結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2010年10月15日(金曜日)

イギリス小売業を1日で訪問し把握することができる理由を実証した。

ロンドン4日目。
弱音を吐く気はないが、
疲労困憊。

しかし仕事となると、
元気が出てくる。

これが不思議。

だとすると、仕事なしでは、
生きられないのかもしれない。

さて昨日は、一日、
ロンドンの市街・郊外を回って、
スーパーマーケット視察。

1日で、ロンドンの周辺と中心部を回るだけで、
ほぼ、イギリスの食品小売業の全貌をつかむことができる。

このこと自体が、
ユナイテッド・キングダムのスーパーマーケットの最大の特徴といえる。

まず、朝一番で、
テスコ・エクストラ。

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テスコ最大のフォーマット。
平均売場面積6625㎡。

非食品強化型のハイパーマーケット業態。

全英に190店舗を配置する巨艦店舗。

隣に、マークス&スペンサーの店がある。
ショッピングセンター出店の郊外型店舗。

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マークス&スペンサーは店舗数654店で、
年商52億ポンド(130円換算で6760億円)。
全英第5位の小売業。
衣料品が特に強いハイパーマーケット(総合スーパー)と大衆百貨店の、
中間と考えたほうがいいフォーマット。

かつて木下安治さんが、
講師をしていた千葉商科大学の学生に質問した。
「君たちの近くにある百貨店で一番好きな店を上げよ」
8割方の学生が答えた店は、なんと、
「イトーヨーカ堂」だった。

イトーヨーカ堂など総合スーパーは、
大衆百貨店という位置付けが良いと思う。
この考え方は、
安土敏さんが『スーパーマーケット原論』の中で明らかにしてくれた。

マークス&スペンサーは、
まさに大衆百貨店だ。

私は、日本のイトーヨーカ堂は、
マークス&スぺンサーを研究すべきだと思っている。
それから二番目は、テスコのスーパーストア
こちらは平均売場面積2786㎡の大型スーパーマーケット。
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この店は、ロンドン中心街に近いケンジントンのテスコ。
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1996年9月にオープンで、私は10月に訪れて取材し、
月刊『食品商業』で記事にした。

ずいぶん改装されて、ミールソリューションのコーナーがなくなっていたが、
地域になじんで、定着した売場となっている。

テスコ第3のフォーマットはテスコ・メトロ
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平均面積1081㎡の都市型小型店。
都市中心部や郊外の大通りに立地する。

日本でいえば普通のスーパーマーケットがこれ。

そしてテスコ第4のフォーマットは、
テスコ・エクスプレス

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私たちが泊っているホテルのすぐわきにあるミニスーパー。
日本でいえばコンビニエンスストアのジャンルに入るが、
テスコの品揃えの最小単位を切り取ったフォーマットというほうが正しい。

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テスコは4つのフォーマットで、2009年、
イギリスの食品マーケットの30.5%を占めている。

断トツの凄いシェア。

シェア2番目は、アズダ・ウォルマート

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アズダは1999年にウォルマートに買収されたが、
現在はそのウォルマートの力を借りて、全英第2位に躍り出た。

総合スーパーとしてのスーパーセンターを30店展開している。
これはそのロンドンにいちばん近い店。

それ以外にスーパーマーケットを320店、
アズダ・リビングという非食品のフォーマットを24店舗。

テスコに対して、ディスカウント性の強い店舗で、
特徴を出している。

第3の存在は、セインズベリー

年商214億2100万ポンド(2兆7847億円)。
ハイパーマーケットを28店。

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これは明らかにテスコ・エクストラに対抗したフォーマット。
非食品が強化されている。

セインズベリーは、通常のスーパーマーケットを509店展開する。

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さらにセインズベリー・ローカルと称したコンビニ型ミニスーパーを335店。

最近の戦略はテスコの後追いの観が免れない。
しかし、最も伝統のあるスーパーマーケットとして、
イギリス人の人気は高い。

この3強に次ぐのがモリソンズ
しかし今回は訪れる時間がない。

その代わりに、ウェイトローズを訪問。
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年商44億1800万ポンド(5743億円)の高級スーパーマーケット。
世界の小売業ランキングでは、
88位に入るイギリス最大の百貨店ジョンルイスの子会社。

