結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年02月14日(木曜日)

「自ら、変われ!」の本当の意味<前編>日下静夫の口上

商業界で、正札販売運動を起こした人物。
それは、岡山県津山市の故日下静夫さんである。

2日にわたって、この日下さんの物語を中心に、
「イノベーショ」を語る。
ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げる。

「畳がある以上、下駄屋に繁盛がある」
これが日下さんの信念。
日下静夫
津山市元魚町商店街の丸一履物本店。
それが日下さんのお店だった。

昭和30年台の初め、
1分間に何足もの下駄を商う日本一の履物商といわれた。

しかし当時から、下駄ほど値切られる商品はなかった。
下駄を買うとき、顧客は、店主や職人と向かい合って、
鼻緒をすげてもらう。
この15分ほどの、相対する時間に、
顧客から「負けてくれ」という言葉がかかる。
だから、値切られる
日本中、下駄は、値切られる商品だった。

昭和24年、日下さんは、値段を負けて売ることの不合理に、
我慢できなくなった。

値切り上手といわれる自分勝手な顧客が、
安く買う。
人柄の良い遠慮深い顧客が、
高く買う。

これに我慢できなくなった。
だからそれをやめようと思った。

しかし、ここで問題が出る。

叔父、叔母、親戚、税務署の役人、小学校の先生などが、
来店したときに、負けないですむかという問題。

当時の商人は、こういった近親者にはみな負けていた。

そこで、日下さん、一計を案ずる。
親戚一統に自分の家に集まってもらい、
羽織袴で「正札販売」のご挨拶をした。
有名な、日下静夫の口上である。

ちょっと長いが、『店は繁盛のためにある』(倉本長治著)から引用する。

「ご親戚の皆様が、手前共で下駄をお買いくださるとき、
これまで、適当にお値段をお引き致してきました。
皆様、大変お喜びくださいましたことと存じておりますが、
実はそれでも尚、多少の儲けは御座いましたものです。

そこで考えますに、
叔父様、叔母様でさえ喜んでくださったのですから、
今回、町内の衆やお知り合いすべての人にも、
お値段をおまけして下駄を売る覚悟を致しました。
サゾ皆様、お喜びくださることと思います。

しかし、どの程度のお知り合いまで値段を負けるか、
というケジメがハッキリ致しませんため、
思い切って、全商品の値札を、
叔父さん叔母さんにお売りするときの値段に下げてしまい、
以後誰がお買いに見えてもそのお値段で売るという便法を
執らせて頂くこととなりました。

故に、これからは、叔父様も、手前の店では
定価でお求め願います。

それはこれまで、おまけしてきた値段と同じ値でありまして、
叔父様はじめ皆々様には少しも不都合のない値段でありますから、
従来通りご安心してお買い求め願います。

ただ一般のお客様は、ウンと得をして、
従来のように一々値切る必要がなくなり、
これまでなら値切っても、
トテモそこまでは引けなかった値段で
モノが買えるのであります。

どうぞ、丸一、一生のお願いでありますから、
この点ご了承を!」

親戚一統、あっけに取られた。
そんなばかげたことがあるか、
丸一は潰れる、
散々に罵られた。

しかし日下さん、頑として動ぜず、
商品の値下げと正札販売を励行した。

その年、1月に始めて、客数はどんどん下がっていった。
しかし10ヵ月後、やっと売り上げが元に戻った。
赤飯を炊いて、祝ったほどだ。
やがて、一年、二年、
津山市内に40数軒あった下駄屋が、
少しずつ減っていって、
昭和30年には、10数軒になってしまった。

「正札販売」の勝利であった。

<つづく>


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