結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2026年06月16日(火曜日)

日銀政策金利1%引き上げと植田和男総裁の「理論と実践」

松元努さん、来社。
㈱阪急オアシスの元専務執行役員、
㈱エイチ・ツー・オー食品グループ専務。
今、㈱八社会顧問。 IMG_3546 (002)
阪急オアシスの時代には、
千野和利社長(当時)の右腕として大活躍。

私も凄い作品としての店舗を、
次々に見せていただいた。

アメリカにも何度もご一緒した。

話し始めたら止まらない。
1時間半ほどじっくりと語り合った。

私も元気百倍。
ありがとう。

松元努、復活です。

さて、日本銀行。
金融政策決定会合。

政策金利を1%に上げる。
1995年以来31年ぶり。

「無担保コール翌日物レート」の誘導目標を、
0.75%から1.0%に引き上げると決めた。

インフレの加速を抑える。

その上、国債の買い入れ額を減らす措置を、
2027年4月以降に停止することも決定。

こちらは債券市場の安定のため。

植田和男総裁は金融政策決定会合に欠席した。
肝嚢胞(かんのうほう)感染症の治療のため、
6月10日に入院したからだ。

そこで内田真一副総裁が記者会見した。

政策判断は多数決だ。

植田総裁を除く8人の政策委員のうち、
7人が利上げに賛成した。

植田和男氏は1951年生まれ、
静岡県出身の経済学者。
東大経済学部を卒業し、MITで博士号。
帰国後は東京大学教授として金融論を教え、
1998年から2005年まで日銀の審議委員。
東京大学名誉教授。
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2023年2月に黒田東彦前総裁の後任として、
岸田文雄政権によって第32代総裁に指名され、
4月9日に正式に就任。

「戦後初の本格的な学者出身の日銀総裁」

肝嚢胞感染症は、
肝臓にできた袋状の組織に細菌が入って、
炎症を起こす病気。
抗生剤の点滴で治療され、
命に関わる病ではない。
入院加療は必要。

会合の議長代理は、氷見野良三副総裁。
会合後の記者会見は、内田眞一副総裁が代行。

植田総裁は、書面で意見を提出した。
新日銀法28年の歴史で、初めてのことだった。

前任の黒田東彦総裁は、
2013年から2023年まで、
10年間、在籍した。

1944年、福岡生まれ。
東京大学法学部卒業後、
大蔵省に入って財務官僚。
アジア開発銀行総裁を経て、
第31代日本銀行総裁。

就任直後の2013年4月に、
いきなり国債とETFの大量買い入れを発表。
2年でマネタリーベースを2倍にし、
2年で2%のインフレを志向した。
これが「黒田バズーカ」と呼ばれた。

短期金利だけでなく、
10年金利まで日銀がコントロールする、
イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)。
それからマイナス金利。

金融政策の教科書に載っていない実験を、
黒田総裁は10年続けた。

それがアベノミクスの第一の矢となった。

政府のバランスシートは最終的に約750兆円となり、
日本のGDPを超える規模に膨らんだ。

黒田総裁はサプライズで市場を動かした。

植田総裁は講演や記者会見で布石を打って、
教育するように市場に臨む。
学者らしい、対話型の総裁。

だから欠席しても結論は揺るがない。

ただし今回の利上げは、
二正面作戦への転換である。

「物価リスクへの対応」と「国債市場の安定化」

背景にあるのは中東情勢の緊迫による原油高。
企業間の価格転嫁が速まり、
消費者物価へ波及するリスクが高まった。

内田副総裁は声明で、
「幅広い品目で価格上昇が波及する可能性」を指摘し、
基調的な物価も2%を上回るリスクを明示した。
つまり、物価の上振れに手を打たざるを得ない。

一方で、景気の下振れリスクに関しては、
「ひところより低下」と判断する。

企業収益の高水準や政府補助金が下支えしている。
金融環境も「緩和した状態」にあり、
利上げ後も経済活動を支えることができる。

しかし今回の核心は利上げそのものよりも、
国債買い入れ減額の停止を決めたことにある。
それも2027年4月と期限を示した。

異次元緩和で大量に国債を買い入れてきた結果、
市場機能は大きく低下した。

そこで日銀は、減額を続けつつも来春で停止し、
月2兆円規模の買い入れを維持する方針を示した。

これは、市場の需給悪化を避け、
長期金利の急騰を抑える「安全弁」である。

金融機関の含み損リスクを考えれば、
極めて現実的な判断だ。

日本経済はいま、長いデフレ期を抜け、
金利正常化の第3段階に入ったと判断していい。

物価の上振れを抑えつつ、
市場の安定を守る。
その難しい舵取り。

今回の1%利上げは、
「通過点」にすぎない。

小売業にとっては、
秋以降の再値上げリスクが消えない。
消費マインドは揺れる。

だからこそ、自身の政策は揺れてはならない。
現場の変化を丁寧に追い続けることだ。

それにしても植田和男総裁。
学者こそ実務ができることを示してもらいたい。

ピーター・ドラッカーは言う。
“As a rule, theory does not precede practice.”
「原則として、
理論が実践に先行することはない」

本物の学者、研究者は実例を豊富にもって、
そのうえで理論を組み立てる。

勝負師ではない。

今、それが求められている。

〈結城義晴〉


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