結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年05月30日(日曜日)

ワクチン開発の歴史物語とワクチンの知識

「ワクチン」は、
ルイ・パスツールが命名した言葉だ。

パスツールは「近代細菌学の開祖」とされ、
ワクチンの予防接種方法を開発した。
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低温殺菌法もパスツールの開発。
だからパスチャライゼーション(Pasteurisation)という。

私たちはワクチンでも、食品に関しても、
パスツールに感謝しなければならない。

しかしそのパスツールは、
エドワード・ジェンナーの功績を評価して、
ラテン語の雌牛を意味する”vaca”から、
“vaccine”という言葉をつくった。

ジェンナーは、
産業革命が進む1749年に生まれた。
そして医者になった。

そのころは天然痘が流行していた。
ジェンナーは独自の研究と人体への実験で、
「牛痘の原因と効果の調査」という報告を書いた。
このなかで天然痘の予防法が示された。

家畜の牛にも「牛痘」という病気があった。
人間の天然痘によく似た症状を示した。
そして乳搾りをする人に牛痘が感染した。

ジェンナーの生まれ故郷には、
言い伝えがあった。
「牛痘に感染すると二度はかからない。
そのうえ天然痘にもかかりにくい」

言い伝えではあったが、
科学者の態度でジェンナーは、
これを検証しようと考えた。
そこで8歳の少年で人体実験を行った。

実験は成功して、牛痘を接種した少年は、
人間の天然痘にかからなくなった。
人類初のワクチンの発見であった。

それから約200年後の1980年、
天然痘は根絶された。
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手塚治虫の「陽だまりの樹」には、
大阪の関塾の緒方洪庵が、
人々の偏見や反対を押し切って、
牛痘を接種する話が出てくる。
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私たちはジェンナーにも洪庵にも、
そして手塚治虫にも、
感謝しなければならない。

ワクチンの発明と普及は、
2021年のコロナ禍で、
唯一と言っていい救世の手立てだ。
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そのワクチンは今のところ、
3つに分類される。

第1が、
実際のウイルスを使ったワクチン。

ジェンナーや洪庵と同じものだ。

⑴生ワクチン
実際のウイルスや細菌の中から、
毒性の弱いものを選んで増やす。
そして毒性の弱いウイルスそのものを
体内に入れることで免疫が働き、
ウイルスを攻撃する抗体などを作り出す。

はしかや風疹などに使われている。

⑵不活化ワクチン
実際のウイルスをホルマリンで加工するなどして、
毒性をなくしたものを投与するワクチン。

季節性インフルエンザワクチンがこれだ。
これも実際のウイルスを使ったワクチンである。

第2は、
「スパイクたんぱく質」ワクチン。

ウイルスそのものは使わず、
「スパイクたんぱく質」を、
人工的に合成したものを投与する。

「スパイクたんぱく質」は、
ウイルスの表面に出ている突起で、
ウイルスを攻撃する抗体の目印となる。
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それを人工的に作って投与することで、
人に備わっている免疫の働きが活性化され、
抗体が作り出される。

⑶VLPワクチン
ウイルス様粒子(virus like particle:VLP)を、
ベースとして開発されたワクチン。
VLPは動物や細菌、昆虫、酵母や植物など、
さまざまな種類の細胞で製造する。

⑷組み換えたんぱく質ワクチン
遺伝子組み換え技術を使って、
人工的にたんぱく質を作って投与する。

新型コロナウイルスでは、
日本の塩野義製薬が開発を進めている。

第3が、遺伝子ワクチン。
これは人工的に合成した、
ウイルス遺伝子を使うワクチン。

⑸mRNAワクチン
COVID-19に対して、
世界で初めて実用化された。

スパイクたんぱく質を作るための
遺伝情報を伝達する物質「mRNA」を使う。

人工的に遺伝子を作って、
注射で投与することで、
体の中でスパイクたんぱく質が作られ、
それに免疫が反応して抗体が作られる。

米国のファイザーやモデルナのワクチン。
日本でも第一三共が開発中だ。

⑹DNAワクチン
DNAを人工的に作り出して、
ワクチンとする。

投与されたDNAは、
体内の細胞の中で核に入り込んで、
これもmRNAをつくる。
それによってスパイクたんぱく質が作られる。

⑺ウイルスベクターワクチン
ウイルスのスパイクたんぱく質を作る遺伝子を、
無害な別のウイルスに組み込んで、
そのウイルスごと投与するワクチン。

「ベクター(vector)」は媒介するもの。

無害なウイルスがベクターとなって、
細胞に感染して、
スパイクたんぱく質をつくり、
抗体ができる。

英国アストラゼネカのワクチンがこれだ。
ジョンソン&ジョンソンのワクチン、
ロシアの「スプートニクV」もこのタイプ。

日本では⑸のmRNAワクチンが使われている。
私の新著『コロナは時間を早める』では、
第七章でこの話を取り上げている。
コロナ本
〈お願いします。読んでみてください〉

もともと癌治療薬として開発されていたのが、
ビオンテックの「mRNA」技術だった。

それがCOVID-19に転用され、
奇跡的なスピードで実用化に至った。

私たちはこの開発に携わったトルコ人、
ウグル・サヒンとオズレム・トゥレシに、
感謝しなければならない。

遅ればせながら日本でも、
ワクチン接種が進む。

私はこのとき、
心から感謝したいと思う。

パスツールにジェンナーに、
緒方洪庵に手塚治虫に、
サヒンやトゥレシに。

〈結城義晴〉

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