結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年10月12日(火曜日)

本邦初公開「スチュー・レオナード」ヨンカース店の全貌、「まず商品に語らせよ」

Everybody! Good Tuesday!

「体育の日」までの三連休、
日本の消費はどうだったのだろうか。
商売の営業状態はどうだったのだろうか。

ロンドンの中心街ピカデリー・サーカス。
人の波はすごいし、夜になっても途切れない。

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東京やニューヨーク以上の活気が感じられる。
日本やアメリカはまだまだ子供の匂いが残る。
日本が小学生で、アメリカはハイスクールくらいか。
イギリスは大人の世界。

そんな感慨を持ってしまうが、
いかがだろう。

それでも昨夜のレスター・スクウェア近辺。
ミュージカル劇場や映画館が集中するあたり、
イギリスがもっと活力を持っていた時と比べると雲泥の差。
やはり世界的な不況感はぬぐえない。
そのためか高級・低級のカジノが増えた。

東京市場でも円高というかドル安が進み、81円台。
円とユーロは113円。

東京株式市場日経平均株価は200円も下げて、9388円。

アメリカのスーパーマーケットマン達のように、
客数が減っても、売場の水準を維持して、
それでいてロス対策なども怠りなく、
いつでも元気に、お客の来店を待ちたいものだ。

さて今日は一日、ホテルの部屋で溜まった仕事に勤しむ。
ロンドンにいながら、もったいないとも思うが、
大英博物館やナショナルギャラリーくらい覗きたいものだが、
仕事の進み具合次第。

ブログは、昨日につづいて、ロンドン発ニューヨーク報告。
スチュー・レオナードの巻。

マンハッタンから約1時間、フリーウェイを走ると、
ヨンカース地区。
その山の頂にスチュー・レオナードはある。
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あまりにお客が多いので、
この誘導道路を「スチュー・レオナード・ドライブ」と呼ぶ。
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近づいてきました。
胸が高鳴る、ドキドキ、わくわく。
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出身が酪農業なので、店舗はミルク工場を模してつくられている。
頂上に着くと、現れました。
スチュー・レオナード第3号のヨンカース店。

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創業者スチュー・レオナードは、1968年まで、
各家庭に牛乳配達をしていた酪農家。
1969年12月、7人の従業員を雇い小さな酪農場店「クローバー ファーム」を設立。
2台のレジと7アイテムを扱うだけのデイリーストアだった。
ただし新鮮な牛乳を販売する自販機が設置されていた。

この店は1977年には、20レーンの電子レジを導入。
145人の従業員を雇う大繁盛店になっていた。

その後、インストアベーカリー売場を導入し成功。
焼きたてのフレッシュなバター・クロワッサンやチョコチップ・クッキーが人気となった。
さらにバーベキュー、サラダバー、魚など、次々に部門を拡大。

1988年、ニューヨークタイムズから、
“The Disneyland of Dairy Stores.”
「まるでディズニーランドのような店」と称賛される。

1992年には、食料品店として1店舗当りの売上高世界一として、
ギネスブックに認定される。

そして1999年、ここニューヨーク州北部郊外ヨンカーズに、
12.5万平方フィートの3号店をオープン。

いつも店舗前には星条旗が掲げられ、はためいている。
スチュー・レオナードはアメリカの豊かさと楽しさを象徴する店なのだ。
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10月は「ハロウィン」一色のプロモーション。
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所狭しとパンプキンが並ぶ。
その規模、世界最大といっていいほど。
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10月のハロウィン・プロモーションの王者は、
決まってスチュー・レオナードだ。
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パンプキンだけではない。
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ハロウィン人形も。
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そして超有名なポリシー・ロック。
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創業者理念が掲げられた「policy rock」。
この理念に基づいて、顧客満足を使命にしている。
意見箱への投書には24時間以内に対応する。

ポリシー・ロックの後ろにリカーショップ。
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ニューヨーク州の法律で、
食品と酒は同じ売場で売ってはならない。
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店舗の入り口を入ると、右奥で試飲をしている。
笑顔でワインをテースティングさせてくれた。
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店舗前面のテントでは、もう売場が始まっている。
以前は、ここはプロモーション・スペースだったが、
不況期に入って、貪欲に売場拡充を図った。
もちろん、どんどん商品が変わるシーゾナル売場だが。
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まずは、リンゴ売場。
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そしてオレンジなど、果物で季節感を出す。
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オレンジ、プラムなどカラフルな商品を並べて、
市場のイメージをつくる。
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店舗に入る直前には、アイスクリーム・コーナー。
もともと牛乳屋さん、だからアイスクリームはとびきりおいしい。
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さあ、いよいよ店内に入って行こう。

