ワンアジアコンベンション仁川の結論「アイデンティティとダイバーシティ」
7月7日、七夕。
日本、韓国、台湾、中国、ベトナムなどに、
七夕の風習がある。
昨日から韓国・インチョン。
こちらでは七夕を「チルソク」と発する。
ただし陰暦では7月7日だが、
現代の陽暦では8月25日。
チルソクの祝いは、だから、
今日7月7日ではない。
韓国にも、日本や中国と同じ「星伝説」がある。
しかし韓国人はロマンティック。
織姫と彦星の恋愛に重点を置いて、
「恋人たちの日」としている。
あくまでも8月25日のことだけれど。
キョヌビョル(牽牛星)とジッニョビョル(織女星)が、
オジャッキョ(烏鵲橋)で1年に1度だけ会える。
烏鵲橋とは、数万羽のカラスやカササギが、
連なってつくった橋のこと。
韓国の人々は、
これを「永遠の愛の象徴」ととらえる。
現代では恋人に限らず、家族同士でも、
花などのプレンゼントを贈る。
ちょっと違うことは、「七夕」の雨に対する考え方。
日本では雨は織姫と彦星の逢瀬の障害となるが、
韓国では「二人の再会のうれし涙」となる。
さらに翌日に降る雨は「別れを惜しむ涙」とまで解釈してしまう。
韓国のソルチクは、
なんてロマンティックで、
前向きなのだろう。
さてインチョンのワンアジア・コンベンション。
昨日は歓迎晩餐会。
司会はサニー・ムンさん。
きれいなイングリッシュを使う。
歓迎の挨拶は、
ワンアジアクラブ仁川会長、
パク・ゼフンさん。
仁川大学教授でもある。
そしてワンアジア財団理事長の佐藤洋治さん。
㈱ダイナム・ジャパン・ホールディングス社長。
今夕の朝日新聞一面に、
香港株式市場への上場のニュースが、
流れた。
スタンディング・バフェ方式で、
2時間の懇親。
日系二世アメリカ人の国広ジョージ国士舘大学教授。
建築学の先生。
湖南大学教授のシン・イイソブさんと、
ワンアジア財団評議員の谷口昌貴さん。
㈱ニラク会長。
シンさんは、孫文とアン・ジュングンの研究者。
会場では管楽四重奏。
ポピュラーなメロディーを奏で続けてくれた。
最後にワンアジアクラブ・ウランバートル代表から、
ワンアジアクラブ仁川へプレゼント。
partyのあとは、バスを仕立てて、
45人の有志が集まって、懇親会へ。
アジア共同体に向けたエネルギーを感じ取った。
カラリ、明けて、
今日、七夕の日。
いよいよ、コンベンションのスタート。
私も会場で、
ワンアジア財団理事・評議員の皆さんと一緒に、
いい席に陣取った。
最初の挨拶は、ワンアジア財団理事長・佐藤洋治さん。
佐藤さんは私財89億円を寄付して、
財団をつくった。
このワンアジアクラブ運動のリーダー。
ワンアジア共同体構築のために、
乗り越えねばならない壁を、
三つあげた。
第1に、自己の壁。
第2に、企業や組織の壁。
そして第3に国家や民族の壁。
これは参集したすべての人々に共感された。
挨拶の二番目は、昨夜と同じ、
ワンアジアクラブ仁川会長のパク・ゼフンさん。
そして祝辞は二人。
最初は仁川広域市長のソン・ヨンギルさん。
仁川をアジアの中心にしようとの意欲に満ちていた。
祝辞の二人目は、
韓国外国語大学総長、
パク・チョルさん。
84の大学が参加しているが、
そのアカデミズムを代表しての祝辞だった。
その後、基調演説。
UNESCAP前事務総長、
キム・ハクスさん。
素晴らしい基調演説だった。
UNESCAPは国連アジア太平洋経済社会委員会。
United Nations Economic and Social Commission
for Asia and the Pacific。
この人の見識は、
アジア共同体には不可欠だ。
続いて基調講演。
早稲田大学教授のリム・ホァシン先生。
シンガポール生まれの中国人だが、
マレーシアで育ち、
イギリスや日本で学んで、
現在、早稲田の教授。
「私自身の生い立ちがワンアジアみたいなもの」と、
挨拶してから、ヨーロッパ連合(EU)や、
NAFTA(北米自由貿易協定)などと、
ASEAN10+3+3などの数字をもとに、
現状を分析。
ASEANの10カ国と、
+3はJapan、South Korea、China、
+3はAustralia、New Zealand、India。
リム先生の講義も素晴らしかった。
ここで午前中が終わり。
私は財団理事評議員の皆さんや、
バングラディッシュのお二人と並んで、
お弁当を食べた。
