみだ。

オミクロン株のBA.5が第七波を迎えている。
それだけが気がかりだ。

土曜、日曜と自宅の自室にこもった。

朝日新聞DIGITALや日経電子版を見ていると、
なにか錯覚に陥る。

昨日、ネット上に配信された記事が、
今日、ペーパーの紙面に出てくる。

昨日、商人舎流通SuperNewsに書いた記事が、
今日、日経本誌に出てきたりする。

ウクライナへのロシア侵攻。
テレビなどもあまり取り上げなくなった。
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しかしウクライナ軍は、
南部の都市ヘルソンの奪還作戦に挑んでいる。

今のところロシア軍に占領されていて、
ロシアは同市で住民投票を計画している。

つまり勝手に併合を図ろうとしている。

東部ドネツク州では、
ウクライナ人捕虜収容所が爆撃され、
ウクライナ人の捕虜が50人超死亡した。

ウクライナのゼレンスキー大統領。
「ロシアの意図的な戦争犯罪だ」

ロシアは逆にウクライナが攻撃したと主張する。

まだまだ人間が殺されている。
そのことは事実だ。

昨日の朝日新聞。
「折々のことば」
編著者の鷲田清一さん、
冴えている。

第2452回。

ずっと虚偽を連続して
浴びせ続けると、

疑い深い人たちは
隅に追いやられ、

混乱を生み、本来なら
起こるはずの抗議の声も
生まれない
(英文学者スティーブン・グリーンブラット『暴君』より)
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「人の道に悖(もと)る残虐や悪事を、
平然と行う施政者がいる。
その虚言に丸め込まれる人、
いずれ収まると楽観する人、
それに乗じて甘い汁を吸おうとする人もいる」

「が、”抵抗しない”ままでいると、
後々、社会の基盤が抜けてしまったと
臍(ほぞ)をかむことにもなる」

プーチン、トランプ、習近平、金正恩。
それ以外にも民主的な選挙を経ずして、
政権を奪取してしまった首長が、
どれだけ存在することか。

こんな時代が来るとは、
想像ができなかった。

しかし考えてみると、
18世紀後半からの200年ほどは、
人類の長い歴史のなかでは、
特異な現代民主主義の時代だったのだ。

民主主義こそが正しいし、
すべての国や地域が、
それに向かうと信じていた。

しかし、多くの国では、
そうはなっていない。

アメリカの民主主義も、
ヨーロッパの民主主義も、
日本の民主主義も、
欠点と弱点だらけだ。

それでも、
「民主主義は最悪の政治形態といわれてきた。
他に試みられたあらゆる形態を除けば」
ウィンストン・チャーチルが言っている。

私はチェーンストアの会社組織は、
デモクラティックでなければいけないと思う。

民主的な組織である。

店舗と本部の機能分担で成り立つ。
だからこそチェーンストアは、
民主的であることを忘れてはいけない。

そして私には、
それが救いである。

私は69年の人生のうち、
物心ついてからずっと、
民主主義が正しいし、
それが進化していくと信じていた。

しかし今、多くの国家の政治局面に、
「そうでもない」と思われる状況が生まれた。
専制主義であったり、独裁主義であったり。

それでもわがチェーンストアは、
オーナーシップの強い企業であろうと、
専門経営者型の組織であろうと、
「民主制」と「知識社会」を基礎とする。

ドラッカー先生もそれを指摘している。
私には、それがうれしい。

ただし、
民主主義は面倒だ。
民主主義は厄介だ。
民主主義は脆弱だ。

会社組織でも同じことだ。

そして日本の政治を見ると、
民主党オンパレードである。
自由民主党に立憲民主党、
国民民主党に社会民主党。

面倒で厄介で脆弱なことは、
これだけでもわかる。

しかしそれでも民主主義は正しいと思う。

正しきに依りて滅ぶる國あらば
滅びてもよし、断じて滅びず。
江戸の国学者・平田篤胤の言葉。

会社も組織を民主的に保つには、
志が必須なのだ。

「滅びてもよし、断じて滅びず」の志である。

〈結城義晴〉

2022年07月30日(土曜日)

「日本の賃金はやがて上がる」と「いのちだけが はだか」の商業

1日中、自宅の自室にいて、
机のパソコンに向かったり、
ベッドに寝転んで本を読んだり。

7月も終わりに近づいた。

日本の児童・生徒・学生は、
夏休みに入っている。
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日経新聞巻頭コラム。
「春秋」

