万代大学オペレーションマネジメント講義の「神は細部に宿る」

昨日から大阪に滞在している。
横浜や東京よりも少し暖かい。
街には外国人が多い。
シェラトン都ホテル大阪の16階からの朝の眺め。
朝8時半に東大阪市渋川の㈱万代本社。
万代知識商人大学第10期。
朝9時から夕方6時までの講義。
最後列で加藤健副社長が聴講してくれる。

前回の講義は7月だった。
内容は「ヒューマンリソースマネジメント」。
毎回の講義のあとに、
受講生はレポートを書いて提出する。
朝の講義の冒頭で、その発表が行われる。

「ヒューマンリソース」をテーマに、
何を決意して、何を行うのか。
それを各自が5分ほどで簡潔に発表する。
プレゼンテーションのスキルアップにもなる。

全員がずいぶん上手になってきた。
そして10月の講義がスタート。
カレッジ5回目の講義テーマは、
「オペレーションマネジメント」

第1講義は結城義晴。
Prologueは「ローゼンワールドの信条」
シアーズ・ローバック中興の祖、
ジュリアス・ローゼンワールドが、
三つの信条を残した。
その第2は、
「販売経費を下げることにより、
販売価格を下げること。
商品を生産者から消費者へ移動させる経費を
絶対的に実現しうる限りの最小限にまで
節減させること。
しかし品質は落としてはならない」
これがオペレーションマネジメントの、
エッセンスの考え方だ。
それから復習になるが、
フレデリック・テイラーとヘンリー・フォード。
この考え方がレイバースケジューリングとなる。
さらに製造業の生産管理。
アンリドルー・シューハートと、
エドワード・デミング。
素晴らしい考え方だ。
第2講義は和久正樹取締役。
店舗運営・店舗サポート部・ネット宅配事業部、
それから営業企画部・ポイント室担当。

店舗運営支援部の視点から、
「生産性向上」と「コスト意識」をキーワードにして、
豊富な現場事例を盛り込んだ講義。

会社の生産性向上の取り組みと現場の課題を、
丁寧に指摘して喚起を促した。
第3講義は近藤圭介さん。
第2運営部エリアマネジャー。
この知識商人大学2期生。

冒頭に店長時代に取り組んだ基本的な考え方と、
店舗従業員と目指した方針などを熱く語ってくれた。

そのうえで、顧客が買い回りしやすく、
従業員が働きやすい店舗環境づくりの大切さを講義。

自分の経験をもとに、熱のこもった、
近藤さんらしい、いい講義内容だった。

昼食は万代渋川店を回って、
焼き肉弁当を購入。
そして午後の講義は、
再び結城義晴。
トヨタ生産方式の大野耐一理論。
オペレーションマネジメントの本論だ。

このあとは結城義晴のLSP講義。
私は村上忍さんの単行本を何冊も担当した。
万代はかつてその村上さんから、
作業システムを学んだ。
だから現場のオペレーションの改善・改革も、
ここに視点を持つ必要がある。
最後はスライドを使って説明した。
そして中筋浩二取締役ドライ・デイリー部担当。
講義テーマは「サプライチェーンマネジメント(SCM)」

グロサリーと日配品を担当するから、
その視点から国内外の課題を整理しつつ、
収益構造の仕組みづくりの3つのアクション、
人材育成、DX推進などを講義。

中筋さんの講義テキストは、
SCMの概要から万代のSCM構築の方向性まで、
総括的に整理されている。
受講生たちには再度、
丁寧に読み返すことを要請した。

ありがとうございました。
その後、受講生たちは班に分かれて、
講義を受けて現場での取り組みについて、
ディスカッション。
4班がその発表。

目に見えることと目に見えないこと。
そんな視点からの発表もあった。
しかしもっともっと深く考え、
具体的な結論を導き出してほしい。
4つの班の発表をちょっと厳しく講評した。

