結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年08月24日(火曜日)

日本チェーンストア協会7月販売月報「猛暑特需」を取り込めず、イオン「トップバリュコレクション」発表

[商人舎エコバッグ研究会からのお知らせ]
米国Bed Bath & Beyondのエコバッグ。

new! にアップしました。

日本チェーンストア協会発表の7月販売統計。
20カ月連続マイナス。
既存店前年同月比はマイナス1.2%。

食料品はマイナス0.5%。
これは18カ月連続。
猛暑・酷暑・炎夏の7月に、
なぜ、売上げが減じたのか。

結局、去年も暑かったのか、
食品を集客装置と考えて、
安売り大会に邁進したからか、
それとも総合スーパーのライフサイクル衰退段階が、
猛暑・酷暑・炎夏をも味方につけることができなかったからか。

日経新聞は一面のど真ん中に囲み記事で、
「食品・日用品値下がり加速」を訴えた。
これは日経POSデータによる7月の60品目価格調査。
52品目が前年に比べて価格下落した。
「消費回復が鈍る中で猛暑特需の商品を逆に特売し、
円高還元セールも広がる」

日経の記事はこう報告する。

「猛暑特需」を利益に結びつけることができない。
「猛暑特需商品群の特売」で客数を増やしても、
その他の商品に買いたいものがない。

衣料品はマイナス0.8%。
これは2カ月ぶりの減少。
住居関連はマイナス2.7%。

百貨店は7月が始まるとともに、
バーゲンをスタートさせた。
百貨店の衣料品や住関連品が安売りされると、
総合スーパーの非食品の価値が相対的に下がる。

これは、アメリカで百貨店のメーシーがディスカウントセールに入ると、
GMSと呼ばれる総合非食品業態のシアーズやJCペニーが落ち込む構図そのままだ。

朝日新聞では経済面のトップに、
「総合スーパーの衣料品改革」が取り上げられている。

イオンが、アパレルの新プライベートブランドを発表したから。
ネーミングは「トップバリュコレクション」(TVC)。
ジャスコの巨艦店舗津田沼店から始めて、
全国ジャスコの衣料品売場に新しいショップを展開する。

しかしこれは、
どのマーケットを、どう狙うのか、
どうポジショニングするのかが明確でなければ、
うまくはいかない。

セグメンテーション
⇒ターゲティング
⇒ポジショニング。

マーケティングのセオリー。

とりわけ、日本の成熟マーケットでは、
アパレル・ファッションの場合、
ポジショニングが重要。

ユニクロという店舗・フォーマット自体が、
しまむらやハニーズという店舗・フォーマット自体が、
強烈なポジショニングを形成していて、
従って、ユニクロの売れ筋を真似て商品をつくることができても、
それがそのままイトーヨーカ堂やジャスコの売れ筋とはならない。

食品分野における「売れ筋」とは、
訳が違うのだ。

かつて、ユニクロがフリースで大ブレイクした。
イオンやダイエーがそのマーチャンダイジングを真似た。
少し価格を安くして。

しかしそれはユニクロほどのインパクトを、
マーケットに与えることはなかった。

フォーマット自体のポジショニングが、
ユニクロとは異なっていたからである。

総合スーパーという業態は、
ライフサイクルの衰退期に突入している。
アメリカのシアーズやペニーといったGMSも同様。

そんなときの衣料品改革。
フォーマットの改革がなくて、
商品の改革はあり得ない。

このことをいかに考え、
いかに問題解決するか。

だから「猛暑特需」を、
集客手段にしかできず、
全体の底上げに使えない。

ただし、「トップバリュコレクション」は、
ショップ展開をベースにおいている。

流通ニュースが、
荻原久示トップバリュコレクション社長のコメントを伝えている。
「社内にデザイン室、部流部門、販売部門を設置、
200坪程度のシミュレーション売場も設けた」

200坪のショップのポジショニングを構築する作戦。
これは良し。

「30歳前後から55歳前後までのファミリーカジュアルを担う」
これが具体的にどう構築されているかが一番の問題。

「従来、季節商品は一括納品のイメージが強かったが、
今回は初回で70%の商品を投入、
次回に残り30%の商品を投入できる体制を整えた。
従来の商品開発体制では、
商品供給までに3~4カ月かかっていたものが、
今回は30日~60日前後に短縮でき、
売り減らし型の販売から、
売り足し型の販売へ転換できた」。

