結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年08月24日(水曜日)

「イチローは嫌いだ」の「嫉妬心」と「千畳敷の真ん中の実践躬行」

トリプル台風が去って、雲は秋の気配。DSCN8283-6

夕焼けが妙に美しすぎる。DSCN8285-6

報告が遅れたが、
先週、商人舎magazineのWeb会議。IMG_9063-6
いま、大変革を企図している。

右から内田憲一郎さん、猪股信吾さん、
髙瀨精宥さん、河内志郎さん。
真ん中は鈴木綾子。

内田さんはFacebookコンサルタント、
猪股さんはWebコンサルタント、
髙瀨さんと河内さんは、
㈱プラージュのディレクター。

さて、RIO2016が終わった。
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ぽっかり、穴が開いたようで、
「祭りのあとの淋しさが
いやでもやってくるのなら」
と、吉田拓郎を口ずさむ。

「イチローが嫌いだ。
あの人を見ていると
限界という言葉が
言い訳みたいに聞こえるから。」

「イチローが嫌いだ。
あの人を見ていると
自分に嘘をつけなくなるから。」

「イチローが嫌いだ。
あの人を見ていると努力すら
楽しまなきゃいけない気がするから。」

「イチローが嫌いだ。
あの人を見ているとどんな逆風も
チャンスに見えてくるから。」

「でも、同じ人間のはずだ。」

トヨタ自動車のCMのセリフ。
「WHAT WOWS YOU.」プロジェクトを、
早くもTOKYO2020に向けて展開。
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イチローへのオマージュ。

リオ五輪棒高跳び日本代表・山本聖途、
パラリンピック水泳日本代表・一ノ瀬メイ、
陸上走り幅跳び代表・芦田創、
そして車いすテニス代表・三木拓也、
4名の選手が声にする「イチローが嫌いだ。」

RIO2016が終了し、
パラリンピックを控えた今、
実に絶妙のタイミングで、
この言葉を吐かせる。

昨日の朝日新聞一面『折々のことば』
鷲田清一さん編著。

人間が抱く嫉妬のなかで
最も暗くて陰湿なのは、
対象となる人間の
正しさや立派さに対してなの。
〈宮本輝作・小説『骸骨ビルの庭』より〉

「人は、正しいことをまっすぐにできる人の
その“無垢(むく)”に嫉妬することがある。
その伸びやかな光に照らされると、
意識にいつも屈折を強いてきた
自身の境遇ないしは悲しき性に、
思いがつい向かうから」

宮本は1947年生まれの団塊の世代。
77年、『泥の河』で太宰治賞、
78年、『蛍川』で芥川賞、
87年、『優駿』で吉川英治文学賞。
この 『骸骨ビルの庭』は、
2010年、司馬遼太郎賞。

文章の達人。
小説の中で、
戦災孤児が成長して、
長く住み込みで働いた先の老婦人に、
言われる。

「あなたも、そういう種類の嫉妬を
知らず知らずのうちに抱くようになる年齢に、
いよいよこれから入ってゆくわ。
最大の恩人に対して
嫉妬の心を起こさせようとする
何か大きな力が
牙を研いで待っているのよ。」

糸井重里の『ほぼ日』
明らかに「折々のことば」から、
インスパイアーされて書いたと思われる。

「人類がもっとずっと、
あんまり人類らしくない時代から、
きっとあったと思うのが
『嫉妬心』というやつだ。
これは、どんな人間の脳のなかにも
あらかじめセットされている
回路だとも思える」

糸井は宮本輝の名にも、
鷲田清一のことにも触れない。

「『嫉妬心』はあって当たり前、
と考えたほうがいい。
そのうえで、その『嫉妬心』に動かされて
じぶんの考えを組み立てていったり、
じぶんの行いを
そこから進めていったりすることを、
『したくない』と思うかどうかが、
その人が、選び、つくった
『人格』なのだと思っている」

トヨタの「イチローは嫌いだ。」は、
その嫉妬心を逆手にとっている。

「嫉妬することがない、
という人間になるのはむつかしい」

「『嫉妬心』というものが、
実はなかなかの曲者で、
裏番長というか、
表に立たないで人を支配するからだ」

糸井の「嫉妬心」分析。
「あいつはわるい、
あいつはずるい、
あいつは‥‥と、
別の理由で、
人を責めようとしたりする」

本当に悪い、狡いという
事実があるときは、まったく別だが。

このあとの糸井の考察が大事。
「攻撃している対象のほうに非があって、
じぶんは責めざるを得ないのだ
というかたちにする。
ほんとうは『嫉妬心』が
そうさせている場合が多い」

糸井自身がさんざん、
「嫉妬心」という裏番長に、
操られてきた。

だから自問する。
「あいつはわるい、
あいつはずるいと
言いたいときには、
『もしかして、おれは
嫉妬しているのではないか?』
と、ちょっとだけでも問いかけてみる」

「そうすると『嫉妬心』がゆえじゃない、
という理由がいくらでも見つかる」

この思考回路を身につけたい。

「そこから先は、とにかくまじめに、
じぶんの感じていることや考えを、
たしかめること。
そして、嫉妬しているかもしれない対象を、
もっとまっすぐに見ようと
姿勢をただすことだ」

しかし嫉妬の対象が、
正しくて立派なときの、
「屈折したコンプレックス」は悲しい。

「怒りのエネルギーは、
コンプレックスのエネルギーより、
数段、健全なのだ」
結城義晴、29歳のときのことば。

ああ。

最後に昨日に続いて、
日経新聞『私の履歴書』
大村智さんの巻。
北里大学特別栄誉教授。
2015年にノーベル生理学・医学賞受賞。

教授を辞して、副所長になった大村さん、
「研究の経営」にまい進する。

「病院とワクチンの製造部門を
立て直したうえで新病院を作るのは、
大変なエネルギーを要した」

そんなときに大村さんは、
安達禎元山梨大学長の言葉を思い出す。
「何事も千畳敷のど真ん中でやれ」

「隠されていた研究所の実情を、
わかりやすい資料を作って
すべてオープンにした」

「製造部門はまず人員削減をした。
といっても首を切るのではなく、
誰かがやめても補充しなかった」

新院長に河村栄二外科部長を任命した。
「社員のほぼ全員が反対したが、
一人ひとり説得して了解を取り付けた」

「河村さんは院長になると
朝は誰よりも早く病院に来て、
夜は一番遅く帰った」

「院内をくまなく見て回り
現場の把握に努めた」

大村さんの信条。
「実践躬行」
「じっせんきゅうこう」と読む。
口先だけでなく自ら進んで実践すること。

「研究所は赤字経営 から徐々に脱した」

大村さんはまさに、
「正しさと立派さ」を備えている。

そうでもなければ、
ノーベル賞は受賞できない。

しかしその裏に、
暗くて陰湿な嫉妬が、
必ずうごめいていたはずだ。

それに立ち向かうには、
「千畳敷のど真ん中」で、
「実践躬行」することしかない。

イチローのように。

〈結城義晴〉

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