結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年06月28日(日曜日)

モーツアルト、ピカソ、そして藤井聡太。棋聖戦完勝。

藤井聡太。

17歳。
将棋プロ棋士。
IMG_74240
私たちは2020年6月の今、
本物の天才を目の当たりにしている。

コロナ感染が世界中に拡大していようと、
天才は天才として成長している。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
1756年、オーストリアのザルツブルクで生まれた。
978-4-89013-768-8-230x300
父親のレオポルトは、
宮廷ヴァイオリン奏者で、
宮廷室内作曲家・宮廷楽団の副学長。
クラヴィコードという銀盤楽器の名手だった。

モーツアルトには姉のナンネルがいて、
彼女のクラヴィコードの稽古を聴きながら育った。
モーツアルトは3歳から、
クラヴィコードを遊びで弾いていた。
コップの音程も聴き分けた。

4歳になると父親が本格的に教え始めた。
そしてめきめきと上達していった。

4歳のころのこと。
父親の音楽仲間が集まって、
弦楽三重奏の新曲を練習していた。

モーツァルトはそばで聴いていたが、
ヴァイオリンのパートが弾きたいと、
駄々をこねた。

そこで弾かせてみると、
それまで聴いていただけで、
習っていないはずのヴァイオリンを、
見事に弾いてしまった。

5歳頃には譜面も書いていた。

6歳のころには父とともにウィーンを旅した。
この際、マリア・テレジアの前で演奏し、
ひどく評判をとった。

7歳のときにはパリへ行って、
ルイ15世の前で演奏した。

8歳にはロンドンに渡って、
クリスチャン・バッハに指導を受けた。
そして14歳でローマ教皇から、
黄金拍車勲章を贈られた。

藤井聡太を見ていると、
モーツアルトの年少期を思う。

パブロ・ピカソは、
1881年スペインのマラガで生まれた。

ピカソが赤ん坊のころから、
言葉を覚えるより先に絵を描いた。

初めて喋った言葉は「ピス」。
スペイン語では鉛筆を「ラピス」というが、
その略語の幼児用語である。

父親は画家で美術教師。
ピカソは7歳からその父に、
ドローイングや油絵を本格的に教えられた。

ピカソが9歳で描いた絵。
the-picador-1890Large
タイトルは「ル・ピカドール」

ピカドールは闘牛士。
馬に乗って槍で牛を刺す英雄。

色彩が素晴らしい。
ピカドールと馬のバランス、
馬の筋肉などが、
見事に描かれている。
バルセロナのピカソ美術館所蔵。

ピカソ12歳のドローイング。
plaster-male-torso-1893Large
ピカソの父は繰り返し繰り返し、
石膏デッサンや巨匠の模写をさせた。

天才も真似から育つ。

13歳のころ、ピカソは、
鳩のスケッチを描きかけていた。
それを父が見つけて、
わが子の画力が自分を超えたと感じた。
そして父は絵を描くことを止めた。

そんなピカソの10代を伺うように、
私たちは藤井聡太を見ている。

その藤井聡太は、
2007年、愛知県瀬戸市に生まれた。

5歳のころ将棋を覚えた。
駒に動かし方が書いてある将棋セットがある。
それを祖母が買い与えた。

祖母と初心者同士で指したのが最初の対局。
しかしすぐに祖母を卒業し、
祖父が相手となったが、
数カ月後、地元の将棋教室に通い始めた。

父はサラリーマンで、兄が1人。
両親とも将棋は初心者。

将棋教室では詰め将棋を解き、
駒落ち定跡を覚えた。

藤井もこのころ字を覚えていなかった。
字を書くよりも先に将棋を指した。

幼稚園の誕生日カードには、
「名人になりたい」と書いた。

小学校1年の3月、
アマ初段で東海研修会に入会。
小学校3年のアマ四段のとき、
小学生名人戦の愛知県予選大会に出場、
決勝で敗れて号泣。

小学校4年の9月に、
プロへの登竜門の関西奨励会へ入会。

詰将棋解答選手権という全国大会がある。
日本将棋連盟と朝日新聞社が後援。

2004年に第1回が開催され、
プロもアマも参加する。

第10回大会までに、
宮田敦史七段が6回も優勝して、
将棋界で詰将棋の名人として名高い。

藤井聡太は8歳で初めて出場し、
13歳の5回目の参加で優勝した。
第12回大会である。

それ以降、現時点まで、
5連勝を成し遂げている。
13歳のころから、
プロたちも藤井にはかなわなくなった。

そして2016年、奨励会を卒業し、
史上最年少の14歳2カ月で、
四段に昇段し、プロ棋士となった。

プロ入り後は、
無敗のまま公式戦最多連勝記録を樹立、
29連勝の快挙だった。

中学生棋士としては史上5人目。
加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、
そして渡辺明現三冠(36歳)。
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その渡辺明と棋聖戦第2局。
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後手番藤井の第1手は8四歩。
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この将棋でも妙手を2つ。
矢倉戦の5四金。棋聖戦妙手
解説の藤井猛九段も、
立会人の屋敷伸之九段も、
控室にいた佐藤康光将棋連盟会長も、
舌を巻いた一手。

さらに3一銀。
誰も予想しなかったし、
コンピュータもこの手は軽視した。
それが後になってみると、
燦然と輝きだす一手だった。棋聖戦2妙手

超天才の渡辺明棋聖も、
なぜか藤井の前では精彩を欠く。
DSCN96240

朝9時からこうして二人で向かい合って、
夕方の6時半過ぎまで。

互いのことが嫌というほどにわかってしまう対局。
渡辺は藤井の90手で投了した。
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藤井は今回、和服で臨んだ。
師匠の杉本昌隆八段(51歳)のプレゼント。
母親と師匠とで選んだ。

濃紺の着物に黒の羽織、
袴は仙台平(せんだいひら)。
若々しくて実にいい。
DSCN96270
私たちは今、
本物の天才を見ている。

モーツアルトのような、
ピカソのような、
藤井聡太。

ありがとう。

〈結城義晴〉


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