結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年06月29日(水曜日)

「自分は一個の人間でありたい」武者小路実篤

今日、横浜市西区北幸でボヤ。
商人舎オフィスのすぐそば。IMG_37312

消防車が集まった。IMG_38002
梅雨明けして猛暑。
火の用心を忘れずに。

私は1日、そのオフィスで仕事。
月刊商人舎7月号の入稿。

ランチはロク・カフェ。
ルーフトップ・カフェから改名。IMG_37272

普通の2階建て一軒家を改装して、
ユニークなインテリアのカフェとなった。IMG_37191

窓辺のソファもゆったりとしている。IMG_37201

メニューも味もユニーク。
暑い外気から遮断されて、
いい気分になれる。

入口にキューピー。
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私はアロハ。
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キューピーと並んでポーズ。
IMG_37262
最近はほんとうにお陰様で、
仕事は順調。

締め切りには追いまくられるけれど、
それも何とか凌いでいる。

商人舎を設立したときに、
三つのコンセプトを掲げた。

自主独立、
自己革新、
社会貢献。

それを貫徹している。
ほんとうにお陰様で。

お天気博士の倉嶋厚さんの持論。
「いつの時代も、
“近ごろどうもおかしい”といわれるのが、
若者、言葉、天気です」

毎日新聞のコラム「余禄」が使ったフレーズ。

同感だ。

エジプトで古い石版が発見された。
難解な文字を解読してみると、
書かれていた文書の中にあったのは、
「近ごろの若い者は」という一文だった。

いつの時代も、
年寄りは若者に違和感を感じている。

極端気象も同じなのかもしれない。

今は温暖化に向かっている。
しかし長い地球の歴史の中では、
やがて氷河期(あるいは氷期)に向かうに違いない。

氷期の反対語は、
「間氷期」といって、
現在のことだ。

そんな悠久の時間を思うと、
なにひとつ慌てることはない。

私たちは、
小さな一個の人間だ。
小さな一人の商人だ。

「武者小路実篤詩集」より。
一個の人間

自分は一個の人間でありたい。
誰にも利用されない
誰にも頭を下げない
一個の人間でありたい。

他人を利用したり
他人をいびつにしたりしない
そのかわり自分もいびつにされない
一個の人間でありたい。

自分の最も深い泉から
最も新鮮な
生命の泉をくみとる
一個の人間でありたい。

誰もが見て
これでこそ人間だと思う
一個の人間でありたい。
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中学から高校のころ、
武者小路に凝ったことがある。

密かに自分だけで「武者先生」と呼んで、
ほとんどすべての本を読んだ。

もしかしたら今も私の書くものに、
武者小路が映し出されているかもしれない。

社会人になって商業界に入ったら、
岡田徹という指導者が、
武者小路のような詩を書いていた。

産経新聞の「産経抄」

「編集者が作家から受け取った原稿を
出版社まで持ち帰る。
大切な仕事にもかかわらず、
しばしば事故が起こる」

私たちも40年前は、
執筆者から直接原稿を受け取った。

それを会社に持ち帰って、
赤地を入れて、デザインに回し、
それから印刷所に入稿した。

「漫画家の故赤塚不二夫さんも
被害者の一人だった」

「昭和48年、当時
『週刊少年マガジン』に連載中の
『天才バカボン』の担当編集者が、
出来上がったばかりの原稿を
タクシーの中に置き忘れる」

「赤塚さんは編集者を叱るどころか
飲みに誘った」

「酒場から帰って同じ原稿を仕上げ、
“二度目だからもっと上手く書けた”
と言って手渡した」

「住所を明記した封筒に入っていた原稿は、
1週間後に郵送されてきた」

実にいい話だ。

娘の赤塚りえ子さんが、
その著『バカボンのパパよりバカなパパ』で、
紹介していたエピソード。
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「二度目だからもっと上手く書けた」

