結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年05月08日(木曜日)

商人舎Basicコースと琴似戦争の「喉を掻き切る競争」

訃報です。

山澤進さん。
㈱ヤマザワ創業者にして名誉会長。
享年96。

見事な大往生。
心からご冥福を祈りたい。
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1930年1月5日、山形市のお生まれ。
1952年、山澤薬局を創業。
10年後の1962年、
山形県初のスーパーマーケットを開業。

進取の精神に富む経営者だった。
薬剤師出身のスーパーマーケット経営者は、
店の管理が几帳面だ。

ヤマザワもそんな店、そんな会社だった。

私は何度も共栄会に呼んでいただいて、
講演をし、厚いおもてなしを受けた。

ゴルフも何度もご一緒した。
山澤さんは私と回るのが好きで、
よくご指名をいただいた。

そんな折にはいつも最後に、
山澤さんのおすすめで、
みんなで童謡を歌った。

山澤さんは人数分の歌詞カードを用意して、
全員をリードした。

春には春の歌、
秋には秋の歌。

兎追いし彼の山
小鮒釣りし彼の川
夢は今も巡ぐりて
忘難き故郷

ありがとうございました。
合掌。

さて私は朝から、
横浜エアーターミナル。
リムジンバスに乗って、
羽田空港へ。

高速道路の湾岸線が不通となったので、
横羽線に乗る。

横浜駅のベイクオーター。
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バスはすぐに川崎に着いて、
東京湾が見えてくる。
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アクアラインの川崎人工島「風の塔」。
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そして東京羽田空港第3ターミナル、
国際線。
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ゴールデンウィークのあとで、
空いている。
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小阪裕介さんが見送りに来てくれた。
今、JTB神戸支店第1課長。IMG_E2508

それぞれに手続きをして、
チケットを手に入れる。
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そして最初のミーティング。
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全員揃って、やる気満々。
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出発前の講義。
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私が初めてアメリカを訪れた時、
同じグループになったのが、
呉服の㈱やまとと仏壇の㈱はせがわの面々だった。

米国とは全く関係のない商売の彼らが、
一番、チェーンストアの勉強をした。IMG_E2518

私の講義は、
ラスベガスという都市の由来から、
現在の関税不況の中のチェーンストアの奮闘、
そして部門構成比のデータなどまで、
必須の情報をまず提供した。IMG_E2517

テキストは350ページほど。
その中に読めばわかる文章のページがある。
これが機内の自習用テキスト。IMG_E2519

私のあとはカリスマ添乗員の佐藤公彦さん。
「カリスマ佐藤」でおなじみ。
商人舎主催の米国ツアーには、
必ず添乗してもらう。
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私は座ってそれを聞いている。
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講義と旅の注意が終わると、
全員で記念写真。
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大きな成果を上げて帰ってきます。

手荷物検査をして、
チェックインすると、
私はラウンジへ。

今回はユナイテッド航空だから、
ANAラウンジとなった。

そのANAのカレーも美味い。
もちろん出発前のビールも。
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ラウンジから出発ゲートへ。
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107Aがサンフランシスコ行き。
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UA876便。
お世話になります。
よろしくお願いします。
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一方、北海道札幌市。
今日はロピア琴似店のオープン。

イトーヨーカドー琴似店が、
今年1月5日に閉店。
そのあとを㈱OICグループが引き取って、
2月1日に「CiiNA CiiNA(シーナシーナ)琴似」として開設。

核店舗がロピア琴似店。

山本恭広編集長が取材に行った。
この物件は㈱Firstoが運営する。
その相川博史社長にインタビュー。
相川さんはロピアの東北・北海道事業も統括する。IMG_2533

私も新たな琴似戦争は見に行きたかった。

ダイエーとイトーヨーカ堂が、
琴似駅周辺で激しい戦いをした。

結局はイトーヨーカ堂が勝利したが、
その店がシーナシーナに変わり、
ロピアが核店として入る。

アメリカでは「喉を掻き切る競争」と呼ばれる。
「Cut Throat Competition」

日本でもそれはあったし、
今またそれが新しい顔ぶれで再現される。

しかし競争は進化をもたらす。
顧客が喜ぶ。

そのアメリカの競争と進化を見てきます。
ご期待ください。
(つづきます)

〈結城義晴〉

2025年05月07日(水曜日)

