結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年01月14日(金曜日)

「キャンドゥ×イオン」のスピード感と優先順位

新型コロナウイルス感染第六波。

過剰に騒ぎたくはないが、
それでも感染は急激に増えている。

全国に新規陽性判明者は、
2万2045人。

東京都が4051人、大阪府が2826人。
沖縄県が1596人、愛知県が1317人、
神奈川県が1155人。

4ケタの増加は5都府県となった。

900人台は広島県997、埼玉県955人、
兵庫県929人、916人。

東京周辺、大阪周辺の件に広がっている。

「冷静に恐れよ」

個人的性向を自己判断すると、
私は怖いもの知らずで、
無鉄砲な一面がある。

その半面、ひどく臆病でもある。

人間は複雑だ。

しかし年を経るにしたがって、
臆病な側面が強くなった気がする。

だから「冷静に恐れよ」は、
納得がいくのだろう。

「オクシモロン」と言う。
冷静は静かなこと。
恐れるは動揺して動くこと。
それを同時に行う。

たとえば仏教は「慈悲」の宗教である。
「慈」はヒンズー語で「マイトリー」、
「励まし」を意味する。
「悲」は同じく「カルナ」と言い、
「慰め」を表わす。

「慈&悲」は中国人の造語だが、
反対の意味を重ねた言葉である。

この反対の意味を並べる語法が、
ギリシャ語の造語「オクシモロン」だ。
oxys(鋭い)とmōros(愚かな)を組み合わせた言葉。

そしてオクシモロンに、
問題を解くカギがあることが多い。

仏教の慈悲もそうだし、
シュンペーターの創造的破壊も、
江崎玲於奈博士の「組織化された混沌」も、
オクシモロンだ。

だから今、「冷静に恐れる」。

今日は東京・日本橋で記者会見。
東京日本橋タワー。IMG_01091
会社が何かを決定して、
それを社会に公にする。

その際に使われるのが記者会見。

商人舎流通スーパーニュース。
イオンnews|
キャンドウ子会社化/5年間で820店増の2000店舗体制へIMG_01101

㈱キャンドゥ社長の城戸一哉さんと、
イオン㈱社長の吉田昭夫さん。IMG_01612

イオンがキャンドゥを、
株式公開買い付けで子会社化した。

キャンドゥは100円ショップ業態で、
ダイソー、セリアに続いて第3位に入る。

2011年2月20日に、
創業者の城戸博司社長が61歳で急逝。
城戸一弥さんが25歳で代表取締役に就任。

現在、代表取締役社長。

吉田イオン社長は、
今回のM&Aの目的と革新を、
丁寧に語った。
IMG_01762

それから城戸社長は、
イオンの子会社になることによって、
キャンドゥをさらに成長させるビジョンを、
これも誠実に語った。IMG_01881
私はこの案件が発表された時から、
両者にとって「いい判断」だと指摘した。