これはそのマーチャンダイジングの方法論。

総合スーパーの売上げ統計が発表されたその日に、
「トップバリュコレクション」のお披露目。

イオンが組織改革をベースとして、
根本的な破壊的イノベーションを図ろうとしていることは、
読み取れる。

それがフォーマットのイノベーションを成し遂げたら、
これは本物と言えるかもしれない。

<結城義晴>

2010年08月23日(月曜日)

処暑の今日、「これから新しい1週間が始まる」丸紅・朝田照男社長の一言

Everybody! Good Monday!
[vol34]

2010年第34週、8月第4週。

ずいぶん、暑さそのものも、
さわやかに感じられるようになってきた。
昼間はつくつく法師の声が聞こえるし、
夜は虫の音が響く。

今日は、処暑(しょしょ)。
「暑さが峠を越えて後退し始めるころ」

二十四節気というが、
この節目、結構、当たる。
まさに人間の観察と知恵によって生まれた経験法則。

今日から9月8日の白露(はくろ)までの16日間がひとくくり。
ちなみに白露は「大気が冷えてきて、露ができ始めるころ」。

今週は、8月の総括をして、
9月を展望する7日間。

2月決算の企業は、
8月末が第2四半期の締め日となる。

様々な統計からも、
7月8月の酷暑・猛暑・炎夏で、
好調な3カ月だった。
好成績期間を締めるときには、うきうきしてくる。
そのうきうき感を「グライダー効果」にして、
次の四半期に臨みたい。

売場づくりや商品展開は、
常に半歩先を準備するもの。
だから、今週の売場の気分は、
9月のイメージ、「処暑」真っただ中。

子供たちは、夏休みの宿題に邁進する。
母親のマインドは、「早く学校が始まってくれないか」。

コーネル大学RMPジャパン第二期生も、
卒業論文の締め切りが8月31日。
結城ゼミの院生は9月4日から合宿で、
それまでに研究の目途を立てる。
だから締め切り。

皆さん、頑張ってください。

私も、原稿やレジュメづくり、
秋に向けた計画づくりなど、
目の前の課題が山積。
頑張ります。

さて、日経新聞「景気指標」のコラム。
「日本企業、広告でも空洞化?」のタイトル。

広告業界はこの4年間、深刻な不況に見舞われた。
それが「最悪期」を脱し始めた。
電通は、2010年度の決算見込みを上方修正。
2006年度以来4期ぶり。

4月から6月の第1四半期は、
新聞広告関連の収入が前年同期比でプラス2.4%、
テレビ広告関連もプラス7.4%。

一方、イギリスのフィナンシャルタイムズ幹部は、
「日本法人の広告営業は過去数年、一貫して好調」と発言。

コラムは「日本企業は広告・宣伝費を、
成長機会がありそうな海外市場に優先的に振り向けている」と分析。
海外に経営資源を振り向ける「空洞化現象」を強調する。

しかし同時に、 この数年、「不況不況」と喧伝されながら、
海外市場に広告・宣伝できるほどの余力を持った日本企業が、
海外で活躍していたということ。

不況の時にも好調企業はある。
ユダヤ商法は、恐慌時にも儲ける。

イオンの前身岡田屋には有名な家訓が残されている。
「上げで儲けるな、下げで儲けよ」

今朝の日経MJでは、
総合商社丸紅㈱社長の朝田照男さんが、
インタビューに答えている。
丸紅の2010年3月期決算は、
純利益953億円で前期比14%減だった。
来年度からは、3カ年計画で、
「川下分野の強化」を掲げる。
現在、ダイエー、マルエツ、東武ストア、相鉄ローゼンなどが、
丸紅傘下の小売業。

インタビューそのものは、あまり特徴のない内容だが、
朝田さんの日曜夜の過ごし方が、いい。
「好きな酒をたしなむのが息抜き」。
「これから新しい1週間が始まる」
こう、気が引き締まるという。