「1年で最も好きな月」と老いることの「軽さ」

ゴールデンウィークが終わった。

東京新聞コラム「筆洗」

1年で最も好きな月。
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物理学者の寺田寅彦。
5月ファンだった。
「初夏の若葉時が年中でいちばん気持のいい、
勉強にも遊楽にも快適な季節になって来た」

同感だ。

「なって来た」というのは、
若いころの寺田は5月が苦手だったから。
「理由のない不安と憂鬱(ゆううつ)」を感じていたが、
年齢を重ねて好きになったという。

五月病だったのか。

一方、お天気博士の倉嶋厚さん。
1年を1日にたとえた。
冬至を真夜中の0時とすれば、
5月は「午前10時」に当たる。
「まだ昼食前、
期待に満ちた長い午後も残されている」

倉嶋さん、さすが。

いい表現だ。
これにも同感。

その5月、私は明日からアメリカへ。
ラスベガスで商人舎USベーシックコース。
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今日は横浜商人舎オフィス。
いろいろなレターを書いた。

月刊商人舎5月号贈呈文。
商人舎発起人にみなさんに、
毎月、手書きのレターを、
雑誌に同封して送っている。

原稿用紙一枚に、
一気呵成で手書きする。

英語でHandwriting。
手書きは気持ちが伝わる。

3月期の増収増益決算が発表されている。
商人舎流通SuperNews。

アクシアルnews|
年商2819億円4.3%増・経常127億円3.1%増の増収増益

新潟県を中心とする㈱原信と㈱ナルス、
群馬県を中心とする㈱フレッセイ。
その3月期連結売上高は2819億円、
前年比4.3%増。

営業利益121億円(2.4%増)、
経常利益127億円(3.1%増)。
売上 高、経常利益は過去最高。

営業利益率4.3%、経常利益率4.5%。
グループ全体では130店舗となった。
素晴らしい。

来期は3000億円の大台か、と思いきや、
2026年3月期は2860億円、1.5%増。

厳しい1年だととらえている。
その考え方はよろしい。

一方、
ノジマnew|
年商8534億円12.1%増・経常512億円55.4%増の増収増益

連結売上高は8534億円、前年比12.1%増。
営業利益484億円(58.3%増)、
経常利益512億円(55.4%増)。
こちらも売上高と営業利益は過去最高。

営業利益率5.7%、経常利益率6.0%。
3月末時点の店舗数は1297店。

社長の野島廣司さんは商業界ゼミで勉強した。
川崎進一先生のお弟子さんだった。
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手堅い経営。

しかもメーカーなどからの派遣販売員を置かない。
自社従業員が店頭に立って、
コンサルティングセールスを貫徹する。

売上金額を上げるのではなく、
質を売る「家電質販店」を標榜する。

家電チェーンのなかで、
際立つポジショニングだ。

素晴らしい。
ノジマの2026年3月期は、
5.5%増で大台の売上高9000億円。
1兆円が視野に入った。

さて川崎先生で思い出した。
最後に「老人力」

ほぼ日の糸井重里さん。
「ぼくの尊敬する先輩たちは、
だいたい年をとってくると、
そのことについての文章を書くようになる」

赤瀬川原平さんの『老人力』
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この「老人力」という逆説的なコンセプトに
赤瀬川さんが気づいて文章にしたのは、
ご本人が60歳になりかけたころだった。

糸井さん。
「いまのぼくから思えば、
ぜんぜん『老人』じゃなかった」

私も同感。

この本、実に面白い。

「横尾忠則さんも、
ずっと『老い』『老人』を語っている」

「『老い』よりもずっと前から、
『死』のことを言っている。
合間合間に『病』も語っているから、
筋金入りだ」

「吉本隆明さんは、
海の事故からあと、持病もあって、
ある時期からはじぶんの『老い』を、
もっとも近くにある自然として
観察しはじめた」

もっとも近くにある自然。
凄い。

「感じて、思って、考えて、
変化して、感じてを…繰り返す」
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朝日新聞「折々のことば」
第3395回。

軽くありたいという希望は、
どの老人にも共通する、
いちばん切実なことだと思います。
〈幸田文〉

「高齢者には
食料品の買い出しも重さがこたえる。
白菜一個で手一杯。
着物も洗いざらした軽いのがいい」

「ついでに責任、義務、仕事、財産、
交際も軽くしたい」

「人生の処し方を体で知るのが老いの季節」
そういえば若い独身者を「身が軽い」と言い、
他の命を宿す人を「身重」と言う。

『季節のかたみ』所収随筆「目方」から。
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倉嶋さん流に人生を1日にたとえると、
自我のない無意識のころが午前6時まで、
少年、青年は午前12時まで、
自我を確立する。