キャンドゥ×イオン。

この「×」はシナジー効果を意味する。
そしてその相乗効果は、
間違いなく出るだろう。

あとはそのスピード感と、
その迅速性を出すための優先順位だ。

それぞれの表明が終わると、
質疑応答。

悪いけれど、
たいした質問は出なかった。

記者会見での一問にかぎられた質疑では、
深い内容、本質的な問題解決には至らない。

ある証券アナリストが質問した。
「イオンがキャンドゥを相手に選んだ理由は?」

そんなことは明確だ。
ダイソーやセリアをM&Aできないからだ。

キャンドゥnews|
年商731億円0.1%増・経常利益37.1%減の増収減益

キャンドゥだから公開買い付けで、
スピーディに子会社化できる。

そしてイオンはそれをした。

だから今、スピードが一番大事だ。
そして優先順位がことさら重要になる。

記者会見が終わると、
写真撮影。IMG_01111

記者が集まって、シャッターを押す。
私はその光景を撮影した。IMG_01141

吉田さんと城戸さんはスマイル。IMG_01922

城戸さんにとっては試練が待っている。
しかし100円ショップ業態は、
世間が考えるほど軽いものではない。

1879年、フランク・ウールワースが、
バラエティストアを創業した。
店名は「The Great Five Cent Store」

100円ショップではない。

ワンコインストア、
またはツーコインストア。

1879年段階、
アメリカでは5セントストアだった。
1945年にサム・ウォルトンが始めた時は、
5セントと10セントの2コインストアだった。

今は、ダラーストア。
それ以上のコインストア。

この業態は、
百貨店、グロサリーストアに次いで、
史上三番目に古いビジネスモデルである。

バラエティストアから、
Kマートが生まれたし、
ウォルマートが登場した。

この業態には潜在的なパワーがある。
そのパワーの源泉はシンプルさにある。

それを吉田さんと城戸さんが背負う。IMG_01982

私はキャンドゥ取締役の新宮孝仁さんと写真。
IMG_02101

記者会見が終わって、
エレベーターホールにいたら、
偶然、吉田さんが現れた。

そこでちょっと立ち話した。

吉田さんにはよくわかっている。

「インタビューを申し込みますから」と、
言っておいた。
広報のみなさん、よろしく。

イオンにとってキャンドゥは、
強い武器になるだろう。

目先のメリットだけでなく、
小売業のコングロマーチャントとして、
必須の業態を手中に収めたという、
長期的な視野に立つ必要がある。

しかしそれもスピード感と、
そのスピードを加速させる優先順位だ。

イオンにかぎらない。
あらゆる企業がいま、
スピードを求められている。

〈結城義晴〉

2022年01月13日(木曜日)

日本VC協会賀詞交歓会と「われわれを強くする商売の仕事」

来る者拒まず、
去る者追わず。

故倉本長治商業界主幹は、
この考え方を貫徹した。

だから倉本主幹時代の商業界には、
全国から近代化を目指した商業者が、
続々と参集した。

長治先生ほどではないけれど、
私も商人舎も同じ考え方だ。

来る者拒まず、
去る者追わず。

それぞれでいい。

よく学ぶ者にはよく教える。
特別に誰かに教えるとか、
どの企業の味方をするとか、
どこの企業だけをコンサルするとか、
そんなことは全くない。

商売十訓をはじめ、
ピーター・ドラッカーの考え方、
世界中でこれは定石だと認められた理論、
そんなものに真摯であって、
私たちとともに学ぶ者には、
惜しみなく教授する。

それが商人舎と結城義晴のあり方だ。

今日は朝から横浜商人舎オフィス。
来客あり。

良い内容の話ができた。

昼過ぎに出かけて、
東京・白金。

シェラトン都ホテル東京。IMG_00861

日本ボランタリーチェーン協会。
令和4年新春賀詞交歓会。IMG_00871
ボランタリーチェーンはVCと略す。
フランチャイズチェーンがFC。

2時半から記念講演。

講師は川邊健太郎さん。
Zホールディングス㈱代表取締役社長Co-CEO。IMG_01391
2019年10月1日に、
商号をヤフー㈱から変更して、
純粋持ち株会社となった。

傘下の事業会社は、
ヤフー㈱をはじめ、アスクル㈱、㈱ZOZO、
PayPay㈱、LINE㈱などなど。
売上高は1兆2058億円。

おもしろい話が聴けるだろうと、
多くの協会関係者が集まった。

しかし残念ながら、
同社の営業説明会のようだった。
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そのあと4時半から賀詞交歓会。IMG_01451

泉田幸雄会長のスピーチは、
実に簡潔で的確。
泉田さんの知見の豊かさ、高さが、
よく表れていた。
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そのあとは来賓の挨拶。

自民党の甘利明代議士も、
話のうまさには定評がある。IMG_01461

いろいろあったけれど、
流通には造詣が深い政治家だ。IMG_01481
スピーチが終わると余興。
軽妙なメキシコ音楽。

ソーシャルディスタンシングで、
酒も料理も控えて、
余興を楽しんだ。IMG_01501
私は講演と賀詞交歓会の間に、
ホテルのラウンジで交流。

並木利昭さん(左)と江口法生さん。IMG_009011
並木さんは㈱ライフコーポレーション専務。
私は40年近いお付き合い。
もう同志といった感じだ。

江口さんは、
日本スーパーマーケット協会専務理事。
江口さんとも30年来の仲間だ。

昨年の状況や今年の予想など、
じっくりと話し合った。

私は月刊商人舎1月号の話をした。

さらに賀詞交歓会が終わって、
白鳥和生さんと懇談の食事。

白鳥さんは日本経済新聞調査部次長。IMG_0153 (1)1
マスク会食をして、
撮影のときだけ素顔。

互いに猫好きで、
白鳥家のヴィッケ君の話で盛り上がった。

久しぶりの会合。
やはりフェイス・トゥ・フェイスはいい。

それでも今日の三人組が歌っていた。

マスクに、手洗い、
ディスタンス♫

マスクに、手洗い、
ディスタンス♫

最後に朝日新聞「折々のことば」
第2261回。
編著は鷲田清一さん。

時間は
これを使うことによってしか
忘れることができない。
(シャルル・ボードレール)