今週も「気を引き締めて」過ごしたい。

今月の商人舎標語は、
渥美俊一先生からいただいた。
「現状を否定せよ」

この標語、この夏から始まって、
自分が仕事を続ける限り、
肝に銘ずべきものだと思う。

最後にお知らせ。
商人舎ホームページの右段の「新着ブログ」。
newtodayの赤い表示が出る。

今出ているブログの中で、
「浅野秀二のアメリカ寄稿」のなかのイタリア紀行
抱腹絶倒、面白い。

是非のご愛読を。

連載物流クレート標準化物語も、
少しずつ佳境に入ってきます。

さらにもうひとつ右段から「毎日宣言最新コメント」欄。
投稿コメントとそれへの回答も、
最近、力を入れて書いています。
特に新秋刀魚の売り場づくり問題はご一読を。

商人舎ホームページは、
流通サービス業総合サイトを目指しています。

様々なブログやコメント、
時間の許す限りお楽しみください。

では今週も、
丸紅の朝田三流に言えば、
「これから新しい1週間が始まる」

Everybody! Good Monday!

<結城義晴>

2010年08月22日(日曜日)

ジジと三代目サム君[2010日曜版vol34]

おおきなハコがとどきました。

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なんでしょう。

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ハコには、かいてあります。
「Newサム」
「ぼくは生ごみ処理機です」

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うえにのってるちいさなハコをあけると、
バイオのはいったフクロがでてきました。

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そのしたのおおきなハコ。

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すこしあけると、
みえてきました。

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ギン色のからだ。
くろいブチ。

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なんだか、
サム君に、
にている。

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やっぱり、
サム君そっくり。

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ぜんぶハコをとったら、
でてきました。

ギン色サム君。

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「こんにちは!」

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もうひとりのサム君とならんだら、
こんどのサム君は、にいさんみたい。

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そして、おとうとのサム君は、
いなくなりました。

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さみしいです。
どこにいったのでしょう。

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でも、おれいをいいましょう。
「これまで、ありがとう」

おとうとサム君のいたところには、
にいさんサム君がすわりました。

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こんどのサム君も、
じっとしていて、
しゃべりません。

サム君たちは、
無口なんです。

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「ねぇ、ねぇ、おとうさん。
おとうとサム君、
どこいったの?」

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「・・・・・・」

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まあ、ボクらはまた、
なかよくしましょうね。

「よろしくおねがいします」

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三代目のサム君とジジです。

<『ジジの気分』(未刊)より>

[お知らせ]
Newサム君のお問い合わせは、
ビーエスエス㈱までどうぞ。

2010年08月21日(土曜日)

コンビニ7月売上高14カ月ぶりの増加と8月9月の連続伸長予測

7月のコンビニエンスストア販売統計。
昨日、日本フランチャイズチェーン協会から発表された。

「売上高は14カ月ぶりにプラス」。
既存店が前年同月比で0.5%の増加。

日経新聞は、第三面「総合欄」に特別の囲み記事で、
このニュースを載せた。

原因は、猛暑、酷暑、炎夏。
菱食社長の中野勘治さんいうところの「神風」の所為。

8月も、猛暑、酷暑、炎夏で、
不謹慎な言い方になるが、
これに台風でも直撃したら、
コンビニの売上げは確実に上がる。

日経記事では、セブン-イレブンからのコメントが載っている。
「今のところ7月を上回る伸び率で推移」

さらに、10月からはタバコが増税される。
9月には、その駆け込み・前倒し需要が発生する。
従って9月まで、3カ月連続のコンビニ売上げ前年比プラスは予測できるが、
タバコの値段が上がったあとの落ち込みは、予測できない。

なにしろ今や、セブン-イレブンで、
売上げの3割がタバコで占められている。

7月の統計はコンビニチェーン10社、4万2995店のもの。
既存店ベースの客数は、2カ月連続のプラスで2.3%増。
しかし、平均客単価は既存店で、マイナス1.8%。
20カ月連続減少と回復は見られない。
その既存店客単価は558.4円。
「日本のコンビニの客単価560円」と覚えておくとよい。
客単価を漸減させつつ、
日本の小売業を牽引したコンビニにも、
やや陰りが見えてきた。