午後6時までが壮年。
目いっぱい仕事する。

そして老年は午後6時以降か。

そう考えてみると、
老いるのは一番楽しい時間帯だ。
その時期にこそ、軽くありたい。

ありがとう。

〈結城義晴〉

2025年05月06日(火曜日)

米国チェーンストアの「関税値上げ抑制努力」と「ポスト覇権時代」

ゴールデンウィーク最後の日。
最長11連休の人、暦通りの人。
さまざま。

けれど物価高で、
全体には節約志向だった。

それは日常に戻ってからも、
さらに高まるだろう。

今日は三月下旬の陽気。
そして雨。

この季節の主役・ツツジ。IMG_2475 (002)

コトネアスター・ダメリ。IMG_2473 (002)

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大きな葉には雨のしずくが溜まっている。IMG_2471 (002)

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雨は植物を生き返らせる。
生き返った花はいずれも美しい。

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版。
毎日新聞掲載。

米小売り大手、
「関税値上げ」抑えているが。

「米小売り大手各社は、
関税引き上げに直面する中、
携帯電話の充電器や
タオル、ミキサーといった
日用品の価格を低く抑えるため、
あらゆる手段を講じている」

大統領の勝手な関税引き上げに対して、
チェーンストアが必死で価格を抑えている。

納入業者にコスト上昇分の吸収を迫ったり、
自社オフィスで提供する無料サービスを止めたり。

中国からの輸入品の一部の出荷を停止し、
すでに輸入された米国内在庫商品で賄う。

大半の価格は今のところ、
全体として横ばいを維持している。

涙ぐましい努力だ。

ウォルマート、ターゲット、アマゾンが
オンライン販売する、
約1万点の日用品の平均価格は
4月2日以降、実質的に横ばい状態。

さらに1月以降の集計では、
おおむね下落している。

だがウォルマートCEOのダグ・マクミロン。
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ターゲットのブライアン・コーネル。
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ホームデポのテッド・デッカー。
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先週、ドナルド・トランプ大統領と面会。