「コロナが流行して3度目の夏が巡ってきた。
緊急事態もまん防も帰省自粛の要請もない
“行動制限なき”夏休みである」

「にもかかわらず、
どこか雲がかかったように釈然としない」

同感だ。

「感染者数は連日、過去最多を更新し
ピークがみえない」

「国が何も対策をとらない分、
個人にのしかかる責任の重みが
一段と増した気分になる」

これにも同感。

「手洗い、換気の徹底、
マスク着用、ワクチン接種を、
と国も自治体も専門家も
“お願い”の大合唱」

「これで感染すると
不注意な自分のせいと罪悪感にとらわれそう」

「振り返ればいつの間にか、
わたしたちは国から
要請ばかりされていないだろうか」

さらに同感。

「先だっても予期せぬ猛暑で
電気が足りなくなるからと、突然、
節電への協力の呼びかけがあった」

「日本人は聞き分けがよい。
おとなしく従っている。
けれど改めて考えてみる」

「命を脅かす危機なのに”お願い”?」

「それって政策なのですか」

プーチンのように、
勝手に戦争を進める大統領は言語道断だが、
「お願い」ばかりの首相も困る。

日経新聞「大機小機」
硬骨漢のコラムニスト一直さん。
「日本の賃金はやがて上がる」

「失われた30年」は、
バブル崩壊以降の日本経済の長期停滞。

私は1989年1月1日付で、
食品商業編集長となった。

だから「失われた30年」の間、
ずっとEditor in Chief、
あるいは編集人、発行人だったことになる。

「この間、賃金も増えていない」

「岸田文雄政権は経営者に
賃上げを強く要請している」

でも、これも「お願いレベル」。

内閣官房発の、
「賃金・人的資本に関するデータ集」

新型コロナウイルス禍前の2019年。
「雇用者の実質賃金は、
1991年を5%しか上回っていない。
同期間に英国は48%、
米国は41%も増えている」

ではなぜ賃金が上がらないのか。
「生産性の低迷」か。

しかし、日本の労働者の生産性の伸びは
主要7カ国(G7)諸国の中で優等生なのだ。

ダボス会議の主催者K・シュワブ教授らの近著。
『グレート・ナラティブ』
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「(日本の)2007年以降の
生産年齢人口1人当たりの実質GDPは
G7のどの国よりも伸び率が高い」

働いている人々はしっかり成果を上げている。
それなのに賃金は上がらない。

内閣官房のデータ。
2000年度から2020年度にかけて
大企業の現預金は85%、
経常利益は91%増加したが、
人件費は0.4%減少した。

中小企業では現預金が50%増え、
人件費は16%減った。

この問題の解答は、
『人口大逆転』にある。
チャールズ・グッドハート氏らの近著。
ロンドン大学名誉教授。
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「この30年、
世界に門戸を開いた中国の労働力が
供給力を増やし、世界経済を
インフレなき繁栄に導いた」

「日本の企業は国内の労働力不足を
中国はじめ海外の労働力で補うという
合理的選択をした」

コラムニスト。
全産業レベルで見れば、
「国内での労働力不足を、
豊富な中国の労働力で補ったのだ」

「だから日本の労働市場の需給は
タイトにならず、したがって
賃金を上げる必要がなかった」

なるほど。

「しかし、その中国の生産年齢人口は
13年をピークに減少に転じた。
労働力の供給源としての中国の存在感は
減退せざるをえない」

「とすれば早晩、日本の労働需給は
引き締まらざるをえない」

「働く者の賃金が上がる時代が
やってくるはずだ」

働く人たちにとっては良いことだ。

そして消費需要は拡大され、
長期デフレは解消に向かうはずだ。

お願いレベルではなく、
これを政策に盛り込んで、
経済の循環を速めてほしいものだ。

それが速まれば商業にも、
賃金アップを回収する猶予が与えられる。

しかし、しかし。

回りまわって、
小売業の人手不足は、
相変わらず深刻さを増す。

そして残念ながら、
小売業淘汰の時代は進む。

したがって、
ローコスト経営体質を有する商業だけが、
生き残ることになる。

これは強く心に留めておくべきことだ。

ただしこのローコストとは、
売上げに対する経費率の低さである。

当たり前のことだが、
それも忘れずに。

まど・みちを「いわずにおれない」から。
アリ

アリは
あんまり 小さいので
からだは ないように見える

いのちだけが はだかで
きらきらと
はたらいているように見える

ほんの そっとでも
さわったら
火花が とびちりそうに・・・
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商業はまど・みちをの「アリ」のようだ。