私たちもこの赤塚不二夫の心持ちで、
自分の仕事に向き合わねばならない。

私も書き終えたと思った原稿が、
パソコンから消えてしまうことが、
たま~に、ある。

頭を抱え、両手でほっぺたを叩き、
自分を自分で叱る。

しかし再び書くときには、
消えたものよりも、
絶対にいいものを書こうと決意する。

前のものよりも良くならねば、
同じ趣旨の文章を書き直す意味がない。

すると必ず、
前のものよりもいいものが書ける。

そして、より良いものが書けたことに、
感謝する。

仕事はこういったものだと思っている。

最近、仕事がうまくいっている。
ありがたいことだ。

小さな一個の人間の、
小さな一個の仕事。

より良いものを求める。
それがお陰様でうまくいく。
ありがたい。

〈結城義晴〉

2022年06月28日(火曜日)

「命を軽んじ、生活を軽んじ、言葉に鈍する者は、 必ず滅びる。」

プーチンのロシア軍。
ウクライナのショッピングセンターを、
ミサイルで攻撃した。
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心が痛む。

中部のポルタワ州クレメンチュク。
18人が死亡し、
59人が怪我をした。

現地の映像では、
建物が燃え、
大量の黒煙に覆われる。

小売業やショッピングセンターは、
平和の象徴である。

その平和の場に、
無差別にミサイルを撃ち込む。

ロシア国防省は、
武器や弾薬が保管された倉庫を攻撃したと、
嘯(うそぶ)く。
その結果、弾薬が爆発し、
隣接する商業集積で火災が発生したとか。

国連の安全保障理事会は、
事態を重く見て緊急会合を開く。

6月の安保理議長国はアルバニアだが、
そのジャチカ外相はツイートした。
「罪のない市民に対する
ロシアの戦争犯罪の一つだ。
状況の重大さから安保理議長国として
緊急会合を開催する」

厳しく指弾すべきだ。

朝日新聞「折々のことば」
先週土曜日の第2420回。

「敵」をやっつけるのが
戦争ですが、
壊れるのは自然であり、
失われるのは生活であり、
死ぬのは人間です。
(詩人・長田弘『すべてきみに宛てた手紙』から)
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「その時、言葉もまた
“人間のいない言葉”ばかりになる」

「戦争が終われば勝者は
戦争が解決だと確信する。
敗者は戦争は解決でないと思い知る」

「が、20世紀の後半に入り、
各地で終わりの見えない紛争が続く」

「それとともに
経験をくみあげる言葉の力も
弱まっていないか」

言葉の力は、
確かに弱まっている。

日本語にかぎらない。

いやむしろ、
ロシア語はひどく弱まっている。
中国語も朝鮮語も、
弱まっていると思う。

命を軽んじるから、
言葉を軽んじ、
生活を軽んじ、
自然を軽んずる。
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だから平気でショッピングセンターを攻撃する。

言葉は大切にしたい。
言葉を重く受け止めたい。

言葉を軽んじる者は、
必ず滅びていく。

日経新聞「私の履歴書」
今月は矢野龍さん。
住友林業の社長、会長を歴任し、
現在、最高顧問。

意外と言っては失礼だが、
1カ月間、面白かった。
矢野龍
「社長時代、入社式の訓示で僕は毎年、
ケネディ大統領が米国国民に呼びかけた
有名な演説を引用した」

「Ask not what your country can do for you,
ask what you can do for your country」
(国が何をしてくれるかを問うのではなく、
国のために何ができるかを問うて欲しい)
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この「country」を「company」に変えて、
矢野さんは新入社員にお願いする。

しかしこれは、
会社への滅私奉公を求めるものではない。

真意は、
「会社はあなた方に
人生の活躍の舞台を用意するから、
思う存分そこで自分の能力を発揮して
悔いのない人生を歩んでほしい」

北九州大学で実用英語を学び、
アメリカに長く駐在し、
外国人の友人を多く持ち、
矢野さんは英語文化から大いに感化を受けた。
だから嫌味なく、英語を上手に挟み込む。

「Where there is a will, there is a way」
(志あるところに必ず道は開ける)

そしてそれは会社の経営にも生かされた。

「僕は江戸時代から受け継がれてきた
住友の事業精神に感銘を受け、
それと米国仕込みの
ポジティブでシンプルな
考え方、ものの言い方が
混合したような社長であった」

矢野龍さんも、
その意味で言葉を重く見たし、
言葉を大切にした。

2021年の[Message of April]
言葉
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言葉は不思議だ。
人間が人間であること、
ヒトが他の生物と異なることを、
証明しているのが言葉だ。

