台北の日勝生加賀屋・徳光重人さん、台湾での日本ビジネス奮闘記

今日は楽しいひな祭り♪
しかし、ここ台湾では、
ひな祭りはない。
だからスーパーマーケットでもコンビニでも、
百貨店でもひな祭りのプロモーションは行わない。
日本の節句は、
中国からやって来た。
いわゆる五節句。
1月7日が人日(じんじつ)、
3月3日が上巳(じょうし)、
5月5日が端午(たんご)、
7月7日が七夕(しちせき・たなばた)、
そして9月9日が重陽(ちょうよう)。
中国から来たものの、
日本で独自に発達し、
その中で3月3日は桃の節句となり、
ひな祭りとなった。
台湾には桃の節句がない代わりに、
「婦女節」(フーニュイジエ)がある。
こちらは世界婦人デーを採用して、3月8日。
婦女節という。
中国人女性の地位向上を目的にしている。
さて昨日のお昼頃、
台湾の台北松山空港に到着。
日本時間9時40分発、
13時30分着。
約4時間。
しかし時差が1時間で、
こちらの12時30分到着。
気温27度。
すぐにチャーターバスで、
新北投へ。
高速道路を走り、
途中、Wellcomeなど登場。
台湾のスーパーマーケットは小型がほとんど。
Wellcomeは286店舗のスーパーマーケット第2位。
すぐに新北投につく。
ここ北投温泉は、
日本の秋田・玉川温泉と同様のラジウム泉で有名。
そしてその中心にそびえる温泉旅館。
そう、日勝生加賀屋。
石川県能登の加賀屋の、いわば台湾支店。
支店といっても、
台湾資本の日勝生活科技網站と加賀屋の合弁企業。
立教大学大学院・結城ゼミは、
サービス・マーケティングのゼミでもあるので、
日本旅館のホスピタリティ・ナンバー1の加賀屋を学ぶのも、
ゼミの趣旨ではある。
その加賀屋が台湾に温泉旅館を出したのが、
2010年12月18日。
日本のホスピタリティが、
台湾に通じるのか。
本質的なものをどう取り入れ、
どの部分で現地化するのか。
興味は尽きない。
着いたらすぐに、
客室をご案内いただく。
ご案内役は「小夏」さん。
この名は客室係名で、
小夏さんは台湾人。
客室には全室に自前の温泉がある。
宴会場は、掘りごたつ式。
中国人や台湾人の宴会は、
円卓が欠かせない。
だから円卓の宴会場もある。
大浴場や足湯の設備も完備してあるが、
日本になくて台湾にあるのが、「個人湯」。
これが5階のフロア全部を使って展開され、
特徴となっている。
もちろん和倉の加賀屋のイメージは、
完全に踏襲されている。
夕方には生演奏の琴の音が静かに流れる。
館内の視察が終わると、
白鷲の間で、小夏さんを囲んで集合写真。
アフタヌーンティをごちそうになる。
そして真打登場。
日勝生加賀屋董事の徳光重人さん。
「日本と台湾の架け橋になる」
それが徳光さんのライフワーク。
徳光さんは、大学を出て、
スポーツインストラクターとなる。
そして縁あって、台湾へ。
さらに縁あって、
日勝生活科技網站オーナーからの要請で、
この北投温泉でホテルを開設する役を担う。
石川県金沢のご出身。
だから北投にホテルをつくるという話が出た時、
加賀屋の誘致をまず考えた。
しかし加賀屋につてはなかった。
徳光さんは何か不思議なものを持つ。
ここでも縁と苦労があって、
加賀屋の了解を得て、
開設にこぎつける。
しかし日本と台湾の考え方や文化の違いに、
何度も何度も苦労を重ねながら、
一つひとつ問題を解決して、
2010年12月にオープン。
日勝生加賀屋のコンセプトは、
日本の加賀屋をそのまま台湾に持ってくること。
ここで妥協はしない。
建設、施設、什器、家具備品に至るまで、
本物とそっくりのものを台湾の業者を使って仕上げた。
さらに人の問題。
とりわけ加賀屋にとって必須の「客室係」。
全員台湾の女性で、
日本の加賀屋流を実現させる。
採用から教育まで、
日本の加賀屋の全面協力の下、
何とか仕上げた。
着物の着方の練習、
正座の訓練、
膝をついてのご挨拶やふすまの開け閉めまで、
日本式のホスピタリティを、
所作のトレーニングから入った。
つまりは形から入る。
それがやがて身につく。
徳光さんは体育の教師を目指していた。
だから大学の授業で柔道の黒帯を捕るという課題があった。
講道館では初段をとるために、
型を基本としている。
このことから日本の所作を、
台湾の若い女性たちに学び取ってもらおうと考えた。
形から入るトレーニングは、
見事に成果を収めた。
私たちを案内してくれた小夏さんも、
その一人。
最初は着物を着るのに、
2時間もかかった。
今では10分ほどあれば、
日本人以上に着こなす。
そんな丁寧な訓練と教育が間に合って、
台湾加賀屋はオープン。
現在、台湾のビジネス誌でのホスピタリティ調査では、
断トツの第1位。
しかも日本の加賀屋よりも良い面があるとの評価も。
徳光さんの熱意がそれを成し遂げた。
固い握手。
ゼミ生全員で写真。
私だけ特別に、
台湾加賀屋の客室係の皆さんに囲まれて写真。
ありがとう。
日本の加賀屋にとっても、
台湾加賀屋は大きなメリットを生んでいると思う。
何より加賀屋のホスピタリティとは何かを、
台湾加賀屋が追求し続けている。
そして質問なり、疑問なりが、
常に寄せられる。
そのリクエストに、
能登の加賀屋も丁寧に答える。
するとそれがそのまま、
加賀屋の本質を加賀屋自身に確認させることになる。
理念やミッションは、
風化しやすいものだ。
陳腐化も避けられない。
しかし同じ理念を掲げ、
他国でそれを成し遂げようとする人々がいると、
常にそれを見つめ直さねばならなくなる。
つまり加賀谷らしさを、
意識し、自覚する緊張感が生まれる。
これこそ、両加賀屋にとって、
何よりもメリットとなることだ。
徳光重人さんの話を聞いていて、
私はそんなことを考えていた。
< 結城義晴>
1 件のコメント
結城先生、ありがとうございます!さすが、視点が鋭いです!