結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2007年11月13日(火曜日)

17日間あめりか漂流記⑩テスコ“fresh&easy” 開発の推理

今日は、移動日。
アリゾナ州フェニックスから、テキサス州オースティンへ。
ミスター・ミゾグチと別れて、一人旅。

私、この一人も大好き。
1992年の秋に、シアルドールに審査委員になって、
パリ・ロンドンを訪れたときから、
一人で動くことの快感にはまった。

ホテルと航空便さえ決まっていれば、
どこへでも行く。

とはいっても今回は、移動するだけ。

砂漠とサボテンと岩山のアリゾナから、
穀倉地帯のテキサスへ。

緑が多くなる。

移動しながらの考察。
テスコの“fresh&easy”のこと。
フレッシュ&イーズィ2
テスコは現在、イギリス国内で主に、4つの店舗フォーマットを展開している。
①テスコ・エクストラ ⇒欧州型ハイパーマーケット、4600~9200m2
②テスコ・スーパーストア ⇒これが中心となるフォーマット、2800m2
③メトロ⇒都心型の小型スーパーマーケット、1000m2
④テスコ・エクスプレス ⇒コンビニタイプ、200m2、日本で実験したフォーマット

“fresh&easy”は、この4フォーマットのうちの、
メトロとエクスプレスの中間型である。

テスコはアメリカで、
新フォーマット開発を試みたと考えるのがよい。
“fresh&easy”は1万平方フィート、約900m2で、
しかもリミテッド・アソートメント(限定品揃え)だからである。

①のエクストラでアメリカに進出しようとすると、
当然ながら、ウォルマートスーパーセンターと真っ向対決となる。
韓国では、このパターンで展開。
「ホームプラス」と名づけて、大成功。
しかし、アメリカでは、避けたい。

②のスーパーストアでは、
クローガー、セーフウェイはじめ、
各地のローカルチェーンの主力タイプや、
ウォルマートのネイバーフッドマーケットとも競合する。
しかもこのスーパーストアの競争が最も激しい。
そしてこれら「メインストリーム」(主流型)は、
いまや、コンベンショナル型(平凡な従来型)となりつつある。

③のメトロタイプは、ロンドンなど大都市型である。
私は、スーパーストアの特殊な小型版としか見ていない。

④は、これも大都会のコンビニ型ミニスーパーである。
コンビにではなく、グロサリーストア。
アメリカ、特にカリフォルニアやアリゾナなど米国西側では、
200m2の店舗自体、力を持たない。

何より、テスコはスーパーマーケット企業である。
イギリスでは、このスーパーマーケット企業が最大小売業なのである。

だからテスコは、ここから逸脱することは絶対にない。

そこで考えたのだろうと思う。
相当に時間もかけて、プライベートブランド開発も行った。

結論が、この店“fresh&easy”である。

ロサンゼルスタイムスは、
「トレーダー・ジョーとラルフのブレンド」と表現した。

しかし、テスコ側から見ると、
「メトロとエクスプレスのブレンド」である。

そして、もう一つ、重要な点。
食品屋のテスコは、ウォルマートを除けば、
アメリカでどこが強いと見ているか、という観点である。

答えは「トレーダー・ジョー」。
トレーダージョー私も同感である。
私は、コストコとトレーダー・ジョーが、
「品揃えを絞り込み、客層を広げる」という、
シンプルで最強の考え方を貫徹しつつ、仕事をしていると思う。
今回の17日間の折り返し点でも、
その認識は、強まるばかりだ。

ただし、トレーダー・ジョーは、
マーケティングの対象としてならば、興味あるところだが、
このビジネスモデルは、再現できない。
投資回収にも時間がかかる。
急成長は望めない。
そこで、トレーダー・ジョーと同じグループのアルディに目をつける。

ドイツから進出したアルディは現在、
850店で47億5000万ドル。
この、ノンフリルのグロサリー・ディスカウンターが、
もう一つのモデルとなった。

つまり「トレーダー・ジョーとアルディのブレンド」である。
それが図らずも、イギリス国内の、
「メトロとエクスプレスのブレンド」の延長上にぴたりはまるものとして、
プランの中で浮上してきた。

すなわち、
①小型
②低価格
③限定品揃え
④プライベートブランド中心
⑤低投資
⑥多店化
⑦ドミナントエリア主義
この七原則に、「現代化」されたコンセプトの網を大きくかぶせた。
⑧健康・環境対応

トレーダー・ジョーの255店50億ドル。
アルディの850店47億5000万ドル。

まずはその中間あたりに照準を定めて、
“fresh&easy”はスタートしたのではないか。

すなわち500店で50億ドル。
分かりやす過ぎるだろうか。
もちろん1000店100億ドルは構想しているに違いない。

いかがだろう。
私の2007年11月13日時点の推理。

<つづく、結城義晴>


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.