コンビニ経営でも、この言葉は例外ではない。
「過去の成功体験を捨てよ」

そして商人舎8月の標語。
「現状を否定せよ」

さて昨日8月19日は、午前中に、
横浜の商人舎オフィスを、
鈴木國朗さんが訪問してくれた。

スーパーマーケット経営コンサルタント。
特にマーチャンダイジングとプロモーションに関しては、
今や日本の第一人者。
私はもう、20数年のお付き合い。
この間、㈱商業界の『食品商業』には1カ月も欠かさず、
記事を書き続け、提案を続けている。
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この7月29日にダイヤモンド社から単行本を上梓した。
タイトルは『あと数%伸ばす食育スーパー』
サブタイトルに「お店の『機能』を高め続ける77のしかけ」とある。
ダイヤモンド社らしい丁寧で、使い勝手の良い本のつくり。
しかも鈴木さんらしい実務に徹した内容。
ご一読を。

今日20日は、東京・王子の㈱なとり本社。
「なとり経営塾」で講義。
この研修会は、5年後の本部長・執行役員を育成することを目的としている。
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私のテーマは「製配販『流通の現状』と課題」

朝9時から12時まで。
間に10分の休憩をはさんだが、
12時半まで延長して、語りきった。

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なとりの幹部候補生育成研修を、
学習院大学のマネジメント・スクールが請け負って、
今日は第4回目の「流通論」の巻。

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午後には、上原征彦(うえはら ゆきひこ)先生の「流通概論」。
上原先生は、(財)流通経済研究所理事長で、
明治大学専門職大学院教授。

暑い暑い8月の土曜日の研修会。
本社社屋は閉鎖されていて、
森閑としていた。

そこに全国から集まった30人の幹部候補生。
熱心な聴講に感謝したい。

講義の中で紹介した言葉、
「今日も一日、慌てず急げ」
これは覚えておいてほしい。

「今日も一日、元気と勇気」
これは、なとりの幹部候補生には、
是非とも望みたい。

暑い夏も、タバコ増税の前後も、
「元気と勇気」で乗り切るしかないからだ。

今週も[結城義晴の毎日更新宣言]ご愛読くださって、
心から感謝。
皆さん、良い週末を。

<結城義晴>

2010年08月20日(金曜日)

「現状肯定」の隣に横たわる「現状否定」と故渥美俊一本再読の薦め

毎日書くが、夏の甲子園大会準決勝。
ベスト4の対戦ともなると、
夏も終わりに向かっていることを意識させられる。

明日は、とうとう決勝。
今夏は、強豪校が比較的順当に残った。

中学生の頃からか、高校生の頃からか、
甲子園大会の決勝戦が終わってしまうと、
何かぽっかりと心の中に穴が開いた気がした。

それとともに気分はもう秋。
夏休みも、あとは宿題を済ませるだけの「消化期間」となった。
そんなことを覚えている。

さて今日が、商人舎秋のアメリカ視察「スペシャル編」の締め切り。
急遽、キャンセルが出たりしているが、ほぼ満員御礼。
来週以降、どうしても参加したいと申し込んで来られる方には、
航空券と宿泊部屋確保のための特別な対応をします。

昨日は、百貨店協会7月の売上高概況が発表された。
調査対象92社・263店舗。
売上総額は前年同月比マイナス1.4%。
店舗数調整後の比較で、29カ月連続の減少。

昨日、このブログで取り上げた日経MJ「百貨店調査」では、
2009年度は、全国233店の百貨店のうち、
なんと3店しか前年をクリアしていなかった。

それでも、1.4%のマイナスと、
7月の減少幅は1%台。
関西弁で「ぼちぼち」まで、
回復してきたと見ることができるか。

しかし百貨店にこそ、渥美俊一先生の格言が必要。
すなわち今月の商人舎標語。
「現状を否定せよ!」

29カ月連続で売上高がマイナスとなると、
店舗の大半は、「現状を否定」してかからねばならない。

セブン&アイ・ホールディングスの総帥・鈴木敏文さんは、
「過去の成功体験を捨てよ」
と言い続けているから、
百貨店売上高順位138位、年商139億円、一等立地の西武有楽町店を、
今年クリスマスに閉店することを決めた。

