ラッセルの「真摯さ」と日本惣菜協会総会の「哲学」

ポール・クルーグマンが、
「完全に狂っている」と言った。
トランプ関税のことだ。
日経新聞「春秋」
哲学者の鶴見俊輔は、
ハーバード大学に留学した。
1939年、16歳だった。
成績優秀で、すぐに飛び級コースに進んだ。
ところが2年後に太平洋戦争が始まる。
開戦からまもなく鶴見はFBIに捕まって、
留置場送りとなった。
大学の対応に驚かされる。
FBIに書きかけの論文が押収された。
それを担当教授が取り返し、
続きの執筆に取り組めるようにしてくれた。
留置場に試験官も派遣した。
拘束されてしまったために、
鶴見は十分に講義に出ていない。
だが彼が獄中で仕上げた論文を、
それを補うものと認めて正式に卒業証書を出した。
戦争中の「敵性外国人」にして、
この処遇。
コラムニスト。
「それは自由の国のソフトパワーの源泉だった」
私もそう思う。
コーネル大学の対応によって、
日本にもコーネル・ジャパンができた。
「強権国家のごとき施策を、
またも打ち出したトランプ政権」
同大の留学生受け入れ資格をストップする。
日本の菅義偉政権の学術会議問題に、
似ていなくもないが次元が違う。
鶴見は在学中、哲学者の講座を聴講した。
バートランド・ラッセル。
そして感銘を受けた。
「自分がしゃべっていることは全部、
間違っていると思うことがある」
コラム。
「好き放題の王様の耳にも、
いつか届くといいのだが」
届くはずはないし、
コラムのこの終わり方はつまらない。
もう言葉そのものは忘れてしまったが、
中学2年の英語の教師が、
よく、ラッセルの文章を教えてくれた。
「死の恐怖を征服するもっともよい方法は、
(少なくとも私にはそう思われるのだが)
諸君の関心を次第に
広汎かつ非個人的にしていって、
ついには自我の壁が少しずつ縮小して、
諸君の生命が次第に
宇宙の生命に没入するようにすることである」
かの78歳は自我の壁をまだ膨張させている。
哲学そのものを否定している。
いやその存在すら知らないようだ。
ラッセルは言う。
「個人的人間存在は、
河のようなものであろう。
最初は小さく、狭い土手の間を流れ、
激しい勢いで丸石をよぎり、滝を越えて進む」
「次第に河幅は広がり、土手は後退して
水はしだいに静かに流れるようになり、
ついにはいつのまにか海の中に没入して、
苦痛もなくその個人的存在を失う」
「老年になって
このように人生を見られる人は、
彼の気にかけ、育む事物が
存在し続けるのだから、
死の恐怖に苦しまないだろう」
「私は、他の人が、
私のもはやできないことをやりつつあるのを知り、
可能な限りのことはやったという考えに満足して、
仕事をしながら死にたいものである」
バートランド・ラッセルは、
1872年に生まれ、1970年に没した。
イギリスの哲学者、数学者、論理学者。
さて、
一般社団法人日本惣菜協会、
2025年度定時総会。
会場は東京會舘。
日本の惣菜の市場規模は、
2024年度に11兆2882億円。
前年比2.8%増。
伸び続ける中食産業。
産業の中心となるのが日本惣菜協会だ。
2025年5月時点で、
正会員、賛助会員、協力会員、
合わせて718社となった。
山本恭広編集長がセミナーから参加して、
報告してくれた。
会場は7階の「SAKURA」。
講師は味の素㈱の岡本達也さん。
執行役常務食品事業本部副事業本部長。
テーマは「心を動かす商品開発・マーケティング」。
岡本さんは1987年に味の素に入社。
「CookDo」「ピュアセレクトマヨネーズ」など、
基幹商品の開発・販売戦略に携わってきた。
2023年4月に、
「マーケティングデザインセンター」を設立し、
現在もセンター長を兼任する。
今まで厳密に検証されなかった広告効果について、
「マインドシェア」の指標を数値目標に取り入れた。
面白い。
セミナー終了後、
3階のローズに移動して懇親会。
開会あいさつは協会会長の平井浩一郎さん。
㈱ヒライの社長。
熊本県中心に福岡・大分・佐賀の4県で、
弁当・惣菜店約200店舗をチェーン展開する。
日本は人口が減少し続けているが、
中食産業はますます存在感を高めている。
その惣菜産業の役割の重要性を強調した。
一方で3つの課題を挙げた。
人出不足、原価高騰、米不足。
伸びる産業ほど課題も大きい。
祝辞のあとは新入会員企業の紹介。
2025年1月以降に入会した20社が登壇。
正会員、賛助会員、1社ずつ紹介された。
業界代表あいさつは、
㈱日本アクセス社長の服部真也さん。
食品流通産業を広くカバーする立場から、
「朝食」市場の潜在力を指摘した。
中締めは、
日本惣菜協会副会長の林香与子さん。
㈱マルハ物産会長。
徳島県に拠点を置き、
レンコンの生産・加工・販売で、
日本トップクラスの規模をもつ。
元気な中締めだった。
成長する生活領域の協会だからこそ、
真摯さと哲学をもった集まりでありたいものだ。
〈結城義晴〉
4 件のコメント
私自身は、歴史を学ぶことが死の恐怖を和らげるのを感じています。
その意味で、ラッセルの言葉には強く共感できます。
「まだまだ自分はやれるぞ」というエゴのエネルギーと、それを対象化し相対化して見る視点と、その双方を持っていたいです。
歴史を学ぶことは、実にいいですね。
伝記はヒトの歴史ですが、
これはいいです。
トランプさん自らの間違いに気づく事無くこのまま終わるでしょう。しかし人間は常に成長する生き物と聞きましたが全員には当てはまらないんですね。
それが勉強になりました。皮肉な物ですね。
惣菜は各お店毎に違うので見ていてとても楽しいし、来店目的の一つです。
美味しくて値段の手頃な物を見つけるのがとても楽しいし食べた後の満足感は幸せになります。
皆さん幸せを作っているなんて凄い仕事です!
私もその1人でしたが、今は違う形で幸せにしています。
と思いながら日々仕事をしています!
田邊さん、ありがとうございます。
毎日毎日、トランプの行状を見せられて、
勉強ばかりしていますね。
どんなかたちでも自分の幸せが大事です。
それが人々の幸せをつくることと直結します。