たとえば日本語と英語・フランス語・ドイツ語。
「市場」と“Market・Marché・Markt”。
いずれにも狭義の「いちば」の意味があり、
広義の「しじょう」の意味をもつ――。

はじめに言葉ありき。
言葉は神とともにあり。
言葉はすなわち神なりき。
〈ヨハネ福音書〉

言葉で知覚し、
言葉で思索し、
言葉で伝達し、
言葉で議論する。

新人諸君、先輩諸氏。
社長も部長も店長も。
言葉に鈍感な者は退け。
言葉で考えぬ者は去れ。

評論家もコンサルタントも。
識者も学者も、編集者も。
言葉に愚鈍な者は衰えることを知れ。
考えぬ者は滅び去ることを悟れ。
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命を軽んじ、
生活を軽んじ、
言葉に鈍する者、
嘘をつく者は、
必ず滅びる。

〈結城義晴〉

2022年06月27日(月曜日)

國分晃の「ステルス値上げは長期的な勝者になれない」

Everyone! Good Monday!
[2022vol㉖]

2022年第26週。
6月最終週にして、
金曜日からはもう7月。

2022年も半年が過ぎようとしている。

「コロナは時間を早める」
そう言ってきたが、
梅雨明けまで早まった。
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暑いけれど木々は、
生き生きとしている。
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気象庁は今日、
九州南部と東海・関東甲信が、
梅雨明けしたとみられると発表。IMG_36662

なんとも自信なさげだが、
関東甲信も東海も、
平年より22日早い。
九州南部も平年より18日早い。

気象庁用語の「平年」とは、
平均的な気候状態を表す。
30年間の平均値に平滑化処理を加えて、
平年値は算出される。

つまりは30年間の平均値である。

関東甲信は、
観測史上最も早い梅雨明けだ。

九州南部も東海・関東甲信も、
観測史上最短の梅雨だった。

だから梅雨商戦はさっさと売り切って、
夏本番の売場に刷新しなければならない。
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一方、経済産業省は昨日の日曜日、
「電力需給逼迫注意報」を発令した。

今年5月に経産省の審議会で導入が決められ、
発令したのは26日が初めてとなる。

翌日の電力需要に対する供給の余力を
「予備率」と呼ぶ。
その予備率が3~5%の見通しになれば、
電力需給逼迫注意報が発令される。

予備率が3%を下回る見通しならば、
「電力需給逼迫警報」となる。

磯崎仁彦官房副長官は今日、
電力需給逼迫注意報の発令に関して、
節電を呼びかけた。
「使っていない照明を消すなど
無理のない範囲で節電、省エネへの
ご協力をお願いしたい」

商人舎流通SuperNews。
セブン&アイnews|
電力需給ひっ迫注意報発令で首都圏店舗で節電対応

セブン&アイ・ホールディングスは、
素早く反応した。

セブン‐イレブンは、
1都8県の約8800店舗。
1.フライヤー(揚げ物の)仕込みは、
前後の時間に振り分け、
電源はセーブモードまたはOFFにする
2.ドリンク類の補充に伴い、
ウオークインの開閉はなるべく避け、
前後の時間で補充等を行う
3.トイレの便座ウオーマーの電源OFF
4.給湯ポットはなるべく1台で運用

イトーヨーカドーは、
首都圏中心の98店舗。
1.店内照度の調整
すでに食品売場・衣料雑貨ともに基本照度を
100ルクス下げて対応しているが、
追加で什器照明の一部消灯を実施する
2.顧客への理解と協力を促す、
店頭での節電ポスターの掲示

セブン&アイらしい対応だ。

さて日経新聞の「月曜経済観測」
國分晃さん登場。
国分グループ本社㈱社長兼COO。
img_greetings02国分晃
聞き手は編集委員の田中陽さん。

値上げニュースに関して。
「この1年間で約65%のカテゴリーで
値上げが確認された」

値上げ幅が大きいカテゴリー。
「直近(5月)の実売価格の前年同月比では
ハードチーズ(37%上昇)、
プレミアム食用油(33%上昇)、
食パン(6%上昇)など、
原材料が輸入に頼るものが目立つ。
一方、主食のコメは8%の下落だった」

