結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年12月30日(火曜日)

羽生善治将棋名人に投影させた天才たちの言葉

1965年11月から70年7月までを[いざなぎ景気]といいます。
戦後最長の好況の山で、57カ月間だった。

それを超えたのが、昨年までの平成景気。
戦後最長の景気の波となった。

その戦後最長の景気拡大が途切れ、
後退局面が始まった時期が、
昨年11月と認定される。

それによって69カ月の最長の景気。

だからその余波も最長になる。

そして、もう13カ月、景気後退が続いている。

米国の景気後退も昨年12月に始まった。
日米経済は、ほぼ同時期に失速したことになります。

今年がその最初の13カ月。
そして来年は次の循環の12カ月。

いよいよ、不況本番というところです。

その想定の中で、
日々の仕事を充実させねばなりません。

さて、今年12月18日に決着がついた将棋竜王戦は、
世紀の対決といわれました。

私の隠れた趣味を明かしますと、実は、将棋なのです。

父は、碁が趣味で、
82歳の現在も毎日、碁会所に皆勤しています。
ボケ防止などというレベルではなく、
真剣勝負の、生きるエネルギーというほどに、
囲碁に打ち込んでいます。

私のほうは、なまくらですが、
㈱商業界の頃、今から25年以上も前、
一度だけ社内将棋トーナメントが開催され、
それに参戦したことがあります。

私は、その時、決勝まで勝ち残り、
その決勝で、勝利を収めたものです。

だから私は㈱商業界史上唯一の将棋名人ということになります。
今も、押入れの奥に、その時の名人のトロフィーがあります。

さてプロの将棋は、ご存知のとおり、
羽生善治名人が第一人者。37歳。

この羽生世代と呼ばれる将棋指しには、
不思議なことに、天才が目白押しの状態です。

昨年まで名人位を守っていた森内俊之九段。
「緻密流」と呼ばれる佐藤康光棋王
私の好きな「激辛流」「ニコニコ流」の丸山忠久九段。
オーソドックスな棋風の居飛車一辺倒の郷田真隆九段。
「藤井システム」という定石を発明した振り飛車の専門家藤井猛九段。
エッセイも書く多芸多才の「無頼流」先崎学九段。

少し前の世代の天才には、
「高速の寄せ」という閃き型の谷川浩司がいます。
さらにその前の世代には、
永世名人の称号を持つ中原誠と、
現将棋連盟会長の米長邦雄

しかし現時点で、竜王というタイトルを4期連続で獲得していたのは、
渡辺明という24歳の天才。

竜王は、読売新聞が主催する将棋タイトルで、
七冠という位のうち最も新しいタイトル戦ですが、
賞金が最大で、
だから将棋界最高位と、
読売新聞は呼んでいます。

しかしなんといっても、名人位が最高位であることに、
間違いはありません。
現在は、紆余曲折の末、
朝日新聞と毎日新聞が共同主催しています。

その名人と竜王の対決。
しかも、羽生世代の代表と次の世代の旗手との対決。

羽生は、残念ながらこの竜王戦で、
三連勝したあと、四連敗。
「世紀の逆転」となりました。

三連勝した後の第四局。
渡辺の角番。

羽生が勝勢の中で、
水をごくごくと飲みます。
そのごくごくの瞬間に、
渡辺が「打ち歩詰め」という禁じ手の絡んだ逃れ筋を発見して、
大逆転を収めます。

この対決の模様が、「情熱大陸」という番組で報道されていたのですが、
そこで面白かったコメント。

両者の対決に対するコメントではありません。

他の棋士たちの、羽生への評価。

羽生善治の特長は、何か。

森内「総合力」
谷川「好奇心」
佐藤「正確性」

ただこれだけの、短いコメントの場面なのですが、
私には、たいへん興味深いものでした。

羽生は、まさに天才中の天才。

だから総合力はもちろん、あります。
居飛車・振り飛車の両刀使い。
どんな戦法にも通じたオールラウンド・プレイヤー。

好奇心も旺盛です。
チェスの国際大会に参加したりしています。

そして読みの深さと終盤の正確無比なことに、異論を挟む者なし。

面白いのは、回答した三人の棋士たちの棋風です。

森内は、守りを固めたうえで攻めに専念する総合力の将棋。
谷川は、好奇心旺盛で、終盤の閃きに美学があり、
しかし最近は勝負師としての甘さが見られる。
佐藤は、抜群の正確さを誇る「緻密流」で、
それを武器に縦横な戦略を打ち立てる。

羽生という巨大な鏡を評価する時に、
誰もが、自分を投影させている。
恐ろしいことに、自分が写り込んでしまう。

私には、それが、ことのほか、興味深い発言と聞こえました。

 

たとえば、私たちの世界では、
「ウォルマートに対する評価」を聞きます。
すると、ファーストリテイリングの柳井正さんは答えてくれます。
「週末に米国民の3人に2人が来店する。
ウォルマートはなくてはならない存在なのです」
これは、柳井さん自身が、
きわめて社会貢献意識が強いことを示しています。

「ウォルマートは、サービス残業が当たり前で、賃金が低すぎる」
こう批判する人は、労務問題を、自分の経営の根幹においています。

「ウォルマートの商品は面白いし、売り場づくりは他を圧している」
こういう人は、マーチャンダイジングを優先する。

多くの場合、コンサルタントは、
ウォルマートに自説を投影させる。

ウォルマートに投影できないテーマを得意とする人は、
ほとんどといってよいほど、ウォルマートを否定する。

ウォルマートを非難する人は、時に、
自分自身がその批判の矛先にいたりすることがある。
自己矛盾ですが、これもよくあること。

 

さて、2008年が終わろうとするとき、
私は、毎日、ブログを書いてきて、
どんな会社やどんな人物に、
どのように自分を投影させてきたのか。

私は、ジャーナリストとして、
できるだけ客観的にものを見、ものを書く訓練をしてきました。

しかし、その上で、書く能力を高めると、逆に、
どうしても自分が写り込んでしまう。

考えると、ぞっとすることではありますが、
羽生善治に対する天才たちの率直な自己投影を聞いていて、
すがすがしいものを感じたものです。

こうして、私は、来年も、
観察し、体験し、発言していくのでしょう。

 

その羽生善治自身の発言。
「現状に満足してしまうと、進歩はない」
「大局観と事前研究があるからこそ、最善の戦略も生まれる」
「山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには、
なにを『選ぶ』かより、
いかに『捨てる』かのほうが重要です」

この言葉を選んだこと自体、
結城ヨシハル自身、羽生ヨシハルに、
考え方を投影させているのです。

<結城義晴>

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