それからサプライチェーンマネジメントの総括。
中筋さんの講義を補足した。
6つのマネジメントのなかで、
オペレーションにかかわる人間が、
一番多い。
だからこそミドルマネジメントが、
それぞれの局面で問題を発見し、
問題を解決しなければならない。
トップマネジメントは、
そのすべての局面にかかわることができない。
次代の経営者を養成するのが、
企業内大学としての万代知識商人大学の目的だ。
なぜ学んでいるのか、何を期待されているのか、
厳しい叱咤激励が飛んだ。

さて日経新聞夕刊の「プロムナード」
岩尾俊兵さんのエッセイ。
「神も悪魔も細部に宿る」
いきなり言う。
「マネジメントの要諦は細部にある」
サム・ウォルトンの言葉。
Retail is Detail.
私の訳は「小売りの神は細部に宿る」
今日の講義でも白板に書いて説明した。
「たとえばたった一製品の
売上げ不振を放置しているうちに、
やがて会社全体の巨額赤字に
陥ってしまったりする」
「あるいは、一人の従業員から上がった
不満の声を放置しているうちに、
それが内部告発と訴訟合戦という
大きな問題へと発展してしまったりもする」
よくあることだ。
「だから、必然的に経営者は、
細部に目を配らなければならない」
「しかし、ここに大きな落とし穴がある」
「細部に囚(とら)われてしまって
失敗する落とし穴だ」
「この失敗を避けるために組織のリーダーは、
ある特殊な視点の持ち方が必要となる」
「それは、細部を常に気にかけつつ、
細部の異変を全体の異変として捉え直して、
細部ではなく全体に対して手を打つ、
という視点である」
「より簡単にいえば、
細部を細部のまま見ない、
ということだ」。
製造業の場合のことだが、
「一製品の売上げ成績が不振に陥ったときに、
この製品を何とかしなければと
一生懸命になるのは悪手になることがある」
「一製品にこだわって、
その製品の販促活動を強化したり、
宣伝を増やしたり、値引きをしたりするのは
間違いになることが多いのだ」
「大抵の場合、売れない製品のために
販促や広告や値引きに予算を割いても
お金をドブに捨てることになる」
そもそも顧客が欲しがっていないものを
無理やり売ろうとしている可能性が高いからだ。
「一製品が売れないとわかったら、
その製品については
損失が最小限になるような撤退戦略を考えて、
余った販促費・広告費を
売れ筋の製品に投入し直すべきだろう」
もう一つの例、一従業員の不満への対応も同様。
「従業員が不満を抱えているときに、
大抵のリーダーは
不満を抱えた従業員の悩みを真摯に聞いて、
向き合う」
ここまではいい。
「しかし、その次の一手が、
『わかるよ、わかる』と相槌(あいづち)を打って
『とりあえず飲みにいくか』だといけない」
「リーダーが向き合うべきは
酒でも目の前の一人だけでもなく、
組織全体であるべきだからだ」
その場しのぎの繰り返しでは
組織の根っこにある問題は解決されないし、
従業員の不満も増大していく。
「一人の不満を察知したリーダーは、
その不満の真因を組織全体の観点から探って、
組織全体を変革させなければいけない」
もちろん、その不満が
個人のわがままに起因することも、
時にはあるかもしれない。
いや大いにあるだろう。
しかし、その場合には、
なぜわがままが横行する組織になったのか、
いわば組織文化の問題を考える必要がある。
「マネジメントの神は細部に宿る。
しかし、細部を全体の視点で捉え直さないと、
神は悪魔に変わってしまう」
万代知識商人大学の講義の最後に、
阿部社長が訓話してくれる。
それがこの岩尾教授の話と一致している。
小売りの神は細部に宿る。
その細部を全体の視点でとらえ直す。
つまり着眼小局着手大局。
大事なことだ。
社長だけではない。
取締役も店長も、
ミドルマネジメントも。
よろしく。
〈結城義晴〉









































