結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年02月07日(金曜日)

堂目卓生の「弱い人」と故春山満の「士農工商」

新型コロナウィルス騒ぎで、
すっかり忘れていた。
今月の商人舎標語。

2008年6月から、
この商人舎公式ホームページに掲載。

記念すべきその第1回目は、
「節約、倹約。もったいない」

2013年5月に月刊商人舎創刊。
それからは巻頭言[Message]を、
今月の標語とした。

今月で141回目。

[Message of February]
tobira
利益を追うな!

おなじ商品ならば、
1円でも5円でも、
できれば1割、2割、3割、
安く売りたい。

おなじ値段ならば、
わずかでも、すこしでも、
できれば圧倒的に、
美味しくしたい。より良くしたい。

そのためにBuying & Sourcing。
安く仕入れる、安く調達する。
大量に購入する。
利は「元」にあり。

そのためにSelling。
たくさん売る。
売上げを爆発させる。
利は「売り」にあり。

そのためにCost Control。
販売費・管理費を減らす。
あらゆる経費の無駄を省く。
利は「内」にあり。

そのためにProduct Development。
模倣困難な、この1品を開発する。
それがプライベートブランドになる。
利は「この品」にあり。

そのためにMargin Mix。
この品は安く売る。
しかし他の品で利益を確保する。
利は「他の品」にあり。

そのためのFive Theories。
利益を上げる5つの定石。
安売りをするにも、何をするにも、
この5つの定石を徹底する。

Human Resource Management。
実践に先行する理論はない。
それらを考え、行うのは人間である。
だから最後に、利は「人」にあり。

しかしKnowledge Merchantは、
おなじものなら安く売りたい。
おなじ値段ならより良くしたい。
利益を上げるためにだけ、
仕事するのではない。
〈結城義晴〉

「安く売る」とは、
初めから利益を追わないことです。

そして同じ商品ならより安く売り、
同じ値段ならより良いものを売れば、
お客は喜び、最後に利益が入ってくる。

利益を追わなければ、
利益がやって来る。

不思議なパラドックスです。

今日の朝日新聞一面「折々のことば」
第1722回。

経済を発展させるのは
「弱い人」、あるいは、
私たちの中にある
「弱さ」である。
〈経済学史家・堂目卓生(どうめたくお)〉

「今日の企業活動には、
熾烈(しれつ)な競争を勝ち抜くという
強壮なイメージがつきまとう。
しかしそれを根底で、
突き動かしているのは”弱さ”だ」

堂目さんは岐阜県生まれの61歳。
慶應義塾大学経済学部卒業後、
京都大学大学院経済学博士。
現在、大阪大学大学院経済学研究科教授。

この言葉は『アダム・スミス』から。
サントリー学芸賞を受賞。
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アダム・スミスは、
「経済学の祖」といわれ、
有名な『国富論』を書いた。

政府による市場の規制を撤廃し、
競争を促進することによって、
経済成長率は高まり、
豊かで強い国ができると考えた。
いわゆる市場原理による「神の手」である。

しかし、スミスは、
無条件にそう考えたのか。

スミスにもうひとつ、
重要なの著作がある。
『道徳感情論』である。
ここに示された人間観と社会観を通して、
堂目さんは『国富論』を、
思想体系として再構築する。

編著者の鷲田清一さん。
「生活物資の欠乏から
虚栄心、嫉妬心まで。
そういう視点から見直すと
経済の別の顔が見えてくる?」

「そういえば英語で、
欲求(want)は同時に欠乏を、
虚栄心(vanity)は空しさを意味する」

なるほど。

ならば結城義晴著『Message』から。
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「士農工商」

「士農工商」の序列は、
誰がつくったのか。
徳川封建政治を支える身分制度として、
当時のお上が考え出したものなのか。
私はそうは思わない。

「士農工商」は
もっともっと前から存在した。
農業や工業や商業が、
そして軍人としての武士が、
生まれてくる過程の中にこそ、
「士農工商」の階級分化の理由があった。

春山満を知って、
私はハッと気づかされた。

「士農工商」が
人間の肉体的な強さの序列によって
機能分化してきたことに。

ずっとずっと昔、
「士農工商」は
フィジカルな能力の高い順に
位置づけられたのだ。

最も強い者が、
人間を打ち倒す軍人になった。
次に強い者が、
自然と闘い、農作物を生産する
農民となった。
三番目に強い者が、
道具を使ってモノをつくる
工の民となった。
そして一番体の弱い者が、
商人となった。

私たちの意識の底に残っている
肉体的序列としての「士農工商」は、
21世紀にはあとかたもなく消えうせ、
頭脳と言葉によって、
社会に変革がもたらされるに違いない。

すなわち、
考える能力と訴えかける情熱によって
ビジネスが再編成されるのだ。
私は、それが新しい商業の出発だと思う。

だから商業人は見つめなければならない。
商業人は、考えつづけなければならない。
商業人は、訴えかけつづけねばならない。
春山満のように――。

故春山満さん。
略歴は朝日新聞出版「知恵蔵」などから。
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実業家、啓蒙家。
1954年、兵庫県生まれ。
24歳で進行性筋ジストロフィーを発症、
数年後には首から下の運動機能を失う。
1988年、「ハンディ・コープ」創設。
全国初の福祉のデパートだった。
その後、1991年、自ら会社を設立。
㈱ハンディネットワーク インターナショナル。
介護・医療の独自商品を開発し、販売した。
2003年、米国「ビジネスウィーク」誌で、
アジアを代表する指導者として、
「アジアの星」25人に選出された。
2005年、高齢者住宅運営会社設立。
オリックス・リビング㈱。
国家基本問題研究所評議員、
ハワイシニアライフ協会名誉理事。
2014年2月23日、呼吸不全で死去。
享年60。

私が㈱商業界の取締役編集統括のころ。
商業界ゼミナールに、
春山満さんをお呼びして、
講演をしてもらった。

私は心から感動した。
凄い人だ。

そして「販売革新」誌の巻頭に、
この文章を書いた。

春山さんは自著通り、
「それでも生き抜いて」、
2014年の2月に永眠した。

堂目卓生さんは言う。
「経済を発展させるのは
“弱い人”である」

経済は商人によってつかさどられる。
その商人は最も体の弱い者であった。

不思議なパラドックスだ。

堂目さんは続ける。
「あるいは、
私たちの中にある”弱さ”である」

私たちの中にある「弱さ」が、
商売を成長させる。

これにも静かに賛同して、
合掌したい。

〈結城義晴〉


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