結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2017年01月29日(日曜日)

【日曜版・猫の目博物誌 その31】梅

猫の目で見る博物誌――。
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猫の目はいつもいつも、
季節をちょっと先にとらえる
――。

梅一輪一輪ほどの暖かさ
こちらは江戸の俳諧師・服部嵐雪。
松尾芭蕉の高弟。

「一輪ほど」の言い回しが、いい。
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〈ぶらり花暦より〉

早春のころだろうか。
庭の梅がぼつぼつ咲き始めて、
その梅が一輪ずつ咲くごとに、
気候も日に日に暖かくなってゆく。

梅の英語は、
Japanese apricot。
原産は中国だが、
万葉の時代には日本に渡っていて、
盛んに歌われた。

それもあって、
「日本の杏」、
つまりJapanese apricotとなった。

学名はPrunus mume。

バラ科サクラ属、
落葉高木で、1月から4月に、
葉に先立って、花を開かせる。
花弁は5枚。
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果実は6月ごろ、黄色く、熟してくる。

よく似た花は桃。

こちらはバラ科モモ属の落葉小高木。

3月下旬から4月上旬に、
薄桃色の花をつける。

梅と桃。
果実は見分けやすいが、
花は間違えることがあるかもしれない。

梅の園芸種は、三つに分類される。
野梅(やばい)系、紅梅系(緋梅系)、
そして豊後(ぶんご)系。

野梅系は原種に近い丈夫な系統。
葉はやや小形、枝つきも細い。
過半数が野梅系。

紅梅系は、外皮がどんな色であろうと、
切断面が紅色になっている種類。
花が白くても、枝の切断面が赤ければ、
紅梅系。

豊後系は、枝が太くて節が高い。
葉は大きくて、丸みがある。
花は大きくて、がく片が反り返っている。

これまたよく似た杏(アンズ)同様に、
花は桃色が多い。
杏もバラ科サクラ属の落葉高木。

食用となるのは白梅。
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紅梅の実は小さくて固い。
苦味もある。
だから食用には適さない。
けれど、紅梅は、
その幹の色の美しさから、
器や家具の木材として人気だ。

梅の収穫量が最も多いのは
和歌山県で、昨年は7万5000トン。
全国の梅の収穫量の64%を占める。

だから和歌山県の県花。

桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿。
これは栽培上の注意点を表した言葉。

桜はむやみに伐ると、
切り口から腐敗する。
剪定に気を配る必要がある。

梅は逆に剪定に強い。
それどころか、かなり切り詰めないと、
徒枝が伸びて樹形が雑然となる。
剪定が適切でないと、
実の付きも悪くなる。

【柿】の項でも使ったが、
桃栗三年、柿八年。
これに続く言葉がある。

柚(ゆず)の馬鹿野郎十八年、
梅はすいすい十六年。

剪定にも強い梅は、
すいすいと育つ。

梅に関する言葉で、
含蓄があるのが、
「塩梅(あんばい)」
「えんばい」とも読む。

もともとは料理の塩加減、味加減のこと。
転じて「ものごとのぐあい、ほどあい」の意。

いい言葉だ。

東風吹かば
にほひおこせよ梅の花

(あるじ)なしとて春な忘れそ
菅原道真の歌。

大宰府に左遷される際に、
愛した庭の梅の花に、
別れを惜しんで詠んだ。
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最後に一句。

梅が香にのっと日の出る山路かな

やはり師匠の句はいい。
松尾芭蕉。

早春の山道を歩く。
梅の香りに誘われるかのように、
太陽がのっと顔を出した。

ツバキ、寒椿、山茶花のように、
梅も、桃、杏など、仲間がいる。
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桜の咲くまでの前座ではない。
それぞれに、その時期には主役なのだ。

東北では、梅、桃、杏、
一斉に咲き乱れる。

これもいいが、一般的には、
その先陣を切るのが梅。
猫はその梅が好きだ。
春の到来を教えてくれるから。

(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)


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