最新の『広辞苑』第六版によると、
「現状」の意味は「現在の状況」で、
そのあとに「――維持」とだけ使い方が記されている。
最も頻繁に使われる四字熟語がここに掲げられているだろうから、
「現状」には「維持」がつきもの。
つまり日本人は「現状」と考えると、
すぐさま「維持」を思い浮かべる。

それを「否定」に逆転させるには、
よほどの意志力が要求されるということか。

だから、渥美先生は敢えて言う。
「現状を否定せよ」

鈴木敏文さんは繰り返す。
「過去の成功体験を捨てよ」

私には面白い経験がある。
レイバースケジューリングの権威・村上忍さんは、
私が『食品商業』編集長のときに、
レギュラー号で1年間連載記事を書いて、
それをまとめて『レイバースケジューリング原理』という単行本を上梓した。

2年後だったか、ふたたび1年ほどの連載記事をまとめて、
第二弾の単行本を出した。
『チェーンオペレーション・バイブル』というタイトルがついた。
2冊の本のあとがきには、私への感謝の言葉が記されている。
1冊目と2冊目の間に、
村上さんはコンサルティング活動を積極的に行って、
実例を蓄えていた。
だから2冊目が内容としては優れているが、
1冊目には著者の思いのようなものが込められていて、
感動的である。

ただし2冊の間には、きわめて重要な変化があった。
1冊目には「現状を肯定せよ」と説かれていたが、
2冊目では「現状を否定せよ」に変わっていた。

私は、村上さんの現場実績が、
「現状肯定」を「現状否定」に変えさせたのだと判断した。

ご承知のように、 レイバースケジューリングの導入期には、
現場に入って、ストップウォッチを持って、
一つひとつ、作業時間を測定調査する。

その意味において、「現状肯定」をしなければ、
レイバースケジューリングは始まらない。

しかし作業とオペレーションの時間管理を始めると、
現状の作業の手順や仕組みを改革、改善・改良しなければなくなる。
従って、「現状否定」となる。

私には、同じ筆者の連続した単行本の鍵を握る考え方が、
180度転換していることが面白かった。
そしてこれはあらゆる実務上の問題に関連することだと考えた。

今月の商人舎標語。
「現状を否定せよ!」

ここには「現状肯定」という真反対の概念が、
隣り合わせになって横たわっている。

昨日は、午後から、
一般社団法人パチンコチェーンストア協会の第34回経営勉強会。

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私は、第二部で講演。
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この協会は、発足の時に、
故渥美俊一先生に支援していただいた。
記念講演もお願いして、快諾してもらった。

だから私は今回、
「渥美理論」のダイジェスト版を、
できるだけ分かりやすく語った。
そのことに努力した。

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「渥美理論」は、
まず商業の復権と産業化の理念・ロマンをベースにしていること。
そのために「チェーンストア産業づくり」と「流通革命の実現」を目標としていること。

はじめは皆、小さな店であった。
そこで準備段階として「ビッグストアづくり」を果たし、
その後、「チェーンストアへの転換」を果たすというシナリオが描かれたこと。

基本にあるのは「数字による科学的経営」と「マネジメント」の二つの考え方。
この二つの基礎理論のうえに、「店舗と商品」の技術論がのっていること。

最後は、「商品がすべて」であること。

最近私には、「渥美理論」を語れ、書け、
という要望が数多く寄せられている。

できるだけ応えるようにしている。
渥美先生への恩返し。

そしてこれは、改めて「渥美理論」の勉強をし、
私なりに再整理することに役立つ。

そして「渥美理論」を発展展開させることにも、
極めて有益である。

1987年、㈱商業界40周年記念事業として、
渥美俊一著『商業経営の精神と技術』が発刊された。
この本は、10数時間の渥美先生とのデスマッチのごときインタビューの挙句、
渥美語り下ろし、結城書き下ろしで、
誕生したものだった。