「この現状はいつまでも続かない」と、
強力なメッセージを伝え、警告した。

「今後値上げを避けるのは難しくなる」

「関税コストを避けるため、
小売業者が販売を取りやめるケースが出てくれば、
特定の商品が品薄になる可能性もある」

しかし一方で、
「商品価格をできるだけ長い間、
できるだけ低く抑えるよう努力する」と、
トランプに約束した。

殊勝な約束だ。

価格の抑え込みにひとまず、
成功しているということだ。

その理由は、
チェーンストアとベンダーが、
追加関税発動に先立って、
輸入商品を駆け込みで増やす努力をしたからだ。

今、米国大衆の生活を、
チェーンストアが支えている。
それを呉越同舟で大統領に主張した。

トランプとの面会は、
それをアピールする場でもあった。

どこまで響いたか。

日経新聞「複眼」
マイケル・ハート米国デューク大学教授登場。

故アントニオ・ネグリ(伊哲学者)と、
2003年に共著『帝国』を発刊して話題となった。51YDpBWA2TL

第2次世界大戦から1991年の冷戦終結まで、
米国が覇権体制を築いた。

それが1990年代後半から衰退し始めた。

それだけでなく世界の権力構造は、
新たな覇権国を生まない方向に
シフトしていると、彼らは考えた。

単一の国家的な組織ではなく、
超国家的なグローバルな主権形態こそ
「帝国」と化すと読み取った。

しかし今、ロシアのウクライナ侵略、
イスラエルのガザ攻撃。

トランプのグリーンランドへの干渉、
パナマ運河の保有権の主張。

20世紀初頭の古典的な帝国主義理論と
相似形だと訴える言説がある。

しかしそれとも違う。

米国の覇権体制が、
機能不全に陥っていることは確かだ。

米国の覇権は二つの要件に由来する。
第1が世界最強の軍事力、
第2が基軸通貨ドルによる経済力。

この二つはある意味で各国への「強制」だった。

米国チェーンストアも、
その恩恵に浴してきた。

ただ米国の覇権体制には、
各国から「賛同」を得るメカニズムがあった。
いわゆる「ソフトパワー」だ。

たとえば米国の大学システムは、
世界各国からエリートを集めて、
米国の政治思想や経済思想を広める
メカニズムも有していた。

米国の有力大学は世界各地の
指導者の訓練場のようなものだった。

その米国の覇権体制が衰えた。

世界最大の軍事力を保持してはいるが、
1970年代以降、ベトナム、イラク、
そしてアフガニスタンの軍事介入に失敗した。

「賛同」のメカニズムも、
第2次トランプ政権の発足で、
機能しなくなった。

あらゆることを米国が自ら破壊し始めた。

では中国やロシアが世界の覇権体制を築けるか。

それには「賛同」のプロセスが必要だが、
両国にはそれはできない。

ロシアのように、
武力だけで覇権を得ることはできない。
中国のように市場を開放せずに、
生産だけで経済覇権を握ることもできない。

あらゆる形態のナショナリズムに、
うまく対抗するような、
新たな国際主義が必要とされている。

「世界はポスト覇権の時代へと突入した」
それがマイケル・ハートの考えだ。

米国のチェーンストアも、
日本のチェーンストアも、
そのポスト覇権の時代を認識しつつ、
生き抜かねばならない。

トランプに警告したり、
約束したりするだけでは、
全然足りない。

〈結城義晴〉

2025年05月05日(月曜日)

映画「教皇選挙」と「ローマ法王の休日」の知性と理性

Everybody, Good Monday!
[2025vol⑱]

2025年第19週。

ゴールデンウィーク終盤、
こどもの日だが、
ホームコースでゴルフ。

ジャック・ニクラウスが設計者。IMG_2455 (002)

新緑が目にまぶしい。IMG_2458 (002)

立夏だ。
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名物ホール8番。
ピンの上にワンオンして、
バーディー逃しのパーだった。
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スコアはよくなかったが、
ドライバーの飛距離が伸びた。

毎日のスクワットが効いているのだろう。

やっぱりゴルフはいい。IMG_2462 (002)

さて大統領ドナルド・トランプ。
自分のローマ教皇の姿の画像を自身のSNSに投稿。
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世界中から批判の声が沸き上がった。

ホワイトハウスが公式SNSでも、
同じ画像を投稿している。

「誰かが冗談でやっただけだ。
別に問題ないだろう。
私も少しは楽しむのが好きだ」

フランシスコ教皇が亡くなったばかりで、
後継者を選ぶコンクラーベが始まろうとしている。

カトリック教徒にとっては、
冗談では済まされない。

トランプは外国産の映画に対して、
100%の関税をかける方針を示した。
そして米国商務省と通商代表部に、
輸入映画に関税をかける措置を取れと指示した。

米国の映画産業は、
「急速に死につつある」と言った。
米国の映画制作者やスタジオが、
外国から引き抜かれていると非難した。

だから100%の関税をかけて、
米国の映画産業を守るべきだと訴えた。

アカデミー賞脚本賞受賞の「教皇選挙」を見た。
原題は「Conclave」
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レイフ・ファインズの演技をはじめ、
伏線の映像の巧みさ、
そして驚愕のどんでん返しに、
久しぶりに大きな感動を得た。