「時間という観念や感覚に
押しひしがれないためには、
二つの対処法しかない」

「われわれを磨滅(まめつ)させる」快楽、
もしくは、
「われわれを強くする」仕事。

う~ん、いかにも、
ボードレールらしい名言。

ボードレールは、
「悪の華」のフランスの詩人。

「時から解き放たれるためには
恍惚と集中、
つまりは我を忘れることが
必要だということ」

「ただしこの二つは両立しない」

「だから”選ぼうではないか”」
(アフォリズム集「火箭」から)

私は一貫して、
商売という仕事によって、
時を忘れることをお薦めしている。

それはわれわれを強くしてくれる。

もちろん「磨滅する快楽」も、
否定はしないけれど。

われわれを強くする仕事。
その仕事によって時間を忘れる。

このことに賛同する者に対して、
来る者拒まず、
去る者追わず。

〈結城義晴〉

2022年01月12日(水曜日)

銀座「ろくさん亭」の懐食と第3四半期「コロナ茹でガエル」

NHK調査の新型コロナ新規陽性者数。
全国で1万人を超えて1万3244人。
東京都も2000人を超え、2198人。
大阪府1711人、沖縄県1644人。

新規感染者だけ見れば、
第六波である。

また、私たちは数え始めた。

「存在」川崎洋

「魚」と言うな
シビレエイと言えブリと言え
「樹木」と言うな
樫の木と言え橡の木と言え
「鳥」と言うな
百舌鳥と言え頬白と言え
「花」と言うな
すずらんと言え鬼ゆりと言え

さらでだに

「二人死亡」と言うな
太郎と花子が死んだ と言え
※樫(かし)と橡(とち)
※百舌鳥(もず)と頬白(ほおじろ)
souiku-jp_9784758432719-a

そう、太郎と呼べ、花子と言え。

これを忘れてはならない。

粛々とマスク装着、手洗い、
ソーシャルディスタンシング。

商人舎流通スーパーニュース。
2022年に入ってから連日、
新型コロナ感染news|
1/6~7発表 主要小売業の陽性判明は41人
1/8発表主要小売業の陽性判明は49人
1/9発表主要小売業の陽性判明は84人
1/10発表主要小売業の陽性判明は60人
)1/11発表主要小売業の陽性判明は50人
1/12発表主要小売業の陽性判明は81人

店頭の陽性判明者も増え続けている。

セブン&アイnews|
1/5~1/10にグループ店舗・施設で51人がコロナ感染

毒性が弱かろうが、
重症化のリスクが少なかろうが、
店頭でもオミクロン株感染が増えている。

徹底すべきところは徹底したい。

今日の銀杏の木。
剪定が終わって、寒々しい。IMG_E00591

しかし剪定するからこそ、
やがて葉が茂り、銀杏の実がなる。IMG_E00611

今日は商人舎オフィスに出社。
セミナー企画や編集企画をつくって、
それから歯医者に行って、
歯の掃除をしてもらった。

それから夕方、東京・銀座へ。IMG_00621

ライトアップは派手だが、
午後6時なのに人通りは少ない。IMG_00641

6丁目のギンザシックス。IMG_00771

その真向かいにユニクロ銀座店。IMG_00761

12階建ての狭い鉛筆ビルだが、
各フロアに工夫が凝らされている。

1階入り口は派手な演出。IMG_00751
その1階にユニクロフラワー。
お買い得の価格で花を売る。IMG_00721

2階は地元銀座とのコラボレーション企画。IMG_00711

凄いプレゼンテーション。IMG_00701

2015年から㈱島精機製作所と、
戦略的パートナーシップを結んで、
ニット商品の技術革新を始めた。IMG_00681

コンピュータ自動制御の3D編み機が、
リアルタイムでニット商品を編んでいる。IMG_00691

レディスのステージ売場。IMG_00671
最上階の12Fにユニクロカフェ。
オリジナルブレンドコーヒーは、
1杯200円で販売され、
カウンター席で飲める。

ニューヨーク五番街のティファニーと同じだ。

今日の目的地は、
「ろくさん亭」IMG_00781

調理の鉄人・道場六三郎さんの店。
懐石の会食で「懐食」と称した。IMG_00791
91歳となっても、
昨日も今日もゴルフ三昧。
そして店にも顔を出す。
生涯現役。

