結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年05月15日(土曜日)

セブン-イレブンの「データ見るな」の「危機感と腹落ち」 

「僕らは数えてばかり」
イタリアの作家パオロ・ジョルダーノ。
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しかし数えざるを得ない。

新型コロナ新規感染者は、
大阪府785人、東京都772人。

愛知県596人、北海道566人、福岡県522人。

そのうえ地方の市や町に、
感染は急拡大している。

人口10万人あたりの感染者の目安として、
「ステージ4」は25人以上だが、
この最も深刻なステージにあるのは、
5月13日の時点で22都道府県となった。

福島県や香川県、宮崎県もステージ4。

何もしなければ地方に伝染していく。
水は高きから低きに流れる。

「後手後手のモグラたたき」の政策。
データを見てほしい。
現場を見てほしい。

ああ。

日経新聞の月曜日の「経営の視点」
5月10日に編集委員の田中陽さんが、
とてもいい視点を提供してくれる。
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「セブン”データ見るな”の理由」

スイスのビジネススクールIMDの指摘。
デジタル化で大きな影響を受ける業界として、
1番目がメディア・エンターテインメント、
2番目が小売業であるそうだ。

田中さんは言う。
「小売りの世界に”新しさ”は欠かせない」

同感だ。

ピーター・ドラッカーが言っている。
「イノベーションの必要性を
最も強調すべきは、
技術変化が劇的でない事業においてである」
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「日本より数年早く
無人店舗が話題となった
中国では下火になっている」

「物珍しさはすぐに飽きられ、
日常の風景に引き戻される」

田中さんは文章家だ。

「小売業の本質とは省人化ではなく、
買いたい商品が売り場にちゃんとあるか、
期待以上の商品やサービスがあるか、
だからだ」

「大半の商品に印字してあるバーコード。
「これを約40年前に本格活用したのが
セブン-イレブン・ジャパンだ」
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「小さな店舗に過剰在庫は許されない。
同社には”単品管理“という業務フローがあり、
売れ筋商品をきめ細かく把握し、
メーカーや卸に迅速に発注する」

創業者の鈴木敏文さんの言葉。
「単品管理の精度を上げるには
バーコードによるPOSデータの分析は
必要だった」
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当初、バーコード導入には、
消極的なメーカーもいた。
「商品デザインの邪魔になる」

しかし、
「セブンは押し切った。
バーコードがないと取り扱わない」と。
このあたり、いかにも鈴木さんだし、
鈴木さんでなければできない。

「その結果、死に筋商品がカットされ、
在庫が激減。
売れ筋商品の品切れを防いだ」

「同社の業績は飛躍的に向上し、
バーコードも普及した」

セブン-イレブンは創業時から、
レジに年齢層と性別のボタンが設置され、
店員が一人ひとり判断してボタンを押す。

それがPOSデータと組み合わされて、
マーケティングデータとして活用される。

だからID-POSデータの活用も、
一部でしか行っていない。

しかしバーコードを共有することで、
「小売価格などを巡り、
対立関係になりがちだった
メーカーと小売りは
データを共有することで
同盟関係へと変わり、
共同開発によるPBへと発展した」

有名な「チーム・マーチャンダイジング」である。

「いまは電子マネーとリンクさせて
精度を高めている」

「セブンはバーコードを
公共料金の請求書に印刷することで
収納代行も実現。
さらに24時間営業の銀行を設立し、
既存の金融機関から顧客を奪った」

ここで田中陽さんの問題提起。

「デジタルトランスフォーメーションに
必要なものは何か」

そして解答。

「デジタルを活用しないと
生き残れないという危機感と、
現場の従業員一人ひとりが
納得して取り組む
“腹落ち感”ではないだろうか」

この指摘が秀逸だ。

「危機感」と「腹落ち」。

セブンはまれに、
本部から全店舗に指示が飛ぶ。
「発注のためのデータを一切見るな」

「POSデータはもちろん、
天気予報、運動会や道路工事といった
付近のイベント情報など、
発注に日ごろ活用している情報なしで
仕事をする」

後者を「コーザルデータ」という。

「現場は悪戦苦闘しながら、
データが魅力的な売り場づくりに
いかに大切か再認識し
“腹落ち”する。
それが本部の狙いだ」

これはすごいことだ。

チェーンオペレーションにおいて、
現場の腹落ちを意図する。

これこそ小売業のXformationだ。
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「セブンは4月の既存店売上高が
2年前の4月を上回り、
コロナ前の水準に戻ったようだ」

店頭を見ていると、
かつてのような断トツ感は薄れたが、
回復は他チェーンより早い。

「だが、デジタルの主戦場となった
ネット事業では苦戦を強いられている」

田中さんの結論。
「そこには危機感と腹落ち感が
まだ醸成されていないからだろう」

「自動化、無人化は
時代の流れに違いないが、
そこにちゃんと小売りの本質、
意思を組み込めるか」

「店の形でなく中身の勝負だ」

同感だ。

日経だけでなく、
広くジャーナリズムを見渡しても、
田中さんのような分析的現場視点は、
ほとんどない。

しかも文章家だ。

鈴木敏文さんは、
「他社の店を見るな」とも言った。

データを見るな、
他店を見るな。

異論反論もあろうが、
これは「危機感」と「腹落ち」の、
学習システムだと考えると、
それこそ「腹落ち」する。

もともとデータを見ない企業、
ストアコンパリゾンをやらない商人に、
データを見るな、店を見るなとは、
誰も言わないだろう。

日本政府のコロナ対策に対しても、
データを見よ、現場を見よ、
と言わねばならない。

〈結城義晴〉


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