「いのちだけが はだかで
きらきらと
はたらいているように見える」

ありがとう。

〈結城義晴〉

2022年07月29日(金曜日)

アマゾン/ウォルマート/クローガーの三者三様と「情報化人間」

商人舎流通SuperNews。
アマゾンnews|
第2Q営業収益1212億ドル7.2%増/国際部門失速

アマゾン・コムの第2四半期決算。
営業収益は1212億3400万ドル、
1ドル100円換算ならば12兆1234億円で、
7.2%増加した。

しかし商品売上高は565億7500万ドル。
5兆6575億円。
前年同期比2.5%減と減収だ。

営業利益は56.9%減の33億1700万ドル。
純損失は20億2800万ドルで赤字転落。

絶好調のアマゾンに陰りが見えたか。

部門別では北米部門も国際部門も赤字。
北米は売上高744億ドル、
前年同期比10.2%増だが、
営業損失が6億2700万ドル。

ジャパンを含む国際部門は、
売上高270億6500万ドルで11.9%減、
営業損失17億7100万ドル。

アマゾン・ウェブ・サービスが唯一黒字。
売上高197億3900万ドルで33.3%増、
営業利益57億1500万ドルで36.3%増。

部門別売上構成比は、
北米62%(前年同期比60%)、
国際22%(同27%)、
AWS16%(同13%)。

アマゾンも「複合危機」の影響を受けて、
増収ながら赤字。

アンディ・ジェシーCEO。
「燃料、エネルギー、輸送コストの
インフレ圧力が続いている」
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アマゾンの決算は12月。
だから第2四半期の発表となった。

ウォルマートもクローガーも1月末決算で、
今のところ第1四半期しか発表されていない。

ウォルマートnews|
第1Q営業収益は2.4%増/インフレ影響で純利益24.8%減

4月末決算の営業収益は、
1415億6900万ドル(14兆1569億円)で、
前年同期比2.4%増。

営業利益は53億1800万ドルで23.0%減、
純利益は20億5400万ドルで24.8%減。

増収減益だが、
赤字ではない。
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ダグ・マクミロンCEO。
「利益面での結果は予想外で、
現在の異常な環境を反映しています。
特に食品と燃料のインフレによって、
マージンミックスと運用コストに
予想以上の圧力がかかりました」
粗利益、経費ともに下がったということ。
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「事業全体では第1四半期は好調でした。
アソシエイトの勤勉さと創造性に感謝します」

クローガーnews|
1Q売上高446億ドル8%増/純利益374%増の増収増益

売上高は446億ドル(4兆4600億円)で
前年同月比8.0%増。

営業利益は15億ドル(1505億円)で87.0%増、
純利益は6億6400万ドル(664億円)で374.3%増。

増収大幅増益。
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ロドニー・マクマレンCEOは、
2つの戦略が奏功した結果だとコメントする。
⑴生鮮食品によってけん引する
⑵デジタルを加速する
〈Supermarket Newsより〉
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そして最後に一言。
「常に顧客中心マインドをもつ
社員たちの努力の賜物です」

英語で”appreciate”というけれど、
コメントの最後では必ず、
社員、従業員を評価して、感謝する。

向かうところ敵なしだったオンライン商売が、
やや低調となったのか。

オフラインとオンラインの両立、
店舗とネットの融合が、
顧客に評価されるということか。

アメリカのビッグ3の四半期決算の三者三様が、
それを物語っている。

ああ、アメリカの現場を見たい。

店舗や売場の現場に立つことによって、
何らかの情報を感じ取ることができる。
創造していたことと現実の齟齬を、
見つけることができる。

オミクロン株のBA.5によって、
われわれ日本の側に、
渡米への壁ができてしまった。

WHO(世界保健機関)から、
日本の1週間の新型コロナ新規感染者数が、
世界で最多と発表された。

1週間で96万9068人。

アメリカなどPCR検査を、
日本のように厳密にやっていないから、
この数字も絶対的に正しいとは言えない。

それでもヨーロッパでは、
新規感染者数は減少傾向にある。

日本はまだまだ増え続けている。

私には現場の情報への渇望がある。
アメリカやヨーロッパの現場への渇望は、
この3年間、さらに強くなった。

故上野光平さんは、
『自己啓発のすすめ』に、
「情報化人間」の3つの特質を記している。
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情報人間の特質の第1は、
人間の生活に対する、
生き生きとした感受性である。
「全身をアンテナにして生きること」である。

