結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年05月21日(火曜日)

第1回令和名人会中止判断と駆け込み減資の「ゲリラと正規軍」

5月の台風だった。
初夏の低気圧前線で、
強風と豪雨。

正午の天気図。
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実は今日5月21日は、
第1回令和名人会の日だった。

1989年に始めたゴルフ名人会。
オリジナルメンバーは、
故小森勝さんが中心で、
浅香健一さん、鈴木國朗さん、
そして結城義晴。

小森さんは当時から、
コンビニ経営のトップコンサルタント、
浅香さんは立地調査のオーソリティ、
鈴木さんは商品と売場づくりの第一人者。
私はこの昭和から平成に変わった年に、
月刊食品商業編集長に就任した。

しかも1月1日付という異例の発令だった。

その結城義晴編集長誕生を記念して、
筆者の先生方が寄り集まって、
ゴルフコンペを開催してくださった。

白鳳カントリー倶楽部。

編集長に就任直後、
1月7日に昭和天皇ご崩御。

その日のうちに平成と改元され、
1月8日から平成元年となった。

そしてこの年の11月、
ベルリンの壁が崩壊し、
翌々年にバブル崩壊、
ソビエト連邦の解体。

激動の時代が続く。

1995年には阪神淡路大震災。

私は必至の思いで雑誌を作り続けた。

編集長就任ゴルフコンペのあと、
小森、浅香、鈴木、結城の4人で、
ゴルフの愛好会を始めていた。
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初めは会の名称もなくて、
自分たちで「迷人会」などと言ったりした。

2カ月に1回くらいの頻度で、
このゴルフ会は続いた。
毎月ラウンドする場合もあった。

どんどんゴルフの腕が上がっていった。

もちろん全員の仕事は、
ますます忙しくなった。

何しろ新編集長だから、
次々に原稿依頼をした。

小森さんも、浅香さんも、鈴木さんも、
毎月のように何本も原稿執筆して、
そのうえで迷人会に参加してくれた。

皆さんのご協力もあって、
雑誌の部数は伸びに伸びた。

しかしゴルフのほうは、
一定レベルまで上がって、
そこで停滞し始めた。

不思議だ。

仕事がうまくいけばいくほど、
ゴルフはうまくいかない。

部数が伸びれば伸びるほど、
スコアはダウンした。

私は1996年に、
㈱商業界取締役編集担当に昇格し、
99年に月刊販売革新編集長を兼務し、
21世紀に入って2002年に専務取締役、
翌2003年に代表取締役社長に就任した。

その間も、名人会は細々と継続した。
私にとっては、
ストレスからの解放の効用があった。

2007年、任期満了で社長を退任し、
翌2008年に㈱商人舎設立、
同年、コーネル大学RMPジャパン設立、
副学長に就任。

翌2009年4月、
立教大学大学院特任教授に就任。

このころから少しずつ、
私はゴルフに本腰を入れ始めた。

2011年3月11には、
東日本大震災が起こった。

日本は驚くべき復興を遂げた。

そうしたら2013年9月、
小森勝さんが逝ってしまった。
65歳だった。

それでも名人会は、
電通の土井弘さんを新メンバーに迎えて、
続けられた。
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浅香さんが引退したら、
新谷千里さんが参加してくれた。
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それから6年、平成は令和に変わった。