そして重要なこと。
「値上げによる
ブランド、代替商品へのシフトは
起きていないようだ」

ブランドスイッチは起きていない。

地域的な値上げの濃淡。
「競争環境として、
寡占が進んでいる北海道は
値上げが浸透している」

「例えばマヨネーズは、
メーカーの値上げ幅は約20%だが、
実売価格では約25%上昇している。
これは安く売られすぎていたのを
修正したことも背景にある」

「首都圏は過剰店舗で競争が激しいから
約8%の上昇にとどまった」

生活者は値上げを痛感しているのか。

「キャッシュレスでの買物が多くなり、
財布から現金を取り出して支払いするよりも
支出増の痛さが和らいでいるのかもしれない」

「おそらく、値上げの痛さを
生活者が実感するのは、
今年の秋だと思う」

「ビール類が5~15%前後値上げする。
値上げ前には相当な仮需も生まれるだろう」

正念場は秋だ。

「ボージョレ・ヌーボーは、
フルボトルで4000円台になるとみている。
昨年の2倍だ」

「ボージョレ市場が
消滅してしまうのではないかと
危惧しているくらいだ」

「小麦の政府売り渡し価格は
秋に再び改定(値上げ)されるだろうから
様々な製品の価格に波及する」

最後に日本の物価水準に関して。

「値上げしても販売数量が変わらず、
売上高が増えていることを見ると、
やはり”安すぎた”のではないか。
安くしようと”頑張りすぎていた”気がする」

ステルス値上げした商品は、
瞬間的に成功しても、
長期的な勝者にはなれない」

「ステルス値上げ」は、
価格やパッケージは変えず、
容量やサイズを縮小させて行う、
実質的な値上げのことだ。

「ステルス」は、
敵のレーダーをかいくぐる戦闘機のこと。
ステルスのように見つかりにくい、
実質的な値上げのこと。

英語では、
シュリンクフレーション(Shrinkflation)。
Shrink(縮小)とInflation(インフレ)の合成語。

國分さんはこのステルス値上げを、
「長期的な勝者にはなれない」と断じる。

これは正しい。

ヨークベニマル十二章にある。
「広告にウソやハッタリは禁物。
お客さまは一度はだませても、
二度はだませない」
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マーケットや顧客は見抜いている。
しかもステルス値上げは、
SNSで拡散される。

いいインタビューだったし、
いい答えだった。

では、みなさん、今週も、
長期的な勝者を目指そう。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年06月26日(日曜日)

サルトルの「人間は自由の刑に処せられている」について

猛暑が続く。

昨日はその猛暑の中で、
ゴルフをした。

今日は家から一歩も出ずに、
静養した。

日中、外は暑い。
内はエアコンで涼しい。

ランチはパスタで、
一杯だけワインを飲む。

そして午睡する。

夕方になると、
日中の暑さが残ったまま、
少し涼しい風が吹いてくる。

中学・高校生のころの、
夏休みの1日。

あれを思い出して、
ゆったりした気分になった。

疲れたら、休む。
休んだら、動く。
そして疲れたら、休む。

人間の一生は、
この繰り返しだ。

しかし、
「人間は自由の刑に処せられている」
ジャン=ポール・サルトル。

「人間は自由である。
人間は自由そのものである。
もし……神が存在しないとすれば、
われわれは自分の行いを正当化する、
価値や命令を眼前に見出すことはできない。
……われわれは逃げ口上もなく孤独である。
そのことを私は、
人間は自由の刑に処せられている
と表現したい」
(『実存主義とは何か』伊吹武彦訳)
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サルトルは考えた。
神はいるのか、いないのか。
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無から一切の万物を創造した神が、
存在するならば、
あらゆるものは現実に存在する前に、
神によって本質を決定されている。