これは知識とは違う。
「今を生きるという姿勢」である。

第2は「好奇心」である。
先生や他人の意見ではなく、
自分が直接自分の目で見たい、
自分の耳で聞きたい、
自分の五感で感じ取りたいという欲求である。

第3は「感性と理性との統合」である。
「感性の独走ではない」。
上野光平
昭和62年(1987年)の著作であるから、
「情報≠デジタル」の時代だった。

けれど私が欧米に対して渇望する情報は、
上野光平の3つの特質と同期する。

ああ、アメリカの現場を見たい。

〈結城義晴〉

2022年07月28日(木曜日)

「2022JCSI」オーケー1位の意味と「徒然草」の「物と争はざる」

横浜商人舎オフィスに出社して、
ZOOMによるミーティングを二つ。

ひとつはTrue Dataの面々。

この3年間の購買データをもとに、
商品動向を子細に分析した。

いい内容だった。
月刊商人舎8月号に掲載する。

もうひとつは、
食品メーカーの担当者へのインタビュー。

山本恭広商人舎編集長が話を聞くのを、
オンラインで傍聴していて、
最後にカメラをオンにして、
ミュートを解除して、
顔を出して、あいさつした。

ありがとうございました。

それ以外は、
1日中、リテール・マーケティングを考えた。
小売業のマーケティングの本質。

倉本長治の「商売十訓」。
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これを精神論と批判する人がいる。

しかし第一訓。
「損得より先に善悪を考えよう」
これはドラッカーの言うインテグリティである。

精神論ではなくて、哲学である。

第二訓。
「創意を尊びつつ良いことは真似ろ」
これがイノベーションである。

イノベーションは精神論では生み出せない。

第三訓。
「お客に有利な商いを毎日続けよ」

「有利な」というところは、
かつては経済性を意味した。
つまり生活マネジメントを支えるもの。

現在は生活エンターテインメントを含む、
「お客に有利」でなければならない。

それが小売業マーケティングの本質だ。

この点においては、
断じて揺るぎはない。

小売業や流通業における、
著名なコンサルタント諸氏の論を引いて、
もちろん具体的な名前を出して、
このあたりを説明すると、
実にわかりやすいものになる。

それも必要なのだと考えた。

この夏、単行本の第一稿に取り掛かる。

大筋はできているが、
その私だけの登頂ルートが、
ちょっとだけ見えてきた。

ありがたい。

どんな本も原点にもどって始める。
それが正しい道だ。

さて流通SuperNews。
オーケーnews|
JCSIの2022年度第1回調査スーパーマーケットで1位獲得

恒例のリサーチだ。
公益財団法人日本生産性本部の、
サービス産業生産性協議会の調査。

JCSIと称する。
「日本版顧客満足度指数」
その2022年度第1回調査。
スーパーマーケット業種において、
オーケーが顧客満足度第1位を獲得した。

「スーパーマーケット”業種”」というのが、
まず変だがそれはさておいて、
この調査の6指標すべてで、
オーケーは1位。
⑴顧客期待
⑵知覚品質
⑶知覚価値
⑷顧客満足
⑸推奨意向
⑹ロイヤルティ

素晴らしい。

しかし今回の2位は業務スーパー、
3位はドン・キホーテ、
4位はイオン。
顧客満足度調査2022
失礼ながら、
2位に業務スーパーが入ってくると、
「?」の気持ちが湧いてくる。