売場は迷路のように曲がりくねり、
完全にワンウェイコントロールされている。

陳列は商品を前面にアピールして見せ、
商品の持つ色彩やデザインを強調。

「商品に語らせる」
これはフェアウェイ・マーケットと同じ。
優れた店の根本思想は同じになる。

店内では至る所で、効果的な販促のための試飲・試食を多用している。

バックヤードをガラス越し、あるいはダイレクトに見せることで、
親近感やエンターテイメント感をアピールしている。

そして視覚、聴覚、五感すべてに訴えるエキサイティングな売場づくり。

まず、プロモーションの果物コーナー。
「今日の果実」というコンセプト。
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その対面にはコーヒー売場。
これでおわかりだろう。
スチュー・レオナードは、朝食メニューから売場が始まるのだ。
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今日の果実の隣に新鮮ジュース、
そして「フルーツ・カップ」が続く。
カットフルーツをカップに入れて売っている。
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そしてオーガニックの簡便サラダコーナー。
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本格サラダ材料コーナーに続く。
便利性商材が先に来て、
そのあとで素材が来る。
購買頻度が高い順にカテゴリーが並んでいる。

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通路上の島陳列は「シーゾナル商品」。
スポット商品と考えればいい。
関連販売だったり、意外性の商品だったリ。
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サラダとコーヒーの次は?

そう、主食、パンの売場。
ユダヤ人のパン「ベーグル」。
そのパンプキン・ベーグル。
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ベーグルだけではもちろんない。
世界中のパンが、品揃えされている。
なにしろアメリカ合衆国は多民族国家。
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バター・クロワッサン。
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この売場の上には、天井から鉄棒をする人形が動いている。
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焼き立てパンから、クッキーへ。
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そしていよいよ、メイン売場のひとつ、青果部門へ。
プロモーション果物があって、
コーヒーがあって、
写真にはないが花売場があって、
サラダがあって、
ベーカリーがあって、
やっと青果部門に入る。

これ、アメリカのスーパーマーケットの部門構成そのもの。
スチュー・レオナードはワンウェイコントロールだが、
オーソドックスなスーパーマーケットの基本を守っている。
それを読み解いてほしい。
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この不況で、土曜日というのに客数は少ない。
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果物はリンゴから。
店頭のテントでリンゴを売っていたが、
強調すべきカテゴリーは何度でも売り込む。
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カゴ盛りの野菜たち。
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レタスとペッパーの売場。
カラフルだ。
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ワンウェイの売場はくねくねと曲がっている。
山登りをするとき、あるいは綴れ折りの坂道のよう。
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曲がるたびに新しいくくり、コンセプトが現れる。
そのコンセプトが連続している。
全体でこの店が提供する生活が浮かび上がってくる。

葉物野菜もカゴ盛り。
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テレビ画面で生産者が語る。
いかにしてつくるか、安全か、美味しいか。
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1ポンド1ドル99セントのプラム売場。
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レモン、オレンジと続く。
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左手には、カゴ盛りの野菜。
ナスやキュウリ。
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メロン、グレープフルーツ、オレンジ。
SKUは多くはない。
1品目当りの陳列量が多い。
スチュー・レオナードは単品大量を原則にしている。
その意味でもスーパーマーケットの基本に忠実な店だ。
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最後に、フルーツとベジタブルの簡便コーナーがふたたび登場。
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そして最後の最後は、バナナ。
有名なバナナ娘が歌う。

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ボタンを押すと、歌ってくれる。
そのボタンも擦り切れるほどにリクエストが多い。

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青果部門の終わりは、根菜類。
このあたりは、異論もあろうが。

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同じワンウェイコントロールのHEBセントラルマーケットでは、
根菜が先に来て、最後の最後にバナナだった。
これはポリシーの違い。

