ラスベガス3日目/ポジショニング戦略の講義とリアル店舗

母の日。
アメリカでもマザーズデー。
大谷翔平の12号ホームラン。
3ランで試合を決めた。
そして大リーグ本塁打トップに躍り出た。
こちらで見ていると、
日本で観戦しているよりも、
実感がある。
ただし普通のテレビでは見られない。
放映されていない。
だからカジノやスポーツバーの映像で知る。
昨日訪れた店の復習と、
今日訪問する企業の予習。
それから、
「森の中の二人の男と熊の話」
森の中を二人の男が歩いていた。
そこへ熊が出てきた。
一人の男が、叫んだ。
「早く逃げよう」
もう一人は、言った。
「君より早く逃げさえすればいい」
21世紀に入ってから、
アメリカのローカルチェーンは、
ウォルマートという熊が出てきて、
選択を迫られた。
ウォルマートと真っ向から戦うか。
それともどこかの傘下に入るか。
あるいは廃業するか。
真っ向から戦ったのは、
テキサス州のHEBと、
ニューヨーク州のウェグマンズ。
クローガーに逃げた男は助かり、
それ以外は熊に食われた。
ネバダ州では、
スミスがクローガー傘下になり、
ボンズがセーフウェイに糾合され、
アルバートソンのグループとなった。
2回目の講義では、
このベーシック研修の中核理論。
フォーマットとポジショニング論。
新しいフォーマットを創造するとき、
「コンバイン」(結合)の方法は有効だ。
ウォルマートのスーパーセンターは、
このコンバインによって生まれた、
最強のフォーマットだ。
講義が終わると視察と調査。
チームリーダーのマイクさんが丁寧に答えてくれた。
団員からグッドクエッションがたくさん出た。
その質問に答えて、
ホールフーズで働く喜びを語ってくれた。
待遇の良さ、やりがいを与えてくれることも、
マイクさんは強調した。
ただし私の質問ははぐらかされた。
今、ホールフーズは、
グロサリーや非食品で「sale」を連発している。
つまりディスカウント攻勢を続けている。
その理由は明らかにされなかった。
多分、アメリカの深刻な消費不況が、
それをさせているのだろう。
日本も例外ではない。
しかしこの店は25%が、
オンライン販売である。
Amazonの力を借りて、
非常にスムーズにその機能を獲得した。
顧客はスマホで発注するだけで、
ホールフーズの商品を手に入れることができる。
店頭からは4分の1の顧客が去ったが、
売上げは変わらない、いや増大した。
確かな商品を提供できる小売業にとって、
近い将来、店舗は商品見本の展示場になる。
そんなことを感じた。
オーガニックスーパーマーケットにとって、
青果部門は店の顔である。
精肉と鮮魚は対面売場で、
顧客の注文に応じる。
その担当者たちの商品知識や調理技術は、
最高のレベルである。
ベーカリーからデリは、
ホールフーズの真骨頂でもある。
店舗中央の「ホールボディ」売場。
非食品部門だがここでも「SALE」。
この店にもビールバーがあり、
惣菜を購入して食べることもできる。
いわゆる「グロサラント」である。
ネイバーフッドマーケット。
ウォルマートのスーパーマーケット。
そして青果売場。
スーパーセンターに比べるとコンパクトだが、
日常づかいの必要な商品は揃う。
エンドはウォルマートの原則に則り、
1~2アイテムの品揃え。
アメリカのスーパーマーケットは
フード&ドラッグが基本。
処方箋を扱うファーマシーを併設している。
店内ではオンライン注文品をピッキングする
カートが動き回っている。
コロナを経て、
オンライン販売は急成長している。
車で商品を引き取る、
カーブサンドピックアップ(Curbside pickup)が多い。
配送費用がかからないからだ。
セルフレジも増えた。
ニューヨーク市では、万引きに悩まされて
セルフレジを辞めた店舗が多い。
ラスベガスではセルフレジが主流。
レジの奥にあるピッキングカート置き場。
顧客が取りに来るのを待つ。
ターゲット。
ウォルマートと同じディスカウントストアを展開する。
ターゲットのロゴの下に「drive up」のサイン。
ターゲットもオンライン販売を強化している。
売場先頭のプロモーションコーナーは、
もちろんマザーズディのブーケ。
顧客が商品検索したり、
価格を調べたりするための、
デジタルボード。
売場の随所においてある。
もちろんターゲットのアプリをダウンロードしていれば、
同じことができる。
プロモーションコーナーのテーマは「Summer」。
夏物の小物雑貨を展開する。
コーポレートカラーの赤を基調としたカラー使い。
同じディスカウントストアでも、
ウォルマートとターゲットの違いは歴然だ。
それがポジショニング戦略である。
マザーズデープロモーションは徹底している。
入口からずらりとブーケを展開。
店の先頭部分では、
特設平台で展開。
買上げ点数が少ない顧客向けのレジ。
レジ前は長い行列。
通常のレジは2人態勢。
粛々とこなしていく。
見事なプロモーションとオペーション。
同じショッピングセンターにある
アジア系スーパーマーケット。
シーフードシティ。
シーフードからミート売場へ。
部門構成はスーパーマーケットだ。
日本の高品質の商品を販売して、
ダラーストアの中で鮮明なポジショニング。
アメリカ人には、
新鮮さを感じる商品ばかり。
店数も急激に増えている。
売場の至る所に換算表が掲げてある。
基本売価は1.75ドル。
明るく陽気な従業員もとてもいい。
アメリカでも日本でも、
その他の国々でも、
コストコは変わらない。
商品が違うだけで、
経営も運営も店づくりも、
完璧な標準化が貫かれている。
星条旗が売られている。
5月最終月曜日のメモリアルデー向けの提案だ。
店舗中央の広いスペースでは、
売り切れ御免のポップアップセールが展開される。
奥壁面沿いは平ケースに、
大容量にアイテムが並ぶ。
ベイカリー、ミート、デリ。
アメリカでも商品の高騰が続く卵。
コストコはその価格も在庫量も圧倒的だ。
フロアマネジャーがフォークリフトを引いて、
商品の販売位置を変えている。
これがコストコの唯一と言っていい、
売場変化の手法だ。
売場の位置を変えることで、
売上げ不振のアイテムが売れるようになる。
消費不況でも節約志向でも、
コストコは一番人気だ。
最後にイータリー。
パークMGMホテルの前面改装のときに、
1階に誘致された。
イータリーは買う、食べる、学ぶをコンセプトに、
イタリア料理、イタリア食材を集めた店だ。
しかしホテルの1階フロアに入ったことで、
買う機能が削減され、学ぶ機能も喪失した。
食べる機能は充実しているが、
それではイータリーではない。
市場であり、食堂であり、学校である。
それがイータリーなのだ。
OICグループとロピアの面々。
元気に視察し、もりもりと食べる。
それがロピアの社風だ。
ホテルに帰ってから、夕食へ。
私たちはその噴水ショーが見える店へ行った。
「ビアパーク」
事務局のカリスマ佐藤とJTBの吉田和司さん。
そして亀谷しづえGM。
お疲れ様。
ラスベガスの中心部には、
消費不況はない。
大衆の生活圏で大きな異変が起こっている。
(つづきます)
〈結城義晴〉