あやかりたい。

現在の女将は道場照子さん。
六三郎さんの次女で、
私たちの席に挨拶に来てくれた。

はじめから期待に胸が膨らむ。

熱い鱶吸(ふかすい)と、
吟味されたバラエティ豊かな前菜。

それから正月らしく雑煮。IMG_01311

次々に料理が出てきて、
写真を撮るのを忘れる。

この河豚は一人前。
IMG_01321

大根と鰤。IMG_01331

てんぷらも道場流。IMG_01341

炊き込みご飯と赤だし、漬物は、
最高のハーモニー。

そして最後がデザート。IMG_01361
生ビールから始まって、
白ワイン、赤ワインまで、
堪能しました。

少人数での新年会。
ろくさん亭の配慮が行き届いて、
十二分のソーシャルディスタンシング。

ありがとうございました。

最後に昨日今日と、
第3四半期決算が発表されている。

商人舎流通スーパーニュースの、
「決算一覧」

イオンnews|
第3Q営業収益が過去最高を記録/純損失も大幅改善

イオンの営業収益は6兆4506億円で、
前年同期比0.9%増。
9カ月累計として12期連続増収、
過去最高を更新した。

ライフnews|
積極出店で営業収益5748億円1.1%増・経常利益は6.8%減

ライフコーポレーションは増収減益だが、
営業利益率3.4%、経常利益率3.5%で、
コロナ前と比べると格段に改善された。

イズミnews|
営業収益4961億円0.1%減・経常利益6.3%減/特需一巡

イズミは食品の特需が一巡して、減収減益。
しかしそんなときにも組織を変えて、
次のステップを見据える。

地方のスーパーマーケットは、
苦戦の状況が見えてきた。

しかしコロナ前の消費増税直後を思い出せば、
それほど驚くこともない。

コスモス薬品news|
第2Q売上高1.9%増・経常利益15.6%減の微増収減益

コスモスの快進撃もトーンダウンか。

昨年秋から「正念場」と言い続けてきた。
第3四半期にそれが表れた。

「コロナ茹でガエル」
これだけは避けなければならない。

〈結城義晴〉

2022年01月11日(火曜日)

商人舎1月号発刊! 「特集2022革新的予言」のパラドックス

月刊商人舎新年1月号、
本日発刊!!
202201_coverpage
[特集]
2022確信的予言
ポストコロナの知識商人の「テーマ資源」

[Cover Message]
ピーター・ドラッカーは、
「予言するな」と戒めた。
神秘的現象としての「予言」をすること、
それに盲従することを厳しく警告した。
しかし一方でドラッカーは
「モニタリングせよ」と説いた。
「観察せよ、記録せよ」である。
そうすれば、
「すでに起こった未来」が見えてくる。
本誌はずっとこの姿勢を貫いてきた。
すなわち当てずっぽうの予言はしない。
けれどポストコロナ時代への
節目の2022年初頭、
たった一度だけ禁を犯して、
あえて確信的予言を試みよう。
それはモニタリングを続けてきた結果として、
見えてきた「すでに起こった未来」の姿である。
島田陽介の大予言を清聴せよ。
本誌の予言に耳を傾けよ。
これらの予言は、
「テーマ」という一粒の麦を
「テーマ資源」として掘り起こさせ、
豊かな実りをもたらす苗床と
なるものだからである。
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[Contents]
202201_contents