「ネタばれ」は書けない。
観てほしい。

トランプは就任演説の冒頭で言った。
「本日から性別は、
男性と女性の2つだけというのが、
政府の公式方針となる」

この映画はそんなトランプに対する、
強烈な批判でもある。

アメリカとイギリスの共同制作。
監督はドイツのエドワード・ベルガーだが、
アメリカ映画の質が落ちているとは思えない。

むしろ自由な国際交流が、
映画の質を高める。

批評家たちのこの映画への評価。
「知的なエンターテインメントを求める観客にとってはまさに神からの贈り物だ」

その通りだと思う。

続けて、
「ローマ法王の休日」を、
Amazonプライムビデオで見た。81xxbwkhKDL._AC_SY879_
こちらはイタリアとフランスの共同制作。

原題はラテン語の「Habemus Papam」
「我ら教皇を得たり」の意味。

教皇選挙のコンクラーヴェが終わって、
新法王が決まったときに、
主席枢機卿が宣言する言葉だ。

日本語タイトルは、
オードリー・ヘップバーンの映画を、
モジっている。

こちらは2012年に日本でも公開されたし、
テレビでも放映された。

ローマ法王が逝去し、
コンクラーヴェが開催される。

誰も予想していなかった無名の枢機卿が、
新法王に選ばれる。

しかし、聴衆を眼下にした、
ベランダでの就任スピーチができない。

重圧に耐えられない新法王メルヴィルは、
ローマの街に失踪する。

市井の人々と接する中で、
信仰心を考える。
法王の存在を見つめなおす。

メルヴィルは役者志望だった。
市内を彷徨う中で役者たちと知り合う。
チェーホフの「かもめ」が上演され、
メルヴィルは台詞を口づさみながら、
観劇している。

枢機卿たちが劇場に現れて、
メルヴィルを連れ戻す。

ヴァチカンに戻ったメルヴィルは、
新法王としてベランダに立って、
聴衆に向かって語る。
「自分は導く者ではなく、
導かれる者である」

そして信者らの前から去っていく。

100%の関税がかけられると、
こういった映画を見るアメリカ人も減るだろう。

芸術やエンターテインメントに関税をかける。
人間の知性や理性から逸脱した政策だ。

ハーバード大学をはじめ、
アカデミックを嫌う大統領トランプ。

アメリカのこどもたちの将来に、
暗い影響が及ぼされないか。

そんなことを考える日本のこどもの日だ。

では、みなさん、今週も、
知性と理性を忘れずに。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2025年05月04日(日曜日)

ヘレン・ケラーの「森の散歩」と「心で感じる人」

みどりの日。

横浜の伊勢山皇大神宮。IMG_2436 (002)

明治3年(1870年)創建。
寒村だった横浜が貿易の街として、
急速に発展した。

その横浜に神社が必要になった。

そこで伊勢の森の山上の神明社を、
野毛山に遷座して、
横浜の総鎮守とした。

それが由来。

手水。IMG_2430 (002)

本殿。
天照大神を祀る。
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茅葺の神明造(しんめいづくり)。IMG_2428 (002)

何か祝い事があると、
私はこの伊勢山に来る。IMG_2429 (002)

孫娘が七五三を迎えた。
昨年11月は息子一家が、
そろってインフルエンザにかかった。

そこで半年後に七五三を祝うことにした。

日本国憲法が11月3日に公布され、
半年後の翌年5月3日に施行されたのと同じ。

はじめて晴れ着を着せてもらって、
はじめて口紅をぬってもらって、
嬉しそうにしていた。
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さて、毎日新聞「余録」

「見える人は何も見ず、
聞こえる人は何も聞いていない」

ヘレン・ケラーの言葉。
(1880~1968年)
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米国南部アラバマ州に生まれ、
1歳7カ月で原因不明の高熱に襲われた。

以降、光や音と隔絶された世界を生きていく。

7歳でアン・サリバン先生と出会う。
視覚と聴覚を失いながら読み書きを学び、
障害者教育や平和運動に取り組んだ。

52歳で書いたエッセーのエピソード。

親友が森の中を1時間かけて散歩してきた。
「何を見たの?」とケラーは聞いた。
答えは「特には何も」

ケラーは記している。
自分が森を歩くなら、
こうするだろう。

「触れるだけで何百もの
興味深いものを見つける。
白樺(しらかば)の滑らかな肌や、
松の粗い樹皮を愛情込めてなでる」

生涯に日本を含む約40カ国を訪れた。
それほど多忙であっても、
自然を愛する気持ちを忘れなかった。

ケラーは目が見えたなら、
その初日にやることとして、
「森の散歩」を挙げている。

「自然の美しさに目を奪われ、
土と寄り添って暮らす人々の
穏やかな姿を見る」

「そして、夕焼けの輝きに向かって
祈るだろう」

日本の森林面積は陸地の3分の2を占める。
緑豊かな国土。

コラムニスト。
「現代人は日ごろ、スマートフォンに
気を取られ過ぎていないか」

以て自戒とすべし。

ケラーは言っている。
「最も美しいものは、
心で感じなければなりません」

孫娘に、
森の散歩を教えよう。

そして、
心で感じる人になってほしいと伝えよう。

〈結城義晴〉

2025年05月03日(土曜日)