調査は必ず調査対象と調査母数を、
確認しなければならない。

その調査対象が今回は、
たった7企業・ブランド。

これではほとんど意味がない。

来年もこの程度ならば、
流通SuperNewsでは取り上げない。

ちなみに2019年は対象が22企業だった。
そして結果は1位オーケーだったものの、
2位コストコ、3位万代、
4位は同スコアでヤオコーとトライアルだった。

対象企業がどんどん参加を止めていって、
7企業・ブランドとなった。

調査期間は2022年5月18日~5月27日、
回答者数は2万5167人、
(順位に含む64企業・ブランドの回答者は2万0986人)
調査方法は、
インターネットモニターを活用した2段階調査。
設問数は約110問。

オーケーの指標は変わらないようだが、
それ以外に伸びた企業があるかもしれない。

オーケーの総合スコアが77.1で、
業務スーパーが71.5。

回答者の設定や設問そのものにも、
どこか問題があるかもしれない。

ちなみにコンビニエンスストアは、
1位セイコーマート77.3、
2位セブン-イレブン71.2、
3位ミニストップ67.6。
顧客満足度調査2022コンビニ
調査対象は6企業・ブランドで、
日本フランチャイズチェーン協会の、
毎月の販売調査の7チェーンから、
ポプラが欠けただけ。

これならばスーパーマーケットよりも、
断然、信頼性が高いし、
妥当だと思える。

だからセイコーマートの評価は素晴らしい。
赤尾洋昭さん、おめでとう。

日本生産性本部は知る人もいたし、
一緒に仕事をしたこともあるけれど、
このスーパーマーケット調査は、
再考したほうがいいだろう。

朝日新聞「折々のことば」
第2450回。

人としては善にほこらず
物と争はざるを徳とす。
他にまさることのあるは
大きなる失なり。
〈兼好法師『徒然草』(小川剛生訳注)から〉
51pG+gjz2YL

法師は説く。
「自分の長所を誇ったり
人と徒(いたずら)に競ったりしないこと。
人より優れてあるのはむしろ大きな欠点だ」

「格式の高さや才能の豊かさなどを
意識する姿はなんとも見苦しい」

「真に優れた人は
おのれが欠くところを知っているので、
慢心することがない」

「比較ということが
嫉妬や羨望(せんぼう)を促し、
自意識を煽(あお)って、
人としての品位を落とす」

現代の小売業の競争では、
ここまでは意識できない。

物と争はざるを徳とす」

しかし「他にまさること」を、
誇示ばかりしているのは、
日本的ではないのだろう。
少なくとも吉田兼好的ではない。

自分からは誇示しないけれど、
自分の顧客からは、
断然、支持されている。

その奥ゆかしさも、
小売業やサービス業では、
いいもんだと思う。

そんな店を好む顧客は、
多いはずだ。

「私の店」と思えるからである。

〈結城義晴〉

2022年07月27日(水曜日)

