結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年05月28日(火曜日)

ニコルソンの「外交」の鉄則と豊田章男の「数値目標はない」

68時間の滞在――。
そしてドナルド・トランプ大統領、
帰国した。
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全国紙、地方紙の巻頭コラムは、
各紙の達人たちが覇を競う。
情報網も読書量も豊富で、
したがって優れた内容ばかりだ。

その中で今日は、毎日新聞「余禄」

ハロルド・ニコルソンを登場させた。

20世紀初頭のイギリスの外交官で、
歴史家、政治家、作家。
「サー」がつく貴族でもある。

出身はオックスフォードで、
大学卒業後、英国外務省に入省。

パリ講和会議に参加。
著書の『外交』は世界中で、
教科書・必読書と位置づけられている。
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ニコルソンが活躍した20世紀前半には、
首脳同士の外交は例外的だった。

「ニコルソンは、
政治家の訪問外交を
批判した」

「その手の外交は
公衆の期待や誤解を引き起こし、
政治家当人の虚栄心を刺激して
誤った判断を誘発する」

ニコルソンの定義。
「外交とは会話や社交の術ではなく
国益を異にする国の間で
認証可能な合意を取り決める術だ」

余禄のコラムニスト。
「合意よりも首脳同士の親密さを
内外に示すショーが
“外交”となる時代の到来は
ニコルソンには想定外だったろう」

「首脳同士の親密な関係が、
もしや両国の国益の調整よりも
お互いの政権の都合の
すりあわせの場になってはいないか」

同じことは多くの人が感じただろう。

「国益を守るべき外交が
政治家の権力の小道具とされるのは
ニコルソンの悪夢であろう」

「仲良き事は美しき哉」
武者小路実篤。
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それもあるけど。

初夏の横浜。
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商人舎オフィスの裏の遊歩道。
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この数日は暑いけれど、
それでも快適。
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アジサイが咲き始めた。
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もう1週間ほどで梅雨入り。
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それまでは1年で最高のとき。

考えてみるとトランプ夫妻は、
最高の時季に日本にやってきた。
感じたかどうかはわからないが。

さて昨日の日経新聞「核心」
「トヨタ30兆円の城は盤石か」
論説委員の西條都夫さんが考察する。

トヨタ自動車の2019年3月期の連結売上高。
30兆2256億円。

「日本企業として初めて30兆円の壁を突破」

「大台突破は日本産業史の一里塚」
その意味を分析する。

まずは30兆円のスケール。
他社比較。

トヨタに続く2位はホンダ、
売上高は16兆円弱で約半分。

トヨタの連結営業利益2兆4675億円も、
ソフトバンクグループなどを抑えて、
日本一だ。

自動車と並ぶ「製造業の雄」電機。
日立制作所が9.5兆円、
パナソニックが8.0兆円。
トヨタの3分の1に満たない。

平成が幕開けした1989年頃は、
トヨタと日立、松下電器産業の3社は、
6兆~8兆円で団子状態だった。

平成の30年で差が開いた。

世界でも同規模の企業はそうない。
米フォーチュン誌の企業番付。

これは私の得意とするところ。
1 Walmart(アメリカ) 小売業5003億ドル。

ご存知、ウォルマート。

2 State Grid(中国)電力 3489億ドル。
3 Sinopec Group(中国)石油 3270億ドル。
4 China National Petroleum(中国)石油 3260億ドル。
中国の石油・電力・エネルギー。

5  Royal Dutch Shell(オランダ)石油 3119億ドル。

3000億ドル以上、
トヨタ以上はこの5社。

6 Toyota Motor(日本)自動車 2652億ドル。
7  Volkswagen(ドイツ)自動車 2600億ドル。

「有力な油田を掘り当てれば
数百億円単位の収入が転がり込む
資源会社などと異なり、
自動車会社は数万点の部品を組み合わせて
1台1台作り込む地道な仕事だ」

ウォルマートは10万品目の商品を、
1品1品売って50兆円だ。

「政府から独占権を得ているわけでもなく、
競争は激しい」

「そんな環境下での30兆円は、
相当に密度の濃い30兆円といえる」

ウォルマートも同様。

今年は豊田章男氏が社長になって、
10年の節目でもある。
もちろんトヨタ創業家ご出身。
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ここからが面白い。

「過去10年のトヨタの経営には、
他の会社にはあって当然のものが
なかった」

なにか。

「販売台数などの数値目標である」

おお。

「数値目標」がない。

「リーマン・ショック後の危機のさなか、
09年の登板直後から、豊田社長は、
前任体制へのアンチテーゼも込めて
“数値目標はあえて掲げない”と言い続けた」

数字なしでどうやって、
組織を引っ張るのか。

しかし、その後の10年で、
逆に数字のわなに足を取られた、
ライバルの失態が露呈した。

フォルクスワーゲンは、
「米国での100万台販売」を、
ヴィンターコーン元社長から厳命され
その技術陣は排ガス不正に走った。

世界販売600万台の旗を掲げたホンダは、
背伸びをしすぎて失速。

極め付きはゴーン日産の転落。
台数や利益率の「コミットメント」を、
経営の切り札として多用した。

考えさせられる。

コラムニストも言う。
「”数字なし経営”が、
どんな場面でも通用する
普遍的な手法かどうかは留保がつく」

しかし豊田章男さんは、
「頑固にこだわり続けることで、
独自の経営スタイルを確立した」

もう一つは、
「創業家出身ならではの大胆な意思決定」

住宅事業のトヨタホームを、
パナソニックとの共同出資会社へ移管。

米ゼネラル・モーターズとの合弁工場では、
「NUMMI(ヌーミー)」の閉鎖を決断。

電動化など「CASE」の新技術の領域でも、
ソフトバンクグループと提携した。

中国の新興メーカーへ、
小型車の設計ライセンスを供与する。

つまり、
オープン・イノベーション戦略を進める。

最近の一連の提携戦略も、
従来型自動車メーカーの殻を破る試みだ。

最後にトヨタの歴史の奇妙なジンクス。
⑴売上高が10兆円を超えた直後に
国内のバブル景気が崩壊。

⑵20兆円に届くと、
リーマン・ショックが起きた。

⑶30兆円に到達した今回も、
米中対立の激化など世界情勢は波乱含み。

「GAFAに代表される世界のデジタル企業も
自動車ビジネスの創造的破壊をもくろむ。
もしかすると嵐が来るかもしれない」

最後まで読むと、
西條都夫さんの豊田章男さんへの
一種のラブレター記事であることがわかる。

しかし、「数値目標なしの経営」は、
それ自体、ユニークだ。
アウトスタンディングだ。

かつて、鈴木敏文さんは、
「店を見るな!」と言い続けた。
セブン-イレブン創業者で、
セブン&アイ・ホールディングス前会長。
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それでもイトーヨーカ堂の社員たちは、
誰よりも競合他社を見ていた。

まったくの私見だが、
「数値目標」は表に出さないが、
トヨタの幹部や社員は、
どこよりも数字にシビアであるはずだ。

もともとシビアすぎるから、
「数値目標」を掲げないのだと思う。

それぞれの経営――
これこそ豊田章男のトヨタの経営だし、
鈴木敏文のマネジメントである。

〈結城義晴〉

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