これを「本質が存在に先だつ」と言う。
有神論である。

しかしもし神がいないとしたらどうなるか。

あらゆるものはその本質を、
神によって決定されずに、
現実に存在してしまうことになる。

これを「実存が本質に先だつ」と言う。

そしてサルトルはこれが、
人間のおかれている根本的な状況である、
と主張した。

人間はあらかじめ本質を持っていない。

だから人間とは、
彼が自ら創りあげるものに他ならない。

人間は自分の本質を、
自ら創りあげることを義務づけられている。

その意味で人間は自由である。
しかし自由である分、
自分自身に全責任が跳ね返ってくる。

だから人間は、
「自由の刑に処せられている」

逃げ口上も言い訳も意味はない。

サルトルはフランスの哲学者。
1905年6月21日生まれで、
1980年4月15日没。
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シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、
籍を入れない妻だった。
二人は慣習からも自由だった。

サルトルは3歳のときに、
右目を失明して、強度の斜視となった。

1973年、68歳で残った左目を失明した。
それまで左目で読み書きをしていた。

それでも自由を求めた。
自由の刑に処されつつ。

晩年は口述筆記などをして、
ものを考え、ものを書き続けた。

商売も仕事も、
自由である。

人に制約されることなく、
神にも決定づけられず、
自分で決めることができる。

しかし自由の刑に処せられている。

私はときどき、
「商売の神様」を持ち出すけれど、
それはあらゆるものを決定する神ではない。

追認してくれる神である。

その意味で有神論の神に対しては、
サルトルに同意している。
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自分がやってきたことを、
正当化する必要はない。

誰も「正当化せよ」と命じているわけではない。

しかし私たちは孤独である。
商売や仕事には逃げ口上も利かない。

結果が示されるだけである。
自分自身に跳ね返ってくるだけである。

それが「自由の刑」である。
喜ばしき「自由の刑」である。

〈結城義晴〉

2022年06月25日(土曜日)

「使い過ぎと使わな過ぎ」の「真贋」と「情操」

猛暑だった。

群馬県伊勢崎市では40.2度を観測。
6月の国内最高気温を更新。

群馬県は桐生市でも39.8度、
栃木県は佐野市で39.7度。
埼玉県は鳩山町で39度を超えた。

観測史上最高気温が続出。

東京都心では35.4度。
今年初めての猛暑日。

横浜市は32.8度。

関東地方を中心に高気圧に覆われて、
晴れ間が広がるとともに猛烈な風が吹いた。

東京湾を横切るアクアラインは、
横風のため40キロ規制が続いた。

その猛暑暴風の中、
予定が入っていたのでゴルフをした。

散々な内容だったが、
なんとか凌いだ。
そして終わってから考えた。
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ひどく風が強いから、
その風にボールが煽られて、
ミスショットが出る。

そう思いがちだが、
そうではない。

風が強くて暑いから、
身体に力が入り過ぎる。
その結果、
自分のスイングがおかしくなって、
ミスショットが増える。

どんな状況の中でも、
自分のフォームと自分のスイング、
自分のリズムと自分のテンポ、
自分の実力と自分の戦略。

それを貫徹しなければならない。

中部銀次郎。
「ゴルフで起こったことは、
鋭敏に反応してはいけない。
柔らかくやり過ごすことである」
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これは仕事や商売にも当てはまる。

現在の閉塞状態にも、
鋭敏に反応してはいけない。
柔らかくやり過ごすことだ。

「ほぼ日」の糸井重里。
毎日書くエッセイが「今日のダーリン」
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1999年6月6日以降23年間、
1日も休まず書き続けられている。

私のブログは2007年8月10日から、
15年近くになる。
そしてこれもずっと続く。

その糸井さんのエッセイ。

「肩がこるとか首がこるとか、
腰が痛いとか背中が痛いとか」

何らかの治療を繰り返してきたが、
最近は治療院よりも、
ジムに通っているそうだ。

このジムで、トレーナーに言われた。
「硬いとか痛いとかいうのは、
おおざっぱにいえば
筋肉を使いすぎているか、
使わなすぎてる状態ですから」

「わっ、そういえばそうだよと、
目からうろこでした」

「たとえば、
デスクワークを続けていると、
ずっと同じ姿勢でいるから、
同じ筋肉が固定されている。
つまりは、使わなすぎている
ということですよね」

「スポーツ選手の場合だったら、
使いすぎているケースです」

「子どもは、遊びながら
身体をいつも動かしてるものなぁ」

そこで糸井の考察。
「硬いとか痛いというのは、
使いすぎているか、
使わなすぎている」という言葉は、
「身体のことだけじゃないように
思えるんです」

同感だ。

「”思考のこりや痛み”も、
あたまやこころのどこかを、
使いすぎたり使わなすぎたり
しているせいじゃないか、と」

倉本長治の商売十訓。
その第二訓が、
「創意を尊びつつ良いことは真似よ」
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これはイノベーションを意味している。
創意を尊ぶは「クリエーション」、
良いことを真似るは「イミテーション」。

