結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年03月17日(水曜日)

アリゾナ州フェニックスの死闘「森の熊と二人の男」

昨3月16日は、第6回USA視察研修会HOT編の出発日。

関東地方は、20度を超えるとびきりの快晴。
横浜も暑いほど。
車中
成田に向かうリムジンバスの中でも、
原稿締め切りに追われて仕事・シゴト。
ゆったりとした気分で一度は出発したいものだ。

成田に集合後、恒例のガイダンス・セミナー。
待合室

メインテキストは今回はさらに充実。
ガイダンス

そして、結団式。
団長は㈱阪食の松元努さん。
取締役執行役員営業政策室長兼商品統括部長。
ガイダンスを聞いて、
「ワクワクしてきた」と言ってくださった。
結団式

出発前の記念撮影。
成田出発

そして不思議な空へ向かって、
ユナイテッドで飛び立った。
narita
機中、原稿書きや読書の準備をしていたが、
ついつい映画を3本見てしまった。

ジョージ・クルーニーの「マイレージ、マイライフ」
サンドラ・ブロックの「ブラインド・サイド」ともう一本。

8時間余りで、あっという間にサンフランシスコ国際空港へ。
それから2時間で、フェニックスへ。
この2時間で原稿1本、仕上げた。

フェニックスは砂漠の中の街。
もう日本の真夏並み。
しかしからりとした夏。

すぐにバスに乗り込んで、視察。

初日は、コーネル大学エドワード・マクラフリン食品産業学部長から聞いた話。
「森の中の二人の男と熊の話」  
森の中を二人の男が歩いていた。
そこへ熊が出てきた。
一人の男が、叫んだ。
「早く逃げよう」
もう一人は、言った。
「君より早く逃げさえすればいい」  

熊とは、ウォルマート。
ふたりの男は、ローカルチェーン。

ここアリゾナ州では、
この二人とはバシャスとフライズ。

私たちはまず、熊を見に行った。

ウォルマート・スーパーセンター。

入口が二つある。
右側が「Market」  
w1
これだけで、食品売り場側だとわかる。

もうひとつが「Home&Pharmacy」  

非食品と薬品・化粧品。

スーパーマーケットの「マーケット」は、
食品売り場を意味している。
スーパーマーケットは、
超級(スーパー)の食品市場(マーケット)である。  
これ、荒井伸也さんの指摘。
私も賛成しているが、
ウォルマートの入り口がそれを示している。

その食品売り場は、ますます、洗練され、鮮度が高まってきた。
wp

缶詰のエンド。

中央にビデオカメラがあって、
コマーシャルが放映されている。

それがとても面白い動きをする。
ときどき画面と売場がダブって、人目を引く。

コカコーラ2リットル1本、
なんと98セントのエンド。

1ドル48セントを98セントにロールバックと書いてある。

卵1パック1ドル77セント。
すごい売れ行き。

グレート・バリューがウォルマートのプライベートブランドだが、
それが今回はよく売れていた。

昨年、白いパッケージにリモデルした効果が出ていて、
売場でも目立つ。

グレート・バリューの食パンも、
よく売れている。

主通路のアイランドディスプレーは、
全面撤去され、見通しが良い。
「プロジェクト・インパクト」の成果。  

衣料品でも、売れ筋が通路沿いに並ぶ。

子供用マウンテンバイク89ドルにロールバック。
94ドルからの値下げ。

森の熊さんは、相変わらず強力だった。
では、一人の男はどうか。
129店舗のバシャス。

2008年には166店に増やして、
ウォルマートの出撃に対抗したが、
それが裏目に出て、
昨2009年7月連邦破産法11条申請。

だから「センセーショナル・セービング&サービス・ツー」
の掛け声もむなしく映る。
ただしまだ15.4%のシェアで第4位。

肝心の青果売り場が死んでいた。

10年前ならば合格の売り場も、
現在では前世紀のレガシー。

もう一人の男は、フライズ。
バシャスよりも早くクローガーの傘下に入り、
このフェニックス地区で、ナンバー1シェアの企業。
88店舗で、18.7%の占拠率。
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マーケットプレースは、非食品強化型。
ウォルマート・スーパーセンターの対抗フォーマット。

「プライス・バスターズ」のネーミングで、
生鮮食品のコモディティ・ディスカウント。

しかしこれは気まぐれ特売方式で、
ウォルマートのエブリデーロープライスにはかなわない。

アメリカでも、不況真っただ中。
顧客は、計画購買を望んでいる。

賢い顧客の賢い購買。  

それは顧客自身に判断を委ねることだ。

フライズのデリ売り場は、対面方式。

対面売り場の中央に、
「オーダー・ヒアー」と書かれた場所がある。

生鮮同様に、デリは売れなければ、
どんどん鮮度が落ち、まずくなる。

コカコーラ2リットル1ドル68セント。
クラブカードがなければ1ドル98セント。

ウォルマートのロールバック98セントと比べると、
クラブカードのない客は2倍以上、1ドルの差。

しかしゴンドラ・アイルには、
基本通り島陳列が施してある。

桃の缶詰は、
左から「フライズ」のPB、
「クローガー」のレギュラーPB、
コンペティティブプランド「バリュー」PB。
三種類の品揃え。

この店でも、プライベートブランドがよく売れている。

そして食品売り場中央のキッチンウェアの売り場。

見た目綺麗だが、売れていない。
ウォルマートは、『商品ライン』の統一が図られていて、
キッチンウェアも売れ筋ばかり。
一方、クローガーは、ベンダー品揃え。

クローガー・マーケットプレースには、
非食品の売り場に家具がある。

これがさらにいけない。

非食品出身と食品出身のおおきな差が、
非食品のマーチャンダイジングに、くっきりと出てしまった。

ウォルマートの2010年決算。
売上高4050億ドル、1.0%の伸び。
純利益143億ドル。

クローガー年商767億ドル、0.8%の伸び。
純利益7000万ドル、マイナス94%。

森の熊さんの独り勝ち。
一人の男は、逃げ遅れた。
二人目の男も、逃げおおせたとは言えない。
(明日につづく)  

<結城義晴>  

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