結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年05月12日(土曜日)

リーダー・ウォルマート、チャレンジャー・ターゲット、フォロワー・Kマート

5月11日、ネバダ州ラスベガス。
20120512190109.jpg
目がさめると、窓の外に砂漠の中の街。

商人舎USA研修会Basicコース第2日目が始まった。
朝から講義。
20120512162713.jpg

結城義晴たっぷり2時間半の第1回セミナー。
20120512160630.jpg

初日の長い長いフライトと研修を終え、
ぐっすり眠った団員は、元気いっぱい。
20120512162737.jpg

私の時間は、
8時半から11時くらいまで。
20120512160719.jpg
「はじめの一歩」というが、
この最初の講義はとても大切。

173ページのメインテキストと、
204ページの事前テキストを使って、
あっちに飛び、こっちに戻りしながら、
最初の大事な大事なことを語る。

はじめの言葉。
故倉本長治の「創意を尊びつつ良いことは真似ろ」
アメリカに来るときいつも私は思っている。

ピーター・ドラッカー。
「基本と原則を補助線にせよ」
(「ポストモダンの七つの手法」より)

そして4つの目。
「虫の目」とは、現場を見る力。
細部まで丁寧に「見極める能力」。
これを支えるのが、専門性と現場主義。

「鳥の目」は、大局を見る力。
全体像を俯瞰しながら、「見渡す能力」。
これを支えるのが、情報量と知識。

「魚の目」は、流れを見る力。    
時間の経過の中で、現在と未来を「見通す能力」。
これを支えるのは、経験と見識。

そして、「四つ目の目」は、
謙虚で、真摯で、真っ正直な「心の目」である。

20120512160756.jpg
それから、Prologue。
第1部「理念に学ぶ」。

第2部「歴史に学ぶ」と第3部「経営理論に学ぶ」は、
明日明後日に譲って、
第4部「ランキングに学ぶ」。

これが米国小売業を俯瞰する「鳥の目」。

第5部「現場で学ぶ」からは、
二日目に必要な店舗視察のコツに関する項目を拾ってレクチャー。

さらに事前テキストから、
ラスベガス地区の競争の特徴。
昨日の企業の復習、今日の企業の予習など、
最後にPFグラフのつくり方、書き方注意点。

時間はあっという間に過ぎていく。

その後、事務局から、
調査グループの班分けが報告され、
班ごとに、打ち合わせ。
20120512161142.jpg

これは参加者が他の企業の人と共同で、
チームワークをつくる訓練にもなる。
20120512161304.jpg
熱心な議論が続き、
アウトラインが決まったら、
視察・調査に出かける。

今日はディスカウントストアとハイパーマーケット。

まず、ターゲット。
20120512163634.jpg
ターゲットは、2011年全米チェーンストアランキング第3位。
売上高699億ドル(1ドル100円換算で6兆9865億円)、
伸び率3.7%。

純利益は29億2900万ドル(2929億円)、
こちらの伸び率は0.3%。
総店舗数は1763。
20120512173144.jpg
FORTUNEの「2011年世界で称賛される企業ランキング」22位。
ウォルマートに真っ向から挑む企業。
つまりディスカウントストアとハイパーマーケット業態を展開し、
それでいて、ウォルマートとは異なるポジショニングを形成している。

この店はTarget Greatlandというバナーで、
売場面積1万4000㎡。
ターゲットはディスカウントストアという非食品総合低価格業態から、
ウォルマート・スーパーセンターと同じハイパーマーケットへと、
業態の転換を図っている。

その中間に位置付けられて実験しているのがこのタイプ。
だからグロサリーを強化するが、生鮮食品は扱わない。
20120512163658.jpg
食品の部門は「market」と呼ばれる。

しかし衣料品をはじめとして、
ファブリックスなどの商品群は、
ウォルマートよりもグレード感がある。
20120512173227.jpg
それでいて、ウォルマートよりも少し高い価格帯。

だからウォルマートとは完全なすみわけができている。

ウォルマートをマーケット・リーダーとすれば、
ターゲットはマーケット・チャレンジャーである。
20120512173243.jpg
それはそれは見事な経営戦略とマネジメント。

つぎにシアーズ・ホールディングス。
20120512175502.jpg
全米チェーンストアランキング第10位。
米国内年商354億ドル。
これは前年比マイナス2.2%。

世界年商は413億ドルで、
こちらはプラスの85.7%。

総店舗数は3484店と、
ターゲットよりも多い。

なぜならかつてのシアーズとKマートの2強が、
事実上倒産し、その2社を合併させて、
シアーズ・ホールディングスという持株会社に管理させているからだ。

この店は、スーパーKマートというハイパーマーケットとして開店した。
しかし業績はひどく悪くて、
だから食品部門をカットして、
その空いたスペースに「シアーズ・アウトレット」を入れた。
20120512175640.jpg
私にとっては懐かしい店。

かつては渥美俊一先生とご一緒して、
シアーズとKマートを散々、訪れた。

シアーズはゼネラルマーチャンダイズストアの雄。
Kマートはディスカウントストアのトップ。

いま、その両者が一つの店となって、
コンバインされている。

シアーズ得意の白物家電「ケンモア」が、
2割から6割引きで売られる。
20120512175657.jpg

衣料品はKマートのプライベートブランド。
20120512175801.jpg
しかしターゲットにははるかに及ばないし、
ウォルマートにも引き離されてしまった。

つまりかつてディスカウントストア第1位だったKマートは、
ウォルマートとターゲットにサンドイッチされて、落ち込み、
今や何の特徴もない店に成り下がってしまっているのだ。
20120512175837.jpg
シアーズ・アウトレットを結合させたことで、
少しだけ効果が上がって、客数が戻ってきた。

しかしこの会社は典型的なマーケット・フォロワーとなってしまって、
脱落以外に道はなさそうだ。

フィリップ・コトラーは分類する。
1.マーケット・リーダー〈Leader〉
2.マーケット・チャレンジャー〈Challenger〉
3.マーケット・フォロワー〈Follower〉
4.マーケット・ニッチャー〈Nicher〉

このうち1と2と3の競争が、
アメリカのディスカウントストア業態で繰り広げられている。
これを私は「三占から複占へ」と表現している。
「寡占」とは、
少数の供給者がある一定の市場のほとんどを支配し、
互いに競争している状態。

「三占」とは、
三者によって市場のほとんどが支配されてしまう状態。

そして「複占」とは、
二者によって市場のほとんどが支配されてしまう状態。

アメリカのディスカウントストアとハイパーマーケット業態は、
現在、ウォルマート、ターゲット、Kマートの三占状態。

そこから3番手のマーケット・フォロワーが振り落とされ、
場外に消える。

それはどう見てもKマートだ。

恐ろしいことだが、
それしか考えようがないし、
現場をずっと見ていると、
このことを確信せざるを得ない。

今日のブログはここまで。
続きは来週お届けする。

ラスベガスの旅はまだまだ続く。
皆さんよい週末を。
20120512165114.jpg
私は元気です。

おやすみなさい。

<結城義晴>


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.