左はアブドラ・アワル・ミントウさん。
ワンアジアクラブ・ダッカ会長。
それからインドネシア教育大学のディアンニ・リスダさん。
リスダさんはあとで報告者として活躍。
日本語がとても上手。
1時間半の昼食休憩の後、
午後は分科会。
メインのボールルームを三つに割って、
歴史・教育のセッション。
ここでリスダさんを入れて、
6人の大学教授陣が報告。
キルギス・ロシアスラブ大学、国立曁南大学、湖南大学、
復旦大学、カザフスタン国立大学の教授たち。
第二は政治経済セッション。
ここでも漢陽大学、河南大学、キルギス国立大学、
北京大学、中山大学の教授陣、
そして早稲田大学のリム・ホァシン教授が講義。
第3は、文化および芸術のセッション。
こちらも盛り上がった。
国士舘大学の国広ジョージ教授から始まって、
祥明大学、同済大学、延邊大学、シティメディア大学の教授陣。
各セッションごとに、
英語と日本語、ロシア語の韓国語への同時通訳が付く。
全ての報告が終わると、
セッションごとに、
討論者の教授が2人ずつ出て、
総括しつつ議論を投げかける。
ここでは日本の先生方も活躍。
歴史・教育セッションでは、
東京大学の谷垣真理子教授。
政治経済セッションでは、
嘉悦大学の黒瀬直宏教授。
黒瀬先生はPTB有識者懇談会で、
毎回、ご一緒している。
そして文化芸術セッションでは、
日本大学の原一平教授。
討論者に対して、
報告者の先生方が一言ずつ回答して、
終わる。
分科会のあとはコーヒーブレイクをとって、
夕方5時半から総括報告。
三つの分科会の座長が三人並んで、
順番に総括。
左から日本大学・木村政司教授。
仁川大学・パク・ゼフン教授。
ご存知、ワンアジアクラブ仁川会長。
そして仁荷大学・崔元植教授。
木村さんは、
「共同体とはスイートホームのようなもの。
文化の価値による共同体づくりが重要。
コンティネンタル・シンキングも大切」
崔さんは、訴えた。
「歴史とアジアの多様性を犠牲にしないワンアジア、
一人の英雄ではなく、みんなが一緒になれるワンアジア」
そして今回出ずっぱりのパクさんは、
「政治経済もバリュー体系と認識の問題、
そして歴史問題抜きには前に進まない。
アイデンティティこそ重要だ」
多様性をダイバーシティという。
アジアの多様性は、ヨーロッパやアメリカとは異なる。
それはまさに21世紀的なものだと思う。
日本の「商業現代化」に似ている。
ダイバーシティを重視するからこそ、
アイデンティティは欠かせない。
私にはこれが結論のように感じられた。
そして、ヨーロッパ共同体に関する、
さらなる研究が不可欠であることも。
EUを研究して、EUに対して、
創意を尊びつつ良いことは真似よ。
すぐさま閉会式と晩餐。
ワンアジアクラブ仁川会長のパクさん。
「アジア共同体は一つの分野で議論してもダメ。
いろいろな分野で同時進行するべき。
トップダウンでなく、ボトムダウン。
ワンアジアクラブは、
産学でボトムアップを推進する」。
そしてこちらも出ずっぱりの佐藤洋治さん。
ひとこと「ネバーギブアップ!」
みなさん、お疲れ様でした。
実に有意義なコンベンションだった。
食事をしながら韓国打楽器音楽を楽しむ。
そして恒例の国別歌合戦があって、
最後に記念写真。
晩餐会に出ていた聴講生の学生たちは遠慮したが、
ワンアジアクラブ会員、
事務局、大学教授陣内揃って、
全員が元気になった。
2年後にまた、
ワンアジアクラブ・コンベンションが開催される。
5年のうちに、アジア300の大学で助成事業が展開され、
やがてコンベンションには4000人級の参加者が集う時が来る。
アジア共同体をつくるさきがけを、
アカデミズムが務める。
これは大いに意義のある仕事だ。
現在、評議員の私も、
その一助となることができれば本望だ。
みなさん、良い週末を。
明日、帰ります。
<結城義晴>
2 件のコメント
こんにちは。
佐藤様の「私財89億円」も「89億円を寄付」にも、驚きです!
そして、
今、ことさらに、
私達の国と、アジアの国々との、争いの火種が話題となる中、
趣旨に賛同し、集った皆様に、心からの敬意を・・・。
saikiさま、コメントありがとうございます。
アジア、東アジア、環太平洋地域。
様々な枠組みが考えられますが、
アジアの人々がひとつになることは大事ですし、
その時には、多様性とアイデンティティを大切にする姿勢が必要です。