創意を尊び過ぎてもいけないし、
真似るだけではもっといけない。

商売の場合は得てして、
「真似る」に傾き過ぎる。

それはいけない。

月刊商人舎2020年4月号。
特集「真似る」
「模倣の経営戦略」の真贋
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実にいい特集だった。
今、読み直してみて、
輝きは失せないどころか、
輝きは増している。

糸井重里の最後の一言。
「いまはぼく自身に
“情操の時間”が
必要な気がしてならない」

「情操」とは日本大百科全書では、
「道徳、宗教、芸術、学問など
社会的価値をもった感情の複合」という意味だ。

「絵画や音楽を鑑賞するとき、
情動のようなはっきりしたものではなく、
なんとなく心が洗われるとか、
身が引き締まるとかいう感じになることがある。
このような漠然とした、
いくつかの感情が複合したような状態をいう」

「この情操を身に備えた人間は、
社会的価値のうえで高く評価される」

つまり「情操」によって、
「使い過ぎや使わな過ぎ」が防止される。
糸井重里はそれを言う。

商売における「模倣の経営戦略」も、
「情操」が欠けると「真似」に傾く。
そして真贋(しんがん)の「贋(がん)」になる。

「真贋」とは「本物と偽物」という意味で、
「贋」は「偽物」のことだ。

商人にも人間にも、
「情操」は必要だと思う。

〈結城義晴〉

2022年06月24日(金曜日)

マックスバリュ木更津請西店刷新開業と「独立消費」の享楽円

日本気象協会の発表。
「2022年梅雨明け予想」
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今年の梅雨明けは、
異例の早さになりそうだ。

九州南部から東北南部まで、
予想は「6月下旬」。

最も早い梅雨明けの地域ばかり。

東北北部は7月中旬の予想。

その梅雨の合間の強風の日。
朝から東京湾アクアラインを使って、
車で千葉県木更津へ。

午前8時過ぎに、
イオンタウン木更津請西に到着。IMG_36332

商人舎流通SuperNews。
マックスバリュ関東news|
買物体験型店舗「MV木更津請西店」6/24改装開業

マックスバリュ関東㈱が、
この近隣型ショッピングセンターの核店、
マックスバリュ木更津請西店を、
大規模改装した。

今日はそのリニューアルオープンの日。

2009年10月28日開業のスーパーマーケット。
売場面積は712坪と十分なスペースを有する。
そのうえ客数も売上げも伸びつつあった。

その期待の店舗を、
「買物体験型スーパーマーケット」として、
大胆に蘇らせた。

この新フォーマットの1号店は、
2020年10月のマックスバリュおゆみ野店(千葉市)、
2号店は2021年7月の東習志野店(習志野市)、
3号店が2022年3月の津田山店(川崎市)。

木更津請西店は4号店である。

それぞれに想定を超える成果を上げ、
また問題点も浮かび上がって来た。

だから今回はある意味での集大成である。IMG_36452

私もこの店の快適さは実感している。IMG_37382

島田諭社長に案内してもらいながら、
丁寧に写真を撮って、
それからイートインスペースで、
単独インタビュー。
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木更津の海をモチーフにした、
Café&Dine(カフェ・ダイン)。

