結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年11月11日(水曜日)

コーネル・ジャパン第二期[贅沢版]川野・横山・荒井・結城連続講義

10月の「景気ウォッチャー調査」。  
2カ月ぶりに下落。

全国約1800人の商店主・中小企業経営者の「街角の景況感」を、
指標化して、景気の現状を示す。

販売側が低価格志向を強めると同時に、
購買側も家計支出を節約し、
街角景気は売上げ減を訴える。

製造業は業績が持ち直してきたといわれるが、
そこでも、価格競争は激化している。

11月、12月と、年末に向けて、
「景気のいい話」は聞かれない。

しかし、今こそ必要なのは、
「長い目」で見ること。  
景況も消費も、自分の商売も。

近視眼ではいけない。

さて、昨日からコーネル大学RMPジャパン。
RMPはリテール・マネジメント・プログラムの略。

その第二期の第2回11月講義が始まった。
東京・市ヶ谷の法政大学キャンパス。

午後12時15分から、講座ナンバー9。
「商業の理念と現代化の思想」  
講師は、副学長の結城義晴。
1
まずは、第1回講義のレポートに関して。
明日の最終講義で7人の発表者を指名。

それから講義。

商業近代化の歴史から始まって、
世界の中の小売業の位置。
そして「働きたい企業ランキング」と、
顧客満足・従業員満足。
さらに日本標準産業分類と、
「戸籍のない産業スーパーマーケット」。  
この話になると私、興奮してくる。
y2
最新商業統計と業態のライフサイクル。
最後に商業の理念としての『商売十訓』と、
「商業界50年宣言」。  

商業の現代化のためには、
まず理念が不可欠だと思う。
それが『商売十訓』に凝縮されている。

一 損得より先きに善悪を考えよう
二 創意を尊びつつ良い事は真似ろ
三 お客に有利な商いを毎日続けよ
四 愛と真実で適正利潤を確保せよ
五 欠損は社会の為にも不善と悟れ
六 お互いに知恵と力を合せて働け
七 店の発展を社会の幸福と信ぜよ
八 公正で公平な社会的活動を行え
九 文化のために経営を合理化せよ
十 正しく生きる商人に誇りを持て  

これは商業の近代化を推進した理念だが、
現代化の中でも貫徹されねばならない哲学だ。

その上で、現代化のために何をくみ上げるか。

私は、「知識商人」の養成であると考えている。
なぜなら、ポスト・インダストリアル社会は、
知識社会であり、その時、
知識商人こそが、主役になると信じているからだ。

31名の第二期生は、全員が熱心に聞いてくれた。
3

第二番目の講座ナンバー10は、
ヤオコー会長の川野幸夫さん。
日本スーパーマーケット協会会長。
k4
タイトルは「『何屋』になるか」  
流通革命に触発されてこの世界に入り、
企業理念こそが経営にとってまず大事であると認識。
その上で「商売のコンセプト」を明確にする。
理念とコンセプトは、ぶれてはいけない。

マーケティングは、
十人一色から十人十色へ、
そして一人十色へ。
だから、どんな商売も専門店化の発想が必要。

ヤオコーは、ライフスタイルアソートメントストアを目指し、
そのために「個店経営」と「全員参加」の商売を構築した。
堺屋太一の「大変な時代」の果てに、
「生産者主権から生活者主権への転換」がやってきている。
生活者主権の時代こそ、小売業の出番がやってくる。
そんなストーリー。
k5
「お陰様で」の気持ちを会社全体で持ち続けること。
「生活者主権の、私たちの時代が来る」
川野さんの数々の言葉が印象に残った。
とりわけ理念と商売のコンセプトを貫くことの大切さが、
強調された。

講義終了後、講師控室で写真。
ありがとうございました。
k6

そして大塚明さんと中間徳子さん。
o
大塚さんは、日本スーパーマーケット協会専務理事で、
コーネル・ジャパン講師でもある。
中間さんはFMIジャパン事務局長。

第三番目の講座番号11は、横山清さん。
アークス社長にして日本セルフ・サービス協会会長。
タイトルは「私の経営哲学 八ヶ岳連峰経営」  
y8
パワーポイントを駆使しての講義は、
資料もふんだんに入っていて、
アークスと横山さん自身の歴史と現状が十二分に理解できた。
そして将来への強い意志が感じられた。
y9
八ヶ岳連峰経営とは、
経営資源を一か所に集中して、
人材と資金を効果的に使うこと。
「関わる者は皆、取り込む」
「決めたら徹底的にやる」  
印象的な発言が、対から次に飛び出してくる。
最後に「創発」と「羽化」の概念。
「創発」とは、  
進化論を超えた新しい事態の発生や進化のこと。
横山さんは、こう定義する。
「一つひとつの小さな行動が相互に影響しあって、
クリティカル・マスに到達したときに、
予想を超えた構造変化や創造が誘発される」  