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日本でいえばクイーンズ伊勢丹といったところ。

そして最後に、アルディ

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ご存知ドイツのハード・ディスカウンター。
ボックスストアともいう。

イギリスに 、420店を出店し、21億6300万ポンド(2812億円)。
全英の食品市場におけるシェアも2.3%ながら急成長中。

これで、ほとんどの食品関連小売業を網羅できる。
なぜならテスコとアズダとセインズベリーで、
食品マーケットの63.7%を占拠してしまうからだ。

この3強に、モリソンズの12.3%、
ウェイトローズの4.0%、
アルディの3.1%を加えると、
なんと83.1%となってしまう。
だから1日で、ほとんどを訪問できる。

これが日本では、とてもそうはいかない。
アメリカでも難しい。

そのこと自体が、イギリス小売業界の特徴。
すなわち「寡占化」

しかし寡占化しているから、
テスコもセインズベリーもアズダも、
マルチ・フォーマット戦略を採用せざるを得ない。

発展途上のアルディはシングル・フォーマット戦略。
アメリカでも1000店を超え、
ウォルマートを脅かす存在になっているが、
シングル・フォーマットで白アリ軍団のように市場を食いつくすと、
他の国に移動していく。

それがアルディ。

このイギリスでは、完全に「ポジショニング競争」に入っている。
自らのポジショニングをいかに明確にするか。

それも自分のオリジンを守りきったうえで。

伝統の良きところは変えない。
しかし変えるべきところはどんどん変える。

それがイノベーション。

イギリスに来ると、
そのことがよーくわかる。

ホテルに帰って講義。

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万代ドライデイリー会のメーカー・問屋のメンバー40人。

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疲れをものともせず、夜の講義に良くついてきてくれた。
心から感謝したい。

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「井の中の蛙大海を知らず」

21世紀の知識商人は、
このことだけは避けねばならない。

もちろん聞きかじった知識をひけらかすことも、
情けない。

ほんとうの意味での、
「鳥の目」「虫の目」「魚の目」
そして「心の目」が問われている。

イギリスの小売業でつけ加えておかねばならない事実。
ネット・ショッピングに対して、
本腰を入れているということ。

それも利益の出るネット・ショッピング。
その構造がどうなっているか。

この夜の講義の中核テーマの一つ。

もちろん、なぜテスコのエクスプレスが利益を出せるのか。
日本のテスコやアメリカのフレッシュ&イージーが、
なぜ飛躍できないのか。

それも講義した。

なぞ解きは、日本に帰ってから。

まだまだ旅は続く。

<結城義晴>


3 件のコメント

  • ヨーロッパ小売視察!!

    私はもう10年前に行ったっきりご無沙汰です。

    帰国報告を楽しみにしています。

    10年前には「ヨーロッパ小売業の方が日本に合っているのでは?」との印象を受けたのを思い出しました。
    特に人に対するサービス等は非常にきめ細かいところまでしている印象でした。
    今は何もかにもがかなり変わっていると思いますので沢山の話を聞かせてください。
    私が行った時の企業も既にウォルマート・などの傘下に入っていたりしていますので、
    そのあたりの話も大変楽しみにしています。
    「無茶をせず・無理まではOK」
    元気に帰ってきてください。

  • みやもと様、藤井直之さま、ご投稿感謝。
    もう、追い詰められていて、
    ご返事が遅れました。
    帰国しました。
    みやもとさんのご意見どおり、
    ヨーロッパの小売業が日本にあっているかもしれません。
    人口6000万人強のイギリスとフランス。
    日本が少子高齢社会を迎えるといっても、
    まだまだ両国を合わせたくらいの人口を持っています。
    学ぶところは学びたいと思います。

    こちらは上位小売業が寡占しています。
    この条件が、様々な企業の新フォーマットの成功を後押ししています。
    ネット・ショッピングもこの与件によって、展開が変わってきます。

    このテーマは、書きます。
    ご期待ください。

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