その時に贈られた渥美先生からの言葉。
「この書物は、すべてあなたの努力でできました」

印刷のインクの匂いの残る最初の本を届けた時に、
渥美先生がサインしてくださった。

私の宝物。
今も手元に残っている。

だが、この本は、
故倉本長治商業界主幹の『商店経営の技術精神を主題として、
渥美流解釈を加えた、当時の「現代版」であった。
それだけ渥美俊一は、倉本長治を研究し、学んだ。

私自身にも、この姿勢は必要だと思う。

「渥美理論」を聞きかじって、
渥美批判をする者が多い。

それは批判の精神に反している。

今こそ、渥美俊一の再勉強をしてもらいたい。
手元に渥美本がある人は、是非、
この夏の間に、再読をお勧めしたい。

まだ渥美先生の魂がわれわれの近くにいるうちに。

効能新たかであることは、私が保証しよう。

<結城義晴>

★事務局からのお知らせ★

本日、3つのブログ記事がアップされました。
毎週金曜更新の「林廣美の今週のお惣菜」は人気のおにぎり弁当。
不定期連載「標準クレート物語」第3回は中林氏による「イフコの導入」苦労話。
そして、浅野秀二節全開で笑って泣ける「イタリア紀行最終編―適地、ローマへ」
お楽しみください!

2010年08月19日(木曜日)

日経MJ「2009年百貨店調査」にみる233店中たった3店の増収店舗と「現状否定」

㈱商人舎、今日から夏季休業があけて、
営業再開。

よろしくお願いします。

その商人舎秋の事業。
10月5日~10月11日。

第8回商人舎アメリカ視察スぺシャル・コース。
10月開催の研修会ですが、
締め切りは8月20日金曜日。

商人舎定番の大好評「経営戦略コース」。
対象はトップマネジメント、幹部、幹部候補生。

テキサス州オースティン&ダラスとニューヨーク。
徹底的にウォルマートを裸にし、
その原理原則を習得しつつ、
それへの対抗策を考察する。

そのうえで、HEバット、ホールフーズ、トレーダージョーなど、
先進ローカルチェーン企業やスペシャルティ企業の経営戦略を学ぶ。

セグメンテーション、ターゲティング、
そしてとりわけポジショニング。
アメリカでしか理解できない、体験できない最重要概念と経営戦略が、
明らかにされる。

その学習において、現在、全米で最適の地テキサスで学び、
その後、最もエキサイティングなニューヨークにわたって、
様々なニッチの在り方を知る。

ウェグマンズ、スチュー・レオナード、
ゼイバーズ、フェアウェイマーケット、エトセトラエトセトラ。
ここには「働きたい企業」の真実が存在する。

研修と学習満載の7日間。
結城義晴、浅野秀二、メリッサ・フレミング女史。
三人の講師がめいっぱいの熱演。

あなたは必ず、
「自ら、変われ!」を体験することができる。

是非のご参加を。      [㈱商人舎]

*****************************************

昨日も新幹線の帰省客は、多かった。
それぞれの夏休みが、
それぞれに展開され、
それぞれに非日常の楽しさを満喫した。

このところの残暑は、並みの残暑ではなかった。
日経新聞『春秋』では、
「炎夏」なる言葉を引き出してきて、
「よくよく念の入った残りの炎である」とまとめる。

元西武ライオンズ監督で現評論家の東尾修さんまで、
ゴルフ中に熱中症にかかり、二日間入院した。

高齢者の方々の熱中症には、
周辺がよほど気を配らねばならない。
東京23区では100人の死亡者が出た。
ほとんどが高齢者ばかり。

その一方で、モノは売れた。
これが現代の社会の特徴。

デメリットがあれば、必ずメリットもある。
メリットが拡大されれば、デメリットのリスクも大きくなる。

その中で、リスク・マネジメントを機能させつつ、
全体最適を求める。

難しい「オクシモロン」の問題が横たわる。
「二律背反のテーゼ」。

しかし商人舎5月の標語。
「むずかしいからおもしろい」

商人舎6月の標語。
「やさしいことから手をつけよ」

昨日の日経新聞コラム『大機小機」。
「アジアに日本は魅力的か」のタイトル。

コラムニスト石巻氏の結論は、
「謙虚に経済大国意識から脱却して、
アジアに魅力的なインフラやシステム、
知的財産、行政のレベルアップのための知的支援など、
セールスポイントを自ら認識して向上させたい」

