結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年08月09日(火曜日)

「患者さま」と呼ぶ千葉県鴨川・亀田メディカルセンター物語(上)

「世界的な株安、止まらず」
今朝の全紙の一面トップ。

アメリカ・ヨーロッパのデフォルト問題に端を発した株安。
私など株式市場中心の経済を何とかすべきだと考えてしまう。

今朝の日経新聞『大機小機』。
「大学を人材育成の場とせよ」
コラムニストの癸亥氏が、
何とも当たり前のタイトルで書いている。

今更、大学を「人材育成の場にせよ」とは?

大学が「人材育成の場」ではないから、
こんなことがタイトルになる。

「日本はこの20年間、まったく成長していない」
癸亥氏、ひどく悲観的。

「日本が誇れる資源は、
水と森と海洋であり、
人材である」

「しかし、その人材もこのままでは劣化する」

「大学の4年間は多くの文系の学生にとって遊びでしかない」
「このため、実社会に出て役に立つ基礎能力が身につかない」

「現在、大学は半期で1講義あたり、
15回の授業を要請されている。
しかし、学生は授業を欠席するか、
出席しても勉強しない」

私も立教大学大学院で、
15回×2時限(3時間)を前期の単位として教授している。
そして私の院生はめったなことで欠席しない。

「片方でそんな学生に授業アンケートを実施し、
その回答結果が重視される」
これは教員にとって、辛い。
「本来の大学教育とは、学生の潜在的能力に磨きをかけ、
幅広い知識と専門能力を習得させることにある」

では、どうすれば現状を打破できるのか。

「大学入試を基本的な知識と潜在的な能力だけを測るものとし、
門戸を広げる」

「その代わり、入学後の進級要件を厳格にする」

よく言われるアメリカ方式。

「学力が講義で要求される水準に達しなければ、
決して単位を与えない」

「教員の充実とより多くの予算が必要」とまとめる。
大いに賛成。

しかし、そんな現状でも、
しっかり学んで卒業してくる学生はいる。

彼らをこそ、信じたい、生かしたい。

さて昨日は、
立教ビジネスデザイン科・結城ゼミ夏合宿の三日目。
午前中、各自、自習して、昼前にまとめ。

それから鴨川の亀田メディカルセンターを訪問、見学。
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感動した。

ホスピタリティにあふれた総合医療サービス機関として超有名。
しかしアメリカで一般的なIHNの考えを採用した医療機関である。
Integrated Healthcare Network。
南房総地域の医療充実をめざし、
多様なネットワークサービスを展開する。

その根本にあるのが、
「患者さま」と呼ぶ姿勢。

2005年に誕生したカスタマー・リレーション部が、
この考え方を先導する。

亀田メディカルセンターは主に3つの機関で成り立つ。
急性期医療の亀田総合病院。
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外来診療の亀田クリニック。
そして亜急性期医療の亀田リハビリテーション病院。
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ここには全31科と100の診療室があり、
総ベッド数は1000床、医者400人、
看護師など職員を入れると総勢約3000人。

すべての機関が「患者さま」と呼び、
「カスタマー」ととらえる。

敷地内には、亀田医療技術専門学校もある。
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立体駐車場があり、
月曜日なのに満車状態。
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私たちは、カスタマー・リレーション部の山田剛士さんから、
40分ほどレクチャーを受け、質疑応答をしてもらい、
さらにメディカルセンター内のツアーをしてもらった。
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医学は一人でできるが、
医療サービスは患者や地域との協働によってしかできない。

商品が顧客との協働によって販売されるのと同じ。

「医療の最終成果物」は何かと考えると、
それは「死」である。

だから亀田メディカルセンターは、
プロセスを重視しようと考えた。
したがってISO9001をとっている。

例えば、亀田は「個室病棟」にこだわる。

現代社会において、個室でないのは、
病院と刑務所だけといってよい。

いまやビジネスホテルでも、相部屋はない。
ところがサラリーマンも、
病院に入院すると相部屋で、
カーテン一枚で仕切られた空間で我慢させられる。

亀田は考えた。
病院だからこそ安らげる環境づくりが必要だ。
一番安らげるのは、
会いたいときに会いたい人と会えること。
医療にはこれが必要だった。

「リゾートは非日常、しかし病院は日常」
だから「安価な個室ビジネスホテル」並みの環境を整え、
価格を提案する。

「まず当たり前のことを当たり前にやろう」という発想が、
亀田メディカルセンターにはある。

しかしこれは医療業界から見ると、
非常識そのものだった。

地域医療ネットワークの質を上げるには、
顧客は内部の先生、業者、
さらに製薬メーカーや医療機器メーカーと考える。
彼らと地域医療連携の構築をめざし、
患者を中心に連携する。

病院長直轄・3人の専従でスタートしたカスタマーリレーション部には、
3つの使命があるが、その第一が、
「患者様満足向上にサービス業務を通じ貢献する」

もう、ホスピタリティ産業そのもののコンセプト。

私は山田さんの話を聞いているだけで、
心から嬉しくなってしまった。

いつも商売の話をしていることと全く同じ。

巣鴨信用金庫の田中実さんと同じ、
トレーダー・ジョーの店長たちと同じ、
ウェグマンズCEOのダニー・ウェグマンと同じ、
ナゲット・マーケットのフロントエンドマネジャーと同じ、
ウォルマートのマーカス店長と同じ・・・・・・。

そして医療サービスの世界だけに、
この領域特有の障害があったし、
イノベーションがあった。

それは細かな改善・改革の継続であった。
「イノベーションは、つまるところ、
経済や社会を変えなければならない」

ピーター・ドラッカーの言葉が、
私の胸をいっぱいにしていた。
(つつきます)

<結城義晴>


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