振り返って考えてみると、
私たちの迷人会改め名人会は、
平成時代の30年間続いたものだった。

だから後付けながら、
私たちの歴史を「平成名人会」と名づけた。

そして再出発する会を、
初めから「令和名人会」と名乗ることにした。

長々と綴ってきたが、
今日がその令和名人会の出発の日だった。

しかし初夏の台風のごとき荒天。
やむなく2日前の日曜日に、
中止の決断を下した。

ゴルフは自然との闘いだ。
だから雨が降ろうが風が吹こうが、
プレイする。

亡き小森勝さんは、
そうした信念の人だった。

しかし、令和名人会の平均年齢は、
64.8歳。

今日の豪雨強風では中止はやむを得ない。

何が難しいって、
ゴルフの中止くらい難しいことはない。

しかしそれをした。
これからの令和名人会には、
きっと晴れ間が見えてくるだろう。

令和拡大名人会をたびたび開催する。
レギュラーメンバー以外の皆さんの、
ご参加を募りたい。

さて、今日の本論。
昨日の月曜日の日経新聞、
「経営の視点」
編集委員の田中陽さんが鋭い指摘。

日経きっての流通の専門家。

タイトルは、
「ポイントか商人の矜持か」
「10月の消費税率引き上げを控えて
中堅の百貨店やスーパーなどで
首を傾(かし)げたくなる戦略が散見されている」

「”駆け込み消費”ならぬ”駆け込み減資”だ」

50社超の企業が「減資を実施または計画」

100年超の歴史を誇る老舗もある。

「ポイント還元支援など
政府の消費増税対策が受けられる
中小企業に自ら”格下げ”したのだ」

今回、減資を決めた小売業の大半が
資本金を5000万円までにした。

中小企業基本法第二条が、
「中小企業の範囲」を規定する。

①製造業・建設業・運輸業その他の業種
「資本の額(資本金)又は出資の総額が
3億円以下の会社並びに
常時使用する従業員の数が
300人以下の会社及び個人」

②卸売業
「資本の額又は出資の総額が
1億円以下の会社並びに
常時使用する従業員の数が
100人以下の会社及び個人」

③サービス業
「資本の額又は出資の総額が
5000万円以下の会社並びに
常時使用する従業員の数が
100人以下の会社及び個人」

そして④小売業
「資本の額又は出資の総額が
5000万円以下の会社並びに
常時使用する従業員の数が
50人以下の会社及び個人」

これによって、
資本金が5000万円以下の小売業は、
中小企業と定義されて、
政府の支援対象の条件を得る。

「ポイント還元だけでなく、
キャッシュレスを導入する店舗には
端末の導入費用が補助される。
至れり尽くせりの支援策に見える」

顧客はポイント還元される店で買う。
そちらを選ぶ。

だから減資して資本金を5000万円にする。
これは企業会計上、
許されないルールではない。

しかし田中さん。
「減資は企業にとってあまり
いいイメージを持たれない
資本戦略の一つだ」

「信用力低下リスクもはらむ」

「資本力のある大手と、
そもそも政府の支援対象となる
中小店に挟まれて
消費増税後の中堅小売業は
苦戦が予想される」

その通りだ。

「政府の誘い水を逃す手はない
と判断したのだろう」

この気持ちもわかる。

「小売業は機を見るに敏であり、
それが商才でもあるが
“信用という名を捨てて
支援という実を取る”
ことに大義があるのか」

「ポイント還元の期間はわずか9カ月。
持続的社会を目指す時間軸のなかでは
あまりにも刹那的すぎる」

田中さんの主張。
「信用、信頼の無形なものが
土台となる小売業や飲食業。
抜け駆け的な行為や
正直で透明性のある社会を
故意にゆがめることが
どれだけ社会的な損失を招くか」

「商人道の矜持(きょうじ)が試されている」

難しい問題だ。
ゴルフの中止などより、
はるかに難しい判断。

マイケル・サンデルの「白熱教室」で、
議論してもいいくらいのテーマである。

特に「減資した企業」の立場に立てば。

私は田中陽さんとは別の視点から、
2つの根本的な問題点があると思う。

第一に問題なのは、
政府であり、行政である。
これは間違いない。

競争は公平公正でなければならない。
市場原理に基づいて、
正々堂々の競争がなされるべきだ。

政府や行政はそれを促す立場にある。
それが経済全体を活性化させるからだ。

消費増税に絡めて、
一部の国民の人気取りとして、
軽減税率や中小企業の保護を織り交ぜる。
そこにあいまいな原則を盛り込む。

ここに問題の根源がある。

一方、第二の問題は、
減資しようとする企業群と、
それができないそれをやらない企業群が、
分断されている事実である。

田中陽さんの指摘のように、
社会的信用は何よりも重要であるし、
商人の矜持を持ち続けていたいと思う。

しかし、それでも消費増税を機に、
一気に消費者の購買マインドが、
冷え込んでしまう危険性も大きい。

そこで「機を見るに敏」な企業が出てくる。

反対に上場企業や資本金が巨大な企業は、
減資などできようもない。

そこで小売業界が分断されてしまった。

分断されて互いに文句を言い合うことに、
私は、問題があると思う。

そうして士農工商の序列は、
依然として続けられていく。

分断されているからだ。

協会や団体が乱立していることにも、
問題があるだろう。
そこで徹底的に議論して、
産業としての姿勢を打ち出すべきだ。
政治や行政に働きかけることで、
もともとこんな不公平な措置を、
阻止することもできる。

Political Marchantでなければいけない。

またしても、してやられた。
そんな気分だ。

最後に私の著書から引用。
「正規軍とゲリラ」

正規軍は、勝たなければ、
すなわち負けである。
ゲリラは、負けなければ、
それで勝ちになる。

ベトナム戦争におけるアメリカ軍は
明らかに前者であったし、
ベトコンは確かに後者であった。

古くは共和制時代の
ローマ軍とカルタゴ軍の間でも、
長らくこの対立関係が続いた。

湾岸戦争ではなぜか、
ブッシュもフセインも
正規軍とゲリラ軍に分かれつつ、
どちらも勝った気でいた。

減収減益が相次ぐ今。
そして、消費マインドが
停滞しきった観のある現在。

「勝たねば負け組」には、
つらい逆風が吹く。
「負けねば勝ち組」には、
意外にも順風が潜んでいる。

「勝ちに不思議の勝ちあり。
負けに不思議の負けなし」
この野村克也の言葉の、
勝ちの不思議は「神風」である。

「勝った負けたとさわぐじゃないよ」
と歌う水前寺清子は、
「あとの態度」を大事にする。
これは「負けに不思議なし」を言っている。

あなたはゲリラか、はたまた正規軍か。
逆風を選ぶか、順風を好むか。

どちらであっても、
小売流通業は常に、
不思議の神風を感じる
機会にめぐまれている。

ビジネスそのものが、
不思議の神風を知るために、
為されている。

しかし、そのとき、
これだけは忘れてはならない。

労働法無視のゲリラになるな。
顧客不在の正規軍になるな。
『メッセージ』(商業界刊)より

最後の最後は、
働く人たちと顧客が、
どう判断してくれるか。

そして不思議の神風を呼び込めるか。

ここにかかっていると思う。

さらに最後の最後の最後には、
どの企業が生き残ったかという事実が、
意思決定の正しさをを示してくれる。

まことに恐ろしいことだが。

〈結城義晴〉


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