①セールスポイントを
②自ら認識して
③向上させる

いい考え方だ。

そうすれば「日本は社会システムと文化の豊かな国として、
光を放つだろう」
「日本人の勤勉さと公共心を、
もう一度取り戻したいものだ」

まったくもって、同感。

昨日18日発行の日経MJ。
「2009年度百貨店調査」

調査対象233店。
そのうち増収はたった6店。
6店の半分の3店はすでに閉店している。
つまり閉店セールで売上げが前年を超えた。
従って、通常の増収店舗は3店だった。

①西武旭川店(増収率18.0%)
②新宿マルイ(15.2%)
③大丸札幌店(1.6%)

増収の理由は、競合店の撤退。

しかし3割以上の店が、コメントする。
「競合店が消滅しても売上げ維持が精いっぱい」

さて、ランキング。
第1位と第2位が逆転した。

第1位、伊勢丹新宿本店 年商2236億円(マイナス9.1%)
第2位、三越日本橋本店 
2157億円(マイナス14.8%)

マイナスが少なかったから第1位になった伊勢丹本店。
2000億円を超える2強は、三越伊勢丹ホールディングス傘下。

以下、
第3位 西武池袋本店 1606億(マイナス5.1%)
第4位 阪急うめだ本店 
1441億(マイナス16.7%)

第4位までは「本店」が占めた。
この意味で、日本の百貨店はチェーンストアではない。
アメリカの百貨店はノードストロームやニーマンマーカスまで、
間違いなくチェーンストアであるけれど。

第5位  横浜高島屋 1355億(マイナス9.1%)
第6位  日本橋高島屋 
1308億(マイナス10.7%)
第7位  東武百貨店池袋本店 
1129億(マイナス7.7%)
第8位  松坂屋名古屋店 
1106億(マイナス10.2%)
第9位  高島屋大阪店 
1079億(マイナス13.2%)
第10位 東急百貨店本店 
1028億(マイナス17.3%)
第11位 そごう横浜店 
1018億(マイナス8.8%)
ここまでが年商1000億円以上。

昨年は1000億円以上の百貨店が13店あった。
近鉄百貨店阿倍野本店と小田急百貨店新宿本店が脱落。

年商500億円以上の百貨店は35店。
昨年は39店。

年商300億円以上は63店。
昨年は67店。

そして200億円以上は95店。
しかし95位の伊勢丹吉祥寺店は閉店している。

昨年200億円以上が107店あったから、
200億円規模以下の百貨店が厳しい。

私の仮説は「百貨店120店説」だが、
残存百貨店数の規模は、
このあたりまでではないか。
厳しい百貨店業態。
衰退業態は、
立地や規模が限定されてくる。

138位に位置する西武百貨店有楽町店。
年商139億円、売り場面積1万6191㎡。
2万㎡ぎりぎりの百貨店は、成り立ちにくい。
伊勢丹吉祥寺店は、2万0758㎡。
伊勢丹のマーケティング力・マーチャンダイジング力を持ってしても、
2万㎡では苦しい。

「オクシモロン」といっても、
ビジネス・モデルや業態のライフサイクルを、
乗り越えることはできない。

厳然とした事実や理論の前には、
努力や執念も歯が立たないのである。

この時求められる姿勢は、
商人舎8月の標語。
故渥美俊一先生からいただいた
「現状を否定せよ」

炎夏のなかで、現状否定。
どこか、ふさわしい生き方であると思う。

<結城義晴>

2010年08月18日(水曜日)

