結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年03月23日(金曜日)

慶応大卒業式の福沢諭吉と知識商人、小売り業態別2月の販売統計

高知から伝わった桜の開花。
これから日本列島を、桜が覆っていく。

しかし、こんな桜もある。
みちのくの山河慟哭
(どうこく)初桜
読売新聞夕刊の『よみうり寸評』。
長谷川櫂の震災句集から、一句とりあげた。

慶応義塾大学塾長の清家篤さん。
6489名を送り出した卒業式の式辞で、
穏やかに語った。
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「まず持続可能性が問われています。
例えば高齢化社会。
2035年には3人にひとりが高齢者、
2050年には5分の2が高齢者となります。

今年の卒業生は、
日本の人口がピラミッド型のときに生まれ、
逆ピラミッド型の時代に社会に出ていきます。

その社会の特徴は『多様性』にあります。

1970年代後半は、ホモジニアスな時代。
現在は、ペテロジニアスな社会。

仕事の上で、生活の上で、
海外や外国人との接点も増えていきます。

「以心伝心」とはいきません。
相手が何を考えているかを理解し、
自分が何を考えているかを相手に理解してもらう必要があります。

変化の大きな社会、多様性の社会。

そこで必要とされる能力は、
問題発見、問題分析、問題解決の力です。
これは学問の作法、学問の方法論そのものといえます。

自分の頭でものを考える。

さらにそのうえで、
福沢諭吉が提唱した『実学』は、
ますます大切な方法論となります」

清家さんの言う「実学」に関して、
福沢諭吉は『学問のすすめ』に記している。

「学問とは、ただむつかしき字を知り、
解し難き古文を読み、和歌を楽しみ、詩を作るなど、
世上に実のなき文学を言うにあらず」

「これらの文学も自ずから人の心を悦ばしめ
随分調法なるものなれども、
古来世間の儒者和学者などの申すよう、
さまであがめ貴むべきものにあらず。
古来漢学者に世帯持の上手なる者も少なく、
和歌をよくして商売に巧者なる町人も稀なり。

これがため心ある町人百姓は、
その子の学問に出精するを見て、
やがて身代を持ち崩すならんとて親心に心配する者あり。

無理ならぬことなり。
畢竟その学問の実に遠くして
日用の間に合わぬ証拠なり。

されば今かかる実なき学問は先ず次にし、
専ら勤むべきは人間普通日用に近き実学なり」

そして具体的に示す。
「譬えば、いろは四十七文字を習い、
手紙の文言、帳合の仕方、算盤の稽古、天秤の取扱い等を心得」

昨日も引用した『ポスト資本主義社会』。
ピーター・ドラッカー著。
「夕食に招く客には教養のある人がよい。
だが、砂漠では教養のある人はいらない。
何かのやり方を知っている人がよい」

「マーク・トウェインが1889年に書いた小説の主人公、
コネティカット出身のヤンキーは教養ある人間ではなかった。
ラテン語もギリシャ語も知らず、
シェイクスピアを読んだこともなく、
『聖書』もほとんど読まなかった。

しかし彼は、機械のことなら、
電気を起こすことから電話機をつくることまで
すべて知っていた」

これは福沢諭吉の「実学」そのもの。
そして「知識商人」とは、
「実学の人」である。

もちろん「実学」とは、
清家学長が強調する「問題発見、問題分析、問題解決」であり、
「学問の作法、学問の方法論そのもの」でもある。

福沢諭吉が学んだ「適塾」。
1838年に緒方洪庵が創設。
洪庵の著「扶氏医戒之略」の中にある言葉。
「医の世に生活するは
人の為のみ
ただ己を捨てて
人を救わんことを願うべし」

塾員代表祝辞で比企能樹さんが紹介した。

医の世に生活する者に限らない。
人の為のみ
ただ己を捨てて
人を救わんことを願うべし

さて、毎月恒例、
小売各業態の販売統計月報。
百貨店、コンビニ、総合スーパー、
そしてスーパーマーケット。
今月の明暗はいかに。

今月唯一、昨対マイナスという
結果になってしまったのは、百貨店。

日本百貨店協会発表。
2月の総売上高は4331億0811万円。
前年同月比は既存店ベースでマイナス0.4%。

マイナスの要因は全国的な強い寒気の影響で、
春物衣料に動きが見られなかったこと。
また、天候不順やインフルエンザの流行で
外出を控える人が多かったようだ。

バレンタイン商戦で、
菓子部門がプラス2.6%。
また高級商材部門がプラス3.3%。
これら一部部門は活況ではあったが、
悪戦苦闘の春物衣料が足を引っ張った結果となった。