あえてする予言。

タイトルは、
「島田陽介の大予言」
85歳の最高峰。
一気呵成の1万2000字。
チェーンストアは個店経営へ。
是非、読んでみてください。
島田陽介

結城義晴の述懐は、
「個店経営とチェーンストア3.0」
20220104

「片山隆の予言」
欧米のストアフォーマットは、
衝撃的な自律型店舗へ。
日本もそれに引っ張られる。
202201_katayama-amazonfresh2

そして「結城義晴の2つの予言」
消費とMerchandisingの変質。

「禁欲円」と「享楽円」のコンセプトによって、
消費はどう変わり、商品政策はどう動くか。
202201_md3
コーポレートの変容。
会社二階建て構造によって、
今年のM&Aはどう進むか、
そしてSDGs問題はどうなるか。
202201_corporation_sdgs

今月は読み物特集です。
ケーススタディは、
万代ニトリモール東大阪店。
大胆なマーチャンダイジング転換は、
「享楽円」購買への対応と見た。
mokujphoto

最後に特集のあとがきは、
「2022革新的予言」のパラドックス。

新年号らしい特集になりました。
小売流通業に関する1冊の本を読むごとし。
ご愛読のほど、お願いします。

月刊商人舎を購読していない方も、
目次やこのブログを見て、
楽しんでください。

「ああ、こんな方向に行くんだ」と、
今年1年を展望してみてください。

1月はそんな月です。

さて、日経新聞電子版「経営者ブログ」
㈱IIJ会長の鈴木幸一さん。
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「年末から年始にかけて、
歴史のある大手企業トップの言葉が、
複数の新聞紙面に掲載されている」

それらを読んで、鈴木さんのひとこと。

「いずれも過去にとらわれず、
思い切った変革、改革を
実施していくといった言葉が目に付いた」

コロナ禍の断絶「キャズム」によって、
変革は求められている。
しかし大事なことがある。

「大企業となるまでに
成長の鍵となってきた、
独自のコーポレート・カルチャーを
軽視する発言もあって、
逆に心配になったのである」

「変えるべきことと、
変わらず貫くべきカルチャーを
しゅん別していかないと、
歴史的な大企業にしても、
ひそかに衰退への道が始まると思う」

同感だ。

この後の指摘が、
経験に裏打ちされていて、
実に鋭い。

「当初はよく注意しないと
わからない変化が、
あるとき、まるで、
転げ落ちるかのような過程で、
どんどん巨大になって
崩壊への道をたどるのではないかと、
心配してしまうのである」

納得。

しかしこういう時には、
今日もピーター・ドラッカー。

「未来を築くために
初めになすべきことは、
明日何をなすべきかを
決めることではなく、
明日をつくるために今日、
何をなすべきかを
決めることである」

「新店ドラ」も好評発売中。
もちろん、よろしく。
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月刊商人舎1月号。
「特集のあとがき」の最後の言葉。
202201_atogaki
「予言」とは、
どんな時代の、誰のものでも、
パラドックスの提示に他ならない。
本誌2022年の確信的予言が、
いずれも逆説的であればあるほど、
「予言」の価値は高まるのである。

〈結城義晴〉

2022年01月10日(月曜日)

「ハタチの無駄」と「重要なことから始めよ」

Everybody! Good Monday!
[2022vol②]

2022年第2週。
1月10日、
成人の日の祝日。

今年の新成人は約120万人。

ピークは1970年。
第1次ベビーブームの団塊世代246万人が、
成人となった。

それから見ると半減。

しかし「世界人口白書2021」では、
世界の総人口は78億7500万人。
前年に比べて8000万人の増加。

人口が1億人を超えている国は14カ国で、
日本は2020年と変わらず11位だった。

世界人口は増えるが、
日本の人口は減る。

120万人の成人諸君に、
期待しよう。

新聞やメディアでは結構、
新成人にお説教臭いことを言う。

毎日新聞「余禄」は、
アインシュタインの言葉。
「成功する人になろうとするのではなく、
価値のある人になろうとしてほしい」
1955年に死去する直前のことだった。
アインシュタイン相対性理論.jpg2

