結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年01月11日(金曜日)

オール日本スーパーマーケット協会の講演会報告

1月10日 パンパシフィック横浜 ベイホテル東急。
オール日本スーパーマーケット協会(AJS)新年トップ経営研修会。

私はかれこれ、25年、
この研修会には、ほぼ欠席なしで、
ご招待いただき、出席している。

今年の参加者545人。

「知恵の共同仕入れ」を趣旨にして、
トップが毎月集まって研修をするグループ。
店長研修をはじめとして、数々の研修も展開。
いわば、スーパーマーケット学校のような存在。
AJS1 

さて、荒井伸也会長のご挨拶。
現状報告と、秀逸の持論の展開。

「昨年年末1週間の実績は、
AJS加盟スーパーマーケット企業トータルで、
100.3%だった。
天候が崩れたという条件を考えると、
結果は、良かった。

昨年通算で見ると、2月、6月のみ前年割れ。
あとは前年をクリア」

なかなかの健闘ぶり。

「現在、AJS のグランドデザインを描いている。
私たちの目指すものは、
第1に、良いマネジメント体制を確立すること。
第2は、良いお店、良いスーパーマーケットをつくること」

「商品面では、
小売業が仕様書発注でPBをつくると、
安くできるといった量に対する間違った信仰がある。
小売業の競争とメーカーの競争は、根本的に違う。
小売業の競争は半径2キロの範囲内において起こる。
その中で一番のシェアを取ることが、何よりも大切。
すなわち、地域一番店をつくること。
だから、強い生鮮食品と惣菜の店をつくる。
私たちは、その状態をつくりたい」

私が最近使う「イーチストア」の強さと同様の考え方。
賛成。

 

次は岡島正明農林水産省総合食料局局長の講演。
タイトルは『我が国の食料事情をめぐる状況について』
AJS2
国際的な食糧事情の変化を、
専門家のデータ、専門家の視点から展開。

世界人口の変化と農業生産の不安定化。
地球温暖化が世界の食糧生産に大きな影響を与えている。
バイオ燃料拡大が、これも食糧生産に影響を与えている。
世界の穀物の需要量と生産量はほぼ対応しているが、
期末在庫率は、「食糧危機」と言われた1970年代前半を下回る水準。
そこでわが日本、輸入食料の確保が難しくなる可能性あり。
食料調達に支障が生じるケースも出ている。
我が国の食料自給率は、主要先進国の中で最低水準。

「この国としてどうしていくのか」という問題提起。

さて、どうしたものか。

 

最後は、寺島実郎(財)日本総合研究所理事長の特別講演。
『2008年 世界の潮流と日本経済の行方』
私には、刺激的で、示唆に富んで、おもしろかった。
AJS3
大中華圏の経済力は、4兆3000億ドルで、既に、
日本に肩並べ、追い抜くところまで来ている。

さらに、イギリス・インド・シンガポール、そして豪州の
ユニオンジャックアロウが力を持っている。

そこに中東・ロシアのオイルマネー。

21世紀に入ってから、地球全体のGDPの成長率は3.5%だった。
世界は人類の歴史始まって以来の高成長、
世界でマイナス成長ゾーンはない。
世界貿易、すなわち物量経済は7%伸びた。
しかし、
金融経済は何と14%も伸びた。

「実態経済をはるかに上回る金融経済」

何か変だ

原油は99年2000円、07年8826円。
なぜ、日本でパニックになっていないのか。

1 通貨為替で半分は吸収
2 エネルギー利用効率の37%改善でパニック吸収
3 ガソリン税格差で吸収。
日本では、今、リッター100円のとき50.9%が税金。
アメリカの税率18.3%で、ガソリン税率低いから、値上がりが直撃。
ちなみに、ドイツ72.4%。

2008年に、パラダイム転換の予兆あり。
国内では、川上インフレ・川下デフレ。

その他、現在の世界経済の動向の謎ときが、
ふんだんに盛り込まれた講演。

残念ながら、時間切れ模様で、結論まで至らず。

最後の提案の一つは、
「日本では、定住人口は、減る。
しかし移動人口を、増やせばよい」という政策。

「国際間・国内間の移動によって、金融資産の在り方を変える」
というもの。

 

さて講演会の後は、懇親会。
私は、荒井会長と並んで、上座。
恐縮。

夜は、部屋で、いつものように、大議論大会。
夜は更けて、
私は、明朝の、ブログ書きのことを心配していた。

皆さんに、感謝。

<結城義晴>

 


8 件のコメント

  • 昨日のブログ楽しく拝見しました。
    荒井会長の「地域一番店主義」信じて、同感して切磋琢磨で頑張っています。
    健康に気をつけて、再離陸を楽しみにしています。
    サミットさんを訪問して、週末は苗場SKIに行きます。

  • >だから、強い生鮮食品と総菜の店をつくる。

    >「日本では、定住人口は、減る。
    >しかし移動人口を、増やせばよい」という政策。

    >「国際間・国内間の移動によって、金融資産の在り方を変える」
    海外からの不動産投資を都市部の土地、ビルでなく、日本の農地
    に振り向け、農業、畜産業の再振興を図る。

