ダラスの熱い講義の日と結城義晴「チェーンストア病気診断」
アメリカではまだ11月2日月曜日。
日本では文化の日の祭日。
「日頃縁遠い書物に挑むのもいい」と、
朝日新聞『天声人語』がお薦め。
読書のお薦めに猫から入る。
朝日らしい言い回しか。
「ペットとして飼育される猫の数が、
犬の数を抜きそうだという」
故丸谷才一さんは猫派。
「神秘感がある。無邪気にして、かつ魔的」
故大野晋さんは犬派。
「まことに誠実で、飼い手の思う通り」
そして両者の特性を語り合う。
共著『光る源氏の物語』
日本に帰ったら、読もう。
丸谷さんが断じる。
「日本文学史を闊歩するすばらしい猫」
二匹いる。
一匹は「むろん漱石の吾輩」
もう一匹は源氏物語の「若菜」の巻。
主人公の正室女三の宮の愛猫。
「ねうねう」――「いじらしく鳴くこの猫が、
女三の宮と柏木との不義の恋を絶妙に彩る。
片思いの柏木は策を用いて猫を手に入れ、
身代わりのように可愛がる」
犬派の大野さん。
「こんな役回りは犬にはできない」
お二人の助言。
「前半は飛ばしても
『若菜』だけは読んで」
日本に帰ったら、読もう。
私はテキサス州のダラス。
メジャーリーグは、
第5戦がニューヨークで行われ、
ロイヤルズが優勝。
延長12回、7-2でメッツを破って、
4勝1敗でワールドチャンピオン。
日本シリーズも、
ホークスがスワローズに4勝1敗。
しかし、ここダラスでは、
誰もそんな話題に耳を貸さない。
関心の的はフットボールだ。
シアトル・シーホークスが、
ここダラスで、カウボーイズと対戦。
残り約1分で勝ち越しFGを決め、
13対12で辛勝。
シーホークスは4勝4敗、
カウボーイズは2勝5敗。
ダラスの人びと、
みんな機嫌が悪い。
メジャーリーグなど、
見向きもしない。
さて私たちは、
ダラス・フォートワース2日目。
朝一番で結城義晴の講義。
まず、挨拶。
それから2時間、
みっちり話した。
日本で「GMS」と呼ばれる業態の本質。
そしてその再生のための処方箋。
フォーマット戦略とポジショニング戦略。
その標本がアメリカにある。
2時間語りきって、疲労困憊。
一昨日のフライトの間中、
原稿を書いたツケが来た。
サルバトーレ・ペレス並みに疲れた。
ロイヤルズの捕手で、
今ワールドシリーズ最優秀選手。
そのくらい熱を入れて話した。
講義のあとはすぐに、
コンテナストアへ。
もうクリスマス向けの「ラッピング」売場が、
完璧に出来上がっている。
2カ月先だが、
「早仕掛け・早仕舞い・際の勝負」
シーゾナル商品の傘。
開くと、柄が偏っていて、
濡れない。
すかさず店員がやってきて、
商品説明。
お買い上げ。
店内では店員が、顧客を集めて、
セミナーを開催していた。
すばらしい。
この会社は体は小さいが、
健康そのもの。
次にベッド・バス＆ビヨンド。
こちらも入り口から見ると、
クリスマス気分。
そのプレゼンテーション。
食品小売業はサンクスギビングデー。
非食品小売業はクリスマス。
ターゲットが違う。
両方を持つウォルマート・スーパーセンターは、
だから感謝祭とクリスマスを、
実にうまく25万平方フィートで表現する。
ベッド・バスの天井まで届く陳列。
これもポジショニング要件。
だから丁寧にメンテナンスする。
シーゾナルのスポット商品は、
もう「Winter Accessory」
そして、これ。
スマホの自撮り棒。
すぐれもの。
しかし、ちょっと元気がない。
ネブラスカ・ファーニチャーマートの登場で、
気力が失せている。
その次に訪れたのが、