大久保恒夫西友CEOインタビューと上野光平の「最高で無比」

全国の新型コロナ感染陽性判明者数。
20万9694人。
1日の陽性者数過去最高。

NHKがまとめた時系列グラフ。
zennkokukoronakansennsya
東京都が2万9036人。
3万人に手が届く。

大阪府も2万1860人。

2万人以上は1都1府。

1万人以上は5県。
神奈川県1万6554人、
愛知県1万4801人、
埼玉県1万2892人、
福岡県1万1188人、
兵庫県1万0152人。

オミクロン株のBA.5の威力。

感染すれば軽症と判断されても、
10日間の自宅隔離生活を指示される。

「オミクロンはただのインフルエンザだ」
などとは言っていられない。

横浜商人舎オフィスで、
抗原検査をした。
IMG_44772

これを両方の鼻の穴に突っ込む。  IMG_44802

そしてこの液体と揉む。IMG_44822

それをキットの検査器に3滴垂らす。IMG_44742

陰性の[C]となった。
IMG_44782

そこで横浜から横須賀線に乗り込んで、
赤羽へ。

1本でつながっていて、
便利だ。

大暑を過ぎて、
空はちょっと秋めいてきた。
IMG_43062
それでも東京の最高気温は、
33.6℃。

横浜が32.2℃だから、
東京のほうが暑い。

㈱西友の本部を訪れて、
大久保恒夫さんのインタビュー。IMG_44942
いつも笑顔で、
「わが社はおかげさまで、
絶好調です」

1時間ちょっと、
話をして、
大いに満足。

ありがとうございました。

そのあと、赤羽店を視察し、
写真撮影。

絶好調の理由は歴然。

店が蘇っている。

掛谷愛さんにご案内いただいて、
一緒に写真。
IMG_42982

掛谷(かけたに)さんは、
経営企画本部広報部ディレクター。
プロパーで西友一筋。
IMG_43012
渡邊紀征さんが社長の時代に入社した。

私はそのころ㈱商業界の取締役で、
販売革新の編集長だった。

その後、社長に就任して、
販売革新2004年6月号巻頭言に、
「リー・スコットへの手紙」を書いた。

今でも残っている。

それを渡邊さんが読んで、
翻訳して米国のスコットさんに送ってくれた。

読み直してみると、
我ながらちょっといい。

掛谷さんにそんなことを話した。

西友の看板の前で、
写真を撮らせてもらった。IMG_43042
1977年に西友の取材を始めてから、
もう45年が経過する。

最初のころの本部は、
池袋西武百貨店の隣の雑然とした建物にあった。

その後、サンシャインビルができると、
その四十数階に本部は移った。

高層ビルから東京の街を見下ろして、
小売業の商売ができるのか。

そんなことを思った。

当時、シアーズ・ローバックが、
シカゴのシアーズタワーを本社にしていた。

西友セゾンもそれに倣ったのか。

その後、ウォルマートに買収されると、
本部費を下げるために、
赤羽店の2階に移動して今に至る。

今のほうが西友らしい。

上野光平先生を思い出す。
上野光平
上野先生は大正13年(1924年)生まれで、
イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんと、
同年だった。

小売業界の誰からも尊敬されていた。
ダイエーの中内功さんから、
スカウトされかかったが、
西友に留まった。

しかし63歳で逝去された。

オーナーの堤清二さんは、
昭和2年(1927年)生まれ。

大学と政治活動の後輩の堤さんに請われて、
西武百貨店に入社した。
その後、西友ストアーを創業して、
支配人や副社長を歴任し、
最後は流通産業研究所理事長・所長。

人柄はすこぶる穏やか。
業界随一の読書家、勉強家で、
高くて広い視野をもっていた。

日経流通新聞の最終面全面に、
1カ月に1回、「流通論壇」を書いていた。

その月に発刊された最新刊を、
何冊も何冊も丁寧に読み込んで、
的確なで鋭い分析をしていた。

私はその上野光平の「社外の弟子」だった。

今でも雑誌や本を出すたびに、
上野先生の眼鏡にかなうか、と考える。

今年の商人舎1月号の特集のまえがきに、
その上野光平さんの文章を引いた。

私の手元にある西友ストアーの社内報、
1967年6月の「今月のことば」からの引用だ。

「私たちに課せられた
課題の大きさに比べて、
私たちの仕事の質の低さに
いらだたざるを得ないのも
事実であります」

「私たちの課題は、
“最高で比べるものもない”
ということであります。
私たちの規模と社会的責任とは、
私たちに最高かつ無比の
仕事のレベルを要求しております。
私たちはこの要求に
応えなければなりません」

「商品部の諸君、
あなた方は戦略商品群について、
“最高で無比の”戦略体制を
実現しているのでしょうか」

「管理部の諸君、
あなた方は経営管理の精度と
合理化と管理コストにおいて、
“最高で無比の”業績を
達成しているのでしょうか」

「店舗の皆さん、
あなた方は高い労働生産性と
低い店舗コストによる運営によって、
“最高で無比の”店舗運営を
しているでしょうか」

「課題への挑戦には、
自己満足のひとかけらも
許されないのです」(上野光平)

大久保さんの話から、
上野さんの言葉を思い出した。
「課題への挑戦には、
自己満足のひとかけらも許されない」

今日、日経MJから、
第55回小売業調査が発表された。

セブン&アイとイオンが、
10年ぶりに逆転した。

それは、
商人舎5月号[特別企画]
セブンとイオン「逆転のダイナミズム」

しかし日経MJでは、
どういうわけか西友が、
ランキングに載っていない。

月刊商人舎6月号特集は、
2022決算を俯瞰する
ポストコロナの小売業、どこへ向かうのか?!

この特集では、西友もランキングした。
第15位で営業収益7373億円。
202206_ranking1

今も大久保西友は、
「高い労働生産性」と
「低い店舗コストによる運営」によって、
“最高で無比の”店舗運営を、
目指している。

〈結城義晴〉

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