憲法記念日の「心が落ち着く過ごし方」

戦後80年、昭和100年の、
憲法記念日。

日本国憲法が施行されてから78年。

毎年の祝日だが、
結構、商人舎オフィスに出て、
原稿執筆などをすることが多い。

一昨年の2023年5月3日は、
一人で出社して原稿を書いた。

昨年は自宅にいて、
篠田英朗著『はじめての憲法』を紹介した。B081V56QT3.01._SCLZZZZZZZ_SX500_

篠田英朗さんは国際政治学者。
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。

国連PKOボランティアに参加して、
身をもって人間の闘いを実感した。
さらにアジアやアフリカの紛争地域でも、
ボランティア活動に従事した。

『平和構築と法の支配』で大佛次郎論壇賞、
『「国家主権」という思想』でサントリー学芸賞、
『集団的自衛権の思想史』で読売・吉野作造賞を、
それぞれ受賞している。

日本国憲法の特長は、
「第2章 戦争の放棄」と、
その「第九条」にある。

一項。
「日本国民は、
正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」 

二項。

「前項の目的を達成するため、
陸海空軍その他の戦力
これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない」

篠田さんは
第九条に以下の文面を加えて、
その部分の改憲をすればいい、
と主張する。

私はこの考え方を支持している。
だから毎年、ずっとこのブログで紹介している。

三項。
「前二項の規定は、
本条の目的にそった
軍隊を含む組織の活動を
禁止しない」

憲法九条の本当の意味は、
「国際法遵守」である。
ここが大事だ。

九条はそれを宣言している。

二項の「戦力」は英語で「war potential」、
一項の「戦争(war)」と「放棄」のために、
戦力を保持しないと謳われている。

「戦争のための戦力」の放棄である。

日本の「自衛隊」はその名の通り、
自衛する組織である。
だからwar potentialではない。

憲法九条は「国際法遵守」を宣言していて、
それ以上に制約を課してはいない。

ここで「戦争の放棄」は「原理」ではない。
「戦争の放棄」は「目的」である。

だから三項を加える。
「軍隊を含む組織の活動を
禁止しない」

これで「戦争の戦力」ではない「自衛隊」という組織が、
きちんと位置づけられる。

「自衛隊」という言葉を使わずに、
憲法に記すことができる。

戦後80年の今、
自衛隊の存在を否定することはできない。
だからそれを憲法上で、
「軍隊」と言う言葉に変える必要はない。

私は篠田さんに賛同しつつ、
自衛隊は憲法の中に、
きちんと位置づけられねばならないと思う。

この点が満たされることを条件に、
私は改憲を支持する。

今の自衛隊の位置づけは、
ごまかしだ。

それが立派な国家のなかで、
あいまいになっていてはいけない。

白井明大さんが、
『日本の憲法 最初の話』のなかで、
憲法を詩に訳している。
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とてもいい。

その第九条。

戦争はしないよ


戦争はしないよ。
永久にしないよ。

だって私は
正義と秩序の土台の上にある
世界の平和を
ちゃんと
心から希(ねが)っているから。

たとえ
国と国との間のもめごとでも
戦争だとか
武力による威嚇だとか
武力の行使だとか
そんな解決法なんて
永久にごめんだな。
そんなのポイッと放棄するよ。

1の誓いを守るために
陸軍も海軍も空軍もその他の戦力も
なんにももたないことに決めた。

生活、大事。家族、大事。
財産、大事。将来、大事。
人間の命が、何より大事。
でも戦争なんかじゃ、守れないから。
平和を守るのは、平和なの。

攻められたらどうする、なんて立場を煽らないで。
「せーの」でミサイル撃ち合えば
どっちの国も、ただじゃ済まないだけ。
平和を守るのは、対話なの。

私の国に、他の国と交戦する権利があるだなんて、
とんでもないこと、もうまっぴら。
IMG_2363 (002)

ここに三項を加えて、
わかりやすい詩ができるといいなあ。

今年の憲法記念日にも、
商人舎オフィスに出て、
亀谷しづえさんと二人で、
単行本の仕事をした。

働きながら、
私たちの国のことを考えると、
心が落ち着く。

働くことは、
国を守ることにつながっている。
働くことは、
生活を、財産を、将来を、
守ることにつながっている。

できうるかぎり、
嘘やごまかしやあいまいさを、
とりのぞいて、
心を落ち着かせて、
生きていきたい。

それが憲法記念日の、
私たちの一日であることを願いたい。

〈結城義晴〉

2025年05月02日(金曜日)

米国の日本車販売12%増と独裁者が生まれる時

今日は月刊商人舎5月号の責了の日。
1977年の4月から雑誌編集をはじめて、
48年を経過する。

歌手や俳優ならばあと2年で、
50周年リサイタルなどやるのだろう。

私は粛々と原稿を書き、
編集をする。

今月号もいい内容となった。
いい記事、いい写真だった。
いいデザイン、いい表紙だった。

楽しみにしてください。
すべてのスタッフに感謝したい。

最後の1本を責了して、
夜食を食べて、
生ビールで乾杯。

横浜駅までぶらぶらと歩いた。

マクドナルド。
IMG_2353 (002)