スーパーリージョナルショッピングセンター。
ストーンブライアセンター。
こちらもクリスマス気分を盛り上げる。
近く「Zen」がオープン。
日本料理店。
アップルストアは、
いつもにぎわっている。
元気いっぱい。
一方、核店舗のシアーズ。
ドキッとするくらい、
空気が動いていない。
それでもクリスマス・デコレーション。
店は瀕死の状態。
JCペニー。
シアーズと同じ「GMS」と日本で呼ばれる。
こちらは重病といったレベル。
日本で「GMS」と呼ぶ業態が、
なぜ、アメリカでも瀕死や重病なのか。
それは朝の講義で解説している。
次にローカル百貨店のディラード。
持病がぶり返している。
そしてメイシーズ。
活性化した売り場。
かわいい。
熟年女性のマネキン。
そしてクリスマス・デコレーション。
さらにキッチン用売品売り場は、
メイシーズの核部門ですばらしい。
しかし、メイシーズも風邪気味。
そして最後にノードストローム。
お手本のようなプレゼンテーション。
抜きんでたセンス。
大胆な構図。
ノードストロームだけ健康体。
しかしもう一つの核テナントが、元気。
ディックス・スポーティング・グッズ。
ほかの核店舗が、
みんな百貨店でレッドオーシャン状態。
だから専門大店のディックスだけが、
際立ったポジションを獲得している。
いい勉強ができる。
午後は、食品リテーラー。
まず、クローガー。
非食品強化型のマーケット・プレースで、
女性店長のジェリ・カリュさんに、
インタビュー。
次々にグッド・クエッションがでた。
それに大胆に答えてくれた。
「ウォルマートに負ける要素は、
全くないですわ」
恐れ入った。
病は気から。
クローガーは気力も充実。
47四半期既存店売上高増収で、
11年以上も風邪ひとつひかない。
そのウォルマートの、
ネイバーフッドマーケット。
昨年度は200店弱の怒涛の進撃。
そこで各地に居抜きの店舗が登場。
それも上手にこなすのは、
さすがウォルマート。
そしてクリスマス・プレゼンテーション。
冷蔵ケースの上からは、
これが顧客を見下ろす。
ウォルマートは抜群の体力を誇る。
こちらも医者とは縁遠い。
スプラウツ・ファーマーズ・マーケット。
一昨年8月にナスダック上場。
その後、好調が続いたが、
ちょっと風邪気味か。
隣のマイケルズも、
クリスマスを目指してまっしぐら。
夕方、暗くなってから、
ホールフーズ。
さすがの青果部門。
ホールフーズは風邪をひかない。
何しろ「健康を売る店」だから。
セルフデリの売り場も、
この時間から客数が増える。
最後の最後は、
トレーダー・ジョー。
青果部門も大繁盛。
ジョーは陽気な健康優良児。
いいことです。
さて、講義と怒涛の視察研修を終えて、
ホテルに帰ったのが7時過ぎ。
すぐに全員が、各自の部屋で、
買物した商品で調理にかかる。
そして8時には集合。
試食大会。
サラダ・前菜チーム。
ホールフーズ中心の買い物で、
ウォルマートからはドレッシングを購入。
ミート・チーム。
こちらもホールフーズが人気だった。
そして冷凍食品チーム。
トレーダー・ジョーとホールフーズ二強。
こちらも冷凍食品チーム。
イタリアン、中華などなど、
実に手軽でうまいディナーメニューとなった。 
そして夕食を兼ねた試食会のスタート。
ワインはトレーダー・ジョー。
チャールズショーと、
私の差し入れの「リザーブ」。
大満足の試食会だった。
この写真がそれを示している。
イオンリテールは風邪から、
体力回復中。
それが私にはよくわかる。
やはり「病は気から」だ。
(続きます)
〈結城義晴〉
