結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年12月01日(木曜日)

上海小売業視察[中編]外資カルフールとウォルマートのハイパーマーケットの出来栄え

今日から12月。

大変な年の大変な師走。

今年最後の商人舎標語。
「みたび、
ひとつずつ、
すこしずつ、
いっぽずつ」

3月11日の東日本大震災。
そのあとの4月の標語は、
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」

さらに5月の標語は、
「まだまだ、ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」

そしてこの12月。
「みたび、ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」

水前寺清子ではないが、
「3歩進んで2歩下がる」

瓦礫撤去問題や原発問題などだけ見ても、
まだまだ、まだまだ、
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」

年末商戦に入る今日から、
そして大晦日の31日まで、
忘れてはならない。
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」

その意味で、今年の12月商戦は、
例年とは大きく異なる。

なんというか、
一つひとつの仕事を丁寧にやりたい。

かといって、大震災にかこつけて、
やるべきことをネグってはいけない。

そんな卑怯なことは許されない。
被災して、復旧・復興に奮闘している人たちに失礼だ。

朝日新聞の『天声人語』は3月22日版で訴えた。
「救国の散財」

「節電で薄暗い店、歯抜けの商品棚。
これも有事かと思う」
あのころを思い出す。
「工場や発電所、物流網がやられ、
停電や放射能の風評被害もある。
空気ではなく実を伴う消沈だ」
「放射能の風評被害」と、ずいぶん軽く見ていた。
「日本全土が現場、全国民が当事者であろう。
だが、皆が沈み込んではお金が回らず、
再生はおぼつかない」

「国費を被災地に集め、
懐に余裕のある向きは
『救国の散財』をしてほしい」

「将来に備えた蓄えもあろうが、
国難を皆で乗り越えてこその将来、
ここは東北のために放出しよう。
世界の終わりではない・・・・・・」

いま、この12月、ふたたび、
消費者には『救国の散財』を提案し、
小売りサービス業には、
そのための奮闘努力を奨励しよう。

それも丁寧に、
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」

Retail is Detail.
[神は細部に宿る]

それが今年の12月だ。

まず2011年12月の1カ月を概観しておこう。

第1週の金曜日12月4日から「人権週間」がスタートする。
1週間後の12月10日が「世界人権デー」。

1年の最後の月の初めの週に、
「人権の尊重」が謳われる。
今年は特に「人権週間」を大切にしたい。

第3週に入ると、12月14日水曜日は、
「赤穂浪士討ち入りの日」。

そして翌日の15日木曜日から、
今年も「年賀郵便特別扱い」開始。

いよいよ第4週。
木曜日22日は「冬至」。
昼が一番短い日。
「柚子湯」に入る。
冬至がゆもカボチャも、
提案したい。

冬至の翌日23日は天皇誕生日の祭日。
今年の天皇誕生日は金曜日。
そして24日土曜日がクリスマス・イブ、
25日日曜日がクリスマス当日。

今年のクリスマス関連はこの3連休。
だから23日・24日・25日には、
1年の総決算のつもりで、
売りまくる。

26日月曜日からは完全に和風の年末際商戦に入るが、
26・27・28までは通常日。
28日の水曜日が官公庁御用納めの日。
多くの一般会社も冬休みに入る。

しかしここでも、普通の休み。

結局、30日の晦日と、
31日の大晦日に、短期集中。
消費は高揚する。

後ろになるほど盛り上がる。
この時こそ『救国の散財』をお勧めしたい。

さて、昨日は上海小売業視察二日目。
今日はカルフールとウォルマート、
世界2強の上海の店舗を紹介しよう。

中国の小売業は、
総合スーパー=ハイパーマーケットが主役。
対抗はコンビニエンスストア。
もちろん百貨店も主役のひとつだが、
食品スーパーマーケットは脇役とならざるを得ない。

これは日本の高度成長期に似ている。

カルフールは2008年までハイパーマーケットの王者で、
売上高ナンバー1だった。
現在も、上海市民は総合スーパーと言えば、
カルフールを思い描く。
それだけ市民に浸透している。

私たちは昆山(クンザン)を訪れた。
百貨店とハイパーマーケットが両核となったショッピングモール。
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百貨店はパクソン。
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郊外の大衆的な百貨店。

モールを抜けて反対側に向かう。
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するとカルフールが登場。
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スロープで地下1階へ。
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ワンフロア7000㎡のハイパーマーケット。

カルフールの中国売上高は、
2010年に57億3200万ドル。
1ドル100円換算で5732億円。
645店で店数はハイパーマーケット企業最大。

必需品の12品目は地域で一番低価を出す。
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入り口を入ると、特売プロモーションスペース。
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カルフールは全体に黄色と赤を基調色にしている。
だからブルーを配置して、「安さ」を強調。

この店は実に管理状態がいい。

入り口側から家電売り場。
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そしてドライグロサリー。
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店舗中央を広いコンコースが走り、
両サイドに部門が順に配置されていく。