鶏合唱隊が楽しく歌う。
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青果部門から精肉部門へ。
セルフ多段ケースで、品揃えから入る。
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コーナーには上部にぬいぐるみ人形が。
セルフケースに続いて、対面ケースで売れ筋が並ぶ。
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イタリアンソーセージ売場。
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顧客が売場にアクセントがほしいと思ったころに、
試食のコーナーが現れる。
そこでつい、手を伸ばして、試食する。
店を出る頃には、おなかいっぱい。
これを「サンプル・ライフ」という。

しかし、それでも顧客は今夜のメニュー、明日の商材を購入してくれる。
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冷凍食品はリーチインケースで売られる。
売場の中央に衣料品が島陳列。
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シーフード・サラダやロテサリーチキンの売場がみえてきた。
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バナナ娘に続いて、
オーム船長が歌う。
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通路上には冷蔵ケースの島陳列も。
ここは変化させる売場。
時には売り切れ御免のシーゾナルアイテムが売られる。
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そして曲がり角に、鮮魚の対面。
上部のパネルには大きな魚のデコレーションがある。
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鮮魚から、次は乳製品へ。
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スチュー・レオナードが牛乳や出身であることを思い知らせてくれる売場。
左はオーガニック・ミルク。
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牛乳売場の続き。
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ソフトドリンク売場が繋ぎで、奥にバター売場がみえる。
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そのドリンク売場では、
コカコーラ、ペプシコーラが並んでいる。

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バター売場の上部にはまた、楽しいミュージックを奏でるぬいぐるみ。
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曲がりくねって、次のコンセプト、次のカテゴリーに。

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向こうにチーズの売場がみえる。
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間をつなぐのは水の売場。
ポーランドの水。
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コーナーに、ぬいぐるみ人形。
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アペタイザーの売場。
ライス・プディングやピクルス、ロマノチーズなどが、
コーナーづくりされている。
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ミートボール5ドル49セント。
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圧巻のスープ売場。
様々なスープがカップに入れて売られている。
買って帰って温めるだけ。
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「凄い」の一言。
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寿司売場は独立している。
並んでいる商品自体は、ベンダーから供給されるもので、
さして大きな違いはない。
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奥に、最後のコンセプト・サービスデリの売場がみえる。
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「ヘルシー・ステーション」とネーミングされたビュッフェ・スタイルの売場。
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そしてHotデリ。
ミート・ラザニアやミート・バーベキューなど、
好きな品を選ぶことができる。
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「ウィークリー・スぺシャル」と名付けられたコーナー。
HotデリとColdデリが選べる。
1週間ごとにメニューが変わり、
「今週のお薦め」料理が提案されている。
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最後に、「キッズ・ミール」から「ピザ」へ。
キッズ・ミールは子供用の食事。
子供客も多いスチュー・レオナードらしい丁寧な提案。

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右手のリーチインケースはアイスクリーム。
左手はライス・ケーキ。
真ん中に島陳列で、揚げたてのポテトチップスが売られている。
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最後は、なぜかドライフルーツとミックスナッツ。
これは、店を見に来ただけの人々へのお土産売場。
何にも買わなかった人も、
ここでは「買ってね」の意思表示。
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そしてぐるりと回ってレジへ。
レジの向こうは、入り口で、
右手にコーヒー売場がある。

不況のあおりで、やや閑散とした観があるが、
最後のおもてなしのレジが、元気よくて、よろしい。
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さて、スチュー・レオナードの全貌をお届けした。
本邦初公開。

いかがだったろうか。

小手先の楽しさづくりではない。
小手先のプロモーションでもない。
小手先の売場づくりでもない。

メニューの提案が、
「これでもか、これでもか」となされる。
毎週のように商品が変わり、売場が変わる。

スチュー・レオナードは、まず、
こんな生活を送ってほしいという「願い」を持っていて、
それを店と商品に表している。

そこに知識商人たちの努力の粋が集まる。

Rule1  The Customer is Always Right!
原則1 顧客はいつも正しい。

Rule2  If the Customer is Ever Wrong, Reread Rule1.
原則2 たとえ、顧客が間違っていると思っても、原則1を読み返せ。

ポリシーが売場をつくり、店をつくる。

それを私たちに教えてくれる店。
スチュー・レオナードに、心より感謝。

 (つづきます)

<結城義晴>

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