北海道新聞の「卓上四季」
タイトルは「ハタチの無駄」

こちらは打って変わって、
若手俳優の賀来賢人。
賀来賢人チャンネル
「全然見ねえじゃん」

役者として目が出ないころの成人の日。
久しぶりに再会した同級生から言われた。
ただただ悔しく、情けなかった。

叔母は女優の賀来千香子だが、七光りはなかった。
普通の高校生がスカウトされて、
俳優の道に入る。
映画出演を果たすも、
作品を見て愕然とする。

「俺ひとりが台無しにしているように見えた」

その後は、先輩俳優に追いつこうと、
懸命にもがいた。

そして今、言う。

「やりたいことを続けておくと
いいことがある。
無駄なことなんてなくて、
やたら返ってくるんですよ」

コラム。
「無駄だったと思うこと自体が
無駄ということである」

同感だ。

アインシュタインよりも、
賀来賢人のほうが、
今の成人には響くだろう。

人生に無駄なことなどない。
最後にはすべてのことがつながってくる。
本当にそう思う。

今日は関西では、
十日戎(えびす)である。
正月の初詣でよりも、
十日の戎詣で。

兵庫の西宮戎か、大阪の今宮戎か。
福岡にも十日恵比須神社がある。

恵比寿天は、
商売や商業の神様である。

あくまでも神話の世界の話だが、
『日本書紀』では、
イザナギ・イザナミが生んだ子で、
アマテラスとツクヨミのあと、
スサノオの前に生まれた。

ヒルコと言われた。

三歳になっても脚が立たなかったため、
船に乗せて流された。

そこで漁の神様となり、
商売の神様となった。

この神様が後世、恵比寿天として信仰され、
戎神社が各地に建立された。

だから恵比寿天は、
左手に鯛を抱え、
右手に釣り竿を持っている。

私の言う「商人の起源」と、
どこかシンクロしている。

「最も強い者が、
人間を打ち倒す軍人になった。
次に強い者が、自然と闘い、
農作物を生産する農民となった。
三番目に強い者が、道具を使って
モノをつくる工の民となった。
そして一番体の弱い者が、
商人となった」
(『Message』士農工商より)
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十日戎で商売繁盛を祈願し、
関西や西日本では、
本格的な商戦に入る。

いよいよ、これからだ。

私も今週から通常のスケジュールに戻る。

今週、来週と、
さまざまな協会や団体の賀詞交換会、
記者会見も始まる。

取締役会もあるし、
万代知識商人大学6期の修了式もある。

古希を迎える私のテーマは、
「断捨離」

新しい、不要なことを断つ。
古い、不要なものを捨てる。
不要な執着から離れる。

それでも必須のこと、必要なものは、
着実に成し遂げていく。

倉本長治は教える。
「やさしいことから手をつけよ」
倉本長治モノクロ2
「仕事の段取りとして
困難なことから手をつけるのは、
うまいとはいえない」

「他者がやっていることで、
良いこと、正しいこと、
お客のためになると思われることは、
たとえ人真似であっても恥じてはならない」

一方、ピーター・ドラッカーは言う。
「重要なことから始めよ」
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「成果をあげるエグゼクティブは、
最も重要なことから始め、しかも、
一時に一つのことだけを行う」

そしてついでに結城義晴。
「むずしいからおもしろい」

成人諸君は倉本長治であろう。
しかし年を経たらドラッカーである。

選択と集中。

そして集中するには、
断捨離がなければならないと思う。

では、みなさん、今週も、
ある人はやさしいことから、
ある人は重要なことから、
ある人はむずかしいことから、
始めよう。

どれも無駄なことなど一切ない。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2022年01月09日(日曜日)

ルーズベルトの手紙と倉本長治の「人間の味」

1月9日の夕空。
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今日はちょっとだけ温かかった。IMG_00441
まだまだ寒くなる。

NHK調査の全国新規陽性者数。
全国で8249人。
沖縄が一番多くて1533人。
東京は1000人を超えて1223人。
大阪880人、広島619人。
神奈川443人、埼玉401人。
2022-01-09全国コロナ感染
油断はできない。

日曜日は倉本長治。
その「倉本長治 商訓五十抄」

タイトルは、
「店はお客さまのためにある」
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2003年2月19日の発刊。
私は㈱商業界の専務取締役だった。

2月の商業界ゼミナールに向けて、
急遽、発刊された小冊子だった。

もともとは月刊『商業界』の巻頭に、
倉本長治主幹が書いた文章である。
そこから50編を集めた。

500円の値段をつけて販売したが、
実によく売れた。

私もこれを真似して、
商業界社長になった年に、
2月ゼミナールに向けた本を出した。

それが『Message』
サブタイトルは、
「店に元気を、仕事に勇気を」
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これも50の巻頭言を集めた。

