結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年05月15日(金曜日)

緒方洪庵・大和屋喜兵衛の「種痘」治療と田辺聖子の「人の言葉」

今、商人は襟を正すときだ。

たとえばスーパーマーケットは、
コロナ禍の巣ごもり消費で、
「特需」が生まれている。

そんなときだからこそ、
儲けを語ってはいけない。
黙っていても利益が出るとき、
それは社会に、顧客や従業員に、
奉仕する原資としなければならない。

たとえば百貨店は、
緊急事態宣言継続の8都道府県では、
行政の指示に従って、
休業や時短を続けねばならない。
それは売上げと利益を我慢することだ。

どちらも儲けを誇示したり、
あるいは損失を嘆いては、
断じていけない。

商人の矜持の問題だ。

今、商人は社会から、
凝視されている。
一部の隙も見せてはならない。

ここで立派な商人の姿を見せなければ、
商売をやっている意味がない。

日経新聞に、
緒方洪庵の記事が出た。
「大坂救った発信力」
浜部貴司記者が書く。

緒方洪庵(おがたこうあん)は、
江戸末期の医師で蘭学者。
1810年、備中国足守(岡山市)に生まれる。
8歳の時に天然痘にかかる。
大坂、江戸、長崎で医学を学び、
38年、大坂に蘭学塾・適塾を開く。
適塾は大村益次郎や福澤諭吉などを輩出し、
現在の大阪大学のもととなった。

49年に「除痘館」を設立。
62年、幕府の奥医師兼西洋医学所頭取、
翌63年喀血し急死。享年54歳。
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幕末の「大坂」。
緒方洪庵もまた感染症と闘った。

まん延したのは天然痘。
発症すると高熱が出て
化膿性発疹が起こり、致死率も高い。

1849年、洪庵は、
英国のジェンナーが開発した
牛痘苗をワクチンに使う予防法を
いち早く取り入れ、
「正確な情報を発信しつつ
スピード感をもって普及に努めた」

牛の感染症である牛痘の膿を種痘に使う。
これは安全性の高い予防接種の新手法だった。

洪庵は大坂・古手町に除痘館を開設し、
子供の腕から腕へと、
牛痘苗の植え継ぎを行った。

ところが最初は困難の連続。
「種痘をすると牛になる」
「小児の身体に害がある」
信用もされず、風評も広まり、
子供が集まらない。

漢方医からの妨害もあったし、
一部の同志も離れていった。
だが洪庵はくじけない。
粘り強く正しい情報の発信を続けた。

こうした洪庵の人柄もあって
除痘館の事業は徐々に軌道に乗り、
創設から9年後の58年には
幕府の公認を意味する官許を得る。

しかしその洪庵の成功の裏には、
商人の力があった。

緒方洪庵記念財団専務理事の川上潤氏。
「大坂で除痘館が成功した要因には
大坂商人の資金援助がある。
特に世話方の薬種商、
大和屋喜兵衛が、
スポンサーとして惜しみない支援をした」

洪庵は除痘館と同時に西日本を中心に
ワクチンを分与する分苗所を作るが、
これにも喜兵衛が協力した。

チェーンストアの発想だ。

分苗所の数は49年11月から
たった5カ月で64カ所に達した。
「迅速に展開することができた背景には
適塾の塾生のネットワークもあった」

1858年にコレラが流行した時も、
洪庵は活躍した。

複数の蘭医書を参考に、
1週間足らずで「虎狼痢治準(ころりちじゅん)」を著し、
医師約100人に無料配布した。

浜部貴司記者は指摘する。
「ここでも正しい情報の発信と
スピード感のある対応に徹している」

14日は「種痘記念日」だった。
ジェンナーが牛痘接種に成功した日。
ワクチンという言葉も
ラテン語の雌牛(vacca)を由来としている。

緒方洪庵に思いを馳(は)せつつ、
大和屋喜兵衛の貢献も胸に留めたい。

商人の貢献と矜持である。

産経新聞の巻頭コラム産経抄。
こちらも大阪の、
故田辺聖子さんを取り上げた。
昨年6月に亡くなった作家。
91歳だった。

田辺さんのエッセイ、
「女のおっさん箴言集」(PHP文庫)から。
「私は人と人の車間距離をとれることを、
オトナの教養だと思うときもある」

まさにソーシャルディスタンシングだ。
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「”家庭”のご機嫌をとるのを、
“だましだまし”という。
“だましだまし”というのは
詐欺や騙(かた)りではない。
“希望”の謂(い)いである」
「の謂い」は「という意味」

新型コロナとは「危うい共生」関係となる。
つまり「だましだまし」で付き合う。

さらに今、
ウイルス感染者やその家族への
差別がはびこる
「コロナいじめ」は、
医療や福祉の従事者にも及ぶ。
自治体の要請を守って
時短営業を続ける店に、
「つぶれろ」などと
罵声を浴びせる心ない行為は、
「自粛警察」という嫌な言葉を生んだ。

田辺聖子さん。
「人は、刃物や天災や戦争によって
傷つき死ぬのではない」

「人は人によってのみ、
傷つけられ殺される」

「人の言葉。人の仕打ち。人の感情。
それだけが、人を活(い)かしもし、
殺しもするのである」

商人も言葉に気を配り、
襟を正すときだ。

〈結城義晴〉

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