結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年05月27日(木曜日)

サラリーマン川柳のトレンドと「三つの商業の論理」

サラリーマン川柳コンクール。
第一生命保険主催だが、
毎年恒例のイベントで、
第34回を数える。
sarasenn
昨年9月・10月の募集期間に、
6万2542句が集まった。

そのなかから100句を厳選し、
さらに今年1~3月、
インターネットなどで人気投票を実施。

10万1149票が集計された。

人気投票数もすごいが、
川柳6万句を超える投稿もすごい。
新型コロナウイルス感染拡大で、
国民に創作意欲がわいているとしたら、
これはちょっといいことだ。

テレビも新聞も面白がって報道した。
サラセン2

1位のグランプリ作品。
会社へは来るなと上司 行けと妻

COVID-19拡大で、
テレワークが広がる。

家庭と職場の板挟み?

これは歴代のグランプリの中でも、
とくにいい。

しかしいつも感じることだが、
サラリーマンというニュアンスと、
商人という概念とは、
一致しない。

だからこれは面白い川柳だが、
一般の企業の一般の社員の句だ、
といった印象が強い。

小売業、流通業、サービス業の、
とくに現場で働く人たちの感覚とは違う。

2位は、
十万円見る事もなく妻のもの

これは弱い夫という、
よくあるパターンの句。
商業も一般企業も同じ。

第3位が、
リモートで便利な言葉“聞こえません!”

この句も新型コロナ禍で、
遠隔会議が広まって、
やや軽薄なサラリーマン根性が表現された。

チェーンストアやスーパーマーケットは、
一般の企業とは異なる。

商業には三つの論理がある。
チェーンストアの論理、
商人の論理、
企業の論理。

この三つの論理が、
もっともうまく融合してきたのは、
イトーヨーカ堂だと思う。

イオンももちろん、
この三つの論理で成り立っている。

ヨークベニマルは、
商人の論理が強い小売業だ。
そこでイトーヨーカ堂のグループに入って、
チェーンストアの論理を強化した。

そこで融合度は絶妙となった。

サミットは、
良い意味での企業の論理が強い会社だ。
荒井伸也さんがノーマルなマネジメントを、
定着させたからだ。

イズミも平和堂もヤオコーも、
三つの論理がそれぞれの塩梅をもっている。

チェーンストアの論理と言えば、
故渥美俊一先生の、
独特なマネジメントが顔を見せる。

私の分析では、
アンリ・ファヨールの系統の理屈だ。
そしてここには新しい「現代化」が求められる。

それはつまりピーター・ドラッカーの論理だ。
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商人の論理は、
倉本長治の精神に象徴される。
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倉本長治は、
古い商人の論理を否定した。

「商人と屏風は、
曲がっていなければ立たない」
そう言われたら、
「商人も屏風も、
まっすぐなところにしか立たない」と、
見事に切り返した。

そして倉本の商人論は、
驚くほどドラッカーと似ている。
『店長のためのやさしいドラッカー講座』で、
私はそれを明らかにした。

最後に企業の論理は、
伝統的には会社第一主義だったが、
そこに最近は、
コンプライアンスやCSRが加えられた。
法令順守と社会的責任である。

ここでもドラッカーイムズは、
新しい企業の論理に貢献している。

三つの論理がご都合主義で、
様々な局面に顔を出す。
それがよろしくない商業を生み出す。

サラリーマン川柳は、
屈折した企業の論理を、
茶化したり、皮肉ったりして、
面白味を創造するものだが、
ドラッカーの論理から見ると、
これはあまり健康的ではない。

笑い飛ばしたり、クスッとすれば、
気分は晴れるし、ガス抜きにはなる。

しかしその冷ややかな視点の、
根っこにあるものは、
絶たれねばならない。

サラリーマン川柳第31回のグランプリ作品。
スポーツジム車で行ってチャリをこぐ

現代人のライフスタイルへの皮肉。

第31回には健康志向の句が多かった。
カロリーの低いメニューをおかわりし

ある、ある。

ドクターがダメというもの全部好き

私など、この句はよくわかる。

これらの健康志向は、
新しいトレンドだが、
関心が個人に向かっていることは、
いいと思う。

サラリーマン川柳も、
中身が変わってきている。

第21回グランプリ作品。
「空気読め!!」それより部下の気持ち読め!!

第17回グランプリ作品。
「課長いる?」返った答えは「いりません!」

第12回グランプリ作品。
コストダウン叫ぶあんたがコスト高

第10回。
早くやれ  そういうことは早く言え

いずれも組織に問題がありそうな川柳だ。

古い企業の論理が、
会社や産業を覆いつくしていると、
こういった皮肉が生まれてくる。

古い商人の論理や、
古いチェーンストアの論理も、
こういった矛盾につながる。

小売業、流通業、サービス業にとって、
現代化された三つの論理が、
健全な形で機能することが大切だ。

どれか一つが突出してしまうのも、
組織問題を起こす原因になる。

企業の論理、
商人の論理、
チェーンストアの論理。

三つの論理から導き出される事項が、
人を活かす方向を向いていれば、
それらの融合が的確になされていることになる。

サラリーマン川柳のトレンドからも、
問題の本質を垣間見ることができる。

〈結城義晴〉


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