島田社長がここでも、
この店の意図を熱く説明してくれた。

ここで新作のジェラートをいただいた。IMG_37572
なかなか美味。

店長の松野邦彦さんも、
月刊商人舎の愛読者で、
よく勉強している。IMG_37672

最後に4人そろって写真。IMG_37712
私の隣から島田社長、松野店長、
そして下村恭徳第1エリア統括マネージャー。

月刊商人舎7月号で、
紹介しよう。

試食のためにいろいろと買物をした。
その感想も雑誌に書こうか。

マックスバリュをあとに、
近隣のせんどう木更津店へ。IMG_37832

青果、鮮魚、精肉がしっかりしている。
そのうえ惣菜は値ごろを抑えている。IMG_37902
一言で言えば、
「商売」をしている。

それがせんどうの強みだ。

昨年9月13日、せんどうは、
ヤオコーと資本・業務提携を締結した。
そして10月14日付で、
ヤオコーの持分法適用会社となった。
持株比率は43.18%。

しかしまだヤオコーのオリジナルブランドは、
せんどうの店には並んでいない。

これからじっくりと、
シナジー効果を狙うのだろう。
慌てることはない。

さて日経新聞「大機小機」
今日のコラムニストは一礫氏。
タイトルは、
「独立消費」をかき立てよう

故下村治氏の経済理論を応用する。
「投資が一定期間後にもたらす生産力に着目し、
需要中心のケインズ理論に
産出の理論を統合したものだった」

池田勇人内閣の高度経済成長プランナー。
下村理論が日本の高度成長を支えた。
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下村氏は投資を3分類した。
⑴比例感応投資
⑵予想感応投資
⑶独立投資

比例感応投資は、
「利潤の大きさに関わり、
従来の生産水準や雇用を維持するための投資」

これを怠ると生産が落ちてしまう。

予想感応投資は、
「見込み利潤の変化に感応して
盛り上がったり冷めたりする」

独立投資は、
「創業者利潤を目指した、
企業家の創造的活動から出てくる」

これら3投資によって、
一定期間後に一定水準の生産能力が生まれる。

その生産水準をケインズの有効需要に対比して
有効産出と名付けた。

「有効需要と有効産出の
高水準での均衡を目指したのが、
1960年代の高度成長だった」

「だが、その後、
日本経済の流れは趨勢的に変化する」

「日本経済のエンジン役は、
国内総生産(GDP)の6割を占める、
個人消費に移った」

個人消費を活気づけるために、
コラムニストは、
下村理論の投資に関する分類を、
個人消費に応用して考える。

「比例感応消費」は、
現在の生活水準を
維持するために必要な消費だ。
削れば生活水準が低下してしまう。

故上野光平先生の言葉を借りれば、
「生活マネジメント」の消費。
私の言葉で表せば、
「禁欲円の消費」だ。

「予想感応消費」は、
見込まれる所得の変化に応じて増減する。
これは所得に応じた消費である。

「独立消費」は、
生活水準や所得の変化と関係なく、
皆が支出したくなる消費。
これが「生活エンターテインメント消費」。
「享楽円消費」である。

コラムニスト。
「下方硬直性をもつ比例感応消費、
所得次第の予想感応消費に対し、
独立消費が個人消費活性化の鍵を握っている」

「家計部門の現預金残高は1000兆円を超え、
消費原資は潤沢だ」

「独立消費をかき立てる新商品の登場が待たれる」

「買物体験型スーパーマーケット」は、
間違いなく「独立消費」を拡大させる。

大いに社会貢献してもらいたいものだ。

〈結城義晴〉

2022年06月23日(木曜日)

ロシアへの「制裁のパラドックス」と住友精神「自利利他公私一如」

日本の政治は停滞している。
参議院選挙が公示され、
選挙運動が始まったが、
選択肢が少ない。
いや、ない。

小売業やサービス業でも、
店の選択肢、品揃えやメニューの選択肢が、
少ない状況が生まれると、
顧客は買い物が面白くなくなり、
消費は停滞してしまう。

飲食店に関しては最近、
どの店も味がまずくなった。

あくまでも個人の見解であるけれど、
原材料の高騰や物流費などの上昇が、
値上げを招き、
その値上げを抑えるために、
また原材料のグレードを落とし、
それが味の停滞を生んでいる。

