結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年11月29日(金曜日)

堤清二セゾン創始者の『変革の透視図』と『日暮硯』

晩秋の銀杏。
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からりと晴れれば、
こんなにいい季節はない。
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商人舎オフィス裏の遊歩道。
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さて杉山昭次郎先生の絶筆。
『マス・カスタマイゼ―ション』。
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まだたいした宣伝をしているわけでもないのに、
大量注文があって、ニ刷決定。

ありがとうございます。

そのコンセプトと同期しているのが、
堤清二さんの名著『変革の透視図』。

お二人ともに、
昭和2年生まれで、
平成25年没。

11月25日に亡くなった堤さんに対して、
昨日、このブログで追悼文を書いたら、
凄いアクセス数。

大新聞各紙も今朝、
巻頭コラムで取り上げた。

日経新聞『春秋』。
「西武王国をつくった父親との確執、
共産党入党と離脱、結核療養、
詩と小説への接近……と書き並べるだけで
波乱の若き日々が浮かび上がろう」

著名人はこうしてプライベートが赤裸々にされる。

「やがて才能は時代と手を携え、
いわゆるセゾン文化は等身大の豊かさ、
居心地の良さを求める人々を魅了していく」

「セゾングループ解体を促したのは、
セゾン文化を享受しつくした大衆でもあった」

作家・辻井喬の活躍が目立った晩年。
「胸中は複雑だったに違いない。
消費が時代と切り結べなくなった風景を、
寂しく見つめていたかもしれない」

コラムニスト、
力が入ってカッコいい文章だが、
冷たい。

毎日新聞『余録』。

詩集「鳥・虫・魚の目に泪」から、
「きつつきはたたく たたく
たすけを呼ぶ技師のように」

「私ハモウ駄目デス
モウ駄目デス 駄目デス」

経営者・堤清二と作家・辻井喬。
「『二足のわらじ』とは陳腐な言い回しだが、
特大のわらじ2足があって
初めてなしとげられたこともある」

自戒しているように陳腐。

晩年は「戦死できずに生き残った」
という同時代の死者たちへの負い目を記した。

「二つの生を往還することで、
身をもって描き上げた堤さんの『戦後』だった」

私は堤清二さんと戦後を、
結びつける気にはならない。

朝日新聞『天声人語』。

西武百貨店の81年のコピー。
「不思議、大好き。」
翌年の「おいしい生活。」
糸井重里の作品。

モノから、情報へ。

堤清二は、
「消費社会の変容を仕掛けた。
その仕事には常に文化が薫った。
だが、消費社会は堤さんをも追い抜く」

バブル絶頂の88年のコピー、
「ほしいものが、ほしいわ。」

「買い物には飽きた。
欲望も萎(な)えた。
人々の心変わりに、
売り手が困り切っているようにも
読めた」

経営者として挫折を経験したが、
作家の辻井喬としては健筆を貫いた。
〈思索せよ/旅に出よ/ただ一人〉
「短い詩の一節が、旅立ちに似合う」

朝日は追悼文になっている。

そして私が一番注目していたのが、
『ほぼ日』の糸井重里。

「堤清二さんが亡くなったと知って、
なんだか、なんだろう、どういうことか、
ずいぶんと『終ろうとしているなにか』を感じた」

「ある時代までの文化が、
消えていくように感じている」

ここから何かを導き出すのが糸井だが・・・。

「『元』がなくても、イメージはある
‥‥という時代が、
ほんとうにやってきているような気がしている。
これが、デジタルということなのかもしれない」

ん~、わかりにくい。

「『元』になる自然があって、
そこから表現されるものが、
人びとの共感を呼んだりしていた
‥‥そういう時代が、
もしかしたら、ひょっとすると、
いつまでも続くものじゃないかもしれない」

これは自然科学や近代合理主義から、
現代化へのスライドを言っている、と思う。

「吉本隆明さんも、
堤清二さんも、
『元」のあるイメージと
共に生きていた」

「かたちのないものでも、
よくよくたどっていけば、
必ず、原型になる『元』が
あるように思えた時代」

「元」とは論理、合理。
だからモダン。

「その時代を凝視していた人たちが、
次々に他界していく。
入れ替わっていくのだなぁ、
と思わせられる」

ポスト・モダンへ。

だとすると、
「不思議、大好き。」
「おいしい生活。」
これは論理から編み出したコピーだった?

堤清二さんの著書の中で目立つものは、
訳・解説の『日暮硯』。
1983年、三笠書房刊。

江戸時代中期の信州松代藩、
家老恩田木工の藩財政改革を筆録した書。

堤さんが訳して解説。
その解説の中で、
「恩田木工の政策の背景にあるのは、
ゆるしと変化の容認という思想のように思われる」

「現実を認め、
ゆるし、ゆるされることにおいて、
相手に責任の意識を生ぜしめる発想の、
日本的ダイナミズムがある」

鋭い観察。
鋭い洞察。

これこそ堤清二の本質だと思う。

やはり企業人が堤清二の本業だった。
詩人と作家の文化人は、副業だった。

『日暮硯』の解説は、際立つ輝きをもつ。

企業人の本質を持たなければ、
ここまでの観察と洞察はできない。

〈結城義晴〉


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