①家電
②バザー(非食品雑貨)
③テキスタイル(衣料品)
④加工食品
⑤生鮮食品・惣菜

一番奥に生鮮を配して、
顧客を全店回遊させる仕掛け。

衣料品はブランド物は扱わず、
大衆品に徹する。
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現在の上海の低所得層を狙っていることがよくわかる。

バザーと呼ぶ日用品雑貨売り場。
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そして化粧用品・コスメティックス。
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ソフトドリンクから始まるグロサリー。
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コメは、自由に欲しいだけすくい取る販売方式。
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乾物は平台でバラ陳列。
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生鮮部門のトップは左サイドの青果部門。
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ここでもばら売り中心。
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右手には鮮魚部門。
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水槽には生魚が泳いでいる。
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その奥がR型平台に陳列された惣菜。
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一番奥が精肉の対面コーナー。
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中華料理は肉を多く使う。
そのバラエティ豊かな精肉売り場が、
延々と奥壁面沿いを占める。
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漬物などもばら販売。
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この店は実によく管理されている。
ただしまだ赤字。

食品の売上高が全体の7割を占める。

店長の張さんとディスカッションした。
私の隣。
真ん中は㈱万代副社長の山下和孝さん、
常務の不破栄さん。
今回のコーディネーターのシン・チエさん。
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張さんはフランス人ばかりのカルフールの店長の中で、
中国人として頑張っている。

張さんが占う「中国の業態別の将来」。
「ハイパーマーケットとコンビニは成長する。
スーパーマーケットは淘汰される」。

張さんはアメリカ小売業にも明るい。
「スーパーマーケットで生き残るのは、
久光百貨店のフレッシュマートのようなハイクオリティの店」

私は、現在の上海は日本高度成長のときと似ていると考える。
あの時代、総合スーパー全盛だった。

しかし消費が成熟し、オーバーストアになってくると、
カテゴリーキラーとしてのスーパーマーケットが伸びてくる。
逆にハイパーマーケットは衰弱する。

張さんの意見と私の見方。
どちらが正解か。
歴史が証明することとなる。

議論に応じてくれた張さんに、
心から感謝。

さてカルフールを辞して、
ウォルマートに向かう。
五角場万達広場のウォルマート。
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ちょっと古い店だが、ウォルマートの実力がよくわかる。
現在、グロサリーリテイラーとして中国ナンバー1。
2010年度年商99億6900万ドル。
1ドル100円で1兆円の手前。

ウォルマートは322店を中国で展開中。
3フロアの変則的な店舗だが、
この店も圧倒的に食品が強い。
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入り口を入るとアイランド・プロモーション。
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手が込んだアクション・アレー。

通路は広く天井も高い。
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しかしアメリカの完成されたスーパーセンターとは、
全く違う店づくり、売場づくり。

ウォルマートは現地化を重視する。
だからハイパーマーケットの基本業態構成は、
アメリカと同じだが、
それが「分化した形」としてのフォーマットは、中国流。

だからアメリカと同じでなくとも、
一切、気にしない。

青果部門は平台展開中心のばら売り。
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ばら売りしておいて、
売場の真ん中にラッピング担当員を配置。
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まだまだ人件費が安いからできること。

しかし生鮮、特に青果は強い。
バナナ売り場。
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葉物の平台。
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こちらはパック野菜。
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コメはカルフールと同じ売り方。
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顧客が群がっている。

精肉部門も広い。
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鮮魚コーナーは氷を敷き詰めて、
その上に商品を並べる。
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精肉も対面方式の平台で、
奥で作業をする。
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しかし何とも不衛生な感じ。

卵売り場は島陳列。
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小玉のオーガニック卵が大量陳列されている。
ウォルマートが有機食品を扱うということは、
上海にもこれから、オーガニックブームがやってくる。
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壁面に加工肉のショップ。
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広いフロアの中央に惣菜対面売り場があって、
コンコースはそれを取り囲むようにU字型に設けられている。
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レジ前の最後のスペースに「地方特産」のコーナー。
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すべてばら売りで、自分で袋に入れて、
重量を測って、シールを張る。
それをレジに持っていく。

バルク売り場も広いし、品ぞろえが豊富。
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ぐるりと回ってレジに戻る。
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この2階の売り場が食品。
やはり7割がフードによって販売される。
総合スーパーのハイパーマーケットといっても、
強大な食品スーパーマーケット+非食品の構成。

それが上海の市民の生活を示している。

レジを出たところに焼き栗の出店がある。
もちろん外部業者だが、
ウォルマートの管理下の店。
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売り子が寝ていた。
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アメリカのウォルマートでは、
まず見られない光景。

つまりは、マネジメントが不在であることを物語っている。
ウォルマートの中国展開も、
まだまだ難関だらけだろう。

カルフールの張店長と、このウォルマートの売り子。
この落差をどう感じるか。

しかし上海のハイパーマーケットの現在のチャンピオンは、
実はカルフールでもウォルマートでもない。
明日、その主役が登場する。

<結城義晴>

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