長治師の真似ばかりしていた。

その「倉本長治 五十抄」のなかの一文が、
「人間の味」
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セオドア・ルーズベルトは、
第26代米国大統領だが、
ニューヨーク州知事だったことがある。
そのころの秘書は、
メジモア・ケンダルと言い、
「思い出」を書き残している。

倉本長治は実に博学で、
その手記を読んだことがあるという。

「ルーズベルトの談話を筆記して、
そのとおり間違いなく
タイプライターで打って、
署名をもらい、手紙を出すのが
自分の仕事だったが、
いつも決まってルーズベルトは
署名したタイプ済みの手紙の一部分を
自分で消したり、書き込んだりするのだった」

「ある時、書き込みの多かった手紙を
もう一度タイプライターで打ち直して、
再び署名をもらおうとしたら、
そのときルーズベルトが言った」

『僕がタイプした手紙に、
わざと書き込むのは、
別にトリックではない。
機械で印字した手紙に
自分のパーソナリティ(人間的な味付け)を
盛り込みたいという一心からなのだ。
だから、それを打ち直されてはたまらないョ』

長治は言う。
「機械的な事務処理がますます増えている昨今、
ふと考えさせられるものがある」
倉本長治像

私はこの一文がずっと頭に残っていて、
商業界の編集長のころから毎月、
雑誌が発刊されるたびに、
手書きの手紙を親しい経営者に送った。

商人舎を興してからもそれに倣って、
毎月、月刊商人舎を贈呈するときに、
手書きのお便りを添える。

出張などで出かけている時は、
パソコンで打ったものを送るが、
それは本意ではない。

テレワークが増えて、
やはりワード文章が多くなる。
これも避けたいものだ。

手書きには「人間の味」が滲み出る。

心を正して書かなければ、
文字に乱れが生じる。

「書」と同じだ。

ずいぶん書いていって、
大きな間違いが出ると、
はじめからやり直し。

ルーズベルトのように、
書き加えたりするときは、
吹き出しを入れたりする。

小さな書き間違えは、
ホワイトでちょっと修正したりするが、
基本的に思いのまま一気呵成で書き上げる。

毎月、亀ヶ谷純子さんからは、
達筆の返礼が届けられる。
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これは素晴らしいものだ。

書くことはなかなかに大変だが、
それもルーズベルトや長治師が言うように、
「人間の味」やパーソナリティのひとつである。

そしてそれは、
そのときの自分の精神力などが、
表れたものとなる。

同じように、
手描きのPOPやショーカードも、
「人間の味」が出る。

ただし、いずれも、
「人間の味」が出てしまうところが、
良いとは思うけれど、
またひどく怖いものだ。

〈結城義晴〉

2022年01月08日(土曜日)

「お笑い」と「商売」の時間の総量と幸福の総量

年末年始が終わって、
今年最初の三連休。

成人の日がハッピーマンデー制度によって、
第1月曜日になった。

そんなときに、
オミクロン株による第六波。
重症化の確率も少なそうだし、
ただのインフルエンザだという見方もある。

それでも企業によっては、
テレワークを復活させるケースも出てきた。

アメリカでは金融のシティグループが、
ワクチン接種をしない従業員を、
解雇する方針を出した。
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シティの米国内従業員は約7万人。
昨年10月にワクチン接種を義務化した。
それでも従業員接種率は9割を超える程度。
その1割弱が解雇の危機にある。

会社もそこまでするか?
1割の従業員もそこまでされて接種しないか?

バイデン政権は昨年9月に、
企業の従業員ワクチン接種義務化、
あるいは週ごとの陰性証明を求める。
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それだけオミクロン株を脅威と見ている。

日本はまだのんびりしている。

ブースター接種を期待しながら、
マスク着装と手洗い実施、
ソーシャルディスタンシング。

原則的・基本的なことを、
徹底する。

それがコロナに対してもいちばんいい。
徹底とは、
詳細に厳密に継続すること。
こまかく、
きびしく、
しつこく。

小売業、サービス業の店頭でも、
こまかく、きびしく、しつこく。

よろしくお願いしたい。

商人舎流通スーパーニュース。
ヤオコーnews|
12月既存店0.6%増、全店で6.4%増/客単価1.6%増

ヤオコーは昨12月も好調だった。
既存店売上高は前年同月比100.6%、
客数99.0%、客単価101.6%。
買上点数(PI値)100.3%。

ヤオコーの場合、
PI値=総買上点数÷総客数×100
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こういった指標も、
徹底して使う。

