結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年10月08日(金曜日)

「誰がウォルマートを殺すのか?」長期連載再開宣言を発す

日本の成田からオースティンに来て、
オースティンで一晩。
そしてオースティンからダラスにバス移動して、
一晩寝て、一日を過ごし、
今、二晩目も明け方になっている。

昨日は、朝から10店舗を巡った。
本を読む場合も、一時は、
一つの分野の本を乱読をするのが良い。
とにかく手当たりしだいに、読みまくる。
そうすると、見えてくる。

店を見る時も同じ。

今回のコースも、最初の日、二日目は、
講義を交えて、3店舗、4店舗を訪問。

「見て、感じて、考えて」、
「自分のものとする」。

慣れてきたら一気に10店。

もちろん良く練られたストーリーに則って「乱読」。
動いているときは、時間の経過を忘れる。
それくらい、めまぐるしい。

ブログは、丁寧に書いていきたいと思う。
ゆっくりと説明していきたい。

そうするとどうしてもタイムラグが起こる。

動物は、体の大きなものも、小さなものも、
その一生で、心臓を打つ回数が同じだという。

本人にとって、生きている時間のリズムは同じということになる。

しかし、体の大きなもののほうが実際は長い期間生きる。
小さなものは短い。

象は長くて、鼠は短い。

だから象からみると、鼠は短命だが、
鼠自身の生きているリズムは、
象とかわらない。

とすると、今の私や私に同行している人たちは、
小さな動物になっているのか。
12時間+1時間、ジェット機の上から、地球を見てしまったから、
自分が小さな存在と感じられるようになったのか。

とにかく、心臓を打つ鼓動のリズムが速いのだろう、
時間がひどく短く感じられる。

五木寛之さんが言っていた。
新しい体験をしていると、
時間は早く感じられる。

同じことをしていると、時間は長い。
早く感じられることは、「充実」を意味する。

だから五木さんは、
毎日、違う道筋で散歩したり、
同じ目的地に行くときにも、
違うルートを採ったりする。

外国にやってくることは、
非日常である。

それが時間を短く感じさせてくれる。
しかし、これは間違いなく、
「充実」を意味している。

さて、商人舎USA研修会スペシャル編。
「経営戦略」を学ぶコース。
オースティンでの2日目から、佳境に入る。
朝8時に集合して、HEB元上級副社長のメリッサ・フレミングさんの特別講義。
「最新アメリカ流通業の実態とHEBの対ウォルマート戦略」。

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HEBは全米第7位のスーパーマーケット企業。
年商1兆5000億円の非上場企業。

メリッサさんはHEBで、
マーケティングとストラテジーを担当した。
ウォルマート対策にかかわり、
プライベートブランド開発に携わった。

その実体験は、大変に貴重なものだ。

現在は、コンサルタント。

まず、アメリカ小売業界、スーパーマーケット産業の大激変。
「ウォルマートの異変」に関して。

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ウォルマートはUSA国内での実績を辿ると、
5四半期連続売上げ減。
15か月連続ダウントレンドにあるということ。

全体では国際部門が収益をカバーしていて、
中国、メキシコ、ブラジルが好調。
すなわち流通後進国のBRICsでは受けている。

なぜ米国内ウォルマートの業績が不振なのか。
このテーマ、今回のツアー全体を通したものとなった。

そして私は、ダラスの最後の日に、
その理由を解明した。

フレミングさんの分析。
第1に、間違った人材をチーフポジショニングに配置したこと。
ターゲットからスカウトしたマーケティング担当のジョン・フレミング、
USA代表のカストロ・ライトの2人。
彼らが新しいイノベーション「プロジェクト・インパクト」の推進者。

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一言でいえば、
ウォルマートをコンテンポラリーな企業に変えようとした。
NYにバイイングオフィスを設け、
ヴォーグ誌に広告を載せるなど、
イメージ変革を試みた。
その結果、顧客は混乱し、それに拒否を示した。

この間違った人事は排除され、
新たにビル・サイモンがUSA社長になり、
「原点回帰」を打ち出している。

第2は、不況期に打ち出した戦略によって、
グロスマージンが下がってしまったこと。

1万アイテムの商品を値下げした「ロールバック」。
Thousands of rollbacks
これは、強力な販促費をかけて展開されたが、
結果として粗利益を下げるだけのものとなった。

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どこよりも安い価格を追求し、
競合他社の価格に合わせるため、
各店の店長に価格決裁権を与えた。

しかし、既存の顧客は所得がダウンしているため、
価格を下げて広告しても、
それらの顧客の購入意欲につながらなかった。

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この3月から7月9日まで展開されたプロモーションは、
それをやめた途端、
ウォルマートから客足を遠のかせてしまった。

第3に、一番安いというイメージを失った。
これが大きなこと。

価格政策の中で、大胆な「プライス・マッチング」を展開した。
プライス・マッチングとは、
競合他店に価格を合わせること。

例えばダラスではアルディが1ガロン99セントの牛乳を売っている。
1ガロンは3.8リットル。
日本でいえば、1リットル25円。

これにウォルマートがプライスマッチングした。
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クローガーも、セーフウェイも、追随した。

しかしこれは、逆に、
ウォルマートが一番安くはないという印象を与えてしまった。

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そして第4に、企業文化の変質の問題。

地域のお客のニーズに合わなくなってきている。
だからテキサスでは9カ月間売上げがダウンしている。
クローガー、HEB、そしてアルディが参入。
これらの企業がベーシックアイテムを価格訴求し始めた。

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ウォルマートは9月の終わりに、
この3社の動きに対応し始めたが、
会議だけで具体的なアクションは見られない。

「会議は踊るされど進まず」の観あり。

以前は1週間売上げがダウンしたら、
次の1週間で対策を打ち出したウォルマート。

そのウォルマートがもっていた企業文化が変わりつつある。

だから店舗はマーケットに対応できていない。

フレミングさんの分析は、超辛口だった。

しかし、私たちはオースティン、ダラスで、
その実態を体験することとなる。

ウォルマートの人々は、
赤裸々に、正直に、
私たちにそれを教えてくれたのだった。

私は本気で、連載を再開せねばならないと思った。
「誰がウォルマートを殺すのか?」
(続きます)

<結城義晴>

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