一方、日本フランチャイズチェーン協会発表。
コンビニは既存店売上高が6155億1300万円で、
前年同月比はプラス4.8%。

コンビニでは寒くても来店客数に影響はなし。
むしろ、一時的な暖を取るために、
ふらっと立ち寄る人も多いだろう。
10億0480万人が来店し、
客数は2.5%のプラス。

ついでに客単価も612円でプラス2.3%。
今月も相変わらずの好調ぶりだ。

さて、次は日本チェーンストア協会のまとめ。
チェーンストア販売月報

主に総合スーパーのトレンドを示す2月の販売総額は、
9678億7537万円で既存店前年同月比はプラス0.3%。

閏年効果で前年同月比はプラスだった。
それでも他の月と比べれば、日数は少ない。
必然的に販売総額は下がり、
2月はほぼ毎年、1兆円を割る。

部門別にみると、
食料品が6329億9806万円でプラス0.4%、
衣料品が909億9141万円でプラス0.3%、
住関連は1851億3105万円でプラス0.2%と、
いずれも微増した。

最後に、食品スーパーマーケット3協会合同発表。
スーパーマーケット販売統計調査
今月の発表者は、
日本スーパーマーケット協会事務局長の江口法生さん。

2月のスーパーマーケットの総売上高は、
7365億6068万円で既存店前年同月比プラス0.9%。

食品合計が6503億4241万円でプラス0.8%。

生鮮3部門は2462億9551万円でプラス0.9%、
惣菜が649億2737万円でプラス1.5%、
日配が1381億2726万円でプラス1.6%、
一般食品が2009億9226万円でプラス・マイナス0%。

非食品が603億3056万円、プラス0.3%、
その他が258億8772万円で、プラス0.5%。
閏年の影響で軒並みプラス。

今月唯一マイナスだったのが、
生鮮3部門の中の水産
で、
679億5103万円の、マイナス1.0%。

青果は相場高の影響で、
1018億4737万円で、なんとプラス2.7%。
畜産は764億9712万円で、プラス0.3%だった。

自社・自店の数値と、比較してもらいたい。
江口事務局長の見解。
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「2月は形の上では、昨対をクリアしている。
しかし、今年は29日まであったため、
去年より1日多かった。
それを差し引きすると、
実質、昨対96~97%くらいだろう。
かなり厳しい状況だったと言える」

「節分の恵方巻などで売上げを確保したが、
全国的な寒気と大雪の影響が売上げに響いた」

「来月の発表は、昨年の震災後の買いだめの影響で、
さらに厳しい数字になるだろう」

ゲストスピーカーは、
㈱サンエーの中西淳専務取締役。
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サンエーは沖縄で圧倒的なシェアを誇るが、
食料品をはじめ、衣料、住関連、家電などの総合小売りから、
ホテル観光や外食の運営まで、幅広く展開している。

「昨年の震災直後は、
一番遠かった沖縄からも
物資を色々と送っ
た」

「在庫が二重にあるので、3月はそこそこ売れた。
しかし、4月に入ると、一変。
特に水は本土にも物がなく、
さらに一番遠く、物流コストのかかる沖縄には
全くこなかった。
置き去りにされてしまったような状況だった」

「サンエーはホテル業もやっているので、
震災以降、観光客やビジネス客が減り、
売上げが3~4割も落ちた。
ただ、下期は修学旅行などが増え、
それが売上げを引っ張ってくれた」

「沖縄は日本で唯一、
人口が増えている地域。

マーケットが浅いので、総額としては少ないが、
本土からの進出は増えている。
そこで、サンエーでは商品力の強化に取り組んでいる。
いかにリピート率の高い商品を入れていくか、
商品のグレードを上げていくかが重要」

「2012年度は大型のGMSを1店出店予定。
サンエーは衣料も家電もやっているので、
直営テナントの比率が高い。
また、小型スーパーマーケットでは、
『お客様の冷蔵庫代わり』をモットーに
ローコストオペレーションを展開していく」

「GMS、スーパーマーケット、専門店と、
大・中・小、3つの業態で、
マーケットでシェアを伸ばしていきたい」
サンエーこそ、沖縄という商勢圏を限定し、
その中でクリティカル・マスを達成し、
地域貢献する小売業・サービス業の典型だ。

そういった企業にこそ、
この適塾の考え方は必要だ。
「人の為のみ
ただ己を捨てて
人を救わんことを願うべし」

<結城義晴>


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