イトーヨーカ堂ウナギ偽装転売事件とセブン-イレブン電鉄系電子マネー導入への転換策

残暑と言いながら、
全国的に猛暑日。

名古屋と大阪は37度。

それでも、少しずつ少しずつ、
秋の気配を感じさせる。

昨17日、日本の株価は、
今年の最安値をつけた。
日経平均9161円。

もちろん今日になって、
少しずつ戻してきている。

自分で株を持たずとも、
株価の動きを知っておくだけでいい。

私自身が、この「知っておく派」である。

それによって、企業と消費者、両者の動向を、
感じ取ることができる。

イトーヨーカ堂とジャスコは、
すかさず「円高還元セール」を始めた。
もうこれは、「ランナーが出たらバント」の高校野球並みの、
常套手段になってしまった。

もちろん円高がすぐに仕入れ原価に反映されることはないが、
顧客の気分には、適合する。

さて、 ウナギの偽装転売事件で逮捕者。
食品衛生法違反虚偽表示容疑。
中国産冷凍ウナギのかば焼きをイトーヨーカ堂が輸入した。
それを水産物販売業「高山シーフード」が輸入したと偽装し転売。

今朝ごろは、元イトーヨーカ堂海外マネジャー(58歳)らが逮捕されたが、
昼前、現役女性社員(34歳)も逮捕されてしまった。

元社員は、否認していて、
いまだ藪の中。

読売新聞の記事。
農林水産省の食品表示監視について、総務省が調査した。
地方農政局・農政事務所9カ所の2006年度、2007年度の実績。
「偽装表示などの情報を把握してから、
業者への立ち入り検査や任意調査までに、
1週間以上かかった事例が48%に上っていた」

「食料品の製造業者や小売業者らに対し、
原産地などを正しく表示しているかをチェックする監視担当職員は、
全国の農政局・事務所に約1700人」

「担当職員1人当たりの取扱件数も、
少ない職員と多い職員で、最大4.2倍の差があった」。
総務省は、「職員配置の偏り」がその原因と判断。
今月中に農水省に配置見直しなどを勧告する方針。

イトーヨーカ堂事件は、このプロセスで浮き上がった。
今後も、ますます、厳しい摘発が行われる。

当たり前のことだ。

総務省が農林水産省を監視し、チェックし、勧告する。
この仕組みが、よい。
逆にいえば、小売業・製造業・卸売業の企業側に、
政府の総務省に似た機能強化が必要だ。

会社の中の「内部監査機能」は杓子定規になりがちだが、
この機能の充実によって、
こういった事件を未然に防ぐ。
いや、こういった事件が起こらない態勢を、
看板にするくらいの企業体質をつくる。

私はいつも、言う。
「今からでも遅くはない」

少なくとも、最高責任者が辞任して終わり、
などといった決着はつけてほしくない。

「看板となる体質づくり」に、
邁進してほしいものだ。

もうひとつ、セブン&アイ・ホールディングス関連のニュース。
来春からセブン-イレブンのレジで、
Suica、ICOCAやPASMOなど、
電鉄系電子マネーの利用を可能にする。

東日本旅客鉄道などJR5社、
およびセブン-イレブンの駅ナカ出店で共闘する京浜急行電鉄と合意。
これは何よりも、顧客の利便性を優先した政策転換。

セブン&アイは、独自電子マネーnanaco(7月末で1181万枚)を展開している。
さらに、既にエディ、クイックペイ、アイディなど小規模電子マネーは導入済み。
セブン&アイの判断は、自社電子マネーの普及が一段落したため、
他の有力電子マネーを積極導入しようというもの。

こうして、電子マネーのコモディティ化が進む。
私はどこかが最初に突出して、
クリティカル・マスを突破するかと考えていた。

それよりも早く、コモディティ化が進んだ。
Suica、ICOCAもPASMOもnanacoも、
どれも大して変わらない。違いがない。

JRを使うからSuica、ICOCAなどなど、
私鉄の定期券を持っているからPASMO。
そういった動機が優先され、
全体として客観的にみれば、
それ自体の機能やご利益には、
ほとんど差がない。

だからコモディティ化現象となる。

セブン-イレブンが他者電子マネーを導入するというのは、
その段階に突入したことを示す。

しかしこれは、
電子マネーによる顧客囲い込みが、
できなくなったことを意味する。

顧客のロイヤルティを獲得させるものは、
基本的にツールそのものではない。

道具をいかに使うかによる。

その意味で次の一手が、楽しみだ。

<結城義晴>

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