こんなときにも、
変わらぬ味を提供できる店は、
人気が上がる。

さて日経新聞電子版の記事。
「経済制裁のパラドックス」
客員編集委員の脇祐三さんが書く。
「なぜロシアへの打撃は限定的か」

「国際的な制裁は、
本質的には政治的な手段、
ポリティクスである。
狙い通りの経済的な効果が
あるわけでは必ずしもない」

「対ロシア制裁では、
制裁を科す側も経済的な打撃を受ける。
その点で、過去の経済制裁とは異なる
“制裁のパラドックス(逆説)”が続く」
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記事はタイトルのままで、
それほど新鮮味はない。

「国際的な経済制裁によって
制裁対象国が行動を変えた例は、
ほとんどない」

「兵糧攻めのように相手国の政権を
じわじわ締め上げようとしても、
物資が不足してくると、
独裁政権に近い人々は物資を得られる半面、
一般の人々は苦しむ
という展開にもなりやすい」

「結果的に相手国の政権による統制の強化、
独裁政権の延命につながる要素もある」

これが一般的な「制裁のパラドックス」だという。

サダム・フセイン政権のイラクにも、
制裁が科されたが、
この制裁のパラドックスが起こった。

ロシアのウクライナ侵攻に対しても、
国際的な制裁が続いているが、
それはどう違うのか。

「過去の制裁では、
制裁を発動する側への経済的な打撃は
ほとんどなかった」

「だが、今回は制裁を発動し、
強化する欧米で、
経済の逆風が強まっている」

結論は
「ロシアへの強い制裁は、
ロシアの力による一方的な現状変更を許さず、
ウクライナへの連帯を示すうえで、
必要なポリティクスだが、
欧米にとっての政治的なコストも
決して小さくない」

つまらない結論だが、
「制裁」にはもともと、
パラドックスが伴うものだ。

それを承知で制裁を加える。
武力による攻撃に、
経済による制裁で対峙する。

制裁を加える側にも、
痛手が生じる。

それも民主主義の理屈で制裁行動をとっても、
“非民主主義”の上のほうは何とも感じない。

これこそ「民主主義のパラドックス」だ。

今日は横浜商人舎オフィス。
ランチは岡野町の中華「萬興楼」。IMG_36382
この店の味もちょっとだけ落ちたか。

みなとみらいのランドマークタワーが見える。IMG_36392

午後3時に、
井上淳さん来社。
5月に日本チェーンストア協会副会長就任。
これまでは14年間、同協会専務理事だった。IMG_E36122

1967年(昭和42年)にこの協会が設立されて、
ずっと専務理事は経済産業省から迎えてきた。

しかしその専務理事が副会長になった例はない。

井上さんご自身の貢献が大きかったし、
これからもその力が必要だと認められたからだ。

今日はその井上さんと対談。

月刊商人舎7月号で、
この閉塞感への対応を語り合う。IMG_E36142
ご期待いただきたい。

最後に日経新聞「私の履歴書」。
今月は矢野龍さん。
住友林業の社長・会長を歴任し、
いま、最高顧問。
矢野龍
今日は「住友精神 無私の姿勢」

この住友精神がいい。

矢野さんが社長に就任して、
会社の屋台骨を支えるものが欲しいと考えた。

そして住友精神に辿りついた。

「住友の家祖、住友政友や、
その後、明治時代に総理事を務めた
広瀬宰平、伊庭貞剛らの先達が作り上げ、
長く受け継がれてきた事業精神は、
平たく言うと、
事業は自分の利益のためだけではなく
天下国家、国民のために
なるものでなければいけない、
そして、一見、相反するように思える
“公”と”私”は、実は
一つのものなのだという教えだ」

「自利利他公私一如(いちにょ)の精神」

「僕は、この住友の事業精神を、
住友林業の社員が理解し易いように工夫し、
経営理念と行動指針を自分で書いた。
社員手帳に明記して、
社内で主管者会議と呼んでいる、
年に2回の幹部会の場などで浸透させた」

「こんな経営理念といったものは、
往々にして美辞麗句の
仏作って魂入れずで終わってしまいがちだが、
僕は自分から率先して
経営判断のよりどころにした」

「社長になった1999年から、
会長を退いた2020年まで、
21年間続けた」

ロシアも中国も、
ウクライナもその制裁側も、
「自利利他公私一如」ならばいいのだが。

それは無理か。

しかし現在の閉塞感に向き合うには、
住友精神は拠り所となる。

〈結城義晴〉

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