吉野家とはなまるうどん。IMG_2356 (002)

イオンスタイル横浜西口。
IMG_2355 (002)

そしてドン・キホーテ。IMG_2358 (002)

山本恭広編集長とツーショット。IMG_2360 (002)

山ちゃんとももう35年の付き合いだ
彼の社会人最初の上司が私だった。

互いに、
世のため、人のため。
社会のため、産業のため、
切磋琢磨してきた。

悔いのない人生を送りたい。

さて、トランプ関税の余波が出た。

日経新聞の記事。
「日本車4社、米販売11.8%増」

二ューヨークの西邨紘子特派員の報告。
トヨタ自動車など日本車4社が、
4月の米国新車販売台数を発表した。

前年同月比11.8%増。
46万4372台も売れた。

フォードや現代自動車も、
大幅に伸びた。

トランプ政権は車に25%の関税を発動する。
そのための駆け込み購入。

トヨタは10%増の23万3045台。
ハイブリッド車を含む電動車は同44%増。
電動車は全販売台数の48%を占める。

ピックアップトラック、
多目的スポーツ車のSUVも好調。
高級車のレクサスは、
4月の販売台数として過去最高。

ホンダは18%増の13万7656台。
伸びはトヨタよりも上だった。

トラック需要が追い風となった。
電動車の販売数は前年同月比で92%増。
その電動車の割合は約30%。

掘って、掘って、掘りまくれと、
トランプは煽っているが、
国民は環境問題を正しくとらえている。

マツダは21%増の3万7660台。
SUBARUは0.3%増の5万6011台だった。

日本車以外もフォードが同16%増、
現代自動車も同19%増。

調査会社コックス・オートモーティブ。
4月の米国新車販売台数は、
全体で前年比4.6%増と予想。

日本車の人気が改めて判明した。

ただし新車購入の勢いはこのままは続かない。

エコノミストのチャーリー・チェスブロー氏。
「車両価格が上昇に向かう可能性が高い。
そして需要に逆風が吹く」

結局、ツケは国民に返ってくる。

トヨタなど日本メーカーは、
「現時点で値上げの計画はない」

皮肉なことに、
日本車のシェアが高まるかもしれない。

他の消費財についても、
同じような現象が起こるだろう。

予想通りだ。

ウォルマートをはじめとして、
チェーンストアはぎりぎりまで頑張って、
それでも価格転嫁していく。

すると売上高は増える。
ディスカウントする小売業が大幅に増え、
高売りの小売業が大幅に減る。

アメリカの大衆が生活を切り詰め、
トランプ関税の一番の被害者となる。

朝日新聞「折々のことば」
2日続けて花森安治さんの言葉。

第3392回。

せっかく作ったもの、
せっかく買ってくれたもの、
どうぞ最後の最後まで
使ってほしい
(花森安治)

雑誌『暮しの手帖』の創刊編集者。
「インクが最後の一滴まで使えるよう
工夫を凝らしたインク瓶を愛用してきた」

「使っていると、使う人への思いやりと
自社商品への誇りとが直に伝わってくる」

「昨今は逆に、自社の商品が、
札束にしか見えないような商売が
伸(の)している」

半世紀以上も前に書いた言葉。
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日本の車は、
使う人への思いやりと、
自社製品への誇りがある。

大切に乗ってほしい。
大切に使ってほしい。

勝手に関税をかけるなんて、
商品を大切に考えている態度ではない。

もうひとつ「折々のことば」
第3393回。

政党や政治に、
けじめがなくなったときが、
独裁者のいちばん
生まれやすいときである。

(花森安治)

花森は1969年に嘆いた。
「今の政治家は政治が誰のためにあるかを忘れ、
目先の票や利害しか眼中にない」

「戦前、政治が腐敗と堕落の体を晒すばかりの時、
憤った一部の青年将校の決起を
どこかよしとするところが庶民にはあった」

「次に軍部独裁が現れたのも
このように国民に歓呼されてのことだった」

政治は庶民、国民に歓呼されねばならない。

けじめがなくなった時、独裁は生まれやすい。

〈結城義晴〉

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