つまりこまかく、きびしく、しつこく。

ヤオコーのそういったところは、
大好きだな。

一方、
ベルクnews|
第3Q営業収益2239億円6.2%増・経常利益8.8%増

ベルクも好調だ。
2022年2月期第3四半期の連結業績。
営業収益2229億円(前年同期比106.2%)、
営業利益101億円(109.2%)、
経常利益107億円(108.8%)。

営業利益率は4.5%、経常利益率4.8%。
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ベルクも収益に対してストイックだ。
こまかく、きびしく、しつこく。

これも好きだなあ。

「ほぼ日刊イトイ新聞」
その巻頭エッセイ「今日のダーリン」は、
糸井重里さんが毎日書く。

「学校の勉強は嫌いだし、
なにかを熱心にやるなんて
ダサいと思っているようなやつが、
バンドでギターをやっていたりする場合は、
ものすごく一所懸命に
地道な練習を重ねたりする」
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わかるなあ。
友人にもそういった奴がいた。

「とんでもねーカッコして
ベロ出してるようなギタリストも、
人のいないところで運指の練習とか
やったりしてるわけで、
それを考えると、
たいていのバンドの人たちは、
適当にやってるホワイトカラーより
働き者だと思えるのだ」

運指は「うんし」と読んで、
ギターやピアノの指の使い方。

「スケール練習」と言って、
私も小学生のときにはバイオリンで、
その後はギターでやった。

これも、こまかく、きびしく、しつこくだ。

「じぶんで楽器やってる人たちは、
リスペクトする演奏家たちの音や映像を、
“じぶんも演ってる者”の目で見つめている」

「同じように、
趣味で囲碁や将棋をやっている人が、
プロ棋士や、アマチュアの上級者の
囲碁や将棋を見て、”なるほどぉ”とか
感心しているのもいいなぁと思う」

藤井聡太の妙手。
羽生マジック。
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凄い。

「そっちに不案内なものには、
それが見えないのだ」

売場づくりや売り方、品ぞろえなども、
専門家が見ると「凄い!」と言うのがある。

“一流コンサルタント”の鈴木國朗さんが、
ベルクの売場クリニックをして、
「しびれる店です」と言っていた。
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その通り、プロをうならせるものが、
商売の世界にもある。

これはスポーツの世界にも、
絵画やダンスや演劇などにも言える。

糸井。
「と、そこまでは、ぼくも
ずっと考えていたことなのだが、
このところ、あらためて思ったことがあった」

「年末年始に、漫才やコントの人たちが、
バラエティのタレントとしてでなく、
ネタを見せてくれる機会がたくさんあって、
ぼくもずいぶんそれをたのしんだのだが」

「あの”お笑いという芸”を、
“じぶんも演る者”として
注視している人たちが
山ほどいるんだと気づいたのだ」

「じぶんも”お笑い”で
舞台に立っているという立場で、
“M-1″なんか見てたら、
すごい緊張感があるだろうね」

「松本人志の一挙手一投足が
クラプトンのギターなんだもの。
評判を上げている新人コンビの漫才なんかは、
まぶしいくらいキラッキラに
見えてるんだろうなぁ」
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その”お笑いを演じること”が、
大衆化してきた。

若い人ならだれでも、
手が届くようになってきた。

万代のチーフたちなど、
例外なく、みんなそれができる。

「いま、ぼくが17歳の青年だったとしたら、
昔のじぶんが”バンドやりたい”と思ったように、
たぶん、一度は漫才をやりたいと
思うんじゃないかなぁ」

ん~、バンドは私も同じだが、
お笑いに対してはそれはない。

私は糸井ほど、顕示欲は強くない。

最後の一言。
「本気になれる時間の総量が、
人生の総幸福量かもしれないよ」

仕事で本気になれる時間の総量が、
人生の幸福の総量。

同感だ。

売場づくりも売り方も品ぞろえも、
こまかく、きびしく、しつこく。

〈結城義晴〉

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