そして「羽化」
「今まで泥沼の中にいたのが、
細胞まで変わって変身し、
飛翔力を得て飛ぶようなイメージ」  

横山さんはアークスを、羽化させようとしている。

最後の言葉。
「謙虚で、まじめで、
ズルをしない方がうまくいく」  

これが、とてもよかった。

最後の講座ナンバー12は、荒井伸也首席講師。
オール日本スーパーマーケット協会会長。
テーマは「スーパーマーケット原論1」  
日本でスーパーマーケットを作るとはいかなることだったのか。
こんなサブタイトルがつけられている。
a10
荒井先生の講義は、いつものように理路整然。
経験に裏打ちされた理詰めの話が、
これでもかとあふれ出てくる。

アメリカのスーパーマーケットはどのようにして生まれたのか。
その歴史的理論的背景。
そしてスーパーマーケットの「日本伝来」。
その時の問題点。
日本はマネジメントの基本的な考え方に、
間違いがあった。

それはアダム・スミスからアンリ・ファヨール、
そしてフレデリック・テイラー、ヘンリー・フォード、
さらにフォレット、メイヨー、
ウィーナーからドラッカーへとつづくマネジメント理論の系譜の中の、
過渡的な規範論的マネジメント理論によって、
日本の小売業界が組織化されたからだと、
荒井先生は謎解きする。

これが、秀逸。
日本の商業の現代化のためには、
この指摘は欠かせない。

もちろん、ドラッカーは、結論を言い表しているが、
それをいかに実践し、実行するか。
荒井先生の今後の講義は、そこに収斂していく。
a11
だからまだまだ、序の口。
来月も続く。

最後に副学長のまとめ。
y12
今回は、日本のスーパーマーケットの三つの協会会長の競演だった。
そして、三人の先生の講義は、
そのまま日本のスーパーマーケットと食品産業の、
歴史と現状、理念と将来、
「変わらないものと変わるもの」を物語っていた。

明るかった東京の空も、
いつの間にか真っ暗になっていた。

濃厚な一日だった。

夜は、10時10分から、
NHK『プロフェッショナル』。  
㈱成城石井社長の大久保恒夫さんが主役。  
o13
とてもいい番組だった。
私、見ていて、涙が出てきた。
成城石井北千住店の水野店長が、
苦しみ悩み、スタッフの心をつかみ、
開いていくところ。
それを大久保さんが見守っているところ。

大久保さんの考え方が、
成城石井という小売業の会社に、
見事に反映されている。

コーネルの今年のスローガンは、
「脱グライダー人間」。
大久保さんも今期からコーネル講師の一員になっていただいたが、
エンジンをもったスーパーマーケットマンを育成しようとしている。
自分で問題解決できる「プロフェッショナル」をつくる。

私には、それが、ことのほか嬉しかった。

心から、感謝。

<結城義晴>  


4 件のコメント

  • こんにちは(*^_^*)

    プロフェッショナルを教えていただき、ありがとうございました。

    早速、今、北千住で途中下車して見てきました(笑)

    ありがとうございます。

  • ナンバさん、お元気様。
    大久保さんのCDを聞いてくださっているそうで、
    ありがとうございます。

    私とおんなじ、大久保恒夫ファンですね。

  • 私の会社の「行動規範四項目」の第一番目は「損得ではなく、善悪で判断します。」となっています。毎週月曜日の朝礼で全員で唱和する以外は、あまり気にも留めていませんが、小売業のバイヤーとの商談で、最終決断をしなくてはいけないときには、この行動規範に立ち戻って考えるようにしています。
    なぜなら、企業の最終目的は営利では無く、これらの行動規範の実践の結果と考えるからです。

  • いまちゃん、ありがとうございました。
    ご返事遅れ、恐縮。
    「行動規範四項目」の第一番目にあるというのが、
    重いことですね。
    キリスト教にもイスラム教にも、
    インドのガンディーの教えにも、
    「商人は正しくあれ」という項目があるそうです。

    商人は正しくあることによって、社会貢献している。
    まるで政治家ですね。

    ただし政治家と同様に、
    損得への誘惑が多いということかもしれません。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.