    日本の農業従事者は年の半分は日本で、もう半分は豪州
    (南半球)で農作物を作る。それに、フィリッピン人の看護婦
    さんのように海外からの農業従事者も迎えいれる。

    食料自給率の問題、米と水産物を除くと15%ですよね。
    トレースとか、安心安全とか、色々なことが言われます。

    日本の農業技術で安心な国産農作物を作り、それを使った
    おいしい惣菜の店も有りじゃないでしょうか。

    季節、旬を考えた本当に美味しい商品作りを通じ、「食育」
    にも注力することで、正しい需要喚起。

    国籍法、移民法、関税。色々と解決すべき問題、課題は多
    そうですが、日本も、まだまだ、何とかなりそうですね。

  •   田中さん、ご指摘ありがとうございます。
      惣菜に訂正しました。

  •    ずっと出張で、失礼。
       松本さん、ありがとうございます。
       川崎進一先生の師事したルネ・ユーリックは、
       まず地域で25%の構成比を取れば信頼ができる、
       40%を取れば、経営は安定する、と言いました。
       どのフォーマットにも商圏があります。
       その商圏内で、40%を取ること。
       二番手、三番手を合わせても、絶対にそれ以上となる
       51%が安定経営でしょうか。
       頑張って。

       

  •    Toddさん、投稿感謝。
       寺島実郎さんの講演に関しては、 
       興味深いデータが満載されていました。
       改めて、農と商との関係性の中で、
       日本の国内需要活性化の産業論を
       考え直し、論理化したいと思っています。
       一緒にやりましょう、
       議論しましょう。

  • 結城先生、お返事有難うございます。
    寺島実郎さんのデータ、内容が凄く気になります。
    今度、ぜひ、ここでもご紹介をお願いします。

    議論へのお誘い、ありがとうございます。コメントの
    欄内ではとても書きつくせそうにありませんが、お言
    葉ですので、早速。

    国内需要の活性化、まず、「需要」という言葉の現実
    味のある定義が必要かもしれないと思います。

    浦島太郎が今の日本の業界を見ると、伸び盛りの頃に
    作られた製造、物流インフラを使わなければいけない。
    販売什器も過去の需要旺盛気期に決まった場所、サイズ。
    でも売上は当時の半分以下。

    加盟店は毎日2?3割の不良品を出し続けながらも、
    複数便の発注を繰り返す。需要を追い続ける為、什器
    を埋める為(?)、
    ここでの需要とは実需要+仕組みに起因するロス+発注
    精度によるロス。

    あまりにも色々なロスや無駄を含んだものを、各自、
    其々の立場で単に「需要」と呼んでいるようだ。累積
    された膨大な量のロス、無駄を先ず定量化し、それを
    無くす試みを社会全体で真剣に考えていかないといけ
    いと思います。

    小売の現場で考えると、例えば、全店年中無休から経
    済性を重視した営業時間設定。欠品させない発注から
    売り切る発注と売場展開。既に取り組みをされている
    ご同業も多い。

    食の安心安全も、食資源が豊富にあるから考える必要
    がある。保存料を外すのは今を勝ち抜く戦術。でも、
    これからは食資源自体がなくなる。その事実に対する
    戦略を立てておかないと生き残れないと思う。
    また、ご指導頂ければ幸です。

  • 結城先生、お返事有難うございます。
    寺島実郎さんのデータ、内容が凄く気になります。
    今度、ぜひ、ここでもご紹介をお願いします。

    議論へのお誘い、ありがとうございます。コメントの
    欄内ではとても書きつくせそうにありませんが、お言
    葉ですので、早速。

    国内需要の活性化、まず、「需要」という言葉の現実
    味のある定義が必要かもしれないと思います。

    浦島太郎が今の日本の業界を見ると、伸び盛りの頃に
    作られた製造、物流インフラを使わなければいけない。
    販売什器も過去の需要旺盛気期に決まった場所、サイズ。
    でも売上は当時の半分以下。

    加盟店は毎日23割の不良品を出し続けながらも、
    複数便の発注を繰り返す。需要を追い続ける為、什器
    を埋める為(?)、
    ここでの需要とは実需要+仕組みに起因するロス+発注
    精度によるロス。

    あまりにも色々なロスや無駄を含んだものを、各自、
    其々の立場で単に「需要」と呼んでいるようだ。累積
    された膨大な量のロス、無駄を先ず定量化し、それを
    無くす試みを社会全体で真剣に考えていかないといけ
    いと思います。

    小売の現場で考えると、例えば、全店年中無休から経
    済性を重視した営業時間設定。欠品させない発注から
    売り切る発注と売場展開。既に取り組みをされている
    ご同業も多い。

    食の安心安全も、食資源が豊富にあるから考える必要
    がある。保存料を外すのは今を勝ち抜く戦術。でも、
    これからは食資源自体がなくなる。その事実に対する
    戦略を立てておかないと生き残れないと思う。
    また、ご指導頂ければ幸です。

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